ウソ?ホント?検証ウソ

「ラクダのこぶには水が入っている」はウソ。中身は脂肪、砂漠で生きる本当の秘密は"体温"にあった

「ラクダのこぶには水が入っている」はウソ。中身は脂肪、砂漠で生きる本当の秘密は"体温"にあった

読む前に予想してみよう!

ラクダのこぶには、水がたくわえられている

研究カード(どんな研究?)
対象
ひとこぶラクダ
規模
少数の個体を長期観察
研究の種類
野外での生理学実験
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

ラクダのこぶの中身は脂肪で、水のタンクではない。砂漠で水を節約できる秘密は、昼に体温を上げて汗を減らす仕組みや、脱水に強い体にあった。

ひとことで言うとこぶの中身は"あぶら"。水の節約は体温の上げ下げで!

もくじ
  1. こぶは「水筒」ではなく「お弁当箱」
  2. サハラ砂漠でラクダを測った研究者
  3. 秘密1:昼は体温を"上げて"汗を節約
  4. 秘密2:脱水に強く、一気に飲める
  5. なぜ「こぶ=水」と思われたのか
  6. まとめ

砂漠を何日も旅するラクダ。その背中のこぶには、たっぷりの水がたくわえられている――。

子どものころ、そう思っていた人は多いのではないでしょうか。絵本やアニメでも、こぶを「水筒」のように描いたものがあります。

でも、これはウソです。ラクダのこぶの中身は、主に脂肪。では、ラクダはどうやって水の少ない砂漠を生き抜いているのでしょうか。

01こぶは「水筒」ではなく「お弁当箱」

ラクダのこぶは、脂肪のかたまりです。食べ物が少ないときには、この脂肪をエネルギーとして使います。栄養状態が悪くなると、こぶは小さくしぼんだり、横に倒れたりします。いわば、背中に背負ったお弁当箱です。

「でも、脂肪を燃やすと水ができるんじゃないの?」と思った人は鋭いです。たしかに、脂肪が体の中で分解されると水が生まれます。ところが、脂肪を燃やすには酸素が必要で、そのためにたくさん呼吸をすると、吐く息から水分が逃げていきます。米国の生理学者クヌート・シュミット=ニールセンは、こうした計算から、こぶの脂肪は水の供給源としてはほとんど役に立たないと論じました。

02サハラ砂漠でラクダを測った研究者

03秘密1:昼は体温を"上げて"汗を節約

私たち人間は、暑くなると汗をかいて体温を一定に保ちます。でも汗は水です。砂漠で汗をかき続けたら、すぐに水がなくなってしまいます。

ラクダは違います。水が足りないとき、ラクダは昼の間、体温が上がるのを"がまん"します。体温が上がれば、そのぶん汗をかかずにすみます。そして、涼しい夜の間に、たまった熱を外に逃がして体温を下げるのです。

昼に熱をため、夜に逃がす。汗をかかずに体温を調節する砂漠の知恵
昼に熱をため、夜に逃がす。汗をかかずに体温を調節する砂漠の知恵

さらに、体温が高いと、外の気温との差が小さくなり、外から入ってくる熱も減ります。ふさふさの毛も、強い日差しの熱をさえぎる役目をしていると考えられています。

04秘密2:脱水に強く、一気に飲める

ラクダは、人間なら命に関わるほどの水分を失っても耐えられることが知られています。そして水場にたどり着くと、短時間で大量の水を一気に飲み、失った水分を取り戻します。

こぶの脂肪が背中の1か所に集まっていることにも、意味があると考えられています。もし脂肪が全身の皮膚の下に広がっていたら、毛布のように熱を閉じこめてしまいます。脂肪を背中に集めることで、体のほかの部分から熱を逃がしやすくしているのかもしれません。

05なぜ「こぶ=水」と思われたのか

  • ラクダは「水なしで何日も歩ける」ことで有名で、どこかに水をためていると考えやすかった
  • こぶがぷっくりふくらんでいて、水筒のように見える
  • 「脂肪を燃やすと水ができる」という話が、半分だけ正しく伝わった

ラクダのすごさは本物です。ただ、その秘密は背中のタンクではなく、体全体の仕組みにありました。

06まとめ

  • ラクダのこぶの中身は脂肪で、水のタンクではない
  • 脂肪から水はできるが、呼吸で失う水と差し引きするとほとんど得にならない
  • 水を節約する秘密は、昼に体温を上げて汗を減らす仕組みと、脱水への強さ

判定は「ウソ」。ラクダは背中に水筒ではなく、体全体に"砂漠仕様"の省エネ技術を積んでいたのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSome children's books show a camel's hump as a water tank, but it is actually mostly fat. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Some children's books show a camel's hump as a water tank, but it is actually mostly fat. Camels use this fat as an energy store when food is scarce. Some people point out that burning fat produces water. However, burning fat also requires oxygen, and the extra breathing causes water to be lost from the lungs.

So the hump is not a useful source of water. In the 1950s, researchers studied camels in the Sahara Desert. They found that thirsty camels let their body temperature rise during the day instead of sweating, and then lose the stored heat during the cool night. Camels can also survive losing a large amount of body water.

113 words ・ CEFR B1

和訳を見る

一部の子ども向けの本はラクダのこぶを水のタンクのように描いていますが、実際の中身はほとんどが脂肪です。ラクダは食べ物が少ないとき、この脂肪をエネルギーのたくわえとして使います。脂肪を燃やすと水ができる、と指摘する人もいます。しかし、脂肪を燃やすには酸素も必要で、そのために呼吸が増えると、肺から水分が失われます。

そのため、こぶは役に立つ水の供給源ではないのです。1950年代、研究者たちはサハラ砂漠でラクダを調べました。その結果、水の足りないラクダは、汗をかく代わりに昼間は体温が上がるのにまかせ、涼しい夜の間にためた熱を逃がしていることがわかりました。ラクダはまた、体の水分を大量に失っても生き延びることができます。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. Why is the hump not a useful source of water?

Q3. Why do thirsty camels let their body temperature rise during the day?

重要単語

  • humpB2
    名詞(ラクダの)こぶA camel's hump is full of fat. 道路の「段差(speed hump)」にも使う。get over the hump は「峠を越す」。
  • dehydrationB2
    名詞脱水Camels can survive severe dehydration. de-(取り去る)+hydr(水)。形容詞 dehydrated、反対は hydration。
  • desertA2
    名詞砂漠Few animals can live in the desert. アクセントは前(デザート)。dessert(デザート=菓子)は後ろにアクセント、s が2つ。
  • conserveB2
    動詞節約する、保存するCamels conserve water by sweating less. 名詞 conservation(保護・保全)。energy conservation(省エネ)は頻出。
  • evaporationB2
    名詞蒸発Sweating cools the body by evaporation. 動詞 evaporate。汗が蒸発するときに熱を奪う=気化熱の仕組み。
  • tolerateB2
    動詞耐える、許容するCamels can tolerate a large loss of body water. 名詞 tolerance。lactose intolerance(乳糖不耐症)のように否定形でも頻出。

4コマでわかる

「ラクダのこぶには水が入っている」はウソ。中身は脂肪、砂漠で生きる本当の秘密は"体温"にあったの4コマ漫画
「ラクダのこぶには水が入っている」はウソ。中身は脂肪。1950年代にサハラ砂漠でラクダを調べた研究者によると、ラクダは昼に体温をぐっと上げて汗を減らし、夜に熱を逃がしていたらしい。水の節約の主役は"体温"だった。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Schmidt-Nielsen et al. (1957) Body temperature of the camel and its relation to water economy, American Journal of Physiologydoi.org
  2. Schmidt-Nielsen et al. (1956) Water balance of the camel, American Journal of Physiologydoi.org
  3. Schmidt-Nielsen (1959) The physiology of the camel, Scientific Americandoi.org