「ラクダのこぶには水が入っている」はウソ。中身は脂肪、砂漠で生きる本当の秘密は"体温"にあった

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ラクダのこぶには、水がたくわえられている
こぶの中身は主に脂肪。ラクダが水なしで長く過ごせるのは、体温の調節や脱水への強さのおかげ。
- 対象
- ひとこぶラクダ
- 規模
- 少数の個体を長期観察
- 研究の種類
- 野外での生理学実験
- 確かさ
- ★★★☆☆
ラクダのこぶの中身は脂肪で、水のタンクではない。砂漠で水を節約できる秘密は、昼に体温を上げて汗を減らす仕組みや、脱水に強い体にあった。
ひとことで言うとこぶの中身は"あぶら"。水の節約は体温の上げ下げで!
砂漠を何日も旅するラクダ。その背中のこぶには、たっぷりの水がたくわえられている――。
子どものころ、そう思っていた人は多いのではないでしょうか。絵本やアニメでも、こぶを「水筒」のように描いたものがあります。
でも、これはウソです。ラクダのこぶの中身は、主に脂肪。では、ラクダはどうやって水の少ない砂漠を生き抜いているのでしょうか。
01こぶは「水筒」ではなく「お弁当箱」
ラクダのこぶは、脂肪のかたまりです。食べ物が少ないときには、この脂肪をエネルギーとして使います。栄養状態が悪くなると、こぶは小さくしぼんだり、横に倒れたりします。いわば、背中に背負ったお弁当箱です。
「でも、脂肪を燃やすと水ができるんじゃないの?」と思った人は鋭いです。たしかに、脂肪が体の中で分解されると水が生まれます。ところが、脂肪を燃やすには酸素が必要で、そのためにたくさん呼吸をすると、吐く息から水分が逃げていきます。米国の生理学者クヌート・シュミット=ニールセンは、こうした計算から、こぶの脂肪は水の供給源としてはほとんど役に立たないと論じました。
02サハラ砂漠でラクダを測った研究者
03秘密1:昼は体温を"上げて"汗を節約
私たち人間は、暑くなると汗をかいて体温を一定に保ちます。でも汗は水です。砂漠で汗をかき続けたら、すぐに水がなくなってしまいます。
ラクダは違います。水が足りないとき、ラクダは昼の間、体温が上がるのを"がまん"します。体温が上がれば、そのぶん汗をかかずにすみます。そして、涼しい夜の間に、たまった熱を外に逃がして体温を下げるのです。

さらに、体温が高いと、外の気温との差が小さくなり、外から入ってくる熱も減ります。ふさふさの毛も、強い日差しの熱をさえぎる役目をしていると考えられています。
04秘密2:脱水に強く、一気に飲める
ラクダは、人間なら命に関わるほどの水分を失っても耐えられることが知られています。そして水場にたどり着くと、短時間で大量の水を一気に飲み、失った水分を取り戻します。
こぶの脂肪が背中の1か所に集まっていることにも、意味があると考えられています。もし脂肪が全身の皮膚の下に広がっていたら、毛布のように熱を閉じこめてしまいます。脂肪を背中に集めることで、体のほかの部分から熱を逃がしやすくしているのかもしれません。
05なぜ「こぶ=水」と思われたのか
- ラクダは「水なしで何日も歩ける」ことで有名で、どこかに水をためていると考えやすかった
- こぶがぷっくりふくらんでいて、水筒のように見える
- 「脂肪を燃やすと水ができる」という話が、半分だけ正しく伝わった
ラクダのすごさは本物です。ただ、その秘密は背中のタンクではなく、体全体の仕組みにありました。
06まとめ
- ラクダのこぶの中身は脂肪で、水のタンクではない
- 脂肪から水はできるが、呼吸で失う水と差し引きするとほとんど得にならない
- 水を節約する秘密は、昼に体温を上げて汗を減らす仕組みと、脱水への強さ
判定は「ウソ」。ラクダは背中に水筒ではなく、体全体に"砂漠仕様"の省エネ技術を積んでいたのです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSome children's books show a camel's hump as a water tank, but it is actually mostly fat.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many people think a camel's hump is full of water. This is not true. The hump is mostly fat. Camels use this fat for energy when there is little food.
So how do camels live in the desert without much water? During the hot day, they let their bodies get warmer, so they sweat less. At night, the heat goes out of their bodies.
64 words ・ CEFR A2
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多くの人は、ラクダのこぶには水がいっぱい入っていると思っています。これは本当ではありません。こぶの中身はほとんどが脂肪です。ラクダは食べ物が少ないとき、この脂肪をエネルギーとして使います。
では、ラクダはどうやって水の少ない砂漠で生きているのでしょうか。暑い昼の間、ラクダは体が温まるのをそのままにするので、汗をあまりかきません。夜になると、熱が体から外へ出ていきます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
こぶの中身と、ラクダが砂漠で水を節約する方法を説明しているので B。
Q2. What is mostly inside a camel's hump?
The hump is mostly fat. とあるので C。
Q3. In this passage, "sweat" means ...
sweat は「汗をかく」。暑いときに皮膚から水分が出ることなので A。
Some children's books show a camel's hump as a water tank, but it is actually mostly fat. Camels use this fat as an energy store when food is scarce. Some people point out that burning fat produces water. However, burning fat also requires oxygen, and the extra breathing causes water to be lost from the lungs.
So the hump is not a useful source of water. In the 1950s, researchers studied camels in the Sahara Desert. They found that thirsty camels let their body temperature rise during the day instead of sweating, and then lose the stored heat during the cool night. Camels can also survive losing a large amount of body water.
113 words ・ CEFR B1
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一部の子ども向けの本はラクダのこぶを水のタンクのように描いていますが、実際の中身はほとんどが脂肪です。ラクダは食べ物が少ないとき、この脂肪をエネルギーのたくわえとして使います。脂肪を燃やすと水ができる、と指摘する人もいます。しかし、脂肪を燃やすには酸素も必要で、そのために呼吸が増えると、肺から水分が失われます。
そのため、こぶは役に立つ水の供給源ではないのです。1950年代、研究者たちはサハラ砂漠でラクダを調べました。その結果、水の足りないラクダは、汗をかく代わりに昼間は体温が上がるのにまかせ、涼しい夜の間にためた熱を逃がしていることがわかりました。ラクダはまた、体の水分を大量に失っても生き延びることができます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
こぶの中身は脂肪で、体温調節や脱水への強さで水を節約していると述べているので D。
Q2. Why is the hump not a useful source of water?
the extra breathing causes water to be lost from the lungs とあり、差し引きでほとんど得にならないので A。
Q3. Why do thirsty camels let their body temperature rise during the day?
instead of sweating とあり、体温上昇を許すことで汗による水の消費を減らしているので B。
A camel's hump can shrink and even tip over to one side when the animal has gone without enough food. The reason is that it stores fat, not water. Burning fat does release water, and this fact has helped keep the old belief alive. The physiologist Knut Schmidt-Nielsen saw the problem.
To burn fat, an animal needs oxygen, and the extra breathing loses water from the lungs, largely canceling out the gain. In the 1950s, Schmidt-Nielsen and his colleagues studied camels in the Sahara. Their reports from 1956 and 1957 described dehydrated camels letting their body temperature climb substantially during the day and drop sharply at night.
By storing heat in this way, the animals avoided sweating it off and saved a great deal of water. A hotter body also took in less heat from the surroundings. The camels could lose a large share of their body water and survive, then drink huge amounts quickly once water was available.
Only a small number of animals were studied in that early work. One more idea is still a hypothesis. Keeping fat in the hump instead of spreading it under the skin may help heat escape from the rest of the body.
200 words ・ CEFR B2
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ラクダのこぶは、十分な食べ物をとれずにいると、しぼんだり横に倒れたりすることさえあります。こぶにたくわえられているのは水ではなく脂肪だからです。脂肪を燃やすと確かに水が生まれ、この事実が古い思いこみを生きながらえさせてきました。生理学者のクヌート・シュミット=ニールセンは、そこにある問題に気づきました。
脂肪を燃やすには酸素が必要で、そのための余分な呼吸によって肺から水分が失われ、得た水はほぼ打ち消されてしまうのです。1950年代、シュミット=ニールセンと同僚たちは、サハラ砂漠でラクダを調べました。1956年と1957年の報告では、脱水状態のラクダが昼間は体温を大きく上昇させ、夜には急に下げる様子が記録されています。
こうして熱をためこむことで、ラクダは汗で熱を逃がさずにすみ、大量の水を節約していました。また、体温が高いと、周囲から入ってくる熱も少なくなりました。ラクダは体の水分を大きく失っても生きのび、水が手に入ると短時間で大量に飲みました。
この初期の研究で調べられたのは、少数の個体でした。さらにもう一つ、まだ仮説にとどまる考えがあります。脂肪を皮膚の下に広げずにこぶに集めておくことが、体のほかの部分から熱を逃がしやすくしているのかもしれないのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
こぶは脂肪で水分はなく、本当の秘密は体温を上下させて汗を節約することと脱水に耐えることだと述べているので C。
Q2. What did dehydrated camels do in the Sahara studies?
letting their body temperature climb substantially during the day and drop sharply at night とあるので D。
Q3. Which idea does the author present as a hypothesis?
One more idea is still a hypothesis. のあとに、脂肪をこぶに集めると熱が逃げやすくなるかもしれないと述べているので B。
重要単語
- humpB2名詞(ラクダの)こぶA camel's hump is full of fat.
道路の「段差(speed hump)」にも使う。get over the hump は「峠を越す」。 - dehydrationB2名詞脱水Camels can survive severe dehydration.
de-(取り去る)+hydr(水)。形容詞 dehydrated、反対は hydration。 - desertA2名詞砂漠Few animals can live in the desert.
アクセントは前(デザート)。dessert(デザート=菓子)は後ろにアクセント、s が2つ。 - conserveB2動詞節約する、保存するCamels conserve water by sweating less.
名詞 conservation(保護・保全)。energy conservation(省エネ)は頻出。 - evaporationB2名詞蒸発Sweating cools the body by evaporation.
動詞 evaporate。汗が蒸発するときに熱を奪う=気化熱の仕組み。 - tolerateB2動詞耐える、許容するCamels can tolerate a large loss of body water.
名詞 tolerance。lactose intolerance(乳糖不耐症)のように否定形でも頻出。
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「ラクダのこぶには水が入っている」はウソ。中身は脂肪。1950年代にサハラ砂漠でラクダを調べた研究者によると、ラクダは昼に体温をぐっと上げて汗を減らし、夜に熱を逃がしていたらしい。水の節約の主役は"体温"だった。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Schmidt-Nielsen et al. (1957) Body temperature of the camel and its relation to water economy, American Journal of Physiologydoi.org
- Schmidt-Nielsen et al. (1956) Water balance of the camel, American Journal of Physiologydoi.org
- Schmidt-Nielsen (1959) The physiology of the camel, Scientific Americandoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










