ウソ?ホント?検証ビミョー

「怖い話を聞くと体温が下がる」は半分ホント。冷えていたのは"体の中"ではなく指先と鼻先だった

「怖い話を聞くと体温が下がる」は半分ホント。冷えていたのは"体の中"ではなく指先と鼻先だった

読む前に予想してみよう!

怖い話を聞くと、体の中心の体温がぐっと下がる

研究カード(どんな研究?)
対象
健康な成人・ラット
規模
数十人規模の実験+動物実験
研究の種類
実験研究
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

怖さやストレスで指先や鼻先の皮膚の温度が下がることは、皮膚温を測る研究で確かめられている。ただ体の中心の温度はほとんど下がらない。

ひとことで言うと怖いと手や鼻の先が冷える。でも体の中までは冷えていないよ!

もくじ
  1. 怖いと「手の血管」がキュッと縮む
  2. サーモグラフィーで見えた「冷え」
  3. でも「体の中」は冷えていない
  4. 「怖い」だけでは冷えないことも
  5. なぜ「怪談で涼しくなる」と言われるのか
  6. まとめ

夏といえば怪談。暗い部屋で怖い話を聞いていると、背筋がゾクッとして、なんだか涼しくなった気がしますよね。

日本では昔から、夏の夜に怪談を楽しむ文化があります。「怖い話で涼をとる」――。でも、これって本当に体が冷えているのでしょうか?

答えは「場所による」。冷えるところと、冷えないところがあったのです。

01怖いと「手の血管」がキュッと縮む

怖さや緊張を感じると、体は「戦うか逃げるか」のモードに入ります。心臓がドキドキし、筋肉に血液を送る準備をします。

このとき、体の端っこ、つまり手や足の先、鼻の先などの皮膚の血管は、キュッと縮みます。万一けがをしたときの出血を減らす備え、とも考えられている反応です。

血管が縮むと、皮膚に流れる温かい血液が減ります。その結果、皮膚の温度が下がるのです。

02サーモグラフィーで見えた「冷え」

別の研究では、感情を揺さぶる写真を見せたときに、鼻の先の温度が下がることが報告されています。面白いことに、これは不快な写真だけでなく、楽しい写真でも起こりました。つまり鼻先の冷えは、「怖さ」そのものより「ドキドキの強さ」を表しているようです。

怖さやストレスで冷えやすいのは、指先や鼻先などの「体の端」
怖さやストレスで冷えやすいのは、指先や鼻先などの「体の端」

03でも「体の中」は冷えていない

ここが大事なポイントです。

皮膚の温度が下がっても、体の中心の温度(深部体温)はほとんど変わりません。ネズミを使った研究では、怖い状況に置かれたネズミのしっぽや足の温度は大きく下がった一方、体の中の温度はむしろ上がっていました。緊張して体が「戦闘準備」に入ると、熱が作られるからだと考えられます。

人の研究でも、ストレスで深部体温がわずかに下がったという報告はあるものの、変化は小さいものです。

04「怖い」だけでは冷えないことも

実は、人の研究では怖い映画を見せても、手の温度がはっきり下がらなかったという報告もあります。一方で、自分について答えにくい質問をされるような「身に迫る緊張」のときには、手の温度が下がりました。

画面の向こうの怖さより、自分の身に関わる緊張のほうが、体を冷やしやすいのかもしれません。怪談でゾクッとするかどうかも、話の上手さや聞く人の入り込み具合で変わりそうです。

05なぜ「怪談で涼しくなる」と言われるのか

怖いとき、私たちはゾクッとする寒気を感じます。鳥肌が立ち、背筋がこわばる。この感覚は、寒いときの体の反応とよく似ています。だから「怖い=涼しい」と結びつきやすいのでしょう。

江戸時代には、夏に怪談の芝居が上演されるなど、怪談は夏の娯楽として親しまれてきました。体の端が冷え、ゾクッとした感覚が「涼しさ」として楽しまれてきた――そう考えると、昔の人の知恵もなかなか科学的です。

06まとめ

  • 怖さやストレスで、指先や鼻先の皮膚温度は下がる
  • でも体の中心の温度はほとんど変わらない。ネズミではむしろ上がった
  • 冷えやすいのは「怖さ」より「ドキドキの強さ」や身に迫る緊張

怪談で涼しくなるのは「半分ホント」。冷房の代わりにはならないけれど、夏の夜の楽しみとしては、科学的にもちゃんと理由がありそうです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerJapanese people have long enjoyed ghost stories in summer, saying that fear helps them feel cool. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Japanese people have long enjoyed ghost stories in summer, saying that fear helps them feel cool. Is there any science behind this? When we feel fear or stress, the body prepares to fight or run away. At the same time, blood vessels in the skin of our hands, feet and nose become narrower, so less warm blood reaches them.

In a study using a stressful speech task, the temperature of people's fingertips dropped, while the skin near the chest hardly changed. However, the body's core temperature, the temperature deep inside, does not fall much. In fact, when rats were placed in a frightening situation, their tails cooled but their inner body temperature actually rose.

114 words ・ CEFR B1

和訳を見る

日本人は昔から、恐怖が涼しさを感じさせてくれると言って、夏に怪談を楽しんできました。これには何か科学的な根拠があるのでしょうか。恐怖やストレスを感じると、体は戦うか逃げるかの準備をします。同時に、手や足、鼻の皮膚の血管が細くなり、そこに届く温かい血液が減ります。

ストレスのかかるスピーチ課題を使った研究では、人々の指先の温度は下がった一方、胸のあたりの皮膚はほとんど変わりませんでした。しかし、体の深い部分の温度である深部体温はあまり下がりません。実際、ネズミを怖い状況に置いたところ、しっぽは冷えましたが、体の中の温度はむしろ上がったのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What happens to the body when we feel fear or stress?

Q2. What did the study using a speech task find?

Q3. What does the rat experiment suggest?

重要単語

  • core temperatureC1
    名詞(句)深部体温(体の中心の温度)Core temperature stays around 37 degrees. core は「芯・中心」。core values「中心的な価値観」など比喩でも頻出。
  • skin temperatureB1
    名詞(句)皮膚温Skin temperature can drop when you are stressed. core temperature と対で覚えると理解しやすい。
  • vasoconstrictionC1
    名詞血管収縮Fear causes vasoconstriction in the hands. vaso-(血管)+constriction(締めつけ)。反対は vasodilation(血管拡張)。
  • thermographyC1
    名詞熱画像撮影(サーモグラフィー)Thermography shows heat as colors. thermo-(熱)+-graphy(記録)。thermometer(温度計)と同じ thermo-。
  • goosebumpsB2
    名詞鳥肌Scary stories give me goosebumps. 直訳は「ガチョウのぶつぶつ」。give ~ goosebumps「~をゾクッとさせる」。
  • arousalC1
    名詞(感情の)興奮、覚醒The nose cools as emotional arousal increases. 動詞 arouse(呼び起こす)。arouse interest「興味をかき立てる」は入試頻出。

4コマでわかる

「怖い話を聞くと体温が下がる」は半分ホント。冷えていたのは"体の中"ではなく指先と鼻先だったの4コマ漫画
夏の怪談で「ゾッとして涼しくなる」は、半分ホントらしい。ストレスを感じると、指先や鼻先の皮膚の温度が下がることが皮膚温の測定で確かめられている。ただし体の中心の体温はあまり下がらず、ネズミでは逆に上がっていた。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Vinkers et al. (2013) The effect of stress on core and peripheral body temperature in humans, Stressdoi.org
  2. Rimm-Kaufman & Kagan (1996) The psychological significance of changes in skin temperature, Motivation and Emotiondoi.org
  3. Kosonogov et al. (2017) Facial thermal variations: A new marker of emotional arousal, PLOS ONEdoi.org
  4. Vianna & Carrive (2005) Changes in cutaneous and body temperature during and after conditioned fear to context in the rat, European Journal of Neurosciencedoi.org