ストレスで白髪が増えるのは本当? 犯人は「戦うか逃げるか」の神経だった。しかも戻ることも

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一度白くなった髪の毛が、途中からまた色を取り戻すことは絶対にない
1本の髪の色を根元まで測った研究で、白くなった髪が再び色づいている例が見つかっている。
- 対象
- マウス・成人
- 規模
- 動物実験+少人数の毛髪分析
- 研究の種類
- 実験研究・観察研究
- 確かさ
- ★★★☆☆
マウスでは強いストレスで交感神経が暴走し、髪の色を作る幹細胞が使い果たされて白髪になった。人の毛髪の分析では、ストレスが減ると白髪が色を取り戻す例も見つかった。
ひとことで言うとストレスで、髪の色を作る「もとの細胞」が使いきられちゃうことがある!
受験や仕事が大変だった時期に、ふと鏡を見たら白髪が増えていた。「ストレスで白髪が増える」は昔からよく言われますが、本当なのでしょうか。
答えを先に言うと、少なくともマウスでは、強いストレスが白髪を引き起こす仕組みが突き止められています。犯人はストレスホルモンではなく、興奮したときに働く交感神経。そして人でも、ストレスが減ると白髪に色が戻るケースがあることがわかってきました。ただし「一晩で真っ白」は、さすがに言いすぎです。
01髪の色は「色のもと細胞」が作っている
髪の毛の色は、毛根にある色素細胞(メラノサイト)が作るメラニンで決まります。この色素細胞は、毛根の近くに控えている色素幹細胞から、髪が生え変わるたびに補充されます。
西村栄美さん(現・東京大学)らは2005年、年を取ると白髪になるのは、この色素幹細胞がうまく維持されなくなり、数が減っていくからだと報告しました。さらに2009年には、放射線などでDNAが傷つくと、色素幹細胞が自分を増やす前に「完成品」の細胞になってしまい、ストックが失われることも示しています。白髪は、色の「在庫切れ」だったのです。
02マウスで見えた「ストレス→白髪」の道すじ
交感神経は、危険が迫ったときに「戦うか逃げるか」の準備をさせる神経です。強いストレスで交感神経が暴走すると、神経の末端からノルアドレナリンが一気に放出されます。すると、ふだんは静かに眠っている色素幹細胞がいっせいに目覚めて分裂し、色素細胞になりきって使い果たされてしまう。一度なくなった幹細胞は戻らないので、その後に生える毛はずっと白いままになりました。

03どんでん返し:白髪は戻ることがある
「一度白髪になったら終わり」と思われがちですが、人ではもう少し希望のある結果も出ています。
ただし、これは少人数の観察で、もともと白髪になりかけの「境目」にある髪で起きやすいと考えられています。長年の白髪がストレス解消で黒く戻る、とまでは言えません。
04まとめ
「ストレスで白髪が増える」は、マウスでは交感神経が色素幹細胞を使い果たすという形で実証されました。人では、ストレスが減ると白髪に色が戻る例も見つかっています。
白髪は、体が頑張った時期の記録なのかもしれません。見つけたら、自分をいたわるサインだと思ってみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerStress is widely thought to cause gray hair, and research in mice supports this idea.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Can stress turn your hair gray? In mice, the answer is yes. Hair gets its color from special cells. These cells come from stem cells near the root of the hair.
When mice were under strong stress, their nerves became very active. The stem cells were all used up, so new hair grew white. In humans, some gray hairs even got their color back when stress went down.
68 words ・ CEFR A2
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ストレスで髪は白くなるのでしょうか。マウスでは、答えはイエスです。髪は特別な細胞から色をもらっています。これらの細胞は、毛根の近くにある幹細胞から生まれます。
マウスが強いストレスを受けると、神経がとても活発になりました。幹細胞はすべて使い果たされ、新しく生えた毛は白くなったのです。人では、ストレスが減ったときに、白髪が色を取り戻した例さえありました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ストレスで白髪になる仕組み(マウス)と、人で色が戻る例を説明しているので D。
Q2. What happened to the stem cells in stressed mice?
The stem cells were all used up とあるので A。
Q3. In this passage, "used up" means ...
use up は「使い果たす」。幹細胞が残っていないので新しい毛が白くなった、という流れなので C。
Stress is widely thought to cause gray hair, and research in mice supports this idea. Hair color comes from pigment cells, which are supplied by stem cells near the hair root. In 2020, a team at Harvard found that stressed mice grew many white hairs. The cause was not stress hormones.
Graying still happened when the glands that make these hormones were removed, but it did not happen when sympathetic nerves were blocked. These nerves, which prepare the body to fight or run away, released a chemical that made all the stem cells activate at once and run out. In 2021, researchers studying human hair found that some gray hairs regained color during periods of lower stress.
117 words ・ CEFR B1
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ストレスで白髪になるとよく言われますが、マウスの研究はこの考えを支持しています。髪の色は色素細胞から来ており、色素細胞は毛根の近くにある幹細胞から補充されます。2020年、ハーバード大学のチームは、ストレスを受けたマウスに白い毛がたくさん生えることを発見しました。原因はストレスホルモンではありませんでした。
そのホルモンを作る腺を取り除いても白髪になりましたが、交感神経の働きを止めると白髪にはならなかったのです。体に戦うか逃げるかの準備をさせるこの神経が化学物質を放出し、すべての幹細胞をいっせいに目覚めさせて使い果たしてしまったのです。2021年、人の髪を調べた研究者たちは、ストレスが少ない時期に一部の白髪が色を取り戻していたことを発見しました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ストレスが白髪を起こす仕組み(2020年のマウス研究)と、人の白髪が戻る例(2021年)を紹介しているので B。
Q2. What prevented graying in the stressed mice?
it did not happen when sympathetic nerves were blocked とあるので C。腺を取り除いても白髪になった。
Q3. What can we infer from the 2021 human study?
ストレスが少ない時期に白髪が色を取り戻した例があるので、人では白髪が戻る場合もあると推論できる。D。
In 2020, a Harvard team put mice through stressors such as pain and restraint and then watched white hairs appear in the fur that grew back. Hair color depends on melanocytes, pigment cells that are replenished from a reservoir of melanocyte stem cells in the follicle. Earlier work by Nishimura and colleagues had shown that graying with age reflects a gradual failure to maintain these stem cells, and that DNA damage can force them to mature before they renew themselves.
The mice still went gray after their adrenal glands were removed and when they lacked immune function, but blocking sympathetic nerve signals prevented it. Under stress, those nerves released noradrenaline. Dormant stem cells began to multiply and differentiate until the reservoir was used up for good. Human evidence is thinner, and it has not been shown whether the same nerve pathway operates in people.
In 2021, Columbia researchers measured pigment along single hairs, which grow about one centimeter a month. Their observational study was small, and the hairs were probably close to turning gray anyway. Even so, they found gray hairs that had regained their color. In a few participants, graying lined up with stressful periods and recovery with calmer ones.
201 words ・ CEFR B2
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2020年、ハーバードのチームはマウスに痛みや拘束などのストレスを与え、その後に生えてきた毛に白い毛が現れるのを観察しました。髪の色はメラノサイトに左右されます。これは、毛包にあるメラノサイト幹細胞の蓄えから補充される色素細胞です。
西村さんらの以前の研究は、加齢による白髪がこの幹細胞を維持する力の徐々の衰えを反映していること、そしてDNAの損傷によって幹細胞が自分を増やす前に成熟させられてしまうことを示していました。副腎を取り除いても、免疫の働きがなくても、マウスは白髪になりましたが、交感神経の信号を遮断すると白髪は防がれました。ストレスを受けると、この神経がノルアドレナリンを放出しました。すると眠っていた幹細胞が増殖・分化を始め、ついには蓄えが永久に使い果たされたのです。人での証拠はもっと乏しく、同じ神経の経路が人でも働いているかどうかは、まだ示されていません。
2021年、コロンビア大学の研究者たちは、1か月に約1cm伸びる髪の1本1本に沿って色素を測定しました。この観察研究は小規模で、対象の髪はもともと白髪になりかけていた可能性が高いものでした。それでも、色を取り戻した白髪が見つかりました。少数の参加者では、白くなった時期がストレスの多い時期と、色が戻った時期が落ち着いた時期と重なっていました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
マウスでは仕組みが実証され、人の証拠は Human evidence is thinner とあるように乏しく限界がある、という構成なので A。
Q2. In the 2020 mouse study, what happened when the adrenal glands were removed?
The mice still went gray after their adrenal glands were removed とあるので B。
Q3. What does the author suggest about the human findings?
Their observational study was small とあり、人で同じ経路が働くかはまだ示されていないとも述べているので D。
重要単語
- gray hairA2名詞(句)白髪My father has some gray hair.
イギリス英語では grey。go gray「白髪になる」。1本なら a gray hair と数えられる。 - stem cellB2名詞(句)幹細胞Stem cells can make new cells.
stem は「茎・幹」。ほかの細胞のもとになる「幹」のイメージ。iPS細胞も幹細胞の一種。 - pigmentC1名詞色素Melanin is the pigment that colors hair.
名詞 pigmentation(色素沈着)。絵の具の「顔料」の意味もある。 - stressB1名詞ストレス、心身への負担Too much stress can affect your body.
be under stress「ストレスを受けている」。動詞で「強調する」の意味も頻出。 - reversibleC1形容詞元に戻せるSome graying may be reversible.
reverse(逆にする)+-ible。反対は irreversible(元に戻せない)。 - depleteC1動詞使い果たす、激減させるStress can deplete the stem cells.
名詞 depletion。ozone depletion「オゾン層の破壊」は環境問題の長文で頻出。
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「ストレスで白髪になる」はマウスで実証済み。犯人はホルモンではなく交感神経で、髪の色の“もと”になる幹細胞を一気に使い果たしてしまうらしい。一方、人の髪の分析では、ストレスが減ると白髪に色が戻る例も見つかったとか。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Zhang et al. (2020) Hyperactivation of sympathetic nerves drives depletion of melanocyte stem cells, Naturedoi.org
- Rosenberg et al. (2021) Quantitative mapping of human hair greying and reversal in relation to life stress, eLifedoi.org
- Nishimura, Granter & Fisher (2005) Mechanisms of Hair Graying: Incomplete Melanocyte Stem Cell Maintenance in the Niche, Sciencedoi.org
- Inomata et al. (2009) Genotoxic Stress Abrogates Renewal of Melanocyte Stem Cells by Triggering Their Differentiation, Celldoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










