「どうせ英語は無理」の正体。学習性無力感、50年後の“大逆転”と英語の苦手意識

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学習性無力感の研究者たちは、現在では「あきらめ」は経験によって学習されると考えている
提唱者自身が2016年に、受け身のあきらめはむしろ初期設定の反応で、学習されるのは「コントロールできる」という感覚だと考え直した。
- 対象
- 動物実験、小学生40人、日本人大学生など
- 規模
- 数十〜数百人規模
- 研究の種類
- 動物実験・心理実験・質問紙調査・総説
- 確かさ
- ★★★☆☆
無力感は失敗から“学習”されると考えられてきたが、50年後に提唱者自身が「あきらめは初期設定で、学ぶのはコントロール感」と考え直した。
ひとことで言うと「どうせ無理」はふつうの反応。「やればできた」を学ぶことで抜け出せる!
「どうせ英語は無理」「何回やっても単語が覚えられない」。英語が苦手な人の多くが、一度はこう感じたことがあるはずです。
心理学には、この状態を説明する有名な言葉があります。学習性無力感。何をしても結果が変わらない経験をくり返すと、「何をしてもムダだ」と学習してしまい、行動しなくなるという考え方です。
ところが、発見から約50年後、提唱者たち自身がこの説明を大きくひっくり返しました。
011967年の発見:「逃げられるのに逃げない」
(この実験は動物に苦痛を与えるもので、現在の倫理基準から見ると問題の大きい研究でもあります。)
この考え方は、うつ病の研究や教育にも大きな影響を与えました。「勉強ができない子は、失敗体験から無力感を学習している」という説明は、今でもよく聞きます。
022016年の大逆転:「あきらめ」は初期設定だった
これは英語学習者にとって、実は希望のある話です。「どうせ無理」と感じるのは、あなたの性格がダメだからではなく、つらい状況での脳のふつうの反応かもしれません(元になった研究は主に動物です)。そして抜け出すカギは、「自分の行動で結果が変わった」という経験を学ぶことにあるのです。

03「努力のせい」と考える子は粘り強かった
ドゥエックとレプッチの1973年の研究では、小学5年生40人に、解ける問題と解けない問題を出しました。すると、失敗の原因を「努力が足りなかった」と考える子どもたちは、失敗が続いても粘り強く取り組めた一方、「能力がない」と考える子どもたちは、解ける問題になっても解けなくなることがありました。
失敗を「変えられる原因(努力ややり方)」のせいにするか、「変えられない原因(能力)」のせいにするか。その違いが、あきらめやすさに関わっていたのです。
04日本の大学生の「英語のやる気喪失」
日本の英語教育でも、似た現象が報告されています。ファラウトらの2009年の研究では、日本の大学生約900人を対象に、英語学習のやる気を失った経験と現在の英語力の関係を調べました。その結果、やる気を失う原因のうち、学習者自身の内側の要因や、やる気を失ったときの反応のしかたが、長期的な英語の成果と関係していました。そして、英語が苦手な段階の学生ほど、落ち込んだ気持ちを自分で立て直すのが難しい傾向がありました(ある時点の調査なので、因果関係までは言えません)。
05まとめ
「どうせ英語は無理」は、脳がつらい状況で見せるふつうの反応かもしれません。そして抜け出すカギは、「自分の行動で結果を変えられた」という経験を少しずつ学ぶことです。
今日は、確実にクリアできる小さな課題を一つだけ決めて、明日それを達成してみましょう。その小さな「できた」が、脳のブレーキを外す第一歩です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerPsychologists once had a simple explanation for learners who feel English is hopeless.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Have you ever thought, "I can never learn English"? Psychologists call this kind of feeling "learned helplessness." They first thought people learned it from failing again and again.
But in 2016, the same researchers changed their idea. Giving up is the brain's natural first reaction. What we learn is the feeling "I can control this." So start with small tasks you can finish. Each success teaches your brain that your actions matter.
72 words ・ CEFR A2
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「自分には絶対に英語は身につかない」と思ったことはありませんか。心理学者は、このような気持ちを「学習性無力感」と呼びます。彼らは最初、人は失敗をくり返すことでそれを学習すると考えていました。
しかし2016年、同じ研究者たちが考えを変えました。あきらめるのは、脳の自然な最初の反応なのです。私たちが学ぶのは「自分はこれをコントロールできる」という感覚のほうです。だから、やり終えられる小さな課題から始めましょう。成功するたびに、自分の行動には意味があると脳が学んでいきます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
学習性無力感の考え方が変わったことと、そこから抜け出す方法がテーマなので B。
Q2. What did the researchers say in 2016?
Giving up is the brain's natural first reaction. What we learn is the feeling "I can control this." とあるので C。
Q3. In this passage, "giving up" means ...
give up は「あきらめる」=努力するのをやめること。正解は A。
Psychologists once had a simple explanation for learners who feel English is hopeless. They called it "learned helplessness," the idea that repeated failure teaches people that nothing they do matters.
In 2016, Maier and Seligman, who first proposed the idea, turned it around after reviewing fifty years of brain research. They concluded that becoming passive in a bad situation is the brain's default reaction. What we actually learn is a sense of control. How we explain failure also matters.
In a 1973 study of 40 fifth-grade children, those who blamed failure on a lack of effort kept trying. Those who blamed their ability sometimes gave up. So when a mistake happens in English, look at your method first. Little wins, one after another, can build that sense of control.
129 words ・ CEFR B1
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心理学者たちはかつて、英語は絶望的だと感じている学習者について、単純な説明をしていました。それは「学習性無力感」と呼ばれ、くり返し失敗すると、何をしてもムダだと人は学んでしまう、という考えでした。
2016年、この考えを最初に提唱したマイヤーとセリグマンは、50年分の脳の研究を見直したうえで、それをひっくり返しました。彼らは、悪い状況で受け身になるのは脳の初期設定の反応だと結論づけました。私たちが実際に学ぶのは、コントロールの感覚なのです。失敗をどう説明するかも重要です。
小学5年生40人を対象にした1973年の研究では、失敗を努力不足のせいにした子どもは取り組み続けました。自分の能力のせいにした子どもは、ときどきあきらめました。ですから、英語で間違えたときは、まず自分のやり方を見直しましょう。小さな「できた」を一つずつ重ねることで、そのコントロールの感覚を育てることができます。
4択リーディングクイズ
Q1. What did Maier and Seligman conclude in 2016?
becoming passive in a bad situation is the brain's default reaction. What we actually learn is a sense of control. とあるので D。
Q2. In the 1973 study, which children kept trying after failure?
those who blamed failure on a lack of effort kept trying とあるので B。
Q3. What can we infer from the passage?
努力(変えられる原因)のせいにした子は粘り強かったので、失敗を変えられるものとみなすことが学び続ける助けになると推測できる。正解は C。
"I'll never be good at English" is a familiar refrain, often explained through learned helplessness. In their 1967 experiments, Seligman and Maier found that dogs exposed to uncontrollable shocks later failed to escape even when escape was easy, and concluded that the animals had learned that their actions were futile. The studies are now also criticized on ethical grounds. In a 2016 paper drawing on five decades of neuroscience, Maier and Seligman concluded that the original theory had it backward: passivity in the face of prolonged adversity is the default response, and what is learned is the presence of control, detected by a region of the prefrontal cortex that inhibits that passive reaction.
Research on attributions points in a similar direction. Dweck and Reppucci found that children who attributed failure to insufficient effort persisted, whereas those who attributed it to lack of ability sometimes failed even on solvable problems. In Japan, Falout and colleagues surveyed about 900 university students and found that learners' internal factors and their ways of coping with demotivation were related to long-term English outcomes. However, that survey was cross-sectional, and the neuroscience comes mainly from animal studies, so direct classroom use goes beyond the data.
199 words ・ CEFR B2
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「自分は英語が得意になることはない」というのはよく聞く決まり文句で、学習性無力感を使って説明されることがよくあります。1967年の実験で、セリグマンとマイヤーは、コントロールできない電気ショックにさらされた犬が、その後、逃げるのが簡単なときでさえ逃げられなくなることを見いだし、動物たちは自分の行動がムダだと学習したのだと結論づけました。これらの研究は現在、倫理的な観点からも批判されています。50年分の神経科学をふまえた2016年の論文で、マイヤーとセリグマンは、元の理論は逆だったと結論づけました。長引く逆境に直面して受け身になるのは初期設定の反応であり、学習されるのはコントロールが存在するということで、それは受け身の反応を抑える前頭前野の一領域によって検出されるというのです。
原因帰属の研究も似た方向を指しています。ドゥエックとレプッチは、失敗を努力不足のせいにした子どもは粘り強く取り組んだ一方、能力不足のせいにした子どもは、解ける問題でさえ失敗することがあると見いだしました。日本では、ファラウトらが約900人の大学生を調査し、学習者の内的な要因と、やる気の喪失への対処のしかたが、長期的な英語の成果と関係していることを見いだしました。ただし、その調査は横断的なものであり、神経科学の知見は主に動物研究によるものなので、教室でそのまま使うのは、データが示す範囲を超えています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
学習性無力感の理論が逆転し、コントロール感が鍵だとする内容が中心なので A。
Q2. According to the 2016 paper, what is learned?
what is learned is the presence of control とあるので D。
Q3. Why does the author say applying the findings directly to classrooms "goes beyond the data"?
that survey was cross-sectional, and the neuroscience comes mainly from animal studies とあるので B。
重要単語
- helplessnessB2名詞無力感Repeated failure can lead to helplessness.
help + -less(~がない)+ -ness。learned helplessness「学習性無力感」は心理学の入試頻出テーマ。 - controlB1名詞・動詞制御・自分で何とかできることA sense of control helps you keep trying.
a sense of control「コントロール感」。be in control of ~「~を管理している」、out of control「制御不能で」。 - attributeC1動詞(原因を~に)帰するShe attributed her failure to lack of effort.
attribute A to B「A の原因を B に帰する」は入試頻出の語法。名詞 attribution「原因帰属」。名詞 attribute(属性)は前に強勢。 - demotivationC1名詞やる気の喪失Demotivation often begins in junior high school.
de-(否定・低下)+ motivation。SLA では日本の英語学習者研究でよく扱われるテーマ。 - persistB2動詞粘り強く続けるStudents who persist usually improve.
persist in ~「~に固執する・やり通す」。形容詞 persistent、名詞 persistence。 - passiveB2形容詞受け身のBecoming passive is a natural first reaction.
文法の「受動態」も passive voice。反対語 active。 - futileC1形容詞ムダな・無益なThe dogs acted as if escape were futile.
発音は /ˈfjuːtaɪl/(米 /ˈfjuːtl/)。a futile attempt「ムダな試み」。難関大の長文で出る語。
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「何をしてもムダ」と学んでしまう“学習性無力感”。ところが発見から50年後、提唱者たち自身が「あきらめは学習されたものではなく初期設定。学ぶべきは“自分でコントロールできる”という感覚の方」と考え直したらしい。
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- Seligman & Maier (1967) Failure to escape traumatic shock. Journal of Experimental Psychologydoi.org
- Maier & Seligman (2016) Learned helplessness at fifty: Insights from neuroscience. Psychological Reviewdoi.org
- Dweck & Reppucci (1973) Learned helplessness and reinforcement responsibility in children. Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
- Falout, Elwood & Hood (2009) Demotivation: Affective states and learning outcomes. Systemdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













