「怒られないため」の英語勉強は成績とほぼ無関係だった。74研究が分けた“やる気の種類”

読む前に予想してみよう!
「やらないと怒られるから」英語を勉強する人も、やる気がある分だけ成績が高い傾向がある
74研究のメタ分析では、ご褒美や罰のための「外的調整」と、罪悪感や恥からの「取り入れ的調整」は、成績とほぼ相関がなかった。
- 対象
- 第二言語・外国語の学習者
- 規模
- 74研究・220の推定値
- 研究の種類
- 多層メタ分析(相関研究の統合)
- 確かさ
- ★★★★☆
74研究の分析で、「楽しい」「大事だから」学ぶやる気は英語の成績と関係していた。「怒られないため」「恥をかかないため」は成績とほぼ無関係。
ひとことで言うと英語は「やらされ感」より「自分で大事だと思う」ほうが、成績とつながっていた!
「英語、なんで勉強してるの?」と聞かれたら、なんと答えますか。
「好きだから」「将来使いたいから」という人もいれば、「やらないと親に怒られるから」「テストで赤点を取ると恥ずかしいから」という人もいるはず。どれも立派な“やる気”に見えます。
ところが、2026年9月に発表された74本の研究をまとめた分析によると、この“やる気の種類”によって、英語の成績との関係はまったく違っていました。「怒られないため」「恥をかかないため」のやる気は、成績とほぼ関係がなかったのです。
01やる気には「グラデーション」がある
この研究の土台は、心理学の自己決定理論です(くわしくはやる気の「3つの栄養」の記事へ)。この理論では、やる気を「ある・ない」の2択ではなく、どれだけ自分で納得しているかのグラデーションで考えます。
- 外的調整:ご褒美がほしい、罰や叱られるのがイヤだから(例「親に言われたから」)
- 取り入れ的調整:罪悪感・恥・プライドから(例「やらないと気がとがめる」「できないと恥ずかしい」)
- 同一化的調整:自分にとって大事だと思えるから(例「留学に必要だから」)
- 統合的調整:英語が自分らしさの一部になっているから(例「英語を使う自分が自分だ」)
- 内発的動機づけ:英語そのものが楽しいから
上の2つはやらされ感の強い「コントロールされたやる気」、下の3つは自分で選んでいる「自律的なやる気」と呼ばれます。語学の研究にこの枠組みを本格的に持ちこんだ初期の代表例が、ノエルズ(Noels)さんらの2000年の論文です。
0274研究をまとめたら、くっきり分かれた
「外からのやる気」をひとまとめにすると、成績との相関は約0.17でプラスでした。でも中身を分けてみると、プラスの関係が見られたのは「大事だから」「自分らしいから」という自律的な側面だけ。やらされ感の強い2つは、統計的にゼロと区別できなかったのです。
また、関係の強さは学ぶ環境や授業の形態によって変わることも報告されています。

03どんでん返し:「楽しいから伸びる」とは限らない
ここで注意したいのは、この分析が相関をまとめたものだということ。そのため、因果関係までは確かめられません。
「楽しいから成績が上がる」のかもしれないし、逆に「成績が上がったから楽しくなった」のかもしれません。できるようになると楽しくなる、という流れは十分ありえます(自信と成績の“ぐるぐる”の記事も参考に)。
もうひとつ。やる気はふつうアンケート(質問紙)で測られます。別の動機づけ理論を使った過去のメタ分析では、アンケートで測ったやる気は「がんばるつもり」とは強く関係しても、テストなど客観的な成績との関係は控えめだったと報告されています(Al-Hoorie, 2018)。相関0.32も、成績のばらつきのうち説明できるのは1割ほどです。
とはいえ、20年以上前のメタ分析(Masgoret & Gardner, 2003)でも、やる気の強さは成績と安定して関係していました。今回の新しさは、“量”ではなく“種類”で分けたら差がくっきり出たところにあります。
ただし、「理由を書き換えれば成績が上がる」ことを実験で確かめたわけではありません。あくまで研究から考えられる、試しやすい工夫です。
04まとめ
英語の成績と結びついていたのは、「楽しい」「自分にとって大事」「英語が自分の一部」というやる気でした。「怒られないため」「恥をかかないため」のやる気は、成績とはほぼ無関係でした。
今日、英語の教科書を開くとき、ひと言だけ「自分は何のためにこれを読む?」と考えてみてください。その答えが、やる気の“種類”を変える第一歩になるかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerA team of researchers from China and Japan combined the results of 74 studies on language learners.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Why do you study English? Some students study because they enjoy it. Others study because they are afraid of their parents or teachers.
Researchers looked at 74 studies about this. Students who enjoyed English, or thought it was important for their own goals, tended to get better grades. But studying to avoid trouble or shame had almost no link to grades at all. So the reason you study may matter.
70 words ・ CEFR A2
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あなたはなぜ英語を勉強していますか?英語が楽しいから勉強する生徒もいます。親や先生がこわいから勉強する生徒もいます。
研究者たちは、このことについての74本の研究を調べました。英語を楽しんでいた生徒や、英語が自分の目標にとって大事だと考えていた生徒は、成績が良い傾向がありました。でも、怒られることや恥を避けるための勉強は、成績とほとんどまったく関係がありませんでした。だから、勉強する理由は大切なのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
勉強する理由(楽しいから・こわいから)と成績の関係を74本の研究で調べた話なので B。
Q2. Which students tended to get better grades?
Students who enjoyed English, or thought it was important for their own goals, tended to get better grades. とあるので C。
Q3. In this passage, "avoid" means ...
avoid trouble or shame は「怒られることや恥を避ける」。avoid は「避ける」なので A。
A team of researchers from China and Japan combined the results of 74 studies on language learners. They wanted to know whether the type of motivation matters as much as the amount. They used a well-known theory that sorts motivation from "forced" to "freely chosen."
Learners who studied because they found the language fun showed the strongest link with achievement. Learners who studied because the language was personally important, or part of who they are, also tended to do better.
But two kinds of motivation showed almost no link at all. One was studying for rewards or to avoid punishment. The other was studying because of guilt or fear of looking bad. So pressure alone did not go together with better grades.
122 words ・ CEFR B1
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中国と日本の研究チームが、語学学習者に関する74本の研究の結果をまとめました。彼らは、やる気の種類ごとに成績との関係が同じなのかを知りたいと考えました。そこで、やる気を「強制された」ものから「自由に選んだ」ものまで分類する有名な理論を使いました。
その言語が楽しいから勉強した学習者は、成績といちばん強い関係を示しました。その言語が自分にとって大事だから、あるいは自分らしさの一部だから勉強した学習者も、成績が良い傾向がありました。
しかし、2種類のやる気は、ほとんどまったく関係を示しませんでした。ひとつは、ご褒美のため、あるいは罰を避けるための勉強です。もうひとつは、罪悪感や、かっこ悪く見えることへの恐れからの勉強です。つまり、プレッシャーだけでは、よい成績と結びついていなかったのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the researchers want to find out?
They wanted to know whether each type of motivation relates to achievement in the same way. とあり、やる気の種類と成績の関係を調べたので A。
Q2. Which type of motivation showed the strongest link with achievement?
Learners who studied because they found the language fun showed the strongest link とあるので C。
Q3. What can we infer from the passage?
自分で選んだ理由(楽しい・大事・自分らしさ)は成績と関係し、ご褒美・罰・罪悪感はほぼ無関係だったと述べているので B。
Ask a room of high school students why they study English, and the answers range from "I want to understand my favorite YouTubers" to "My parents will be angry if I fail." A 2026 meta-analysis in Studies in Second Language Acquisition suggests those answers are not equal.
Researchers at Renmin University of China and Waseda University pooled 74 studies, which together supplied 220 estimates, and grouped motivation using self-determination theory. Enjoyment of the language had the strongest correlation with achievement, at about 0.32. Studying because English is part of one's identity came next, followed by studying because it serves a personal goal. Two forms of pressure, guilt and the wish to earn rewards or escape punishment, showed correlations close to zero.
The strength of these links also shifted with the learning context and the way classes were taught. Because the data are correlational, the direction of the effect cannot be settled here. Learners who are already doing well may simply come to enjoy the subject more. Motivation is usually measured with questionnaires, and an earlier meta-analysis found that such measures predicted planned effort much better than test scores. One easy step is to write down your own reason for studying.
200 words ・ CEFR B2
和訳を見る
高校生の教室で、なぜ英語を勉強するのかと聞けば、「好きなYouTuberの話がわかるようになりたい」から「落ちたら親に怒られる」まで、さまざまな答えが返ってくるでしょう。Studies in Second Language Acquisition に掲載された2026年のメタ分析は、それらの答えが同等ではないことを示唆しています。
中国人民大学と早稲田大学の研究者たちは、合わせて220の推定値をもたらす74本の研究を統合し、自己決定理論を使ってやる気を分類しました。その言語を楽しむことが、成績ともっとも強い相関(約0.32)を示しました。英語が自分らしさの一部だから勉強することがそれに続き、その次が、自分の目標に役立つから勉強することでした。2つの形のプレッシャー、つまり罪悪感と、ご褒美を得たい・罰を逃れたいという気持ちは、ゼロに近い相関しか示しませんでした。
これらの関係の強さは、学ぶ環境や授業の進め方によっても変わりました。データは相関なので、効果の向きはここでは決められません。すでに成績のよい学習者が、単にその教科を楽しむようになるのかもしれません。また、やる気はふつうアンケートで測られますが、以前のメタ分析では、そうした測り方は「がんばるつもり」に比べてテストの点数をずっと予測しにくいことがわかっています。簡単な一歩は、自分なりの勉強する理由を書き出すことです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
楽しさ・自分らしさ・自分の目標は成績と関係し、罪悪感やご褒美・罰のプレッシャーはゼロに近かったと述べているので B。D はアンケートが「テストの点数を予測しにくい」とあるだけで「役に立たない」とは言っていない。
Q2. According to the passage, which correlation was about 0.32?
Enjoyment of the language had the strongest correlation with achievement, at about 0.32. とあるので C。
Q3. Why does the author say the direction of the effect cannot be settled?
Because the data are correlational のあとに「すでに成績のよい学習者が楽しむようになるのかもしれない」とあり、逆向きの可能性を示しているので A。
重要単語
- motivationB1名詞やる気、動機づけHer motivation grew when she started watching English dramas.
motive(動機)+-ation。motivate A to do(A を~する気にさせる)の形も入試頻出。 - intrinsicC1形容詞内側からの、本来備わったIntrinsic motivation comes from enjoying the activity itself.
intrinsic value(本質的価値)のように使う。反対語 extrinsic とセットで覚える。 - extrinsicC1形容詞外側からのPrizes and grades are extrinsic rewards.
ex-(外)が目印。in-(内)の intrinsic と対で、心理学・教育系の長文で頻出。 - autonomyC1名詞自律性、自分で決められることStudents need some autonomy in choosing what to read.
auto(自分)+nomos(法・ルール)で「自分でルールを決める」。形容詞は autonomous(自律的な)。 - correlationB2名詞相関、関連There is a correlation between sleep and test scores.
correlation does not imply causation(相関は因果を意味しない)は研究系長文の決まり文句。 - punishmentB1名詞罰Fear of punishment is not a good reason to learn.
動詞は punish(罰する)。reward and punishment(賞と罰)のセットで覚える。 - guiltB2名詞罪悪感He studied out of guilt because he had skipped class.
形容詞は guilty(罪悪感のある、有罪の)。feel guilty about ~ で「~に罪悪感を覚える」。
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英語を勉強する理由が「怒られないため」「恥をかきたくないから」だと、成績とはほぼ関係がなかったらしい。74本の研究をまとめると、成績と結びついていたのは「楽しいから」「自分にとって大事だから」というやる気だった。
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- Jiang, Wang & Oga-Baldwin (2026) The relationship between self-determination theory–based L2 motivation and L2 achievement: A multilevel meta-analysis, Studies in Second Language Acquisitiondoi.org
- Ryan & Deci (2000) Intrinsic and Extrinsic Motivations: Classic Definitions and New Directions, Contemporary Educational Psychologydoi.org
- Noels, Pelletier, Clément & Vallerand (2000) Why Are You Learning a Second Language? Motivational Orientations and Self-Determination Theory, Language Learningdoi.org
- Masgoret & Gardner (2003) Attitudes, Motivation, and Second Language Learning: A Meta-Analysis of Studies Conducted by Gardner and Associates, Language Learningdoi.org
- Al-Hoorie (2018) The L2 motivational self system: A meta-analysis, Studies in Second Language Learning and Teachingdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。







