語学・英語学習ホント

外国語の「なまり」は音で、母語の「なまり」はイントネーションでバレていた

外国語の「なまり」は音で、母語の「なまり」はイントネーションでバレていた

読む前に予想してみよう!

外国に長く住んでいても、母語の発音が「ネイティブっぽくない」と思われることはない

研究カード(どんな研究?)
対象
英国出身でオーストリア在住のバイリンガル34人+単一言語話者、評価者141人
規模
約1万8千件の評価
研究の種類
知覚実験(聞き取り評価+自由記述の分析)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

オーストリアに移住した英国人34人の英語とドイツ語を聞き比べ。ドイツ語は個々の音で、母語の英語はイントネーションで「ネイティブっぽくない」と判断された。

ひとことで言うと外国語は「音」で、自分の母語は「話し方の上がり下がり」でなまりに気づかれる!

もくじ
  1. 外国暮らしで、母語まで少し変わる?
  2. 外国語のなまりは「r」で気づかれた
  3. なぜ逆になるのか
  4. まとめ:英語学習者へのヒント

英語を話していて「なんか日本人っぽい発音だな」と言われたとき、原因は個々の音でしょうか、それとも話し方のリズムや抑揚でしょうか?

2026年9月25日、発音研究の専門誌『Journal of Second Language Pronunciation』に、オーストリアのグラーツ大学のコルンダー(Kornder)さんが、この疑問に答える論文を発表しました。

対象は、大人になってからオーストリアに移住したイギリス出身の34人。彼らの英語(母語)とドイツ語(外国語)を、合計141人の聞き手に評価してもらいました。結果、外国語は「音」で、母語は「イントネーション」で、ネイティブらしくないと判断されていたのです。

01外国暮らしで、母語まで少し変わる?

まず、ドイツ語がネイティブらしくないと判断されたのは予想どおり。おもしろいのは英語のほうです。

彼らの英語は大半がネイティブらしいと評価されたものの、イギリスに住む英語話者と比べると、平均でわずかにネイティブらしさが低いと判断されました。何年も外国語の中で暮らす人は、母語の発音にも小さな変化が起きることがある。これは「母語の発音の摩耗(L1 attrition)」と呼ばれ、近年注目されている現象です。

ただし、ずれの大きさはドイツ語(外国語)のほうがずっと大きい結果でした。

02外国語のなまりは「r」で気づかれた

では、聞き手は何を手がかりにしたのでしょう。自由記述のコメントを分類すると、はっきりした違いが出ました。

  • ドイツ語(外国語):コメントの約76%が個々の音について。最も多かったのは、ドイツ語ののどの奥で出す「r」が、英語っぽいrになっているという指摘
  • 英語(母語):コメントの約65%がイントネーションやリズムについて。「一本調子」「平らな感じ」「平叙文なのに語尾が上がる」など

英語の個々の音で目立ったのは、「minimal」の i が「ミーニマル」のように長く張った音に聞こえる、といった指摘でした。

外国語では「音」、母語では「抑揚」が、なまりの手がかりになっていた
外国語では「音」、母語では「抑揚」が、なまりの手がかりになっていた

03なぜ逆になるのか

研究では、こう説明されています。外国語では、そもそも個々の音が大きくずれているので、聞き手はまずそこに気づく。一方、母語の音はほとんど正確なので、残った小さな違い、つまり抑揚やリズムが目立ってくる、というわけです。

実際、英語の評価は聞き手どうしで意見が割れやすく、ドイツ語の評価はよく一致していました。「ほぼネイティブ」と「ネイティブ」の区別は、人間の耳にとっても難しいのです。

04まとめ:英語学習者へのヒント

この研究を英語学習に置きかえると、こう考えられます。

まだ発音に自信がない段階では、聞き手が最初に引っかかるのは個々の音(r と l、th など)。そこが整ってくると、次に目立つのはイントネーションやリズムです。

ただし、「なまり=通じない」ではありません。大事なのは伝わること。そのうえで、もっと自然に聞こえたいなら、「音」と「抑揚」の両方を意識してみると、上達の道すじが見えてくるかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen we hear someone speak, how do we decide whether they are a native speaker? 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

When we hear someone speak, how do we decide whether they are a native speaker? A researcher at the University of Graz studied 34 British people who had moved to Austria as adults and had lived there for about 13 years on average. They read sentences in English and German, and 141 listeners rated how native they sounded.

Their German was judged as non-native, mostly because of individual sounds such as the "r". Their English sounded native in most cases, but slightly less native than that of people living in Britain. Here, listeners mainly pointed to intonation and rhythm, such as a flat tone. This slight change in a first language is called L1 attrition.

115 words ・ CEFR B1

和訳を見る

誰かが話すのを聞いたとき、私たちはどうやってその人がネイティブスピーカーかどうかを判断しているのでしょうか。グラーツ大学の研究者が、大人になってからオーストリアに移り住み、平均約13年住んでいるイギリス人34人を調べました。彼らは英語とドイツ語で文を読み、141人の聞き手が、どれくらいネイティブらしく聞こえるかを評価しました。

彼らのドイツ語は、主に「r」のような個々の音のせいで、ネイティブではないと判断されました。彼らの英語はほとんどの場合ネイティブらしく聞こえましたが、イギリスに住む人の英語よりわずかにネイティブらしさが低いと判断されました。ここで聞き手が主に指摘したのは、平坦な調子などのイントネーションやリズムでした。このような母語のわずかな変化は「L1アトリション(母語の摩耗)」と呼ばれます。

4択リーディングクイズ

Q1. Who were the speakers in the study?

Q2. What did listeners mainly notice in the speakers' English?

Q3. What does "L1 attrition" refer to?

重要単語

  • accentB1
    名詞なまり、アクセントShe speaks English with a slight French accent. 「強勢(ストレス)」の意味もある。with a ~ accent「~なまりで」の形でよく使う。
  • nativeB1
    形容詞・名詞母語の、その土地生まれの(人)He is a native speaker of German. native speaker、native language のほか、native to ~「~原産の」も頻出。
  • intonationB2
    名詞イントネーション、抑揚Rising intonation can turn a sentence into a question. 動詞 intone。rising / falling intonation「上昇調/下降調」をセットで。
  • rateB1
    動詞評価する、格付けするListeners rated each voice on an 8-point scale. 名詞の「割合・料金」とは別の動詞用法。rating「評価、視聴率」も同じ仲間。
  • attritionC1
    名詞(徐々の)摩耗、減少Language attrition can happen after years abroad. ビジネスでは「人員の自然減」の意味でも使う。少しずつすり減るイメージ。
  • migrateB2
    動詞移住する、(鳥などが)渡るMany people migrate to cities for work. 名詞 migration、「移民」は immigrant(入ってくる)/ emigrant(出ていく)。
  • subtleB2
    形容詞微妙な、かすかなThere is a subtle difference between the two words. b は発音しない /ˈsʌtəl/。比較級 subtler、名詞 subtlety。
大人になってオーストリアに移住したイギリス人34人の英語とドイツ語を聞いてもらったら、ドイツ語のなまりは主にrなど個々の音で、母語の英語のなまりは主にイントネーションで気づかれたらしい。外国暮らしの人は、母語も少しだけネイティブらしさが低く評価された。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Kornder (2026) What makes speech sound non-native?, Journal of Second Language Pronunciationdoi.org
  2. de Leeuw, Schmid & Mennen (2010) The effects of contact on native language pronunciation in an L2 migrant setting, Bilingualism: Language and Cognitiondoi.org
  3. Chang (2012) Rapid and multifaceted effects of second-language learning on first-language speech production, Journal of Phoneticsdoi.org
  4. Munro & Derwing (1995) Foreign Accent, Comprehensibility, and Intelligibility in the Speech of Second Language Learners, Language Learningdoi.org