心理学ホント

やる気は「3つの栄養」で育つ。自分で選べる・できる・つながってる——自己決定理論の考え方

やる気は「3つの栄養」で育つ。自分で選べる・できる・つながってる——自己決定理論の考え方

読む前に予想してみよう!

やる気は「外からのごほうび」か「内からの楽しさ」の二択しかない

研究カード(どんな研究?)
対象
学生・社会人など
規模
多数の研究・40年分のメタ分析
研究の種類
理論+実験・調査・メタ分析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

やる気は、自律性(自分で選べる)・有能感(できる)・関係性(つながっている)の3つが満たされると育ちやすい。内発的なやる気は成果の"質"と関係していた。

ひとことで言うとやる気のもとは「自分で決める」「できた!」「仲間がいる」の3つ!

もくじ
  1. やる気を育てる「3つの栄養」
  2. やる気は「内か外か」の二択じゃない
  3. 40年分の研究が示した「質」と「量」
  4. まとめ

「やる気を出しなさい!」と言われて、本当にやる気が出た経験はありますか?

たぶん、ほとんどないと思います。むしろ言われるほど、やる気がしぼんでいく……。

それもそのはず。心理学者のエドワード・デシとリチャード・ライアンがつくった「自己決定理論」によると、やる気は命令でスイッチが入るものではなく、ある"栄養"がそろうと自然に育つものだからです。

01やる気を育てる「3つの栄養」

自己決定理論では、人には生まれつき3つの心理的な欲求があると考えます。

植物が水・光・土の栄養で育つように、やる気もこの3つで育つ、というイメージです。

02やる気は「内か外か」の二択じゃない

この理論のもうひとつの特徴は、やる気をグラデーションで考えることです。

  • 外的な理由:「怒られるから」「ごほうびがもらえるから」
  • 取り入れ:「やらないと恥ずかしいから」「罪悪感があるから」
  • 同一化:「自分の将来に大事だと思うから」
  • 統合:「これが自分らしい生き方だから」
  • 内発的:「純粋に楽しいから」

上に挙げたものほど「やらされ感」が強く、下にいくほど「自分ごと」になります。大事なのは、最初は外的な理由で始めたことでも、意味を理解するうちに「自分にとって大事だから」へと変わっていける、という点です。これを内在化と呼びます。

「やらされる」から「自分でやる」へ、やる気には段階がある
「やらされる」から「自分でやる」へ、やる気には段階がある

0340年分の研究が示した「質」と「量」

では、内からのやる気は、実際の成果とどう関係するのでしょう。

2014年、40年分の研究をまとめたメタ分析が発表されました。その結果、内発的なやる気は、とくに仕事の「質」(工夫が必要な作業、深い理解など)とよく結びついていました。一方、ごほうびなどの外からの刺激は、作業の「量」(単純な作業をどれだけこなすか)とより強く関係していました。

つまり、ごほうびが役に立たないわけではありません。ただ、深く考えたり、粘り強く工夫したりする場面では、「楽しい」「大事だ」という内側からのやる気が強い味方になる、ということです。

04まとめ

やる気が出ないのは、あなたの根性が足りないからではないかもしれません。3つの栄養のどれかが不足しているだけかもしれないのです。

「自分で選べているか」「できる感じがあるか」「誰かとつながっているか」。今日のやる気をチェックするときは、この3つを思い出してみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAccording to self-determination theory, developed by the psychologists Edward Deci and Richard Ryan, people… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

According to self-determination theory, developed by the psychologists Edward Deci and Richard Ryan, people have three basic psychological needs. The first is autonomy, the feeling that you choose your own actions. The second is competence, the feeling that you can do things well. The third is relatedness, the feeling of being connected to others. When these needs are met, motivation lasts longer and people tend to stay mentally healthy.

The theory also sees motivation as a range, from avoiding punishment at one end to true enjoyment at the other. Even something you start for outside reasons can become "your own" once you understand why it matters. A 2014 analysis of 40 years of research found that inner motivation was especially linked to the quality of work.

126 words ・ CEFR B1

和訳を見る

心理学者のエドワード・デシとリチャード・ライアンが作った自己決定理論によると、人には3つの基本的な心理的欲求があります。1つ目は自律性で、自分で行動を選んでいるという感覚です。2つ目は有能感で、うまくできるという感覚です。3つ目は関係性で、他の人とつながっているという感覚です。これらの欲求が満たされると、やる気は長続きし、人は心の健康を保ちやすくなります。

この理論はまた、やる気を、一方の端の「罰を避けるため」から、もう一方の端の「心から楽しいから」までの幅として捉えます。外からの理由で始めたことでも、それがなぜ大事なのかを理解すれば「自分のもの」になりえます。40年分の研究をまとめた2014年の分析では、内からのやる気は特に仕事の質と結びついていることがわかりました。

4択リーディングクイズ

Q1. What does "autonomy" mean in this passage?

Q2. What was inner motivation especially linked to in the 2014 analysis?

Q3. What does the passage suggest about things we start for outside reasons?

重要単語

  • autonomyC1
    名詞自律性(自分で選んでいる感覚)、自治Giving choices supports students' autonomy. auto(自分)+nomos(法)で「自分で決める」。形容詞 autonomous。autonomous car=自動運転車。
  • competenceB2
    名詞有能感(できるという感覚)、能力Small successes build a sense of competence. 形容詞 competent(有能な)。反対は incompetent。competition(競争)とは別語。
  • relatednessC1
    名詞関係性(つながっている感覚)Relatedness helps people stay motivated. related(関係のある)+-ness。心理学用語として自己決定理論で使われる。
  • internalizeC1
    動詞内在化する(自分のものとして取り込む)Students internalize values they understand. internal+-ize。名詞 internalization。反対は externalize。
  • well-beingB2
    名詞心身の健康・幸福Meeting basic needs supports well-being. 反対の意味で ill-being(不調)という語も研究で使われる。
  • intrinsicC1
    形容詞内発的な、本質的なIntrinsic motivation comes from enjoying the task itself. 反対語 extrinsic(外発的な)。intrinsic value=本質的価値。
  • thwartC1
    動詞妨げる、くじくBad weather thwarted our plans. be thwarted で「(計画などが)阻まれる」。frustrate とほぼ同義の硬い語。

動画でもっと知る

「やる気を出せ」と言われても出ないのは当たり前かも。心理学の自己決定理論では、やる気は「自分で選べる」「できる感じ」「つながってる感じ」の3つの栄養で育つと考える。勉強も部活も仕事も、この3つで見直せる。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Ryan & Deci (2000) Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being, American Psychologistdoi.org
  2. Vansteenkiste, Ryan & Soenens (2020) Basic psychological need theory: Advancements, critical themes, and future directions, Motivation and Emotiondoi.org
  3. Cerasoli, Nicklin & Ford (2014) Intrinsic motivation and extrinsic incentives jointly predict performance: A 40-year meta-analysis, Psychological Bulletindoi.org