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【慶應の入試に出た】ロシア語話者は「青」を速く見分ける。言葉が見え方を変える実験

【慶應の入試に出た】ロシア語話者は「青」を速く見分ける。言葉が見え方を変える実験

読む前に予想してみよう!

ロシア語話者の「青の見分けの速さ」は、言葉を使う別の課題を同時にさせても変わらなかった

研究カード(どんな研究?)
対象
ロシア語話者・英語話者
規模
数十人規模
研究の種類
実験研究(反応時間)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

水色と青を別の単語で呼ぶロシア語の話者は、その境目をまたぐ2色を、同じ側の2色より速く見分けた(英語話者にはこの差がなかった)。言葉は「見え方」に少しだけ影響するらしい。

ひとことで言うと色の名前がちがう言葉を話す人は、色の見分け方も少しちがうらしい!

もくじ
  1. ロシア語の「青」は2種類ある
  2. 「言葉を封じる」と、差が消えた
  3. ウォーフは「半分正しかった」
  4. まとめ

日本語では、信号の「青」は実際には緑に近い色ですよね。昔の日本語では、青と緑をはっきり分けない使い方が広くあったからだと言われます。

では、色の名前の分け方が違うと、色の「見え方」まで変わるのでしょうか? この疑問に、反応時間の実験で迫った有名な研究があります。

「言語が思考に及ぼす影響」は、2026年度の慶應義塾大学(文学部)の英語で長文のテーマになりました(代々木ゼミナール・河合塾の解答速報で確認)。言語学者ウォーフの名前とともに、入試で何度も登場する定番テーマです。

01ロシア語の「青」は2種類ある

英語では、水色も紺色もまとめて blue。ところがロシア語では、明るい青を「ガルボーイ」、暗い青を「シーニー」と呼び分けます。しかもこれは「水色」「紺色」のような細かい言い分けではなく、別々の基本色として扱われるのです。

02「言葉を封じる」と、差が消えた

この研究の本当にすごいところは、ここからです。

研究チームは、色を見分けながら数字の列を頭の中で覚えておく課題(言葉を使う課題)を同時にさせました。すると、ロシア語話者の「境目での有利さ」は消えてしまったのです。一方、図形の位置を覚える課題(言葉を使わない課題)を同時にしても、有利さは残りました。

つまり、言葉は「目の構造」を変えたのではなく、色を見ているその瞬間に、頭の中で言葉が働いて判断を助けているらしい、ということです。

言葉の「境目」が、色の境目を少しだけくっきりさせる
言葉の「境目」が、色の境目を少しだけくっきりさせる

03ウォーフは「半分正しかった」

「言語が思考を形作る」という考えは、サピア=ウォーフ仮説(言語相対性仮説)と呼ばれます。かつては「言語が思考を決定してしまう」という強い形で語られ、その後、批判も受けてきました。

2009年の総説では、色に関する研究をまとめて「ウォーフは半分正しかった」と表現されています。言葉は色の知覚に影響を与えるが、それは主に脳の左半球(言語をつかさどる側)で処理される右側の視野で強く出る、といった限定つきの影響だというのです。

ちなみに、「英語話者は時間を横に、中国語話者は縦にも考える」という2001年の有名な研究もありますが、その後の追試では再現しにくいという報告もあり、議論が続いています。

04まとめ

言葉は、世界の見え方を「決める」ほどではないけれど、判断の瞬間に少しだけ手助けしている。それが今のところの科学の答えです。

英語を学ぶとき、新しい単語は新しい「世界の切り分け方」でもあります。言葉が増えるたびに、見える世界も少しずつ細やかになっていくのかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerEnglish uses one word, blue, for both light and dark blue, but Russian treats them as two separate basic… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

English uses one word, blue, for both light and dark blue, but Russian treats them as two separate basic colors. Researchers from MIT, Stanford and other universities showed Russian and English speakers three blue squares and asked them to choose which of the bottom two matched the top one. Russian speakers were faster when the two colors crossed the border between their two blue words. English speakers showed no such difference.

Then the researchers asked the participants to remember a string of numbers while doing the task. This verbal task removed the Russian speakers' advantage, but a spatial task did not. This suggests that words help us judge colors at the moment we see them.

115 words ・ CEFR B1

和訳を見る

英語は水色と濃い青の両方に blue という1つの単語を使いますが、ロシア語はそれらを2つの別々の基本色として扱います。MITやスタンフォード大学などの研究者たちは、ロシア語話者と英語話者に3つの青い四角を見せ、下の2つのうちどちらが上の1つと同じかを選ばせました。ロシア語話者は、2つの色が2つの青の単語の境目をまたぐとき、より速く選べました。英語話者には、そのような差は見られませんでした。

次に研究者たちは、課題をしながら数字の列を覚えておくよう参加者に求めました。この言葉を使う課題はロシア語話者の有利さを消しましたが、空間的な課題では消えませんでした。これは、言葉が、色を見ているその瞬間に色の判断を助けていることを示唆しています。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the participants have to do in the main task?

Q2. Which task removed the Russian speakers' advantage?

Q3. What does the result suggest?

重要単語

  • linguistic relativityC1
    名詞(句)言語相対性(言語が思考に影響するという考え)Linguistic relativity suggests that language shapes thought. Sapir-Whorf hypothesis と同義。言語系長文の最頻出テーマで、strong / weak version の区別が問われる。
  • categoryB1
    名詞分類、カテゴリーLanguages divide colors into different categories. 動詞は categorize(分類する)。アクセントは CAT-e-go-ry(第1音節)。
  • discriminationB2
    名詞識別、見分けることThe task measured color discrimination. 「差別」の意味が有名だが、科学文では「識別」。discriminate A from B「AとBを見分ける」。多義語問題で頻出。
  • interferenceC1
    名詞干渉、妨害Verbal interference removed the effect. 動詞は interfere with ~(~を妨げる)。前置詞 with とセットで入試頻出。
  • perceiveB2
    動詞知覚する、気づくWe perceive colors differently in different light. 名詞 perception。per(完全に)+ceive(つかむ)。receive, conceive と同じ仲間。
  • obligatoryC1
    形容詞義務的な、必須のIn Russian, the distinction between two blues is obligatory. oblige(義務を負わせる)の形容詞。compulsory, mandatory が類義語で、言い換え問題に出る。
  • replicateC1
    動詞(実験・結果を)再現するOther researchers could not replicate the result. 名詞 replication(追試)。replication crisis(再現性の危機)は近年の科学系長文の重要テーマ。

動画でもっと知る

4コマでわかる

【慶應の入試に出た】ロシア語話者は「青」を速く見分ける。言葉が見え方を変える実験の4コマ漫画
ロシア語は「水色」と「青」を別の色として呼び分けるので、話者は境目をまたぐ2色を、同じ側の2色より速く見分けたらしい(英語話者にこの差はなし)。でも数字を覚えるなど言葉を使う課題を同時にさせると、その差は消えた。言葉は世界の見え方を少し変える。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Winawer et al. (2007) Russian blues reveal effects of language on color discrimination, PNASdoi.org
  2. Regier & Kay (2009) Language, thought, and color: Whorf was half right, Trends in Cognitive Sciencesdoi.org
  3. Boroditsky (2001) Does language shape thought? Mandarin and English speakers' conceptions of time, Cognitive Psychologydoi.org