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誰にも読めない本「ヴォイニッチ手稿」、統計で調べたら"ただのデタラメ"ではなさそうだった

誰にも読めない本「ヴォイニッチ手稿」、統計で調べたら"ただのデタラメ"ではなさそうだった

読む前に予想してみよう!

ヴォイニッチ手稿は、すでに専門家によって解読されている

研究カード(どんな研究?)
対象
ヴォイニッチ手稿(イェール大学バイネキ図書館所蔵)
規模
写本1冊
研究の種類
統計・情報理論・古文書学による分析
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

600年前の羊皮紙に、未知の文字でびっしり書かれた本。まだ誰も読めないが、統計分析では「本物の言語に近い構造がある」という結果が出ている。

ひとことで言うと世界一なぞの本は、まだ読めない。でも中身はでたらめじゃないかも。

もくじ
  1. 手稿の「わかっていること」
  2. 統計で見ると「言語っぽい」
  3. 一方で「普通の言語と違う」点も
  4. どんでん返し:それでも「でっちあげ説」は残る
  5. まとめ

見たことのない植物の絵。星の図。そして、どの言語とも一致しない文字でびっしり埋め尽くされたページ――。

アメリカ・イェール大学の図書館に保管されているヴォイニッチ手稿は、「世界でいちばん謎めいた本」と呼ばれています。100年以上、暗号の専門家や言語学者が挑んできましたが、いまだに1文も確実には読めていません。

でも、科学者たちは「読めない本」から、少しずつ手がかりを引き出しています。

01手稿の「わかっていること」

名前の由来は、1912年にこの本を手に入れた古書商ウィルフリッド・ヴォイニッチ。それ以前には、16世紀末〜17世紀に神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の周辺にあったと伝えられるなど、持ち主の歴史がかなりたどれます。

材料の分析も進んでいます。羊皮紙・インク・顔料は15世紀前半のものと考えられ、羊皮紙の放射性炭素年代は1404〜1438年ごろとされます。つまり、「20世紀にヴォイニッチ本人がでっちあげた」という説は、ほぼ否定されました。

植物・天体・薬草などの絵が多く、中身は「本草書」に似ているとも言われる
植物・天体・薬草などの絵が多く、中身は「本草書」に似ているとも言われる

02統計で見ると「言語っぽい」

読めなくても、単語の出方や並び方は数えられます。

また、よく使う単語ほど何倍も多く出てくる「ジップの法則」に近いパターンも、昔から知られています。

03一方で「普通の言語と違う」点も

言語学者ボーエンとリンデマンは2021年のレビューで、ヴォイニッチ手稿を自然言語として扱う根拠を整理する一方、奇妙な特徴も指摘しました。

たとえば、次に来る文字がかなり予測しやすいこと。普通の言語より文字の並びの自由度が低く、同じような単語が何度もくり返されます。

ここから、「文字を音に対応させた普通の言語ではなく、何らかのルールで書き換えた(暗号化した)言語では?」「母音を省くような特殊な書き方では?」といった仮説が生まれています。

04どんでん返し:それでも「でっちあげ説」は残る

英国の研究者ラグは2004年、穴をあけたカードを使う16世紀の暗号技術を応用すれば、言語っぽい無意味な文字列を大量に作れることを示しました。統計的な特徴だけでは、「本物の言語」と「巧妙なでっちあげ」を完全には区別できない、という反論です。

さらに、古文書学者デイヴィスは2020年、文字の書きぐせを細かく比べ、複数の書き手(論文では5人)が関わっていた可能性を示しました。手稿が1人のいたずらではなく、チームで作られたなら、何のために? という新しい謎も生まれています。

05まとめ

  • ヴォイニッチ手稿は15世紀前半の羊皮紙に、未知の文字で書かれた本
  • 統計分析では、単語の分布に本物の言語に近い構造がある
  • 一方で文字の並びは予測しやすすぎるなど、普通の言語と違う特徴もある
  • 「解読した」という主張は、まだ1つも認められていない

読めないからこそ、数学・言語学・歴史学が手を組む。600年前の謎は、学問の「総合格闘技」の舞台になっているのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerKept at Yale University, the Voynich Manuscript is often called the world's most mysterious book. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Kept at Yale University, the Voynich Manuscript is often called the world's most mysterious book. It is filled with drawings of unknown plants and stars, and its text is written in a script that matches no known alphabet. Tests show that the parchment dates from around 1404 to 1438, so the idea that the book seller Wilfrid Voynich created it himself in the twentieth century is almost certainly wrong.

Although no one can read it, researchers can still count its words. In 2013, a study led by Montemurro found that some words appear mainly in certain sections, such as the plant or star pages, just as words cluster around topics in real languages. This suggests the book may contain a genuine message.

122 words ・ CEFR B1

和訳を見る

イェール大学に保管されているヴォイニッチ手稿は、しばしば世界で最も謎めいた本と呼ばれます。未知の植物や星の絵で埋め尽くされ、文章はどの既知のアルファベットとも一致しない文字で書かれています。検査によると羊皮紙は1404年〜1438年ごろのものなので、古書商ウィルフリッド・ヴォイニッチが20世紀に自分で作ったという説は、ほぼ確実に誤りです。

誰も読めないとはいえ、研究者は単語を数えることはできます。2013年、モンテムッロが率いた研究では、本物の言語で単語が話題ごとにかたまって現れるのと同じように、一部の単語が植物や星のページなど特定の章に主に現れることがわかりました。これは、この本に本当のメッセージが含まれている可能性を示しています。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. Why is the idea that Voynich created the book himself almost certainly wrong?

Q3. What does the Montemurro study suggest about the words in the book?

重要単語

  • manuscriptB2
    名詞写本・手書きの原稿The manuscript is kept in a university library. manu-(手)+script(書かれたもの)。manual(手の)、manufacture と同語源。
  • decipherC1
    動詞(暗号などを)解読するNobody has been able to decipher the text. de-(外す)+cipher(暗号)。名詞は decipherment。読みにくい字を「判読する」にも使う。
  • hoaxC1
    名詞でっち上げ・いたずらSome people think the book is a hoax. a hoax call「いたずら電話」。fake よりも「人をだます企て」のニュアンスが強い。
  • parchmentC1
    名詞羊皮紙The parchment was dated to the 15th century. 動物の皮を薄く加工した書写材料。古代都市ペルガモンが名の由来とされる。
  • scriptB2
    名詞文字体系・台本The script does not match any known alphabet. 「台本」の意味が有名だが、学術文では「文字・書記体系」の意味でよく出る。
  • statisticalB2
    形容詞統計的なStatistical tests can reveal hidden patterns. 名詞 statistics(統計・統計学)。statistically significant「統計的に有意な」は研究紹介の頻出表現。

動画でもっと知る

15世紀の羊皮紙に未知の文字で書かれた「ヴォイニッチ手稿」。100年以上だれも読めないのに、単語の並びを情報理論で調べたら本物の言語に近い構造があったらしい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Montemurro & Zanette (2013) Keywords and Co-Occurrence Patterns in the Voynich Manuscript: An Information-Theoretic Analysis, PLoS ONEdoi.org
  2. Bowern & Lindemann (2021) The Linguistics of the Voynich Manuscript, Annual Review of Linguisticsdoi.org
  3. Davis (2020) How Many Glyphs and How Many Scribes? Digital Paleography and the Voynich Manuscript, Manuscript Studiesdoi.org
  4. Rugg (2004) An Elegant Hoax? A Possible Solution to the Voynich Manuscript, Cryptologiadoi.org