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沈没船から出た2000年前の「歯車コンピューター」。アンティキティラ島の機械は日食まで予測していた

沈没船から出た2000年前の「歯車コンピューター」。アンティキティラ島の機械は日食まで予測していた

読む前に予想してみよう!

アンティキティラ島の機械には、オリンピックなどの競技会の年を示す目盛りがあった

研究カード(どんな研究?)
対象
アンティキティラ島の機械の断片
規模
82個の断片(現存する歯車30個)
研究の種類
X線CT・表面画像解析による復元研究
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

1901年、ギリシャの沈没船から見つかった青銅のかたまり。X線CTで中を調べると、30個の歯車で月の満ち欠けや日食、オリンピックの年まで示す天文計算機だった。

ひとことで言うと2000年前のギリシャ人は、歯車で宇宙の動きを計算する機械を作っていた。

もくじ
  1. 中を「割らずに」見る技術
  2. ハンドルを回すと、宇宙が動く
  3. 月の「速さのムラ」まで再現
  4. どんでん返し:前面はまだ「推理」で埋めている
  5. まとめ

1901年、ギリシャのアンティキティラ島の近くで、海綿(スポンジ)を採っていたダイバーたちが古代の沈没船を見つけました。

引き上げられた美しい彫像や陶器の中に、ひとつ地味なさびた青銅のかたまりがありました。よく見ると、そこには歯車が。

この「かたまり」こそ、今では「世界最古のアナログコンピューター」とも呼ばれるアンティキティラ島の機械です。100年以上の研究で、その驚きの正体が明らかになってきました。

01中を「割らずに」見る技術

機械は海の底で2000年以上を過ごし、82個の断片に分かれてしまっています。残っているのは元の3分の1ほど。しかも歯車はさびて固まり、外からは見えません。

転機は2005年。研究チームがマイクロフォーカスX線CT(体の断面を撮る医療用CTの、超高精細版)で断片の内部を撮影したのです。

さびたかけらの内部を、X線CTで「割らずに」のぞいた
さびたかけらの内部を、X線CTで「割らずに」のぞいた

02ハンドルを回すと、宇宙が動く

この機械は、木の箱に入った手回し式の装置だったと考えられています。側面のハンドルを回すと、内部の歯車が回転し、前と後ろの文字盤の針が動きます。

背面には、

  • 19年で暦と月の満ち欠けがそろう周期(メトン周期)の暦の目盛り
  • 223か月ごとに日食・月食がくり返す周期(サロス周期)を使った食の予報の目盛り
  • 4年ごとのオリンピックなどの競技会の年を示す小さな目盛り

がありました。競技会の目盛りは2008年の研究で判明したもので、天体の周期と人間の行事を同じ機械で管理していたことになります。

03月の「速さのムラ」まで再現

さらに驚きなのが、月の動きの再現です。月は楕円の軌道を回るので、空を動く速さが速くなったり遅くなったりします。

機械の中には、少しずれた軸で2つの歯車をつなぎ、ピンと溝で回転の速さを周期的に変える仕組みがありました。古代ギリシャの天文学者ヒッパルコスの月の理論を、歯車で物理的に再現していたのです。

04どんでん返し:前面はまだ「推理」で埋めている

2021年、ロンドン大学(UCL)のチームは、前面に太陽・月・当時知られていた5つの惑星の位置を示す「宇宙の模型」があったとする新しい復元モデルを発表しました。

ただし、前面の歯車の多くは失われています。復元は、残った刻字に書かれた惑星の周期などから、「こう作ればつじつまが合う」と推理したものです。研究者自身も、実物の証拠で確かめきれない部分があることを認めています。

05まとめ

  • 1901年に沈没船から見つかった青銅片は、紀元前2世紀ごろの歯車式の天文計算機だった
  • X線CTで内部を調べ、月の満ち欠け・日食予報・競技会の年などの表示が判明
  • 月の速さのムラまで歯車で再現する、驚きの技術があった
  • 前面の惑星表示の復元は、まだ推理の部分が大きい

2000年前の誰かが、宇宙の動きを靴箱ほどの小さな箱に閉じこめようとした。その情熱は、今の科学者とまったく同じなのかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 1901, sponge divers near the Greek island of Antikythera discovered an ancient shipwreck. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In 1901, sponge divers near the Greek island of Antikythera discovered an ancient shipwreck. Among the statues and pottery was a lump of corroded bronze containing gears. Today it survives in 82 fragments, only about a third of the original device. Because the gears were stuck together, researchers could not see them until 2005, when a team used high-resolution X-ray CT scans.

In 2006, Tony Freeth and his colleagues reported that the device, probably made around the second century BC, was a hand-cranked astronomical calculator. Its dials followed the cycles of the Moon and Sun and predicted eclipses. A later study found that one small dial even showed the years of the Olympic Games and other athletic festivals.

118 words ・ CEFR B1

和訳を見る

1901年、ギリシャのアンティキティラ島の近くで、海綿を採るダイバーたちが古代の沈没船を発見しました。彫像や陶器にまじって、歯車の入ったさびた青銅のかたまりがありました。今日それは82個の断片として残っており、元の装置の約3分の1にすぎません。歯車がくっついて固まっていたため、研究者たちは2005年まで中を見ることができませんでしたが、その年にあるチームが高解像度のX線CTスキャンを使いました。

2006年、トニー・フリースと同僚たちは、おそらく紀元前2世紀ごろに作られたこの装置が、手回し式の天文計算機だったと報告しました。その文字盤は月と太陽の周期を追い、日食・月食を予測しました。のちの研究では、小さな文字盤の一つがオリンピックなどの競技会の年まで示していたことがわかりました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main purpose of the passage?

Q2. How much of the original device survives today?

Q3. What does the Olympic dial suggest about the device?

重要単語

  • gearB1
    名詞歯車The device contains about thirty bronze gears. 「装備・道具」の意味もある(camping gear)。change gear「ギアを変える」は比喩で「方針を切り替える」。
  • eclipseB2
    名詞日食・月食The machine could predict when an eclipse would happen. solar eclipse(日食)/ lunar eclipse(月食)。動詞で「~を見劣りさせる」の意味もある。
  • shipwreckB2
    名詞沈没船・難破船Divers found the device in a shipwreck. ship+wreck(残骸)。wreck は事故車などにも使う。
  • fragmentB2
    名詞断片・かけらOnly fragments of the machine survive today. frag- は「壊れる」の語源で fragile(壊れやすい)と同じ。
  • inscriptionC1
    名詞刻まれた文字・銘文Tiny inscriptions explained how to use the machine. in-(中に)+scribe(書く)。describe, prescribe と同じ scribe。
  • reconstructB2
    動詞復元するScientists tried to reconstruct the missing parts. re-(再び)+construct(組み立てる)。名詞 reconstruction は「復元・再建」。

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4コマでわかる

沈没船から出た2000年前の「歯車コンピューター」。アンティキティラ島の機械は日食まで予測していたの4コマ漫画
1901年に沈没船から出たサビたかたまり。X線CTで中を見たら、30個の歯車で月の満ち欠けや日食、競技会の年まで示す“2000年前のコンピューター”だった。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Freeth et al. (2006) Decoding the ancient Greek astronomical calculator known as the Antikythera Mechanism, Naturedoi.org
  2. Freeth et al. (2008) Calendars with Olympiad display and eclipse prediction on the Antikythera Mechanism, Naturedoi.org
  3. Freeth et al. (2021) A Model of the Cosmos in the ancient Greek Antikythera Mechanism, Scientific Reportsdoi.org