学校が閉鎖されるほど笑いが広がった? 1962年タンガニーカ「笑いの伝染病」の本当の姿

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1962年の「笑いの伝染病」は、ウイルスが原因だと確認されている
検査で感染症や毒物は見つかっておらず、強いストレスを背景にした集団心因性疾患と考えられている。
- 対象
- タンガニーカ(現タンザニア)の学校・村
- 規模
- 約1000人規模とされる
- 研究の種類
- 当時の医師の報告と後年の文献レビュー
- 確かさ
- ★★☆☆☆
1962年、今のタンザニアの女子校から「笑いの発作」が広がり学校が閉鎖された。だが研究者は「楽しい笑いではなく、集団心因性疾患の一例」と指摘し、背景にストレスがあったとみる。
ひとことで言うと笑いがうつって学校が休みに。でも本当は「つらさ」から出た症状だったかも。
「笑いがうつって、学校が閉鎖された」――ネットでよく見かける、1962年のアフリカの話です。
場所は、当時独立したばかりのタンガニーカ(今のタンザニア)。ヴィクトリア湖の西側、ブコバ地区の女子寄宿学校で、生徒たちが笑いの発作を起こし、それが村々へ広がったと報告されています。
「笑いは伝染する」の究極の例…と言いたくなりますが、実はこの話、「楽しい笑い」の話ではなかったようなのです。
011962年1月、寄宿学校で始まった
当時の医師ランキンとフィリップの報告によると、発端は1962年1月末、ミッション系の女子寄宿学校でした。
数人の生徒が笑い出し、それが周りに広がりました。報告では、生徒の半数以上が発作を経験し、学校は一時閉鎖されます。
ところが生徒が実家の村へ帰ると、今度はそこで家族や村人に広がった、とされています。その後、近隣のいくつかの学校も休校になり、影響を受けた人は全体で1000人規模だったと伝えられます。

02笑いだけじゃなかった症状
ここが一番の誤解ポイントです。当時の記録に残る症状は、笑いだけではありません。
泣く、落ち着きなく走り回る、ときに暴れる、気を失う――そんな発作が数時間から長いと数日続き、何度もぶり返す人もいました。
血液検査などでは、感染症や毒物の証拠は見つかりませんでした。死者が出たという確かな記録もありません。
03なぜ起きた? 背景にあった「ストレス」
集団心因性疾患は、強い緊張や不安が続く集団で起きやすいと考えられています。
1961年末の独立直後で社会が大きく変わる時期だったこと、寄宿学校の厳しい規律、親世代と違う価値観の教育など、若い生徒たちにかかっていた重圧を背景として挙げる研究者もいます。ただし、どの要因がどれだけ効いたかを確かめる方法はなく、これらは後からの解釈です。
04現代にも通じる教訓
バーソロミューとウェズリーの整理によれば、集団心因性疾患は今も世界中の学校や職場で報告されています。特に学校は、よく舞台になります。
05話が「盛られて」広まった
ヘンペルマンは、この出来事が後に大げさに語られてきたことも指摘しています。「何千人もが笑い死にした」「国中に広がった」といった話は、記録からは裏づけられません。
06まとめ
- 1962年、タンガニーカの女子校から笑いや泣きの発作が広がり、学校が閉鎖された記録がある
- 症状は笑いだけでなく、泣く・走る・気を失うなども含まれていた
- 感染症や毒は見つからず、ストレスを背景にした集団心因性疾患と考えられている
- 「笑い死に」などの話は、後から盛られた部分が大きい
「笑いの伝染病」という名前は印象的ですが、その中身は、強い重圧の中にいた若者たちのSOSだったのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe so-called "laughter epidemic" began in January 1962 at a girls' boarding school in the Bukoba district…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In 1962, some girls at a school in Tanganyika, now Tanzania, started laughing and could not stop. Soon more than half of the students had the same problem, so the school closed. When the girls went home, people in their villages started laughing too.
But it was not happy laughter. Some people also cried, ran around or fainted. Doctors found no virus or poison. Today, experts think stress was the real cause.
72 words ・ CEFR A2
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1962年、タンガニーカ(今のタンザニア)のある学校で、何人かの女子生徒が笑い出し、止まらなくなりました。やがて生徒の半数以上が同じ状態になり、学校は閉鎖されました。生徒たちが家に帰ると、村の人々も笑い始めました。
しかし、それは楽しい笑いではありませんでした。泣いたり、走り回ったり、気を失ったりする人もいたのです。医師たちはウイルスも毒も見つけられませんでした。今日、専門家たちはストレスが本当の原因だったと考えています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
学校から笑いの発作が広がった出来事が全体のテーマなので D。
Q2. What happened when the girls went home?
When the girls went home, people in their villages started laughing too. とあるので A。
Q3. In this passage, "fainted" means some people ...
faint は「気を失う」。泣く・走り回るに続く発作の症状の一つなので B。
The so-called "laughter epidemic" began in January 1962 at a girls' boarding school in the Bukoba district of Tanganyika. According to two local doctors, Rankin and Philip, a few students began laughing, and the attacks soon spread to more than half of the pupils, forcing the school to close. When the students returned to their villages, family members and neighbors were affected as well, and around 1,000 people were reportedly involved in total.
However, the attacks were not about humor. People also cried, ran around restlessly or fainted, sometimes for hours. Tests found no infection or poison. Researchers now see the event as mass psychogenic illness, in which ongoing stress produced real physical symptoms.
114 words ・ CEFR B1
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いわゆる「笑いの伝染病」は、1962年1月、タンガニーカのブコバ地区にある女子寄宿学校で始まりました。地元の医師ランキンとフィリップによれば、数人の生徒が笑い出し、その発作はまもなく生徒の半数以上に広がり、学校は閉鎖に追い込まれました。生徒たちが村に戻ると、家族や近所の人々も影響を受け、全体で約1000人が巻き込まれたと伝えられています。
しかし、その発作はユーモアとは関係ありませんでした。人々は泣いたり、落ち着きなく走り回ったり、気を失ったりもし、それが何時間も続くこともありました。検査では感染症も毒も見つかりませんでした。研究者たちは現在、この出来事を集団心因性疾患、つまり続いていたストレスが本物の身体症状を生み出したものとみています。
4択リーディングクイズ
Q1. Where did the laughter attacks first begin?
began ... at a girls' boarding school in the Bukoba district とあるので B。
Q2. About how many people were reportedly affected in total?
around 1,000 people were reportedly involved in total とあるので C。
Q3. What does the writer suggest by saying "the attacks were not about humor"?
泣く・走り回る・気を失うといった症状が続き、最後にストレスが原因とされているので、笑いは苦しさのサインだったと読み取れる。正解は D。
In 1962, pupils at a girls' boarding school in the Bukoba district of Tanganyika began having attacks of laughter. The event is often retold as proof that laughter is contagious, but the record points somewhere else. The first report, by the physicians Rankin and Philip, says the attacks affected more than half of the school's pupils and later spread to villages as the students went home.
Around 1,000 people were eventually said to be involved. The laughter came with crying, restless running, occasional violence and fainting, and the episodes could last for hours and come back. No infectious agent or toxin was found. In 2007 the humor researcher Hempelmann argued that the outbreak was a motor form of mass psychogenic illness. The psychiatrist Wessely had linked this category to symptoms that spread gradually under prolonged tension.
Some scholars point to strict school discipline and rapid social change after independence, though these are later interpretations that cannot be tested. A diagnosis of this kind is reached by ruling out other causes, and testing in 1962 was limited, so some doubt is unavoidable. Hempelmann also warned that the story has been exaggerated as it was passed along.
195 words ・ CEFR B2
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1962年、タンガニーカのブコバ地区にある女子寄宿学校で、生徒たちが笑いの発作を起こし始めました。この出来事は、笑いがうつることの証拠としてよく語り直されますが、記録は別の方向を指しています。医師ランキンとフィリップによる最初の報告によれば、発作は学校の生徒の半数以上に及び、生徒が帰省するにつれて村々へ広がりました。
最終的に約1000人が巻き込まれたとされます。笑いには、泣く、落ち着きなく走る、ときに暴れる、気を失うといった症状がともない、発作は数時間続いたり、ぶり返したりしました。病原体や毒物は見つかりませんでした。2007年、ユーモア研究者のヘンペルマンは、この流行は集団心因性疾患の「運動型」だと論じました。精神科医ウェズリーは、この類型を、長引く緊張のもとで症状がじわじわ広がるものと結びつけていました。
厳しい学校の規律や独立後の急激な社会変化を指摘する学者もいますが、これらは検証できない後からの解釈です。この種の診断は他の原因を除外して下されるもので、1962年当時の検査は限られていたため、ある程度の疑いは避けられません。ヘンペルマンはまた、この話が伝わるうちに誇張されてきたと警告しました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
笑いがうつる証拠とされるが記録は別の方向を指すと述べ、集団心因性疾患という見方を紹介しているので A。
Q2. According to the passage, how did Wessely describe the type of illness linked to this event?
symptoms that spread gradually under prolonged tension とあるので B。
Q3. Which statement would the author most likely agree with?
話が誇張されてきたこと、背景要因は検証できないこと、診断に疑いが残ることを述べているので C。
重要単語
- contagiousB2形容詞うつる・伝染性のYawning is contagious, and so is fear.
con-(共に)+tag(触れる)。接触でうつるイメージ。比喩で「(笑い・熱意が)人にうつる」にも使う。 - outbreakB2名詞(病気などの)発生・流行The outbreak started at a boarding school.
break out(発生する)の名詞化。the outbreak of war「戦争の勃発」も頻出。 - boarding schoolB1名詞(句)寄宿学校The girls lived together at a boarding school.
board は「下宿する・食事付きで泊まる」。room and board「部屋と食事」。 - symptomB1名詞症状Laughter was only one symptom among many.
発音は /ˈsɪmptəm/。p はほぼ聞こえない。a symptom of ~「~の兆候」の比喩用法も入試頻出。 - anxietyB2名詞不安Anxiety can show up as physical symptoms.
形容詞は anxious。be anxious about ~「~を心配する」と be anxious to do「~したがる」の違いに注意。 - exaggerateB2動詞誇張するThe story has been exaggerated over the years.
g が2つ続くつづりに注意。名詞は exaggeration。
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1962年、アフリカのタンガニーカで「笑いが止まらない」症状が学校から村へ広がり、学校が閉鎖された記録がある。ただ研究者によると、それは楽しい笑いじゃなく、泣いたり走り出したりもする“ストレスの症状”だったらしい。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Hempelmann (2007) The laughter of the 1962 Tanganyika 'laughter epidemic', Humordoi.org
- Rankin & Philip (1965) An epidemic of laughing in the Bukoba district of Tanganyika(1963年の論文の要旨の再録), Transcultural Psychiatric Research Reviewdoi.org
- Bartholomew & Wessely (2002) Protean nature of mass sociogenic illness, British Journal of Psychiatrydoi.org
- Wessely (1987) Mass hysteria: two syndromes?, Psychological Medicinedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。









