オーロラの緑も赤も、光らせているのは同じ「酸素」だった。色が分かれる高度の秘密

読む前に予想してみよう!
オーロラの赤い光は、緑の光より低い空で光っている
赤い光は高度200km以上の高い空で光ることが多い。緑はそれより下の約100〜200km付近。
- 対象
- 極域・中緯度のオーロラ
- 規模
- 分光・カメラ観測と古記録の解析
- 研究の種類
- 観測研究
- 確かさ
- ★★★★☆
オーロラの緑と赤はどちらも酸素原子の光。光るまでの待ち時間が短い緑は低い所で、長い赤は空気の薄い高い所で光り、色が分かれる。ピンクや紫は窒素の光。
ひとことで言うとオーロラの緑と赤は、どっちも空気の中の「酸素」が光っている!
夜空いっぱいに、緑色のカーテンがゆらゆら…。一生に一度は見てみたいオーロラですが、あの色の正体を知っていますか?
じつは、オーロラの緑色と赤色は、どちらも同じ「酸素」が光っているのです。
同じ酸素なのに、なぜ色が違うのか。そのカギは「高さ」と「待ち時間」にありました。
01オーロラは、宇宙から降ってくる粒のしわざ
太陽からは、電気を帯びた小さな粒(電子など)が、いつも風のように吹き出しています。これを太陽風といいます。
地球は大きな磁石のようなもの(地磁気)なので、太陽風の多くははね返されます。でも太陽風のエネルギーの一部は、地球を包む磁気の領域(磁気圏)にたくわえられます。そこで勢いをつけられた電子などが、磁力線にそって北極や南極のまわりの空へと降り注ぐのです。
つまり、オーロラを光らせる粒は「太陽からまっすぐ飛んできた粒」というより、いったん地球の磁気圏にたまってから加速された粒が主役です。
流れ込んだ粒が、上空100〜数百kmにある空気(酸素や窒素)にぶつかると、空気がエネルギーをもらって光を出します。これがオーロラです。
しくみとしては、ネオンサインや蛍光灯とよく似ています。電気でガスを光らせるか、宇宙からの粒で空気を光らせるかの違いです。
02緑と赤を分ける「待ち時間」
ここからが本題です。酸素の原子は、エネルギーをもらうと「興奮した状態」になり、やがて光を出して落ち着きます。このとき、
- 緑の光(波長557.7nm)を出す興奮状態は、平均1秒たらず(約0.7秒)で光る
- 赤の光(波長630.0nm)を出す興奮状態は、光るまでに平均約2分(100秒あまり)かかる
という違いがあります。
緑のオーロラがいちばん明るいのは高さ100〜150kmあたり。この高さでは、空気がまだ比較的濃いので、まわりの粒とすぐぶつかってしまいます。赤く光る準備をしている酸素は、100秒も待っている間にぶつかってエネルギーを奪われ、光れないまま終わってしまうのです。だから低いところでは、すばやく光る緑が主役になります。
一方、200kmより高い空は空気がとても薄く、ぶつかる相手がほとんどいません。ゆっくり待つことができるので、赤い光が出せるのです。

たとえるなら、混雑した教室ではすぐ話しかけられて「言いかけたこと」を言えずに終わるけれど、がらんとした部屋ならゆっくり話せる、というイメージです。
03ピンクや紫は「窒素」の色
オーロラのすそがピンクや紫っぽく見えることがあります。これは主に窒素が光った色です。窒素分子が出す赤っぽい光と、窒素イオンが出す青紫の光(427.8nm)が、酸素の緑と混ざってピンクや紫に見えます。強いオーロラのときほど、粒が深く(低く、高さ90〜100km付近まで)入り込むので、すそのピンクが目立ちやすくなります。
04日本でも赤いオーロラが見えることがある
ふだんオーロラは北極圏や南極圏で見られるものですが、太陽が大暴れして地磁気が大きく乱れると、日本でも見えることがあります。2024年5月の大きな磁気嵐では、北海道などで赤いオーロラが観測され、話題になりました。
日本で見えるオーロラが赤いのには理由があります。オーロラの本体は遠い北の空にあるので、日本からは地平線の上に一番高い部分(=赤い部分)だけがのぞいて見えるのです。
ただし2024年5月には、日本から青っぽいオーロラも撮影されました。日本の研究者が市民の撮影した写真を分析したところ、高さ400km〜900km以上という、ふつうのオーロラよりずっと高い場所で、窒素イオンの青い光が出ていたらしいことがわかりました。なぜそこまで高い所で光ったのかは、まだ研究が続いています。
※ 色ごとの高さはあくまで目安で、降ってくる粒のエネルギーによって上下します。
05まとめ
- オーロラは、宇宙からの粒が空気にぶつかって光る現象
- 緑も赤も、光っているのは酸素
- 赤は光るまでに時間がかかるため、空気の薄い高い空でだけ光れる
- ピンクや紫は主に窒素の光
- 日本で見えるオーロラが赤いのは、一番高い部分だけが見えるから
オーロラの写真を見かけたら、ぜひ色の「段」に注目してみてください。その一枚に、空の高さと原子の待ち時間がぎゅっとつまっています。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAuroras appear when electrons and other particles, stored and sped up in the space around Earth's magnetic…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
An aurora is a beautiful light in the night sky. It happens when tiny pieces from space hit the air high above the Earth. The green light and the red light both come from oxygen.
Red light needs a long time to appear, so it only shines very high up, where the air is thin. The pink light at the bottom comes mostly from nitrogen.
65 words ・ CEFR A2
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オーロラは夜空に現れる美しい光です。宇宙からの小さな粒が、地球のはるか上空の空気にぶつかると起こります。緑の光も赤い光も、どちらも酸素から出ています。
赤い光は現れるまでに長い時間がかかるので、空気の薄い、とても高いところでしか光りません。下のほうのピンク色の光は、主に窒素から出ています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
緑・赤・ピンクの光が何から出ているかを説明しているので D。
Q2. What makes both the green and the red light?
The green light and the red light both come from oxygen. とあるので B。
Q3. In this passage, "thin" air means air that ...
thin air は「薄い空気」、つまり粒がとても少ない空気なので A。
Auroras appear when electrons and other particles, stored and sped up in the space around Earth's magnetic field, rush down toward the polar regions and hit the upper air. The air then gives off light, much like a neon sign.
In fact, both the green and the red colors come from oxygen atoms. An excited oxygen atom gives off green light in less than one second, but red light takes about two minutes. At around 100 to 150 kilometers, the air is dense enough that atoms often bump into each other, so the energy for red light is lost before it can appear. Above 200 kilometers, the air is so thin that oxygen can wait and shine red.
118 words ・ CEFR B1
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オーロラは、地球の磁場のまわりの空間にたくわえられて加速された電子などの粒が、極地方に向かって勢いよく降り、上空の空気にぶつかったときに現れます。すると空気が、ネオンサインのように光を出します。
実は、緑も赤も、どちらの色も酸素原子から出ています。エネルギーをもらった酸素原子は、1秒もたたないうちに緑の光を出しますが、赤い光は約2分かかります。高さ100〜150kmあたりでは空気がまだ濃いので、原子どうしがしょっちゅうぶつかり、赤い光のためのエネルギーは光になる前に失われてしまいます。200kmより上では空気がとても薄いので、酸素は待つことができ、赤く光れるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
同じ酸素が高さによって緑や赤に光る理由を説明しているので C。
Q2. How long does oxygen take to give off red light?
red light takes about two minutes とあるので A。1秒未満は緑の光。
Q3. Why is red light rare at around 100 kilometers?
atoms often bump into each other, so the energy for red light is lost before it can appear とあるので D。
When a strong geomagnetic storm hit Earth in May 2024, people in Japan saw auroras, and many of them glowed red. Why red? An aurora forms when electrons, stored and accelerated in Earth's magnetosphere instead of arriving directly from the Sun, stream along magnetic field lines and crash into the upper atmosphere. Both the familiar green and the red come from oxygen atoms.
What separates them is altitude and timing. An excited oxygen atom gives off green light after about 0.7 seconds, but red light only after roughly 110 seconds. Below about 150 kilometers, the air is dense enough that the atom usually hits another particle and loses its energy before it can glow red, so green dominates. Above 200 kilometers, collisions are rare and the slow red emission survives.
Pink or purple fringes come mainly from nitrogen. From Japan, only the highest part of the aurora rises above the horizon, which is why it often looks red. Some features are still puzzling, such as blue light in 2024 that seemed to come from 400 to over 900 kilometers up. Researchers also estimate past storms from historical records, such as a 1770 painting from Kyoto.
195 words ・ CEFR B2
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2024年5月に強い磁気嵐が地球に到達したとき、日本でもオーロラが見られ、その多くは赤く光っていました。なぜ赤なのでしょうか。オーロラは、太陽から直接届くのではなく地球の磁気圏の中にたくわえられ加速された電子が、磁力線に沿って流れ込み、上層大気にぶつかることで生じます。おなじみの緑も赤も、どちらも酸素原子から出ています。
両者を分けるのは高度とタイミングです。エネルギーを受け取った酸素原子は、約0.7秒後に緑の光を出しますが、赤い光を出すのはおよそ110秒後になってからです。約150kmより下では空気が十分に濃いので、原子はたいてい別の粒子にぶつかり、赤く光る前にエネルギーを失ってしまいます。そのため緑が主役になります。200kmより上では衝突がまれなので、ゆっくりした赤い発光が生き残ります。
ピンクや紫のすそは主に窒素によるものです。日本からは、オーロラの一番高い部分だけが地平線の上にのぞくので、赤く見えることが多いのです。2024年に高度400kmから900km以上で出ていたらしい青い光のように、まだ謎の現象もあります。研究者たちは、1770年に京都で描かれた絵のような歴史的記録からも、過去の磁気嵐を推定しています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
酸素の発光までの時間と空気の濃さ(衝突の多さ)で高度ごとの色が決まる、という内容なので B。
Q2. Why do auroras seen from Japan often look red?
From Japan, only the highest part of the aurora rises above the horizon とあり、高い部分=赤い部分だけが見えるからなので C。
Q3. What does the author imply about the blue light observed in 2024?
some features are still puzzling, such as blue light in 2024 ... とあり、まだ十分に解明されていないことがわかるので A。
重要単語
- auroraB1名詞オーロラWe stayed up all night to see the aurora.
ローマ神話の暁の女神アウロラが語源。複数形は auroras / aurorae。 - solar windB2名詞(句)太陽風The solar wind blows charged particles into space.
solar は「太陽の」。solar panel、solar system と同じ。lunar(月の)と対で覚える。 - magnetic fieldB2名詞(句)磁場Earth's magnetic field protects us from many particles.
magnet(磁石)の形容詞 magnetic。magnetic field lines「磁力線」。 - emitC1動詞(光・熱などを)出すExcited oxygen atoms emit green light.
e-(外へ)+mit(送る)。名詞 emission は CO2 emissions(排出量)で環境問題の長文に頻出。 - collisionB2名詞衝突A collision with another molecule can steal the energy.
動詞は collide。collide with ~「~と衝突する」。 - geomagnetic stormC1名詞(句)磁気嵐A strong geomagnetic storm brought auroras to Japan.
geo-(地球)+magnetic。強い磁気嵐は通信や人工衛星にも影響を与える。
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- Aurora(NOAA Space Weather Prediction Center)swpc.noaa.gov
- オーロラ研究(国立極地研究所)nipr.ac.jp
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Kataoka & Iwahashi (2017) Inclined Zenith Aurora over Kyoto on 17 September 1770: Graphical Evidence of Extreme Magnetic Storm, Space Weatherdoi.org
- Ebihara et al. (2017) Possible Cause of Extremely Bright Aurora Witnessed in East Asia on 17 September 1770, Space Weatherdoi.org
- Whiter et al. (2023) The altitude of green OI 557.7 nm and blue N2+ 427.8 nm aurora, Annales Geophysicaedoi.org
- Nanjo & Shiokawa (2024) Spatial structures of blue low-latitude aurora observed from Japan during the extreme geomagnetic storm of May 2024, Earth, Planets and Spacedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













