地球・歴史・物理

オーロラの緑も赤も、光らせているのは同じ「酸素」だった。色が分かれる高度の秘密

オーロラの緑も赤も、光らせているのは同じ「酸素」だった。色が分かれる高度の秘密

読む前に予想してみよう!

オーロラの赤い光は、緑の光より低い空で光っている

研究カード(どんな研究?)
対象
極域・中緯度のオーロラ
規模
分光・カメラ観測と古記録の解析
研究の種類
観測研究
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

オーロラの緑と赤はどちらも酸素原子の光。光るまでの待ち時間が短い緑は低い所で、長い赤は空気の薄い高い所で光り、色が分かれる。ピンクや紫は窒素の光。

ひとことで言うとオーロラの緑と赤は、どっちも空気の中の「酸素」が光っている!

もくじ
  1. オーロラは、宇宙から降ってくる粒のしわざ
  2. 緑と赤を分ける「待ち時間」
  3. ピンクや紫は「窒素」の色
  4. 日本でも赤いオーロラが見えることがある
  5. まとめ

夜空いっぱいに、緑色のカーテンがゆらゆら…。一生に一度は見てみたいオーロラですが、あの色の正体を知っていますか?

じつは、オーロラの緑色と赤色は、どちらも同じ「酸素」が光っているのです。

同じ酸素なのに、なぜ色が違うのか。そのカギは「高さ」と「待ち時間」にありました。

01オーロラは、宇宙から降ってくる粒のしわざ

太陽からは、電気を帯びた小さな粒(電子など)が、いつも風のように吹き出しています。これを太陽風といいます。

地球は大きな磁石のようなもの(地磁気)なので、太陽風の多くははね返されます。でも太陽風のエネルギーの一部は、地球を包む磁気の領域(磁気圏)にたくわえられます。そこで勢いをつけられた電子などが、磁力線にそって北極や南極のまわりの空へと降り注ぐのです。

つまり、オーロラを光らせる粒は「太陽からまっすぐ飛んできた粒」というより、いったん地球の磁気圏にたまってから加速された粒が主役です。

流れ込んだ粒が、上空100〜数百kmにある空気(酸素や窒素)にぶつかると、空気がエネルギーをもらって光を出します。これがオーロラです。

しくみとしては、ネオンサインや蛍光灯とよく似ています。電気でガスを光らせるか、宇宙からの粒で空気を光らせるかの違いです。

02緑と赤を分ける「待ち時間」

ここからが本題です。酸素の原子は、エネルギーをもらうと「興奮した状態」になり、やがて光を出して落ち着きます。このとき、

  • 緑の光(波長557.7nm)を出す興奮状態は、平均1秒たらず(約0.7秒)で光る
  • 赤の光(波長630.0nm)を出す興奮状態は、光るまでに平均約2分(100秒あまり)かかる

という違いがあります。

緑のオーロラがいちばん明るいのは高さ100〜150kmあたり。この高さでは、空気がまだ比較的濃いので、まわりの粒とすぐぶつかってしまいます。赤く光る準備をしている酸素は、100秒も待っている間にぶつかってエネルギーを奪われ、光れないまま終わってしまうのです。だから低いところでは、すばやく光る緑が主役になります。

一方、200kmより高い空は空気がとても薄く、ぶつかる相手がほとんどいません。ゆっくり待つことができるので、赤い光が出せるのです。

下はピンク、真ん中は緑、上は赤。高さで色が変わる
下はピンク、真ん中は緑、上は赤。高さで色が変わる

たとえるなら、混雑した教室ではすぐ話しかけられて「言いかけたこと」を言えずに終わるけれど、がらんとした部屋ならゆっくり話せる、というイメージです。

03ピンクや紫は「窒素」の色

オーロラのすそがピンクや紫っぽく見えることがあります。これは主に窒素が光った色です。窒素分子が出す赤っぽい光と、窒素イオンが出す青紫の光(427.8nm)が、酸素の緑と混ざってピンクや紫に見えます。強いオーロラのときほど、粒が深く(低く、高さ90〜100km付近まで)入り込むので、すそのピンクが目立ちやすくなります。

04日本でも赤いオーロラが見えることがある

ふだんオーロラは北極圏や南極圏で見られるものですが、太陽が大暴れして地磁気が大きく乱れると、日本でも見えることがあります。2024年5月の大きな磁気嵐では、北海道などで赤いオーロラが観測され、話題になりました。

日本で見えるオーロラが赤いのには理由があります。オーロラの本体は遠い北の空にあるので、日本からは地平線の上に一番高い部分(=赤い部分)だけがのぞいて見えるのです。

ただし2024年5月には、日本から青っぽいオーロラも撮影されました。日本の研究者が市民の撮影した写真を分析したところ、高さ400km〜900km以上という、ふつうのオーロラよりずっと高い場所で、窒素イオンの青い光が出ていたらしいことがわかりました。なぜそこまで高い所で光ったのかは、まだ研究が続いています。

※ 色ごとの高さはあくまで目安で、降ってくる粒のエネルギーによって上下します。

05まとめ

  • オーロラは、宇宙からの粒が空気にぶつかって光る現象
  • 緑も赤も、光っているのは酸素
  • 赤は光るまでに時間がかかるため、空気の薄い高い空でだけ光れる
  • ピンクや紫は主に窒素の光
  • 日本で見えるオーロラが赤いのは、一番高い部分だけが見えるから

オーロラの写真を見かけたら、ぜひ色の「段」に注目してみてください。その一枚に、空の高さと原子の待ち時間がぎゅっとつまっています。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAuroras appear when electrons and other particles, stored and sped up in the space around Earth's magnetic… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Auroras appear when electrons and other particles, stored and sped up in the space around Earth's magnetic field, rush down toward the polar regions and hit the upper air. The air then gives off light, much like a neon sign.

In fact, both the green and the red colors come from oxygen atoms. An excited oxygen atom gives off green light in less than one second, but red light takes about two minutes. At around 100 to 150 kilometers, the air is dense enough that atoms often bump into each other, so the energy for red light is lost before it can appear. Above 200 kilometers, the air is so thin that oxygen can wait and shine red.

118 words ・ CEFR B1

和訳を見る

オーロラは、地球の磁場のまわりの空間にたくわえられて加速された電子などの粒が、極地方に向かって勢いよく降り、上空の空気にぶつかったときに現れます。すると空気が、ネオンサインのように光を出します。

実は、緑も赤も、どちらの色も酸素原子から出ています。エネルギーをもらった酸素原子は、1秒もたたないうちに緑の光を出しますが、赤い光は約2分かかります。高さ100〜150kmあたりでは空気がまだ濃いので、原子どうしがしょっちゅうぶつかり、赤い光のためのエネルギーは光になる前に失われてしまいます。200kmより上では空気がとても薄いので、酸素は待つことができ、赤く光れるのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. How long does oxygen take to give off red light?

Q3. Why is red light rare at around 100 kilometers?

重要単語

  • auroraB1
    名詞オーロラWe stayed up all night to see the aurora. ローマ神話の暁の女神アウロラが語源。複数形は auroras / aurorae。
  • solar windB2
    名詞(句)太陽風The solar wind blows charged particles into space. solar は「太陽の」。solar panel、solar system と同じ。lunar(月の)と対で覚える。
  • magnetic fieldB2
    名詞(句)磁場Earth's magnetic field protects us from many particles. magnet(磁石)の形容詞 magnetic。magnetic field lines「磁力線」。
  • emitC1
    動詞(光・熱などを)出すExcited oxygen atoms emit green light. e-(外へ)+mit(送る)。名詞 emission は CO2 emissions(排出量)で環境問題の長文に頻出。
  • collisionB2
    名詞衝突A collision with another molecule can steal the energy. 動詞は collide。collide with ~「~と衝突する」。
  • geomagnetic stormC1
    名詞(句)磁気嵐A strong geomagnetic storm brought auroras to Japan. geo-(地球)+magnetic。強い磁気嵐は通信や人工衛星にも影響を与える。

動画でもっと知る

オーロラの緑と赤、まったく別の物質が光ってるのかと思ったら、どっちも「酸素」らしい。色を分けるのは高さと「光るまでの待ち時間」だった。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Kataoka & Iwahashi (2017) Inclined Zenith Aurora over Kyoto on 17 September 1770: Graphical Evidence of Extreme Magnetic Storm, Space Weatherdoi.org
  2. Ebihara et al. (2017) Possible Cause of Extremely Bright Aurora Witnessed in East Asia on 17 September 1770, Space Weatherdoi.org
  3. Whiter et al. (2023) The altitude of green OI 557.7 nm and blue N2+ 427.8 nm aurora, Annales Geophysicaedoi.org
  4. Nanjo & Shiokawa (2024) Spatial structures of blue low-latitude aurora observed from Japan during the extreme geomagnetic storm of May 2024, Earth, Planets and Spacedoi.org