脳と心理ホント

夢の中身を、脳の活動から"のぞき見"できた。京都の研究チームが挑んだ「夢の解読」

夢の中身を、脳の活動から"のぞき見"できた。京都の研究チームが挑んだ「夢の解読」

読む前に予想してみよう!

脳活動から夢を読み取る技術を使えば、誰の夢でもその場ですぐに読み取れる

研究カード(どんな研究?)
対象
健康な成人
規模
3人(各200回以上の覚醒)
研究の種類
fMRIと機械学習による実験研究
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

眠りかけの人の脳活動をAIで分析し、夢に出てきた物のカテゴリーを偶然より高い確率で当てた。ただし本人の協力と大量の学習データが必要。

ひとことで言うと夢で「何を見たか」を、脳の動きから当てられるようになってきた!

もくじ
  1. 200回以上「起こされる」実験
  2. 「起きているとき」の脳活動でAIを学習
  3. わかったのは「夢と現実の脳は似ている」こと
  4. まとめ

朝起きたとき、夢の内容がどんどん消えていく感覚、ありますよね。

夢は、本人にしかわからない究極のプライベート体験。科学で調べようにも、「どんな夢だった?」と聞くしかありませんでした。

ところが2013年、京都の国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の神谷之康(かみたに・ゆきやす)さんらのチームが、夢の中身を脳の活動から予測することに挑み、科学誌『Science』に発表しました。

01200回以上「起こされる」実験

「車が見えた」「男の人が話していた」「本棚があった」——集まった報告から、よく出てくる物(車、人、建物など)をカテゴリーに整理します。

02「起きているとき」の脳活動でAIを学習

次がこの研究の工夫です。

参加者が起きているときに、車や人などの写真をたくさん見せて脳活動を記録。その脳活動のパターンから「何の写真を見ているか」を当てるAI(機械学習のモデル)を作りました。

そして、このAIに夢を見ていたときの脳活動を入れてみたのです。すると、夢に出てきた物のカテゴリーを、偶然よりも高い確率で当てることができました。特に、視覚の情報を高度に処理する領域の活動が予測に役立ちました。

起きて「見る」ときと、夢で「見る」ときの脳活動は似ていた
起きて「見る」ときと、夢で「見る」ときの脳活動は似ていた

03わかったのは「夢と現実の脳は似ている」こと

この結果が意味するのは、AIがすごいということ以上に、夢の中で何かを見ているとき、脳は起きて実際に見ているときと似たパターンで活動しているということです。

チームはその後も研究を進め、起きているときに頭の中で思い浮かべたイメージを予測したり(2017年)、AIの深層学習を使って見ている画像そのものを再構成したり(2019年)する技術を発表しています。

04まとめ

夢は、もう完全なブラックボックスではなくなりつつあります。脳の活動から、夢に出てきた物を「だいたい」当てられる時代が来ているのです。

ただし、読み取れるのは大まかな内容だけ。しかも、本人の協力があってこそ。あなたの夢の秘密は、まだしばらく、あなただけのものです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerDreams have always been difficult to study because scientists could only ask people what they remembered. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Dreams have always been difficult to study because scientists could only ask people what they remembered. In 2013, a team led by Kamitani in Kyoto tried a new approach. Three participants slept inside an MRI scanner. Each time brain waves showed they were falling asleep, they were woken and asked what they had seen. This was repeated more than 200 times per person.

Next, the researchers showed the participants many photos while they were awake and trained a machine-learning program to recognize objects from their brain activity. When the program was given brain activity from the dreaming period, it predicted the kinds of objects in the dreams better than chance. This suggests that seeing and dreaming use similar brain patterns.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

科学者は人が覚えていることを尋ねるしかなかったため、夢はずっと研究が難しいものでした。2013年、京都の神谷さんが率いるチームが新しい方法を試しました。3人の参加者がMRIスキャナーの中で眠りました。脳波で眠りに落ちかけていることがわかるたびに、彼らは起こされ、何を見ていたか尋ねられました。これは1人につき200回以上繰り返されました。

次に研究者たちは、参加者が起きている間に多くの写真を見せ、脳の活動から物を見分ける機械学習のプログラムを訓練しました。夢を見ていたときの脳の活動をこのプログラムに与えると、夢に出てきた物の種類を偶然より高い確率で予測できました。このことは、見ることと夢を見ることが似た脳のパターンを使っていることを示唆しています。

4択リーディングクイズ

Q1. When were the participants woken up?

Q2. How was the machine-learning program trained?

Q3. What does the last sentence suggest?

重要単語

  • decodeB2
    動詞解読するThe program decoded the hidden message. de-(外す)+code(暗号)。名詞 decoder「解読器」。反対は encode(符号化する)。
  • machine learningB2
    名詞(句)機械学習Machine learning finds patterns in large data sets. AI の中心技術。train a model「モデルを訓練する」とセットで使われる。
  • visual cortexC1
    名詞(句)視覚野The visual cortex processes what we see. visual(視覚の)+cortex(皮質)。auditory cortex「聴覚野」、motor cortex「運動野」も同じ型。
  • imageryC1
    名詞心に浮かぶイメージDream imagery can be very vivid. image の集合名詞。文学では「比喩的表現・心象」の意味でも使われる。
  • chance levelC1
    名詞(句)偶然の水準(当てずっぽうの正答率)The accuracy was above chance level. above chance「偶然を上回る」は研究結果を述べる定番表現。by chance「偶然に」と区別。
  • participantB1
    名詞参加者、被験者Each participant slept in the scanner. participate in ~(~に参加する)の名詞形。研究紹介の英文で最頻出の語の一つ。

4コマでわかる

夢の中身を、脳の活動から"のぞき見"できた。京都の研究チームが挑んだ「夢の解読」の4コマ漫画
寝ている人の脳をMRIで測って、夢に「車」や「人」が出てきたかをAIで当てる——そんな研究を日本のチームが2013年に発表していた。眠りかけで200回以上起こされた参加者の協力のたまものらしい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Horikawa, Tamaki, Miyawaki & Kamitani (2013) Neural decoding of visual imagery during sleep, Sciencedoi.org
  2. Miyawaki et al. (2008) Visual image reconstruction from human brain activity using a combination of multiscale local image decoders, Neurondoi.org
  3. Horikawa & Kamitani (2017) Generic decoding of seen and imagined objects using hierarchical visual features, Nature Communicationsdoi.org
  4. Shen, Horikawa, Majima & Kamitani (2019) Deep image reconstruction from human brain activity, PLOS Computational Biologydoi.org