脳と心理ビミョー

24種類のジャムは売れなかった。でも有名な「選択のパラドックス」を検証したら…

24種類のジャムは売れなかった。でも有名な「選択のパラドックス」を検証したら…

読む前に予想してみよう!

多数の研究をまとめると、「選択肢が多いと人は選べなくなる」効果は平均するとほぼゼロだった

研究カード(どんな研究?)
対象
スーパーの買い物客ほか
規模
原典は数百人規模、メタ分析は約5,000〜7,000人分
研究の種類
フィールド実験+メタ分析2本
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

試食のジャムが24種類だと6種類より売れなかった有名研究。ただし多数の研究をまとめると平均効果はほぼゼロで、「条件しだい」で起きる現象だった。

ひとことで言うと選択肢が多すぎると選べない…ときもあるし、そうでもないときもある!

もくじ
  1. ジャムが多いと、人は集まるけど買わない
  2. たくさんの実験をまとめたら、平均はほぼゼロ
  3. 「選べなくなる」のは、こんなとき
  4. まとめ

ネットで服を探していたら、候補が多すぎて結局何も買わずに閉じてしまった。動画配信サービスで見る作品を選んでいるうちに、選ぶだけで疲れてしまった。

こんな「選択肢が多すぎて選べない」現象は、選択のパラドックスや選択過多と呼ばれ、ビジネスの世界でもよく語られます。その出発点になったのが、スーパーで行われたジャムの試食実験でした。

01ジャムが多いと、人は集まるけど買わない

「選択肢が多いほうが人は喜ぶ」という常識をひっくり返す、鮮やかな結果でした。この研究は本やビジネス講演で繰り返し紹介され、「商品数を絞れ」というマーケティングの合言葉にもなりました。

02たくさんの実験をまとめたら、平均はほぼゼロ

ところが、話はここで終わりません。

その後、同じような実験が世界中で数多く行われました。そして2010年、スイス・ドイツなどの研究者たちが、50本の実験(のべ約5,000人)をまとめて分析したメタ分析(たくさんの研究結果を束ねて、全体の傾向を見る方法)を発表します。

結果は、選択肢の多さが選択を妨げる効果は、平均するとほぼゼロ。選択肢が多いと選べなくなる実験もあれば、むしろ選択肢が多いほうが満足度や購入が増える実験もあり、それらが打ち消し合っていたのです。

選択肢が「多い」か「少ない」かだけでは、結果は決まらなかった
選択肢が「多い」か「少ない」かだけでは、結果は決まらなかった

03「選べなくなる」のは、こんなとき

じゃあ、ジャムの研究は間違いだったのか? そうとも言い切れません。

2015年には米国の別の研究チームが、99の結果(のべ約7,200人)を使ってメタ分析を行い、選択過多が起きやすい条件があることを示しました。しかも、条件の違いを考慮すると、選択肢の多さの効果は統計的にはっきり現れるとも報告しています。2つのメタ分析は「平均するとほぼゼロ」と「条件の違いを考慮すると確かにある」という、一見正反対の結論です(2015年の論文自身も、先行メタ分析の結果と食い違うと書いています)。ただ、効果が条件しだいで大きく変わると考えれば、両者は両立しえます。ざっくりまとめるとこんな感じです。

  • 選択肢が複雑で、比べるポイントが多い(スマホのプランなど)
  • 決めること自体が難しい(時間がない、正解がわかりにくい)
  • 自分の好みがまだはっきりしていない(初めて買うジャンルなど)
  • 「なるべく手間をかけずに決めたい」と楽をしたい気持ちが強い

逆に、自分の好みがはっきりしている人や、その分野に詳しい人にとっては、選択肢が多いほうがむしろうれしいことも多いわけです。

04まとめ

ジャムの研究は、「選択肢が多すぎると選べない」という分かりやすい物語として広まりました。でも科学がその後たどり着いたのは、「多いか少ないか」より「どんな状況で選ぶか」が大事という、もう一段深い答えでした。

次に選べなくて困ったら、選択肢を減らす前に、「自分は何を基準に選びたいんだっけ?」と考えてみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerToo many options can make it hard to choose. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Too many options can make it hard to choose. This idea, called choice overload, became famous because of a jam study. In 2000, researchers set up a tasting table in a California supermarket. During some hours it offered 24 kinds of jam, and during others only 6. The larger display attracted more shoppers, but among those who stopped, about 30% bought jam when there were 6 kinds, compared with only about 3% when there were 24.

However, when researchers later combined 50 experiments, the average effect of having many options was almost zero. A 2015 analysis found that choice overload happens mainly in certain situations, such as when options are complex or people do not know what they want.

119 words ・ CEFR B1

和訳を見る

選択肢が多すぎると、選ぶのが難しくなることがあります。選択過多と呼ばれるこの考えは、ジャムの研究で有名になりました。2000年、研究者たちはカリフォルニアのスーパーに試食台を設けました。ある時間帯には24種類のジャムを、別の時間帯には6種類だけを並べました。多いほうの陳列はより多くの買い物客を引きつけましたが、立ち寄った人のうちジャムを買った人は、6種類のときは約30%だったのに対し、24種類のときはわずか約3%でした。

しかし、後に研究者たちが50の実験をまとめると、選択肢が多いことの平均的な効果はほぼゼロでした。2015年の分析では、選択過多は主に、選択肢が複雑なときや、自分が何をほしいのかわからないときなど、特定の状況で起こることがわかりました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main point of the passage?

Q2. Among people who stopped at the table with 24 jams, about what percentage bought jam?

Q3. According to the 2015 analysis, when is choice overload more likely?

重要単語

  • choice overloadC1
    名詞(句)選択過多Choice overload can make online shopping tiring. overload は「積みすぎ・過負荷」。information overload(情報過多)も頻出。
  • assortmentC1
    名詞品ぞろえThe store has a large assortment of teas. sort(種類)から。an assortment of ~「いろいろな~の詰め合わせ」。
  • meta-analysisC1
    名詞メタ分析(多くの研究をまとめる分析)A meta-analysis combines the results of many studies. meta- は「~を超えた、~についての」。1つの研究より信頼性が高いとされるが、元の研究の質に左右される。
  • moderatorC1
    名詞調整変数(効果の大きさを左右する条件)Expertise is a moderator of choice overload. 一般には「司会者」。moderate(ほどよい・和らげる)と同語源。
  • deferC1
    動詞先延ばしにするToo many options may lead people to defer a decision. postpone, put off と同義。defer to ~ は「~の意見に従う」と意味が変わる。
  • paradoxB2
    名詞逆説、パラドックスThe paradox of choice says more options can make us less happy. para(反して)+dox(意見)。一見矛盾するが真理を含む主張。形容詞は paradoxical。

動画でもっと知る

「ジャムを24種類並べたら6種類のときより売れなかった」という超有名研究。でも後から50本くらいの実験をまとめたら、平均の効果はほぼゼロだったらしい。選択肢の多さが邪魔になるのは条件しだい。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Iyengar & Lepper (2000) When choice is demotivating: can one desire too much of a good thing?, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  2. Scheibehenne, Greifeneder & Todd (2010) Can there ever be too many options? A meta-analytic review of choice overload, Journal of Consumer Researchdoi.org
  3. Chernev, Böckenholt & Goodman (2015) Choice overload: a conceptual review and meta-analysis, Journal of Consumer Psychologydoi.org