24種類のジャムは売れなかった。でも有名な「選択のパラドックス」を検証したら…

読む前に予想してみよう!
多数の研究をまとめると、「選択肢が多いと人は選べなくなる」効果は平均するとほぼゼロだった
2010年のメタ分析では、平均効果はほぼゼロ。ただし起きやすい条件はあると分かってきた。
- 対象
- スーパーの買い物客ほか
- 規模
- 原典は数百人規模、メタ分析は約5,000〜7,000人分
- 研究の種類
- フィールド実験+メタ分析2本
- 確かさ
- ★★★★☆
試食のジャムが24種類だと6種類より売れなかった有名研究。ただし多数の研究をまとめると平均効果はほぼゼロで、「条件しだい」で起きる現象だった。
ひとことで言うと選択肢が多すぎると選べない…ときもあるし、そうでもないときもある!
ネットで服を探していたら、候補が多すぎて結局何も買わずに閉じてしまった。動画配信サービスで見る作品を選んでいるうちに、選ぶだけで疲れてしまった。
こんな「選択肢が多すぎて選べない」現象は、選択のパラドックスや選択過多と呼ばれ、ビジネスの世界でもよく語られます。その出発点になったのが、スーパーで行われたジャムの試食実験でした。
01ジャムが多いと、人は集まるけど買わない
「選択肢が多いほうが人は喜ぶ」という常識をひっくり返す、鮮やかな結果でした。この研究は本やビジネス講演で繰り返し紹介され、「商品数を絞れ」というマーケティングの合言葉にもなりました。
02たくさんの実験をまとめたら、平均はほぼゼロ
ところが、話はここで終わりません。
その後、同じような実験が世界中で数多く行われました。そして2010年、スイス・ドイツなどの研究者たちが、50本の実験(のべ約5,000人)をまとめて分析したメタ分析(たくさんの研究結果を束ねて、全体の傾向を見る方法)を発表します。
結果は、選択肢の多さが選択を妨げる効果は、平均するとほぼゼロ。選択肢が多いと選べなくなる実験もあれば、むしろ選択肢が多いほうが満足度や購入が増える実験もあり、それらが打ち消し合っていたのです。

03「選べなくなる」のは、こんなとき
じゃあ、ジャムの研究は間違いだったのか? そうとも言い切れません。
2015年には米国の別の研究チームが、99の結果(のべ約7,200人)を使ってメタ分析を行い、選択過多が起きやすい条件があることを示しました。しかも、条件の違いを考慮すると、選択肢の多さの効果は統計的にはっきり現れるとも報告しています。2つのメタ分析は「平均するとほぼゼロ」と「条件の違いを考慮すると確かにある」という、一見正反対の結論です(2015年の論文自身も、先行メタ分析の結果と食い違うと書いています)。ただ、効果が条件しだいで大きく変わると考えれば、両者は両立しえます。ざっくりまとめるとこんな感じです。
- 選択肢が複雑で、比べるポイントが多い(スマホのプランなど)
- 決めること自体が難しい(時間がない、正解がわかりにくい)
- 自分の好みがまだはっきりしていない(初めて買うジャンルなど)
- 「なるべく手間をかけずに決めたい」と楽をしたい気持ちが強い
逆に、自分の好みがはっきりしている人や、その分野に詳しい人にとっては、選択肢が多いほうがむしろうれしいことも多いわけです。
04まとめ
ジャムの研究は、「選択肢が多すぎると選べない」という分かりやすい物語として広まりました。でも科学がその後たどり着いたのは、「多いか少ないか」より「どんな状況で選ぶか」が大事という、もう一段深い答えでした。
次に選べなくて困ったら、選択肢を減らす前に、「自分は何を基準に選びたいんだっけ?」と考えてみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerToo many options can make it hard to choose.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Have you ever had too many choices and could not decide? In a famous study, a supermarket offered 24 kinds of jam during some hours and 6 kinds during other hours.
More people stopped at the table with 24 jams, but fewer of them bought jam. Later, scientists looked at about 50 similar experiments. On average, the effect of many choices was almost zero.
64 words ・ CEFR A2
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選択肢が多すぎて決められなかったことはありますか。有名な研究で、あるスーパーが、ある時間帯は24種類、別の時間帯は6種類のジャムを並べました。
24種類のときのほうが多くの人が立ち止まりましたが、実際にジャムを買った人の割合は低かったのです。その後、科学者たちは約50の似た実験を調べました。平均すると、選択肢が多いことの効果はほぼゼロでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ジャムの有名な研究と、その後の多くの実験をまとめた結果を述べているので B。
Q2. How many kinds of jam were offered during the hours with more choices?
24 kinds of jam during some hours and 6 kinds during other hours とあるので C。
Q3. In this passage, "decide" means ...
decide は「決める」。選択肢から1つを選ぶことなので A。
Too many options can make it hard to choose. This idea, called choice overload, became famous because of a jam study. In 2000, researchers set up a tasting table in a California supermarket. During some hours it offered 24 kinds of jam, and during others only 6. The larger display attracted more shoppers, but among those who stopped, about 30% bought jam when there were 6 kinds, compared with only about 3% when there were 24.
However, when researchers later combined 50 experiments, the average effect of having many options was almost zero. A 2015 analysis found that choice overload happens mainly in certain situations, such as when options are complex or people do not know what they want.
119 words ・ CEFR B1
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選択肢が多すぎると、選ぶのが難しくなることがあります。選択過多と呼ばれるこの考えは、ジャムの研究で有名になりました。2000年、研究者たちはカリフォルニアのスーパーに試食台を設けました。ある時間帯には24種類のジャムを、別の時間帯には6種類だけを並べました。多いほうの陳列はより多くの買い物客を引きつけましたが、立ち寄った人のうちジャムを買った人は、6種類のときは約30%だったのに対し、24種類のときはわずか約3%でした。
しかし、後に研究者たちが50の実験をまとめると、選択肢が多いことの平均的な効果はほぼゼロでした。2015年の分析では、選択過多は主に、選択肢が複雑なときや、自分が何をほしいのかわからないときなど、特定の状況で起こることがわかりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
ジャム研究は有名だが、平均効果はほぼゼロで、特定の状況で起こる現象だとわかった、という流れなので D。
Q2. Among people who stopped at the table with 24 jams, about what percentage bought jam?
only about 3% when there were 24 とあるので A。30%は6種類のとき。
Q3. According to the 2015 analysis, when is choice overload more likely?
such as when options are complex or people do not know what they want とあるので C。
In 2000, researchers set up a tasting booth in an upscale California supermarket. During some hours it displayed 24 varieties of jam, and during others just 6. The big display drew more passers-by, about 60 percent versus 40 percent. But among those who stopped, roughly 30 percent bought jam from the small selection, compared with only 3 percent from the large one. The study made the "paradox of choice" famous.
Later research made the story messier. A 2010 meta-analysis of 50 experiments involving about 5,000 participants found that the average effect of large assortments was virtually zero. Some studies showed overload, while others found that more options increased satisfaction or purchases.
Then a 2015 meta-analysis of 99 results found that overload is likely when the options are complex, the decision is difficult, preferences are unclear, or people want to minimize effort. With those conditions taken into account, the effect was reliable.
So the two analyses fit together, because choice overload is real but depends on the situation. The jam study has its own weak spot. Because shoppers chose whether to stop, those drawn to 24 jams may have differed from those drawn to 6.
194 words ・ CEFR B2
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2000年、研究者たちはカリフォルニアの高級スーパーに試食ブースを設けました。ある時間帯は24種類のジャムを並べ、別の時間帯はたった6種類にしました。多いほうの陳列はより多くの通行人を引きつけました(約60パーセント対40パーセント)。しかし立ち寄った人のうち、ジャムを買ったのは、少ない品ぞろえでは約30パーセント、多い品ぞろえではわずか3パーセントでした。この研究によって「選択のパラドックス」は有名になりました。
その後の研究で話はややこしくなりました。約5,000人が参加した50の実験を対象とする2010年のメタ分析は、多い品ぞろえの平均的な効果は事実上ゼロだと見いだしました。選択過多を示す研究がある一方で、選択肢が多いほど満足度や購入が増えるという研究もあったのです。続いて、99の結果を対象とした2015年のメタ分析は、選択過多が起きやすいのは、選択肢が複雑なとき、決定が難しいとき、好みがはっきりしないとき、あるいは手間を最小限にしたいときだと突き止めました。
これらの条件を考慮すると、効果は確かなものでした。つまり2つの分析は両立します。
選択過多は実在しますが、状況しだいなのです。ジャムの研究そのものにも弱点があります。立ち寄るかどうかは買い物客しだいだったため、24種類に引き寄せられた人と6種類に引き寄せられた人は、そもそも違う人たちだったかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main argument of the passage?
choice overload is real but depends on the situation が主張の中心なので B。
Q2. Why was the average effect in the 2010 meta-analysis close to zero?
Some studies showed overload, while others found that more options increased satisfaction or purchases とあり、打ち消し合ったので D。
Q3. What weak spot of the original jam study is mentioned?
Because shoppers chose whether to stop, those drawn to 24 jams may have differed from those drawn to 6 とあるので A。
重要単語
- choice overloadC1名詞(句)選択過多Choice overload can make online shopping tiring.
overload は「積みすぎ・過負荷」。information overload(情報過多)も頻出。 - assortmentC1名詞品ぞろえThe store has a large assortment of teas.
sort(種類)から。an assortment of ~「いろいろな~の詰め合わせ」。 - meta-analysisC1名詞メタ分析(多くの研究をまとめる分析)A meta-analysis combines the results of many studies.
meta- は「~を超えた、~についての」。1つの研究より信頼性が高いとされるが、元の研究の質に左右される。 - moderatorC1名詞調整変数(効果の大きさを左右する条件)Expertise is a moderator of choice overload.
一般には「司会者」。moderate(ほどよい・和らげる)と同語源。 - deferC1動詞先延ばしにするToo many options may lead people to defer a decision.
postpone, put off と同義。defer to ~ は「~の意見に従う」と意味が変わる。 - paradoxB2名詞逆説、パラドックスThe paradox of choice says more options can make us less happy.
para(反して)+dox(意見)。一見矛盾するが真理を含む主張。形容詞は paradoxical。
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「ジャムを24種類並べたら6種類のときより売れなかった」という超有名研究。でも後から50本くらいの実験をまとめたら、平均の効果はほぼゼロだったらしい。選択肢の多さが邪魔になるのは条件しだい。
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- Iyengar & Lepper (2000) When choice is demotivating: can one desire too much of a good thing?, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
- Scheibehenne, Greifeneder & Todd (2010) Can there ever be too many options? A meta-analytic review of choice overload, Journal of Consumer Researchdoi.org
- Chernev, Böckenholt & Goodman (2015) Choice overload: a conceptual review and meta-analysis, Journal of Consumer Psychologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










