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「2分のパワーポーズでホルモンが変わる」は再現されなかった。それでも残ったものとは

「2分のパワーポーズでホルモンが変わる」は再現されなかった。それでも残ったものとは

読む前に予想してみよう!

パワーポーズでテストステロンが増える効果は、大規模な追試でも確認された

研究カード(どんな研究?)
対象
大学生など成人
規模
42人(元研究)/約200人(追試)
研究の種類
ランダム化実験と追試
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

胸を張るポーズでホルモンが変わるという有名研究は、大規模な追試で再現されず。ただ「自信がある気分」は少し上がるという報告は残った。

ひとことで言うと胸を張るとホルモンが変わる説は、追試で再現されなかった。でも気分は少し上がるかも!

もくじ
  1. はじまりは2010年の小さな実験
  2. 200人規模の追試では…
  3. なぜ最初の実験では「効果」が出たのか?
  4. 「再現性の危機」という大きな流れ
  5. それでも「気分」は残った
  6. まとめ

大事なプレゼンや面接の前、トイレの個室で両手を腰に当てて胸を張る。いわゆる「パワーポーズ」です。

「たった2分でホルモンが変わり、自信がわく」。2010年代、この話は講演動画をきっかけに世界中に広まりました。

ところがその後、科学の世界では「本当にそうなの?」という大きな検証が起こります。心理学の歴史に残る、ちょっとドラマチックな話です。

01はじまりは2010年の小さな実験

体の姿勢を変えるだけで、心だけでなくホルモンまで変わる。インパクトは抜群でした。

02200人規模の追試では…

2015年、スイスやスウェーデンなどの研究者ラネヒル(Ranehill)さんらが、同じ『Psychological Science』で約200人を対象にした追試を発表しました。追試とは、同じような方法で実験をやり直して、結果がまた出るかを確かめること。

結果は、

  • ホルモンの変化は確認されなかった
  • リスクのとり方にも差はなかった
  • ただし「自分は力強い」と感じる気持ち(自己申告)は少し上がった

その後、もとの研究の著者の一人であるカーニーさん自身も、2016年に「パワーポーズの効果が本物だとは思わない」という趣旨の声明を公表し、大きな話題になりました。

小さな実験1つより、大きな追試の結果が重く見られる
小さな実験1つより、大きな追試の結果が重く見られる

03なぜ最初の実験では「効果」が出たのか?

参加者が42人と少ない実験では、偶然のばらつきで、たまたま大きな差が出てしまうことがあります。サイコロを10回ふって「6が4回も出た!」と驚いても、1000回ふればだいたい6分の1に落ち着く――それと似た話です。

最初の研究者たちがわざとまちがえたわけではなく、小さな実験には、もともとそういう危うさがあるということ。だからこそ、追試が大切なんです。

04「再現性の危機」という大きな流れ

実はこの騒ぎは、パワーポーズだけの問題ではありません。2015年には、心理学の3つの学術誌に2008年に載った研究100件を追試した大プロジェクトの結果が『Science』に載り、元の研究と同じくらいはっきりした結果が出たのは半分以下だったことが報告されました。

これをきっかけに、心理学では、

  • 実験の前に計画を登録しておく(あとから都合よく分析を変えない)
  • 人数を増やして実験する

といった改革が進みました。パワーポーズは、科学が自分を正していくプロセスの象徴にもなったんです。

05それでも「気分」は残った

一方で、カディさんらは2018年、姿勢と気分に関する多くの研究を見直した分析を発表し、「力強く感じる」といった気持ちへの効果には根拠があると主張しました。ホルモンの話とは切り分けて考える必要がありそうです。

06まとめ

パワーポーズの物語は、「すごい発見」がそのまま真実とは限らないこと、そして科学は追試でまちがいを直していけることを教えてくれます。

本番前に胸を張るのは、悪いことではありません。ただ「ホルモンが変わるから」ではなく、「ちょっと気分が上がるかも」くらいの気持ちで。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 2010, a study of 42 people reported that holding a "power pose," such as standing with your hands on… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In 2010, a study of 42 people reported that holding a "power pose," such as standing with your hands on your hips and your chest out, for about two minutes raised testosterone and lowered cortisol, a stress hormone. The idea spread around the world through a popular talk.

In 2015, however, researchers repeated the experiment with about 200 people. They found no change in hormones and no difference in risk-taking, although people said they felt slightly more powerful. Small studies can produce large differences just by chance, like rolling a die only ten times. This is why replication, or repeating experiments, is so important in science.

106 words ・ CEFR B1

和訳を見る

2010年、42人を対象にした研究で、両手を腰に当てて胸を張るような「パワーポーズ」を約2分間とると、テストステロンが増え、ストレスホルモンであるコルチゾールが減ると報告されました。この考えは人気の講演を通じて世界中に広まりました。

しかし2015年、研究者たちは約200人で実験をくり返しました。ホルモンの変化も、リスクのとり方の差も見られませんでしたが、人々は少し力強く感じたと答えました。小さな研究では、サイコロを10回しか振らないときのように、偶然だけで大きな差が出ることがあります。だからこそ、追試、つまり実験をくり返すことが科学ではとても大切なのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What did the 2015 study find?

Q3. Why does the author mention rolling a die ten times?

重要単語

  • replicationC1
    名詞追試、再現Replication is how science checks itself. 動詞 replicate(再現する)。replica(複製品)と同語源。科学論の長文で頻出。
  • postureB2
    名詞姿勢Good posture may make you feel more confident. position と同語源(ラテン語 ponere「置く」)。pose とも形・意味が近い。good / bad posture の形でよく使う。
  • testosteroneC1
    名詞テストステロン(ホルモンの一種)Testosterone levels did not change in the larger study. 男性ホルモンの代表。発音は /tesˈtɑːstəroʊn/(テスタステロウン)でアクセントは第2音節。
  • sample sizeB2
    名詞(句)標本の大きさ(参加者数)A small sample size can produce chance results. 研究の信頼性を判断する基本ポイント。a large / small sample size の形で使う。
  • reproducibilityC1
    名詞再現性Psychology faced a reproducibility crisis. reproduce(再現する)+-ibility(できること)。reproducibility crisis「再現性の危機」は科学論の重要語。
  • by chanceB1
    副詞(句)偶然にThe difference may have appeared by chance. accidentally とほぼ同じ。by any chance は「ひょっとして」で疑問文に使う別の意味なので注意。
  • modestB2
    形容詞控えめな、わずかな/謙虚なThere was only a modest increase in confidence. 人について使うと「謙虚な」。数量について使うと「さほど大きくない」。読解では後者の意味がよく問われる。
「2分間胸を張るポーズでホルモンが変わる」という超有名研究、200人規模の追試では再現されなかったらしい。ただ「自分は強い」と感じる気分は少し上がるという報告は残っている。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Carney, Cuddy & Yap (2010) Power Posing: Brief Nonverbal Displays Affect Neuroendocrine Levels and Risk Tolerance, Psychological Sciencedoi.org
  2. Ranehill et al. (2015) Assessing the Robustness of Power Posing: No Effect on Hormones and Risk Tolerance in a Large Sample of Men and Women, Psychological Sciencedoi.org
  3. Cuddy, Schultz & Fosse (2018) P-Curving a More Comprehensive Body of Research on Postural Feedback Reveals Clear Evidential Value for Power-Posing Effects: Reply to Simmons and Simonsohn (2017), Psychological Sciencedoi.org
  4. Open Science Collaboration (2015) Estimating the reproducibility of psychological science, Sciencedoi.org