暗い部屋で最初は真っ暗なのに、だんだん見えてくるのはなぜ? 目が慣れるまで約30分かかる理由

読む前に予想してみよう!
暗い所に入ってから目が慣れるのに、ふつうは10秒ほどで十分だ
ある程度見えるまで数分、暗さへの感度が最大近くになるまでには30分前後かかるとされる。
- 対象
- 健康な成人・網膜の研究
- 規模
- 古典的な測定実験+総説
- 研究の種類
- 実験研究・総説
- 確かさ
- ★★★★☆
暗い所で目が慣れる「暗順応」は2段階。数分で色を見る細胞が慣れ、その後、暗さに強い細胞(桿体)の色素がゆっくり作り直されて、30分前後かけて感度が大きく上がる。
ひとことで言うと暗い所では、目のセンサーが「暗いモード」に切りかわるのに時間がかかる!
映画館に遅れて入ると、足元が真っ暗で一歩も進めない。ところが数分たつと座席が見えはじめ、上映が終わるころには、まわりの人の顔までわかる。
答えを先に言うと、目には明るい所用と暗い所用、2種類のセンサー(視細胞)があり、暗い所用のセンサーが本気を出すまでには、30分前後かかるからです。暗さに強いセンサーの色素は、明るい光で一度こわれると、作り直すのに時間がかかるのです。
01目には2種類のセンサーがある
目の奥の網膜には、光を感じる細胞が2種類あります。
- 錐体(すいたい):明るい所で働き、色を見分ける。感度は低め
- 桿体(かんたい):暗い所で働く。色は見分けられないが、感度がとても高い
オーストラリアの研究者ラム(Lamb)さんの2015年の総説によると、私たちの網膜の視細胞のうち、錐体はわずか約5%。残りの約95%は桿体です。現代の明るい街では錐体ばかり使っていますが、桿体は光の粒(光子)1個の到着さえ信号にできるほどの高感度センサーです。
02暗順応は「2段階」で進む
この「2段階カーブ」は、今でも目の教科書に載っている古典的な発見です。最初の数分で「なんとなく見える」のは錐体のおかげ、30分後に「星がたくさん見える」のは桿体のおかげ、というわけです。

03なぜ桿体はこんなに遅いのか
桿体の中では、ロドプシンという色素が光を受け止めています。ロドプシンは光を受けると形が変わって「分解」された状態になり、もう一度使うには、ビタミンA由来の部品を作り直して組み込む必要があります。
2004年、ラムさんとピュー(Pugh)さんは、この作り直しのしくみを詳しく分析した総説で、強い光のあとの暗順応の速さは、作り直した部品が桿体に届けられるスピードで決まっていると結論しました。いわば、工場から部品が届くのを待っている状態なのです。
この総説では、日本の眼科医・小口忠太さんが報告した小口病など、暗順応がとても遅くなる病気も分析されています。部品の流れのどこかが滞ると、暗さに慣れるのに何時間もかかることがあるのです。
04どんでん返し:赤い光なら「暗いモード」をこわさない
桿体には、もう一つの特徴があります。赤い光にはあまり反応しないのです。
そのため、星空観察やプラネタリウム、船や飛行機の夜間の操縦室などでは、赤いライトが使われます。赤い光なら、手元の地図を読んでも桿体のロドプシンをあまりこわさず、暗順応をキープできるからです。
ちなみに「海賊が眼帯をしていたのは、片目を暗さに慣らしておき、暗い船内に飛び込んだときにすぐ見えるようにするため」という説がネットでよく語られます。理屈としては筋が通っていますが、歴史的な証拠はなく、あくまで推測の域を出ません。
05まとめ
暗い部屋でだんだん見えてくるのは、目のセンサーが錐体から桿体へとバトンタッチしていくから。桿体の色素は一度こわれると作り直しに時間がかかるため、完全に慣れるまで30分前後かかります。
今夜、星空を見上げるなら、スマホをしまって30分。あなたの目の「暗いモード」が、きっと見違えるほどの星を見せてくれます。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen we enter a dark room, we see almost nothing at first, but our vision slowly improves.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
When you walk into a dark movie theater, you cannot see anything at first. But slowly, you start to see. Our eyes have two kinds of light cells. Cones work in bright light and see colors.
Rods work in the dark. Cones get used to the dark in a few minutes. Rods need about 30 minutes, because bright light breaks a special chemical in them, and it takes time to rebuild it.
72 words ・ CEFR A2
和訳を見る
暗い映画館に入ると、最初は何も見えません。でも、だんだん見えるようになってきます。私たちの目には、光を感じる細胞が2種類あります。錐体は明るい所で働き、色を見ます。桿体は暗い所で働きます。
錐体は数分で暗さに慣れます。桿体は約30分かかります。明るい光が桿体の中の特別な物質をこわしてしまい、それを作り直すのに時間がかかるからです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
暗い所でだんだん見えてくる理由を、2種類の細胞で説明しているので B。
Q2. How long do rods need to get used to the dark?
Rods need about 30 minutes とあるので A。数分で慣れるのは錐体。
Q3. In this passage, "get used to" means ...
get used to ~ は「~に慣れる」。暗さに対応できるようになる、という意味なので C。
When we enter a dark room, we see almost nothing at first, but our vision slowly improves. This process is called dark adaptation. The retina has two types of light-sensitive cells.
Cones work in bright light and detect color, while rods are far more sensitive and work in the dark. About 95 percent of these cells are rods. In the 1930s, American researchers measured how quickly people could see faint lights after leaving bright light.
Sensitivity rose in two stages. Cones adapted within a few minutes, and rods took about 30 minutes. Rods are slow because their pigment, rhodopsin, is broken down by bright light and must be rebuilt using a part made from vitamin A.
116 words ・ CEFR B1
和訳を見る
暗い部屋に入ると、最初はほとんど何も見えませんが、視力はだんだん回復していきます。この過程は暗順応と呼ばれます。網膜には、光を感じる細胞が2種類あります。
錐体は明るい所で働いて色を感じ取り、桿体ははるかに感度が高く、暗い所で働きます。これらの細胞の約95%は桿体です。1930年代、アメリカの研究者たちは、明るい光から離れた後、人がどれくらい早くかすかな光を見られるようになるかを測定しました。
感度は2段階で上がりました。錐体は数分以内に慣れ、桿体は約30分かかったのです。桿体が遅いのは、その色素であるロドプシンが明るい光で分解され、ビタミンAから作られる部品を使って作り直さなければならないからです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
暗順応が錐体と桿体の2段階で進むこと、桿体が遅い理由を説明しているので D。
Q2. About what percentage of the light-sensitive cells are rods?
About 95 percent of these cells are rods. とあるので C。30 は桿体が慣れるのにかかる分数。
Q3. Based on the passage, why might it take longer to adapt after looking at very bright light?
ロドプシンは明るい光で分解され、作り直す必要があるので、光が強いほど作り直す量が増えて時間がかかると推論できる。A。
Entering a dark cinema, we are initially almost blind, yet vision gradually returns. This dark adaptation depends on two classes of photoreceptors. Cones, which mediate color vision in daylight, account for only about 5 percent of the retina's photoreceptors; the remaining 95 percent are rods, sensitive enough to signal the arrival of a single photon.
In experiments published in 1937, Hecht and colleagues tracked the faintest light observers could detect after exposure to very bright light. Sensitivity improved along a two-branched curve: a rapid rise over the first few minutes that leveled off as cones adapted, followed by a slower rod-driven rise approaching its maximum after roughly 30 minutes. The brighter the preceding light, the longer recovery took.
Why are rods so slow? Light converts their pigment, rhodopsin, into a bleached form, and a vitamin A-derived component must be regenerated before it can function again. A 2004 review concluded that recovery after intense light is limited by the rate at which this component is delivered to the rods. Because rods respond poorly to red light, stargazers use red lamps to preserve adaptation. The popular claim that pirates wore eye patches to keep one eye dark-adapted, however, lacks historical evidence.
199 words ・ CEFR B2
和訳を見る
暗い映画館に入ると、最初はほとんど何も見えませんが、視力はだんだん戻ってきます。この暗順応は、2種類の視細胞に支えられています。昼間の色の視覚を担う錐体は、網膜の視細胞の約5%にすぎず、残りの95%は桿体で、光の粒(光子)1個の到着さえ信号にできるほど感度が高いのです。
1937年に発表された実験で、ヘクトらは、とても明るい光を浴びた後に観察者が検出できる最も弱い光を時間を追って調べました。感度は2つの枝をもつ曲線を描いて向上しました。最初の数分で急に上がり、錐体が慣れると横ばいになり、続いて桿体による、よりゆっくりした上昇が起き、約30分後に最大近くに達したのです。事前の光が明るいほど、回復には時間がかかりました。
なぜ桿体はこれほど遅いのでしょうか。光は桿体の色素ロドプシンを分解された状態に変えてしまい、再び働くためには、ビタミンA由来の部品を作り直さなければなりません。2004年のレビューは、強い光の後の回復は、この部品が桿体に届けられる速さで決まると結論づけました。桿体は赤い光にあまり反応しないため、星空観察では暗順応を保つために赤いライトが使われます。ただし、海賊が片目を暗さに慣らしておくために眼帯をしていたというよく知られた説には、歴史的な証拠がありません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
2段階の暗順応曲線と、桿体の色素の作り直しが遅さの理由であることが中心なので C。
Q2. According to Hecht's experiments, what happened when the preceding light was brighter?
The brighter the preceding light, the longer recovery took. とあるので B。the 比較級, the 比較級 の構文。
Q3. How does the author treat the pirate eye-patch claim?
lacks historical evidence とあるので D。
重要単語
- adaptB1動詞慣れる、順応するYour eyes adapt to the dark slowly.
adapt to ~「~に順応する」。名詞 adaptation。adopt(採用する)とつづりが似ているので注意。 - retinaC1名詞網膜The retina is at the back of the eye.
カメラのフィルム(センサー)にあたる部分。「網」を意味するラテン語 rete から。 - rodC1名詞桿体(暗い所で働く視細胞)Rods help us see at night.
rod はもともと「棒」。細胞の形が棒状なのでこう呼ばれる。 - coneC1名詞錐体(色を見る視細胞)Cones let us see colors in bright light.
cone はもともと「円錐」。アイスクリームのコーンも同じ語。 - sensitivityB2名詞感度Sensitivity to light increases in the dark.
形容詞 sensitive。sensitivity to ~「~に対する感度・敏感さ」。 - faintB2形容詞かすかなAfter 30 minutes, we can see faint stars.
動詞では「気絶する」。a faint hope「かすかな望み」。
このネタ、誰かに教えたくなった?
映画館に入った直後は真っ暗なのに、だんだん見えてくる。目が暗さに慣れきるには30分前後かかるらしい。暗さに強い細胞の色素は、光で一度こわれると作り直しに時間がかかるから。星空観察の赤いライトは、この細胞が赤に鈍いから。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(3件)タップで表示
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











