歩きながら考えたほうが、座って考えるよりアイデアが平均60%多く出た
ウラ取りライフハックNo.273

歩きながら考えたほうが、座って考えるよりアイデアが平均60%多く出た

白い壁の前で歩くだけでも、座るよりアイデアが増えた。

ホントTRUE

この判定の対象「歩きながら考えると、アイデアがたくさん出やすくなる」

うなり度 読む時間8分 出典5件 確認した事実26件
もくじ
  1. 歩きながら考えると、物の使い道のアイデアが平均60%増えた
  2. 白い壁の前のルームランナーでも、外を歩くのと同じように効いた
  3. 答えが1つに決まる問題では、歩くと少し成績が下がった
  4. 決められた道を歩かされると、アイデアは増えにくくなった
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

スタンフォード大学の小さな部屋に、ルームランナーが1台置かれています。目の前は、何もない白い壁です。大学生がその上を自分のペースで歩きながら、研究者の質問に答えていきます。

質問は、身の回りの物の、ふつうとは違う使い道を考えるものです。3つの物の組が出され、1組につき4分で、できるだけ多くの使い道を言います。

同じ学生に、座って答えてもらったときとも比べました。すると、歩いているときのほうが、アイデアの量が平均60%増えたのです。景色が変わらない白い壁の前でも、です。

「歩くとアイデアが出る」は、昔からよく言われます。この記事では、まずスタンフォード大学の4つの実験を紹介します。次に、歩いても効かなかった問題を見ます。最後に、決められた道を歩かされると効果が弱まった実験と、23の研究をまとめた分析を確かめます。

01歩きながら考えると、物の使い道のアイデアが平均60%増えた

2014年、スタンフォード大学教育大学院のマリリー・オペッゾ(Marily Oppezzo)とダニエル・シュワルツ(Daniel L. Schwartz)が、研究を発表しました。大学生などの大人あわせて176人で、4つの実験をしたのです。

アイデアを測るのに使ったのは、この記事の最初に書いた「物の別の使い道」を考える課題です。数えるのは、使い道として成り立つ答えだけです。研究者があげた例では、「タイヤを小指の指輪にする」は数えません。また、ほかの参加者が誰も出さなかった答えは、「新しい答え」として数えました。

1つ目の実験では、大学生48人が、まず座って課題をしました。次に、ルームランナーの上を、自分のペースで歩きながら課題をしました。

結果、参加者の81%で、歩いているときのほうが点数が上がりました。スタンフォード大学の発表によると、室内でまず座り、次にルームランナーで歩いた実験では、歩いているときのアイデアの量が、座っているときより平均60%多くなりました。

2つ目の実験では、順番を変えて比べました。座ってから歩く組、歩いてから座る組、2回とも座る組です。ここでも、歩くと点数が上がりました。そして、歩いたあとに座った人にも、しばらく効果が残っていました。

02白い壁の前のルームランナーでも、外を歩くのと同じように効いた

研究者のオペッゾは、外を散歩すれば、ずっと大きな効果が出ると予想していました。ところが、結果は違いました。室内で白い壁に向かって歩いても、外を歩いても、座っているときの約2倍のアイデアが出た実験があったのです。オペッゾは、驚いた気持ちをこう話しています。

「外を歩けば圧倒的な結果になると思っていた。でも、狭くて退屈な部屋のルームランナーでも、強い結果が出た」

では、外を歩くことに意味はないのでしょうか。4つ目の実験では、ここをさらに細かく調べました。参加者を4つの組に分けたのです。

  1. 室内で座る。
  2. 室内でルームランナーを歩く。
  3. 外のキャンパスを歩く。
  4. 外のキャンパスを、車いすに座って押してもらう。

4つ目の組には、はっきりした目的がありました。車いすに乗れば、自分は歩かなくても、歩くのと同じように景色が流れていきます。こうすると、「景色が動くこと」と「自分の足で歩くこと」の効果を分けて見られます。

この実験の課題は、たとえを考えることでした。たとえば「荒らされた金庫」と聞いて、同じように「大事なものを失い、傷つけられた」状態の、別の場面を考えます。「からっぽのさいふ」は、その深い意味をとらえていない答えとされました。

外を歩いた組は、もっとも新しく、質の高いたとえを出しました。外を歩いた人は全員が、質の高い新しいたとえを少なくとも1つ出しました。室内で座った人では、それが50%でした。論文によると、「外の景色を見ること」の効果と「歩くこと」の効果は、別々のものとして見分けられました。スタンフォード大学の発表は、主に効いていたのは景色ではなく、歩くことそのものだったとまとめています。

03答えが1つに決まる問題では、歩くと少し成績が下がった

1つ目の実験では、もう1種類の課題もしていました。3つの言葉に共通してつながる1語を探す課題です。

英語の例では、「cottage(カッテージ)」「Swiss(スイス)」「cake(ケーキ)」が出ます。答えは「cheese(チーズ)」です。カッテージチーズ、スイスチーズ、チーズケーキになるからです。この課題は、ひらめきが必要ですが、正解は1つしかありません。

この課題で、歩いたときに点数が上がった人は、23%だけでした。スタンフォード大学の発表では、歩きながら答えた人のほうが、座って答えた人より少し成績が悪かったとされています。

オペッゾは、歩けばミケランジェロのような天才になれるわけではない、と話しています。歩くことが役立つのは、アイデアをたくさん出す、最初の段階だというのです。

歩くと増えたのは、アイデアの数や種類。答えが1つに決まる問題には効かなかった。
歩くと増えたのは、アイデアの数や種類。答えが1つに決まる問題には効かなかった。

04決められた道を歩かされると、アイデアは増えにくくなった

歩くことのどこが効いているのでしょうか。足を動かすことでしょうか。それとも、別の何かでしょうか。

2016年、台湾の研究者クオ(C.-Y. Kuo)とイエ(Y.-Y. Yeh)が、歩き方を変えて調べました。参加者は2分間歩きながら、箸の変わった使い道を考えます。

  • 床の四角い道にそって歩く組。
  • 好きなように自由に歩く組。
  • ほかの人がレーザーポインターで自由に示した道を、そのままたどる組。

成績がよかったのは、自由に歩いた組だけでした。ほかの人が示した道をたどった組は、道の形は自由なのに、効果が出ませんでした。著者たちは、自分で決めた自由な動きであることが大事だ、と考えています。この研究では、自由に歩いた高齢者が、四角い道を歩いた若い人より、めずらしいアイデアを出していました。

2022年には、ドイツのヴュルツブルク大学のムラリ(S. Murali)とヘンデル(B. Händel)が、さらに一歩進めました。17人に、次の4つの状態で使い道を考えてもらったのです。

  • 部屋の中を自由に歩く。
  • 壁から壁へ、まっすぐ往復して歩く。
  • ひじかけいすに、楽に座る。
  • いすに座って、画面の十字の印を見つめ続ける。

答えの種類の多さを点数にすると、結果はこうなりました。自由に歩くと7.2点、まっすぐ往復だと3.6点。楽に座ると7.1点、印を見つめると3.1点でした。歩くか座るかでは、ほとんど差がありません。差が出たのは、動きをしばられるかどうかでした。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

「広げる考え方」と「しぼる考え方」は、別の力

心理学では、考える力を大きく2つに分けることがあります。1つは「拡散的思考」です。1つの問いから、できるだけ多くの答えを広げていく考え方です。物の使い道を考える課題は、これを測ります。

もう1つは「収束的思考」です。たくさんの可能性の中から、正しい答えを1つにしぼる考え方です。3つの言葉に共通する1語を探す課題は、こちらを測ります。

スタンフォード大学の実験で、歩くと伸びたのは、アイデアを広げる力(使い道の課題)だけでした。答えを1つにしぼる力(言葉を探す課題)は、むしろ少し下がりました。つまり「歩くと頭がよくなる」のではありません。アイデアを広げる作業に向いた状態になる、ということです。

ムラリとヘンデルは、動きをしばられるとアイデアが減るしくみについて、1つの説明を提案しています。体の動きをしばられないと、注意が向く範囲が広がる。注意が広いと、考えを別の方向へ切りかえやすくなる、というものです。画面の小さな印を見つめ続けたり、決められた線の上を歩いたりすると、注意は狭い所に集まります。ただし、これはまだ提案の段階で、確かめられたしくみではありません。

23の研究をまとめると、効果は「大きい」が、注意も必要

2026年、カナダのマクマスター大学などのチームが、それまでの研究をまとめて分析しました。たくさんの研究を集めて1つの答えを出す方法を、メタ分析と言います。集まったのは、16本の論文にふくまれる23の研究で、参加者は合わせて1,036人です。ほとんどが大学生などでした。

結果、アイデアを広げる力に対しては、歩くことに大きな効果がありました。効果の大きさは「d=0.93」です。d は効果の大きさを表す数で、0なら差はありません。0.93を40人のクラスのテストの順位にたとえると、真ん中の20番の人が7番くらいに上がるほどの差です(点数が平均を真ん中になだらかに広がっていると考えた場合)。論文も、これを「大きな効果」と書いています。証拠の確かさは「中くらい」と判定されました。一方、答えを1つにしぼる力への効果はほぼゼロで、確かさは「とても低い」とされました。室内で歩くか外で歩くかでは、効果に差はありませんでした。

ただし、著者たちは大事な注意も書いています。よい結果の研究の多くが、オペッゾという1人の研究者によるものでした。方法も似ているため、かたよりが入っているおそれがあります。ほかのチームによるやり直しの研究が必要だ、と著者たちは書いています。

研究から分かることと、分からないこと

スタンフォード大学の実験で歩いたのは、1回5〜16分ほどの短い時間です。参加者も、多くが大学生でした。毎日長く歩く習慣が、発想にどう効くのかは、まだ分かっていません。

また、「アイデアの数が増える」ことと、「よいアイデアが生まれる」ことは、同じではありません。スタンフォード大学の4つ目の実験は、たとえの質も調べましたが、ほかの多くの研究は、主に数や種類を数えています。使える研究結果を正直にまとめると、「アイデアを広げたいときに、少し歩くのは試す価値がある」くらいになります。

05まとめ

スタンフォード大学の実験では、歩きながら考えると、物の使い道のアイデアが平均60%増えました。白い壁の前のルームランナーでも効果が出ました。外で車いすに乗って景色を見るだけの組より、自分の足で外を歩いた組のほうが、質の高いたとえを出しました。

ただし、答えが1つに決まる問題には効きません。決められた道を歩かされても、効果は弱まります。アイデアを出したいときは、行き先を決めずに、好きなように歩いてみてください。

人に話すなら、こう言おう

歩きながら考えると、座っているときよりアイデアが6割も増えたんだって。白い壁の前のルームランナーでも効いたらしいよ。でも、答えが1つに決まるクイズみたいな問題には効かないんだって。
READ IN ENGLISH

英語で読む

Walk Before You Think

CEFR A2227 words4択 5問全訳つき
0:00

英文をタップすると、その文の訳が出ます。

At Stanford University, a student walks on a treadmill in a small room.スタンフォード大学の小さな部屋で、一人の学生がルームランナーの上を歩いています。 In front of the student, there is only a white wall.学生の目の前には、白い壁しかありません。 The student is thinking of new ways to use everyday things.その学生は、身の回りの物の新しい使い道を考えています。

In 2014, two researchers, Marily Oppezzo and Daniel Schwartz, did four experiments with 176 people.2014年、マリリー・オペッゾとダニエル・シュワルツという2人の研究者が、176人で4つの実験をしました。 In one test, people sat first and then walked.ある実験では、参加者はまず座り、それから歩きました。 When they walked, they had 60 percent more ideas on average.歩いているときのほうが、アイデアが平均で60%多く出ました。 Walking in front of the boring wall worked too.退屈な壁の前で歩いても効きました。

But walking did not help with every kind of thinking.でも、歩くことは、あらゆる考え方に役立つわけではありませんでした。 In another task, people looked for one word that went with three other words.別の課題では、3つの言葉のすべてにつながる1語を探しました。 This task has only one correct answer.この課題には、正しい答えが1つしかありません。 On this task, walkers did a little worse than sitters.この課題では、歩いた人のほうが、座った人より少しだけ成績が悪かったのです。

Later studies looked more closely.その後の研究は、もっと細かく調べました。 In Taiwan, people who walked freely had better ideas than people who walked along a rectangle path.台湾では、自由に歩いた人のほうが、四角い道にそって歩いた人よりよいアイデアを出しました。 In Germany, people who sat freely in a chair also did well.ドイツでは、いすに楽に座った人も、よい成績でした。 People did badly when they had to stare at a small mark on a screen.画面の小さな印を見つめ続けなければならないときは、成績が悪くなりました。 So freedom to move may be important.つまり、自由に動けることが大事なのかもしれません。

In 2026, a team put 23 studies together.2026年、あるチームが23の研究をまとめました。 They found a large effect of walking on making many ideas.その結果、たくさんのアイデアを出すことに対して、歩くことに大きな効果が見つかりました。 But many good results came from the same researcher, so they said other teams should test it again.でも、よい結果の多くが同じ研究者から出ていたので、ほかのチームがもう一度確かめるべきだとも書きました。 Next time you need ideas, take a short walk and go wherever you like.次にアイデアが欲しいときは、少し歩いてみましょう。行き先は好きなところでかまいません。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How many people were in the four experiments by Oppezzo and Schwartz?

    オペッゾとシュワルツの4つの実験には、何人が参加しましたか。

  3. Q3What happened on the task with only one correct answer?

    正しい答えが1つしかない課題では、何が起きましたか。

  4. Q4In paragraph 4, the word "stare" is closest in meaning to ...

    第4段落の stare という語に最も意味が近いのは…

  5. Q5Which is true about the 2026 study?

    2026年の研究について正しいのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • treadmill名詞
    ルームランナー、トレッドミル

    My father walks on a treadmill every morning.

    父は毎朝ルームランナーで歩く。

    💡 ベルトが回る運動器具。「ルームランナー」は日本での呼び名。

  • researcher名詞
    研究者

    The researcher asked us many questions.

    その研究者は私たちにたくさん質問した。

    💡 research(研究)+ -er(〜する人)。

  • experiment名詞
    実験

    We did a science experiment with water and salt.

    私たちは水と塩で理科の実験をした。

    💡 do an experiment で「実験をする」。

  • on average熟語
    平均して

    I sleep seven hours a night on average.

    私は平均して一晩7時間眠る。

    💡 average(平均)。above average で「平均以上」。

  • task名詞
    課題、仕事

    Cleaning the room is not an easy task.

    部屋のそうじは簡単な仕事ではない。

    💡 テストや実験で「やること」を表すときによく使う。

  • stare動詞
    じっと見つめる

    Don't stare at people on the train.

    電車で人をじろじろ見てはいけない。

    💡 stare at 〜 の形で使う。look より長く、じっと見るイメージ。

  • freedom名詞
    自由

    Students have the freedom to choose their club.

    生徒には部活を選ぶ自由がある。

    💡 形容詞 free(自由な)の名詞形。

  • effect名詞
    効果、影響

    This medicine had a good effect on my cold.

    この薬は私のかぜによく効いた。

    💡 have an effect on 〜 で「〜に影響を与える」。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 26件)。

  1. Oppezzo, M. & Schwartz, D. L. (2014) Give your ideas some legs: The positive effect of walking on creative thinking, Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognitiondoi.org
  2. Stanford study finds walking improves creativity(Stanford Report 2014年4月24日・保存版)web.archive.org
  3. Kuo, C.-Y. & Yeh, Y.-Y. (2016) Sensorimotor-Conceptual Integration in Free Walking Enhances Divergent Thinking for Young and Older Adults, Frontiers in Psychologydoi.org
  4. Murali, S. & Händel, B. (2022) Motor restrictions impair divergent thinking during walking and during sitting, Psychological Researchdoi.org
  5. Thabane, A. ほか (2026) The impact of walking on creative thinking: A systematic review and meta-analysis, PLOS Onedoi.org

文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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