透明マントは2006年に“完成”していた。ただし見えなくなるのは電子レンジの仲間の電波の中だけ

読む前に予想してみよう!
人を丸ごと目で見えなくする透明マントは、すでに実用化されている
特定の電波や限られた条件の光で隠す実験はあるが、どんな角度・色の光でも消えるマントはない。
- 対象
- メタマテリアルによる電磁波クローク
- 規模
- 実験室スケール(数cmの物体)
- 研究の種類
- 理論研究・実験研究
- 確かさ
- ★★★★☆
光や電波の進み方を人工構造で操る「メタマテリアル」で、2006年にマイクロ波で物体を隠す実験が成功。ただ人を目で見えなくするマントは、まだ原理的にも難しい。
ひとことで言うと透明マントは本当に作られた。でも“目に見える光”ではまだムリ!
ファンタジー映画でおなじみの「透明マント」。かぶるだけで姿が消える、夢のアイテムです。
実はこれ、2006年に科学者が本当に作っています。科学誌 Science に論文まで載りました。
……ただし、ひとつ大きな“オチ”があります。そのマントが隠せたのは、私たちの目に見える光ではなく、電子レンジの仲間の電波(マイクロ波)からだけだったのです。
01「見える」ってどういうこと?
そもそも、物が見えるのはなぜでしょう。光が物に当たって跳ね返ったり、さえぎられたりして、その光が目に届くからです。
だから、もし光が物をよけて回り込み、反対側で何事もなかったように元の道に戻ったら――。その物は、まるでそこに存在しないかのように見えます。
川の流れの中に置かれた石を想像してください。水が石の周りをスムーズに回り込んで、下流では石がなかったかのように流れていたら、下流からは石の存在に気づけません。透明マントは、光にとっての“見えない石”を作るアイデアなのです。

02メタマテリアルが光の道を曲げる
光の進み方を思いどおりに曲げるのは、自然の材料ではとても難しいことです。そこで登場したのがメタマテリアル。
これは、光や電波の波長より小さな人工の構造(小さな金属のリングや棒など)を規則的に並べて作る材料です。構造の形や並べ方を工夫すると、自然界にはない光の曲がり方を作り出せます。
その後、方解石という透明な結晶を使い、限られた条件の可視光で小さな物体を隠す実験なども報告されています。
03人間サイズの透明マントが難しい理由
- 色の問題:メタマテリアルは「ある特定の波長(色)」にはよく効いても、虹の全部の色に同時に効かせるのがとても難しい。白い光は全色の混ざりもの
- 角度の問題:正面からは隠せても、横や斜めから見るとバレてしまう設計が多い
- 大きさの問題:目に見える光の波長は1ミリの数千分の1ほど。それよりさらに小さい構造を、人を包むほどの面積で精密に作る必要がある
- 中の人の問題:光を完全によけさせると、マントの中には光が届かない。つまり中にいる人も外が見えない!
04透明マント研究は、別の形で役立っている
透明マントそのものはまだ夢でも、メタマテリアルの技術は、電波を自在に操るアンテナ、超薄型のレンズ、音や振動を逃がす構造など、さまざまな分野で研究・応用が進んでいます。
05まとめ
透明マントは、2006年にマイクロ波の世界で本当に作られました。でも、どんな色・どんな角度の光でも人を消すマントは、まだ原理的にも高い壁があります。
もし完成しても、中の人は真っ暗で何も見えない――そう考えると、ファンタジーの透明マントは、物理学的にはかなり“ずるい”アイテムなのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWe see an object because light bounces off it or is blocked by it and then reaches our eyes.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In fantasy movies, people wear a cloak and disappear. In 2006, scientists really made an invisibility cloak. It bent waves around a small copper object, so the object was hard to find.
But it worked only with microwaves, not with the light we see. A cloak that hides a person from our eyes is still very hard to make. Also, the person inside could not see anything!
67 words ・ CEFR A2
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ファンタジー映画では、人がマントを着ると姿が消えます。2006年、科学者たちは本当に透明マントを作りました。それは小さな銅の物体の周りで波を曲げたので、その物体は見つけにくくなりました。
しかし、それが働いたのはマイクロ波だけで、私たちが見る光ではありませんでした。人を私たちの目から隠すマントを作るのは、まだとても難しいのです。それに、中にいる人は何も見えなくなってしまいます!
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
実際に作られた透明マントと、その限界が主題なので B。
Q2. What could the 2006 cloak hide an object from?
it worked only with microwaves, not with the light we see とあるので A。
Q3. In this passage, "disappear" means ...
disappear は dis-(反対)+appear(現れる)で「消える・見えなくなる」なので C。
We see an object because light bounces off it or is blocked by it and then reaches our eyes. If light could flow smoothly around an object and continue on its original path, the object would seem to vanish, just as a stone in a river disappears from view downstream if the water flows perfectly around it. In 2006, scientists used a metamaterial, an artificial material built from tiny repeated structures, to guide microwaves around a copper cylinder and make it hard to detect.
However, a cloak for visible light is far more difficult. It would need to work for every color and from every angle, and its structures would have to be extremely small. And the person inside would not be able to see out.
126 words ・ CEFR B1
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私たちが物を見られるのは、光がその物に当たって跳ね返ったり、さえぎられたりして、それから目に届くからです。もし光が物の周りをなめらかに流れて元の道を進み続けたら、その物は消えたように見えるでしょう。ちょうど、川の水が石の周りを完全に回り込んで流れれば、下流からは石が見えなくなるのと同じです。2006年、科学者たちはメタマテリアル、つまり小さな構造を繰り返し並べて作った人工の材料を使い、マイクロ波を銅の筒の周りに導いて、それを探知しにくくしました。
しかし、目に見える光のためのマントははるかに難しいのです。それはすべての色に、そしてあらゆる角度から働く必要があり、その構造は非常に小さくなければなりません。また、中にいる人は外を見ることができなくなるでしょう。
4択リーディングクイズ
Q1. Why does the writer mention a stone in a river?
水が石の周りを回り込めば下流から石が見えない、というたとえで、光を物体の周りに回り込ませる仕組みを説明しているので B。
Q2. What is a metamaterial?
an artificial material built from tiny repeated structures とあるので C。
Q3. What can we infer about a cloak that hides people from our eyes?
全色・全角度への対応、極小の構造、中の人が見えない問題を挙げ、はるかに難しいと述べているので D。
The invisibility cloak, long a fixture of fantasy fiction, was demonstrated in a laboratory in 2006, though with an important catch. That year, John Pendry and David Smith's group published a theory in Science describing how electromagnetic waves could be steered around an object, and Schurig and colleagues used it to build a metamaterial device that concealed a copper cylinder at microwave frequencies. Metamaterials are engineered structures, such as tiny metal rings arranged in regular patterns, whose features are smaller than the wavelength they control, allowing them to bend waves in ways natural materials cannot.
Later experiments using calcite crystals hid small objects from visible light under restricted conditions. A cloak that hides a person from human eyes, however, faces fundamental obstacles. Metamaterials typically work over a narrow range of wavelengths, whereas white light contains every color; many designs fail when viewed from the side; and structures smaller than visible wavelengths would have to be fabricated across an area large enough to cover a body. Theoretical work in 2016 showed that passive cloaks face a trade-off between bandwidth and degree of concealment. Ironically, a perfect cloak would also leave its wearer in darkness.
193 words ・ CEFR B2
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透明マントは長らくファンタジー小説の定番でしたが、2006年に実験室で実証されました。ただし、重要な落とし穴つきで。その年、ジョン・ペンドリーとデビッド・スミスのグループは、電磁波を物体の周りに導く方法を説明する理論を『Science』に発表し、Schurigらはそれを使って、マイクロ波の周波数で銅の筒を隠すメタマテリアルの装置を作りました。メタマテリアルとは、小さな金属のリングを規則的に並べたものなどの人工構造で、その特徴の大きさが制御する波長より小さいため、自然の材料にはできない方法で波を曲げることができます。
その後、方解石の結晶を使った実験で、限られた条件のもとで可視光から小さな物体が隠されました。しかし、人を人間の目から隠すマントには根本的な障害があります。メタマテリアルはたいてい狭い範囲の波長でしか働きませんが、白い光にはすべての色が含まれています。多くの設計は横から見ると失敗します。そして、可視光の波長より小さな構造を、体を覆えるほど広い面積にわたって作らなければなりません。2016年の理論研究は、受動的なマントには、効く帯域と隠す度合いの間にトレードオフがあることを示しました。皮肉なことに、完璧なマントは着ている人を暗闇の中に置き去りにしてしまうでしょう。
4択リーディングクイズ
Q1. What was the "important catch" of the 2006 cloak?
concealed a copper cylinder at microwave frequencies とあり、目に見える光では働かなかった点が落とし穴なので A。
Q2. Why can metamaterials bend waves in unusual ways?
whose features are smaller than the wavelength they control, allowing them to bend waves とあるので C。
Q3. What did the 2016 theoretical work show?
passive cloaks face a trade-off between bandwidth and degree of concealment とあるので B。
重要単語
- invisibility cloakC1名詞(句)透明マントThe invisibility cloak worked only for microwaves.
in-(否定)+visible(見える)+-ity。cloak は「袖のないマント」。 - metamaterialC1名詞メタマテリアル(人工構造材料)A metamaterial can bend light in unusual ways.
meta- は「超えた」。自然の材料を超えた性質をもつ、というイメージ。 - wavelengthB2名詞波長Visible light has a very short wavelength.
be on the same wavelength で「気が合う・考えが通じる」という比喩表現もある。 - bandwidthC1名詞帯域幅(効く波長の範囲)Most cloaks work only in a narrow bandwidth.
ネット回線の「通信容量」の意味でも使う。口語では「(人の)余力」の意味にも。 - concealC1動詞隠すThe device concealed a copper cylinder.
hide より硬い語。conceal A from B「AをBから隠す」。名詞 concealment。 - visibleB1形容詞目に見えるVisible light contains all the colors of the rainbow.
vis-(見る)= vision, visit と同語源。反対は invisible。 - trade-offC1名詞トレードオフ(一方を得ると他方を失う関係)There is a trade-off between speed and accuracy.
a trade-off between A and B の形で出る。経済・科学の長文で頻出。
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透明マント、実は2006年にもう作られていた。ただし隠せたのは「マイクロ波」という電子レンジの仲間の電波からだけ。人の目から完全に消えるマントは、まだ原理的にもかなり難しいらしい。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Pendry, Schurig & Smith (2006) Controlling Electromagnetic Fields, Sciencedoi.org
- Schurig et al. (2006) Metamaterial Electromagnetic Cloak at Microwave Frequencies, Sciencedoi.org
- Chen et al. (2011) Macroscopic invisibility cloaking of visible light, Nature Communicationsdoi.org
- Zhang et al. (2011) Macroscopic Invisibility Cloak for Visible Light, Physical Review Lettersdoi.org
- Monticone & Alù (2016) Invisibility exposed: physical bounds on passive cloaking, Opticadoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












