DNAは最強の記録メディアだった? 1グラムに“215ペタバイト”の計算も

読む前に予想してみよう!
DNAにデータを保存すると、今の技術でも書き込みや読み出しが一瞬でできる
DNAの合成(書き込み)と解読(読み出し)には時間もお金もかかり、日常のデータ保存にはまだ向かない。
- 対象
- 合成DNAへのデジタルデータ保存
- 規模
- 数MB規模の保存・復元実験
- 研究の種類
- 実験研究・レビュー
- 確かさ
- ★★★☆☆
デジタルデータをDNAのA・T・G・Cに置き換えて保存する技術。理論上1グラムに215ペタバイト。ただ書き込みも読み出しも遅く高価。
ひとことで言うとDNAは生き物の設計図。そこに写真や動画も保存できちゃう!
スマホの写真、クラウドの動画、世界中のサーバーに保存されたデータ。人類が作り出すデジタルデータは、毎年ものすごい勢いで増え続けています。
それを全部しまっておくには、巨大なデータセンターと大量の電気が必要です。そこで研究者が目をつけたのが、意外な“記録メディア”――DNAでした。
そう、私たちの体の設計図が書かれている、あのDNAです。
010と1を「A・T・G・C」に置き換える
コンピューターのデータは、すべて0と1の並びでできています。
一方、DNAの情報はA・T・G・Cという4種類の文字(塩基)の並びで書かれています。だったら、たとえば「00=A、01=C、10=G、11=T」のようにルールを決めて置き換えれば、デジタルデータをDNAの文字列として書けるはずです。
- データ(0と1)をA・T・G・Cの並びに変換する
- その並びのDNAを、機械で化学的に合成する(書き込み)
- 保存しておく
- 読みたいときは、DNAの並びを解読して(読み出し)、0と1に戻す

021グラムに215ペタバイト?
DNAが注目される最大の理由は、とんでもない記録密度です。
1ペタバイトは、1テラバイトの1000倍。215ペタバイトは、ざっくり言えば1テラバイトのノートパソコン約20万台ぶんのデータ量です。それが、指先にのる程度のわずかな量のDNAに収まる計算なのです。
03何万年も読めるかもしれない“長持ち”メディア
DNAのもう一つの強みは保存性です。ハードディスクや磁気テープは、数年〜数十年で劣化したり、読み取る機械がなくなったりします。
一方DNAは、冷たく乾いた暗い場所なら、とても長い間こわれずに残ります。実際、シベリアの永久凍土から見つかった100万年以上前のマンモスのDNAの解読に成功した研究(van der Valk ら, 2021, Nature)もあるほどです。しかも「DNAを読む技術」は医療や生物学で欠かせないので、読み取り方法がなくなる心配も小さいと考えられています。
04それでもUSBメモリの代わりにならない理由
課題は主に3つです。
- 書き込みが遅くて高い:DNAの合成には時間もコストもかかる
- 読み出しも遅い:解読機械を使って並びを読み、データに戻す必要がある
- 好きな部分だけ読むのが難しい:「この写真だけ見たい」といった使い方が苦手
研究者たちは、DNAの合成を自動化・高速化する技術や、欲しいデータだけを取り出す方法の開発を進めています。
05まとめ
DNAは、理論上1グラムに約215ペタバイトという驚異的な密度と、何万年単位の保存性をもつ記録メディアの候補です。ただし今はまだ、書くのも読むのも遅くて高い“超長期保管庫”の段階。
40億年近く生命の情報を受け継いできたDNAが、いつか人類の文明の記録まで運ぶ日が来るかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe amount of digital data in the world is growing fast, and storing it requires huge data centers and a…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Computers save data as 0s and 1s. DNA, the plan for living things, uses four letters: A, T, G and C. Scientists can change 0s and 1s into these letters and save data in DNA.
A very small amount of DNA can hold a huge amount of data. DNA can also last for a very long time. But writing and reading DNA is still slow and expensive.
67 words ・ CEFR A2
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コンピューターはデータを0と1で保存します。生き物の設計図であるDNAは、A、T、G、Cの4つの文字を使います。
科学者たちは0と1をこれらの文字に変えて、DNAにデータを保存することができます。ごくわずかなDNAに、ものすごい量のデータを入れることができます。DNAはとても長い間もつこともできます。しかし、DNAに書き込んだり読み出したりするのは、まだ遅くて高価です。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
デジタルデータをDNAに保存する技術が主題なので B。
Q2. How many letters does DNA use?
DNA ... uses four letters: A, T, G and C とあるので D。
Q3. In this passage, "last" means ...
last for a very long time の last は動詞で「もつ・続く」なので A。「最後の」ではない点に注意。
The amount of digital data in the world is growing fast, and storing it requires huge data centers and a lot of electricity. Some researchers think DNA could help. Computer data is written in 0s and 1s, while DNA uses four letters, A, T, G and C. By following a rule such as "00 = A" and "01 = C," scientists can turn data into a DNA sequence, make that DNA chemically, and later read it back.
In 2017, researchers stored an operating system and a movie in DNA and calculated that one gram could hold about 215 petabytes in theory. DNA can also survive for an extremely long time if kept cold and dry. However, writing and reading it is still slow and costly.
125 words ・ CEFR B1
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世界のデジタルデータの量は急速に増えており、それを保存するには巨大なデータセンターと大量の電気が必要です。DNAが役立つかもしれないと考える研究者もいます。コンピューターのデータは0と1で書かれているのに対し、DNAはA、T、G、Cの4つの文字を使います。「00=A」「01=C」のようなルールに従えば、科学者はデータをDNAの配列に変え、そのDNAを化学的に作り、後でそれを読み戻すことができます。
2017年、研究者たちはOSと映画をDNAに保存し、理論上1グラムに約215ペタバイトを保存できると計算しました。DNAは、冷たく乾いた状態で保管すれば、非常に長い間残ることもできます。しかし、書き込みと読み出しはまだ遅く、費用がかかります。
4択リーディングクイズ
Q1. Why are researchers interested in DNA storage?
第1文でデータ保存に巨大なデータセンターと大量の電気が必要だと述べ、DNAが役立つかもしれないと続くので C。
Q2. What did researchers store in DNA in 2017?
researchers stored an operating system and a movie in DNA とあるので A。
Q3. What can we infer about DNA storage?
長期保存に強いが、書き込み・読み出しが遅く高価だとあるので、日常利用にはまだ向かないと推論できる。正解は B。
As digital data keeps growing, data centers demand ever more energy and space, and researchers have turned to an unexpected storage medium, DNA. Digital information is written in binary digits and DNA in four bases, so data can be encoded as a sequence of bases, synthesized chemically and read back by sequencing. George Church's team stored a book this way in 2012, and Goldman and colleagues stored poems and audio in 2013.
In 2017, Erlich and Zielinski introduced an error-tolerant method called DNA Fountain. They stored files including an operating system and a film, and estimated a theoretical density of about 215 petabytes per gram. That number is a calculation. Real experiments have stored megabytes to gigabytes, and the redundancy needed for error correction lowers the effective density.
Synthesis is slow and far more expensive than tape storage, and pulling out a single file is difficult. Durability is where DNA shines. Genetic material from mammoths over a million years old has been sequenced from Siberian permafrost, and because reading DNA is essential to medicine, the tools for reading it are unlikely to disappear. That makes DNA a candidate for archives of records that are rarely opened but must last.
199 words ・ CEFR B2
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デジタルデータが増え続けるにつれ、データセンターはますます多くのエネルギーと空間を必要とするようになり、研究者たちは意外な記録媒体、DNAに目を向けました。デジタル情報は2進数の数字で、DNAは4種類の塩基で書かれているので、データを塩基の配列として符号化し、化学的に合成し、配列解読によって読み戻すことができます。ジョージ・チャーチのチームは2012年にこの方法で1冊の本を保存し、Goldmanらは2013年に詩と音声を保存しました。
2017年、ErlichとZielinskiはDNA Fountainと呼ばれるエラーに強い方法を発表しました。彼らはOSや映画を含むファイルを保存し、理論上の密度を1グラムあたり約215ペタバイトと見積もりました。この数字は計算上のものです。実際の実験で保存されたのはメガバイトからギガバイト程度で、誤り訂正に必要な冗長性が実効密度を下げます。
合成は遅く、テープ保存よりはるかに高価で、1つのファイルだけを取り出すのも難しいのです。DNAが本領を発揮するのは耐久性です。シベリアの永久凍土からは、100万年以上前のマンモスの遺伝物質が解読されていますし、DNAを読むことは医療に不可欠なので、それを読む道具が消える可能性は低いのです。そのためDNAは、めったに開かれないが長く残さなければならない記録の保管庫の候補になります。
4択リーディングクイズ
Q1. Why is the technology for reading DNA unlikely to disappear?
because reading DNA is essential to medicine, the tools for reading it are unlikely to disappear とあるので D。
Q2. What does the author say about the figure of 215 petabytes per gram?
That number is a calculation. Real experiments have stored megabytes to gigabytes とあるので C。
Q3. Which use of DNA storage would the author consider most suitable?
最終文で a candidate for archives of records that are rarely opened but must last(めったに開かないが長く残すべき記録の保管庫)としているので D。
重要単語
- storage densityC1名詞(句)記録密度DNA has an amazing storage density.
density は「密度」。population density「人口密度」は地理系長文でも頻出。 - synthesizeC1動詞合成するMachines synthesize DNA one letter at a time.
名詞 synthesis、形容詞 synthetic。photosynthesis(光合成)にも含まれる。 - sequencingC1名詞塩基配列の解読Sequencing turns DNA back into data.
sequence(順序・配列)から。in sequence「順番に」も覚えておく。 - durableB2形容詞長持ちするDNA is durable if it is kept cold and dry.
dur-(続く)= during, duration と同語源。durable goods「耐久消費財」。 - archiveB2名詞保管庫、記録保管DNA may become an archive for rarely used data.
発音 /ˈɑːrkaɪv/。動詞として「保存する」の意味でも使う(archive old emails)。 - encodeC1動詞符号化する、暗号化するThe data was encoded as a DNA sequence.
en-(中に入れる)+code。反対は decode(解読する)。 - redundancyC1名詞冗長性(予備の重複)、余剰Redundancy helps correct errors in stored data.
形容詞 redundant(余分な)。英国英語では「人員削減による解雇」の意味もある。
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- DNA Storage(Microsoft Research)microsoft.com
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生き物の設計図・DNAに、映画やOSのデータを書き込む研究があるらしい。理論上は1グラムに215ペタバイト入る計算だとか。しかも条件がよければ何万年も読める。弱点は「書くのも読むのも遅くて高い」こと。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Church, Gao & Kosuri (2012) Next-Generation Digital Information Storage in DNA, Sciencedoi.org
- Goldman et al. (2013) Towards practical, high-capacity, low-maintenance information storage in synthesized DNA, Naturedoi.org
- Erlich & Zielinski (2017) DNA Fountain enables a robust and efficient storage architecture, Sciencedoi.org
- Ceze, Nivala & Strauss (2019) Molecular digital data storage using DNA, Nature Reviews Geneticsdoi.org
- van der Valk et al. (2021) Million-year-old DNA sheds light on the genomic history of mammoths, Naturedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











