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木なのに向こうが透けて見える「透明な木材」。作り方は意外とシンプルだった

木なのに向こうが透けて見える「透明な木材」。作り方は意外とシンプルだった

読む前に予想してみよう!

透明な木材は、木の茶色のもとになる成分を取り除いて作る

研究カード(どんな研究?)
対象
脱リグニン処理した木材と樹脂の複合材
規模
実験室スケールの試料
研究の種類
材料研究・レビュー
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

木から色のもとになる成分リグニンを取り除き、すき間に透明な樹脂をしみ込ませると、光を通す「透明な木材」ができる。割れにくく断熱性も高い窓材として研究中。

ひとことで言うと木の「色のもと」を抜いて透明な樹脂を入れると、木が透けて見える!

もくじ
  1. 木が茶色くて透けないのはなぜ?
  2. 作り方は「色を抜いて、すき間を埋める」
  3. ガラスにはない3つの長所
  4. まとめ

木の板を窓にはめても、向こう側は見えません。……当たり前ですよね。

ところが、向こうが透けて見える木の板が、実際に研究室で作られています。その名も「透明な木材」。

しかも作り方は、聞いてみると「え、それだけ?」と思うほどシンプル。木の仕組みを知ると、なぜ透明にできるのかがよくわかります。

01木が茶色くて透けないのはなぜ?

木をとても小さなスケールで見ると、ストローを束ねたような構造になっています。木が生きていたころ、この細い管の中を水が通っていました。

木の主な成分は3つ。

  • セルロース:細い繊維。木の“骨組み”。もともとはほぼ無色
  • ヘミセルロース:繊維どうしをつなぐ成分
  • リグニン:繊維のすき間を埋める“接着剤”。光を吸収しやすく、木の茶色っぽい色のもと

木が透けて見えないのには、2つの理由があります。1つはリグニンが光を吸収すること。もう1つは、内部にたくさんある空気のすき間で光があちこちに散らばってしまうことです。

すりガラスが透けないのも、表面の細かいデコボコで光が散らばるから。ところが、すりガラスに水をたらすと、そこだけ少し透けて見えますよね。透明な木材は、まさにこの原理を使っています。

02作り方は「色を抜いて、すき間を埋める」

  1. 薄い木の板を薬品につけ、色のもとリグニンを取り除く(真っ白になる)
  2. 空気のすき間に、アクリル樹脂などの透明な樹脂をしみ込ませる
  3. 樹脂を固める

ポイントは、セルロースと樹脂で光の曲がり方がほぼ同じになること。こうすると、光は境目でほとんど曲がらず、散らばらずにまっすぐ通り抜けます。水をたらしたすりガラスと同じ理屈です。

色のもとを抜いて白い骨組みにし、透明な樹脂で満たすと光が通る。
色のもとを抜いて白い骨組みにし、透明な樹脂で満たすと光が通る。

03ガラスにはない3つの長所

  • 割れにくい:ガラスのように粉々に砕けず、木の繊維が衝撃を受け止めてくれる
  • 熱を伝えにくい:ガラスより断熱性が高く、冷暖房の効率アップが期待される(2020年の研究では、熱の伝わりやすさがガラスの数分の1と報告。Mi ら, Nature Communications)
  • まぶしくない:光を少し散らすため、部屋の中に光がやわらかく広がる

これらを生かして、窓や天窓、太陽電池のカバーなどへの応用が研究されています。

04まとめ

透明な木材は、木の色のもとリグニンを抜き、すき間を透明な樹脂で埋めるという、シンプルな発想から生まれた新素材です。割れにくく断熱性も高い“未来の窓”として期待されています。

いつか、木の香りがする窓から朝日が差し込む家が、当たり前になるかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIf you look at wood under a microscope, it looks like a bundle of tiny straws. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

If you look at wood under a microscope, it looks like a bundle of tiny straws. Wood cannot be seen through for two reasons. A substance called lignin absorbs light and gives wood its brown color, and the many air spaces inside scatter light in all directions. In 2016, research teams in Sweden and the United States reported a simple way to make wood transparent.

First, they removed the lignin, leaving a white frame of cellulose. Then they filled the air spaces with a clear resin that bends light almost the same amount as cellulose, so light passes straight through. Transparent wood is harder to shatter than glass and keeps heat in better, but it is not as clear as glass yet.

122 words ・ CEFR B1

和訳を見る

顕微鏡で木を見ると、細いストローを束ねたように見えます。木の向こうが見えない理由は2つあります。リグニンという物質が光を吸収して木に茶色の色を与えること、そして内部にあるたくさんの空気のすき間が光をあらゆる方向に散らしてしまうことです。2016年、スウェーデンとアメリカの研究チームが、木を透明にする簡単な方法を報告しました。

まず、リグニンを取り除き、セルロースの白い骨組みを残しました。次に、セルロースとほぼ同じだけ光を曲げる透明な樹脂で空気のすき間を満たしたので、光はまっすぐ通り抜けます。透明な木材はガラスより粉々に割れにくく、熱を保つのも得意ですが、まだガラスほどはっきりとは透けません。

4択リーディングクイズ

Q1. Why can't we see through ordinary wood?

Q2. Why is the resin chosen to bend light almost the same amount as cellulose?

Q3. What can we infer about transparent wood?

重要単語

  • transparentB2
    形容詞透明なThe transparent wood lets sunlight through. trans-(通して)+parent(見える)。比喩で「(組織などが)透明性のある」。名詞 transparency。opaque(不透明な)と対。
  • ligninC1
    名詞リグニン(木の成分)Lignin gives wood its brown color. ラテン語 lignum(木)から。紙を作るときも取り除かれる成分。
  • celluloseC1
    名詞セルロースCellulose fibers make up the frame of wood. cell(細胞)+-ose(糖類の語尾)。glucose(ブドウ糖)の -ose と同じ。
  • refractive indexC1
    名詞(句)屈折率The resin has a similar refractive index to cellulose. refract(屈折させる)= re-(後ろへ)+fract(折る)。fraction, fracture も同語源。
  • insulationC1
    名詞断熱Transparent wood offers better insulation than glass. 動詞 insulate(断熱・絶縁する)。island(島)と同じ語源で「孤立させる」イメージ。
  • scatterB2
    動詞散らす、散乱させるAir spaces scatter light in all directions. scatter A over B「AをBにまき散らす」。空が青いのも光の scattering のため。
  • opaqueC1
    形容詞不透明なOrdinary wood is opaque. 発音は /oʊˈpeɪk/(オウペイク)。比喩で「わかりにくい」の意味もある。transparent の反意語。

動画でもっと知る

4コマでわかる

木なのに向こうが透けて見える「透明な木材」。作り方は意外とシンプルだったの4コマ漫画
木の板なのに、向こう側が透けて見える「透明な木材」が研究されているらしい。作り方は、木の色のもとを抜いて、すき間に透明な樹脂をしみ込ませるだけ。ガラスより割れにくく、熱も逃がしにくいとか。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Li et al. (2016) Optically Transparent Wood from a Nanoporous Cellulosic Template: Combining Functional and Structural Performance, Biomacromoleculesdoi.org
  2. Zhu et al. (2016) Highly Anisotropic, Highly Transparent Wood Composites, Advanced Materialsdoi.org
  3. Li et al. (2018) Optically Transparent Wood: Recent Progress, Opportunities, and Challenges, Advanced Optical Materialsdoi.org
  4. Mi et al. (2020) Scalable aesthetic transparent wood for energy efficient buildings, Nature Communicationsdoi.org
  5. Xia et al. (2021) Solar-assisted fabrication of large-scale, patternable transparent wood, Science Advancesdoi.org