睡眠・休息ウソ

金縛りは霊のしわざ? 正体は「脳だけ先に起きてしまう」睡眠のバグだった

金縛りは霊のしわざ? 正体は「脳だけ先に起きてしまう」睡眠のバグだった

読む前に予想してみよう!

金縛りは心霊現象で、科学では説明できない

研究カード(どんな研究?)
対象
一般人口・学生・患者
規模
35研究・約3万6千人
研究の種類
有病率調査の系統的レビュー
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

金縛り(睡眠麻痺)は、レム睡眠中の「体の動きを止める仕組み」が、目が覚めた後も少し残ってしまう現象。霊ではなく脳の仕組みで説明できる。

ひとことで言うと金縛りは、脳が起きたのに体のスイッチだけ寝たままの状態!

もくじ
  1. 夢を見ている間、体は「ロック」されている
  2. 金縛り=ロックが外れる前に目が覚めた状態
  3. 実はかなり身近な現象
  4. まとめ

夜中にふと目が覚める。なのに、体がピクリとも動かない。声も出ない。しかも、部屋の隅に誰かがいる気配がする。胸の上に何かが乗っているような重さまで……。

いわゆる「金縛り」です。怖すぎて「霊のしわざだ」と思いたくなるのもムリはありません。

でも安心してください。金縛りの正体は、医学では「睡眠麻痺(すいみんまひ)」と呼ばれる、ちゃんと仕組みのわかった現象なんです。

01夢を見ている間、体は「ロック」されている

眠りには、大きく分けてノンレム睡眠(深く静かな眠り)とレム睡眠(夢をよく見る眠り)があります。

レム睡眠の間、脳はかなり活発に動いていて、リアルな夢を見ています。もしこのとき体が自由に動いたら、夢の中でボールを蹴った瞬間、本当に壁を蹴ってしまいますよね。

そこで脳は、レム睡眠の間、体の筋肉にほぼ「動くな」というロックをかけます(目と呼吸の筋肉などは別)。ゲームでいえば、ムービー中にコントローラーが効かなくなるようなものです。

02金縛り=ロックが外れる前に目が覚めた状態

ふだんは、目が覚めるのと同時にこのロックも解除されます。ところが、意識だけが先に起きて、体のロックが数秒〜数分残ってしまうことがある。これが金縛りです。

しかも、脳はまだ半分夢モード。だから、

  • 誰かが部屋にいる気配
  • 足音や声が聞こえる
  • 胸を押さえつけられるような圧迫感

といった、夢のかけらのような幻覚が、起きている意識に混ざり込みます。胸の圧迫感は、レム睡眠中の浅い呼吸に気づいてしまうことで生まれる、という説もあります。

意識は「現実」、体と感覚の一部はまだ「夢」の中
意識は「現実」、体と感覚の一部はまだ「夢」の中

03実はかなり身近な現象

日本でも、福田一彦さんらが1987年に大学生635人を調べたところ、約4割が少なくとも一度は「金縛り」を経験していて、その直前には体や心のストレス、睡眠リズムの乱れがあったと答えた人が、経験者の約半数を占めました。調査の対象や質問の仕方で数字はかなり変わりますが、「珍しい体験ではない」ことは確かです。

世界中に金縛りを表す言葉があるのも面白いところ。カナダのニューファンドランド島では「Old Hag(老婆)」に乗られる、などと表現されてきました。文化は違っても、みんな同じ現象を経験してきたわけです。

イギリスの研究チーム(Denisさんら、2018年)は、睡眠不足、不規則な睡眠、強いストレスなどが金縛りと関係していると報告しています。仰向けで寝ているときに起きやすいという報告もあります。

04まとめ

金縛りは、「脳は起きたのに、体のロックだけ外れ忘れた」状態。部屋にいる“誰か”の正体は、目覚めかけた脳が作り出した夢のかけらでした。

次に金縛りにあったら、怖がる代わりに心の中でこうつぶやいてみてください。「あ、今レム睡眠のロックが残ってるな」。それだけで、夜は少し怖くなくなるはずです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWaking up at night unable to move, while feeling that someone is in the room, can be terrifying. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Waking up at night unable to move, while feeling that someone is in the room, can be terrifying. Many people have thought it was the work of ghosts, but it is actually a well-understood condition called sleep paralysis. During REM sleep, when we have vivid dreams, the brain locks most of the body's muscles so that we do not act out our dreams.

Usually, this lock is released as soon as we wake up. Sometimes, however, the mind wakes up first while the body stays locked for a few seconds or minutes. Because the brain is still partly dreaming, people may see shadows or feel pressure on their chest. A 2011 review estimated that about 8 percent of people and about 28 percent of students experience it.

127 words ・ CEFR B1

和訳を見る

夜中に目覚めて動けず、しかも誰かが部屋にいる気配がするのは、とても恐ろしいことです。多くの人は幽霊のしわざだと考えてきましたが、実は睡眠麻痺と呼ばれる、仕組みがよくわかっている状態です。鮮やかな夢を見るレム睡眠の間、脳は体のほとんどの筋肉にロックをかけ、夢の通りに体を動かさないようにしています。

ふつうは、目が覚めるとすぐにこのロックは解除されます。しかし時々、意識が先に目覚めて、体は数秒から数分ロックされたままになります。脳はまだ部分的に夢を見ているため、影が見えたり、胸に圧迫感を感じたりすることがあります。2011年のレビューでは、一般の人の約8%、学生の約28%がこれを経験すると推定されました。

4択リーディングクイズ

Q1. Why does the brain lock the body's muscles during REM sleep?

Q2. According to the 2011 review, about what percentage of students experience sleep paralysis?

Q3. Why might people see shadows during sleep paralysis?

重要単語

  • paralysisC1
    名詞麻痺Sleep paralysis usually lasts less than a few minutes. 動詞 paralyze、形容詞 paralyzed。複数形は paralyses。
  • hallucinationC1
    名詞幻覚Some people see a shadowy figure as a hallucination. 動詞 hallucinate。illusion(錯覚)は実在するものの見誤り、hallucination は存在しないものの知覚。
  • prevalenceC1
    名詞有病率、広がりThe prevalence of sleep paralysis is higher among students. 形容詞 prevalent「広く行きわたった」。prevail「普及する」と同語源。
  • atoniaC1
    名詞筋緊張の消失(脱力)Muscle atonia keeps us from acting out our dreams. a-(否定)+tonus(緊張)。tone(調子・緊張)と同語源。
  • irregularB2
    形容詞不規則なAn irregular sleep schedule can trigger sleep paralysis. irregular verbs「不規則動詞」でおなじみ。ir- は r の前の否定接頭辞。
  • attributeC1
    動詞(原因を)~のせいにするMany cultures attributed sleep paralysis to spirits. attribute A to B「AをBのせいにする」は入試頻出構文。名詞では「属性」。
  • terrifyingB2
    形容詞恐ろしいWaking up unable to move can be terrifying. terrifying(恐ろしい)と terrified(怖がっている)の -ing / -ed の区別がポイント。

動画でもっと知る

金縛りで「誰かが部屋にいる」と感じるのは、霊じゃなくて脳の仕組みらしい。夢を見る時の「体を動かさないロック」が、目が覚めても少しだけ外れ残っている状態なんだとか。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Sharpless & Barber (2011) Lifetime prevalence rates of sleep paralysis: a systematic review, Sleep Medicine Reviewsdoi.org
  2. Denis et al. (2018) A systematic review of variables associated with sleep paralysis, Sleep Medicine Reviewsdoi.org
  3. Cheyne et al. (1999) Hypnagogic and hypnopompic hallucinations during sleep paralysis: neurological and cultural construction of the night-mare, Consciousness and Cognitiondoi.org
  4. Fukuda et al. (1987) High prevalence of isolated sleep paralysis: kanashibari phenomenon in Japan, Sleepdoi.org