夜型の人、障害年金を受け取るリスクが約1.7倍【フィンランド5679人を12年追跡】

読む前に予想してみよう!
夜型の人が早朝勤務で眠りが崩れやすいように、朝型の人も夜勤では眠りが崩れやすい
朝型の人は夜勤のときに睡眠が短く、質も落ちやすいことが知られている。工場で勤務時間を体内時計のタイプに合わせたら、睡眠が改善したという実験もある。
- 対象
- フィンランド北部で1966年に生まれ、46歳時点で年金を受けていない人
- 規模
- 5,679人
- 研究の種類
- 前向きコホート研究(質問票と公的登録データ・12年追跡)
- 確かさ
- ★★★☆☆
フィンランドで5679人を12年追跡。夜型の人は57歳までに障害年金を受け取るリスクが約1.7倍だった。ただし観察研究で、原因が夜型そのものとは限らない。
ひとことで言うと夜型そのものより、朝型向けの時間割との相性が問題なのかも!
もくじ
朝が弱い。夜になると急に頭が冴える。そんな「夜型」の人にとって、ちょっとドキッとする研究が出ました。
フィンランドで5,679人を12年間追いかけたところ、夜型の人は朝型の人に比べて、57歳までに障害年金を受け取るリスクが約1.7倍だったのです。
でも「やっぱり夜ふかしは体に悪い」と決めつけるのは早すぎます。関連研究と並べると、問題は夜型そのものより、朝型向けにできた社会の時間割にあるのかもしれないのです。
0146歳の「朝型・夜型」を、57歳まで見届けた
障害年金は、病気やけがで働く力が長いあいだ落ちたときに支給される年金です。フィンランドでは働く力の低下が少なくとも1年続く場合に認められ、働き盛りの年代で、健康上の理由から仕事を続けにくくなったことの目印になります。
夜型と判定されたのは、男性253人(9.7%)、女性381人(12.4%)でした。研究チームは、この質問票の結果が、31歳のときに調べた「朝型になりやすい遺伝子の組み合わせ」の点数とも対応していることを確かめています。自己申告でも、生まれつきの傾向をある程度映しているわけです。
02夜型男性8.3%、男性全体は5.2%
12年のあいだに初めて障害年金を受け取ったのは、男性全体で5.2%、女性全体で8.1%。これに対して夜型の男性では8.3%、夜型の女性では12.1%でした。
朝型と比べた「受給の起こりやすさの比(ハザード比)」は、男性1.72倍、女性1.73倍。これが「約1.7倍」の正体です。さらに、社会経済的な地位に関わる要因で調整しても、この差は弱まりませんでした。ただし、健康状態や睡眠、勤務時間で調整した結果は、要旨には示されていません。

03どんでん返し①:前回の研究では、睡眠や勤務時間で調整すると差がぼやけた
実はこのチーム、2021年にも同じ出生コホートで、夜型と障害年金の関係を調べています。そのときの追跡は2013〜2016年の4年間だけ。夜型の男性で受給のリスクが約3倍と出た一方、睡眠に関する複数の項目や勤務時間で調整すると、統計的にはっきりした差ではなくなりました。
ただし、同じ研究で「自分の働く力が低い」と答える人の多さ(オッズ)は、夜型が朝型の約2倍で、どの調整をしてもほぼ2倍のままでした。
別のフィンランドの調査(18〜64歳の1万3,114人)でも、夜型の人は疲れ切っている度合いが高く、働く力が低めでした。夜型の人には平日と休日の睡眠時間帯のズレ、いわゆる社会的時差ボケが多く、睡眠不足も多い。そして睡眠不足が、夜型と働く力の低さの関係を部分的に説明していたのです。
つまり、夜型であること自体より、朝型の時間割に合わせるせいで眠りが削られることが、どこかで効いている可能性があります。
04どんでん返し②:朝型だって、夜勤では崩れる
この考え方と通じるのが、ある工場で行われた実験です。ふつう、夜型の人は早朝シフトで、朝型の人は夜勤で、睡眠が短く乱れやすいことが知られています。そこで研究者は、極端な夜型の人には早朝シフトを、極端な朝型の人には夜勤を割り当てない勤務表に変えてみました。
すると、その極端なタイプの人たちが答えた睡眠時間と睡眠の質が改善し、勤務日の気分も良くなりました。社会的時差ボケも全体で1時間減っています。少なくとも睡眠については、カギは体内時計と時間割のかみ合わせにありそうです(夜勤と健康の話も参照)。
とはいえ、何もかも社会のせい、とも言い切れません。約70万人の遺伝子を調べた研究では、朝型に関わる遺伝子の場所が351か所見つかり、遺伝子をもとに因果関係を推定する方法で、朝型であることが心の健康の良さにつながるという結果も出ています。体質と時間割、両方が絡み合っていると考えるのが自然でしょう。
05まとめ
「夜型の人は障害年金を受け取るリスクが約1.7倍」は、関連としてはホント。でも「夜型だから体を壊す」とまでは、このデータからは言えません。
同じ研究チームの前回の研究や工場の実験を並べると、見えてくるのは体内時計と社会の時間割のズレという問題です。夜型は直すべき欠点ではなく、ひとつの体質。働く時間を少し選べる社会になれば、この1.7倍は縮むのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerResearchers at the University of Oulu checked the sleep type of 5,679 Finnish adults in 2012, when they…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In Finland, scientists followed 5,679 people for 12 years, from age 46 to 57. Some were morning people, and some were night owls. The night owls got a disability pension more often. This is money for people who cannot work because of poor health. Their risk was about 1.7 times as high.
But being a night owl may not be the real reason. Work usually starts early, so many night owls may not get enough sleep.
76 words ・ CEFR A2
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フィンランドで、科学者たちが5,679人を46歳から57歳までの12年間追跡しました。朝型の人もいれば、夜型の人もいました。夜型の人のほうが、障害年金を受け取ることが多くありました。これは、健康上の理由で働けない人のためのお金です。そのリスクは約1.7倍でした。
しかし、夜型であること自体が本当の原因ではないかもしれません。仕事はたいてい朝早く始まるので、多くの夜型の人は十分に眠れていない可能性があるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
本文全体で、夜型の人と障害年金の関係を調べた研究を紹介しているので、正解は B。
Q2. How long did the scientists follow the people?
第1文に for 12 years, from age 46 to 57 とあるので、正解は C。46と57は年齢。
Q3. In this passage, a "night owl" is a person who
第2文で morning people と対比されており、night owl は「夜型の人(夜遅くまで起きているのが好きな人)」の意味。正解は A。
Researchers at the University of Oulu checked the sleep type of 5,679 Finnish adults in 2012, when they were 46 years old. Then they used national records to see who received a disability pension, a payment for people whose health keeps them from working, by 2023. Among evening-type men, 8.3% started getting this pension, compared with 5.2% of all men. For women, the numbers were 12.1% and 8.1%. Compared with morning types, evening types had about 1.7 times the risk.
But in an earlier study, the same team found that the gap for men was no longer clear once sleep or working hours were taken into account. So part of the problem may be the clash between a late body clock and early work schedules.
125 words ・ CEFR B1
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オウル大学の研究者たちは、2012年、46歳だったフィンランドの成人5,679人の睡眠タイプを調べた。そして国の記録を使い、2023年までに誰が障害年金(健康上の理由で働けない人に支払われるお金)を受け取ったかを確かめた。夜型の男性では8.3%がこの年金を受け取り始めたのに対し、男性全体では5.2%だった。女性では12.1%と8.1%だった。朝型と比べると、夜型のリスクは約1.7倍だった。
しかし同じチームは以前の研究で、睡眠や勤務時間を考慮に入れると、男性の差ははっきりしなくなることを見つけていた。つまり問題の一部は、遅めの体内時計と早い時間に始まる仕事のスケジュールとの衝突にあるのかもしれない。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
夜型のほうが障害年金を受け取る割合が高く、最後の文で体内時計と仕事の時間の衝突が一因かもしれないと述べているので、正解は B。
Q2. What percentage of evening-type women started getting a disability pension?
For women, the numbers were 12.1% and 8.1% とあり、前の文の並び(夜型、全体)から夜型女性は12.1%。正解は D。8.1%は女性全体。
Q3. What does the earlier study suggest?
以前の研究では睡眠や勤務時間を考慮すると男性の差がはっきりしなくなったとあり、それらが差の理由の一部である可能性を示している。正解は A。
Thousands of people born in northern Finland in 1966 have been studied since birth. In 2012, at age 46, 5,679 of them who were not yet retired filled in a short questionnaire about their daily rhythm, and researchers then tracked pension records until 2023. Evening types were granted a disability pension at about 1.7 times the rate of morning types, in both men and women, and adjusting for socioeconomic factors did not shrink the gap.
The questionnaire scores also lined up with genetic scores for morningness, measured at age 31. A single survey at 46 cannot tell us which came first, though. An illness such as depression could push someone toward later hours and also out of work. And only 253 men were evening types, so the male estimate rests on about 20 cases.
Other work points to timing. In a factory that stopped giving early shifts to extreme late types and night shifts to extreme early types, those workers said they slept longer and better, and social jetlag across the plant fell by an hour. Genes play a part too. A study of nearly 700,000 people found 351 gene regions linked to being a morning person.
197 words ・ CEFR B2
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1966年にフィンランド北部で生まれた数千人が、誕生時から研究の対象になっている。2012年、46歳でまだ退職していなかった5,679人が1日のリズムについての短い質問票に答え、研究者はその後2023年まで年金の記録を追った。夜型の人は朝型の人の約1.7倍のペースで障害年金を認められており、それは男女とも同じで、社会経済的な要因で調整しても差は縮まらなかった。
質問票の得点は、31歳のときに測った「朝型になりやすさ」の遺伝的な得点とも対応していた。ただし、46歳での1回の調査では、どちらが先に起きたのかはわからない。うつ病のような病気が、人を遅い時間帯へと押しやり、同時に仕事から遠ざけることもありうる。また夜型の男性は253人しかおらず、男性の推定値は20件ほどの事例に基づいている。
別の研究は、時間の合わせ方に目を向けている。極端に遅い型の人に早朝シフトを、極端に早い型の人に夜勤を割り当てるのをやめた工場では、その人たちが答えた睡眠が長く良質になり、工場全体の社会的時差ボケが1時間減った。遺伝子も関わっている。約70万人を調べた研究では、朝型であることに関連する遺伝子領域が351か所見つかった。
4択リーディングクイズ
Q1. Which statement best summarizes the passage?
夜型の障害年金の多さを紹介したうえで、勤務時間との相性(工場の研究)と遺伝子の両方に触れているので、正解は B。原因と断定はしていないので A は誤り。
Q2. Why does the writer say the estimate for men should be read carefully?
only 253 men were evening types, so the male estimate rests on about 20 cases とあり、根拠となる事例が少ないことを指摘しているので、正解は B。
Q3. What can be inferred from the factory example?
体内時計のタイプに合わないシフトをなくすと睡眠が長く良くなり、社会的時差ボケも減ったことから、シフトを体内時計に合わせると睡眠が改善しうると推論できる。正解は B。
重要単語
- chronotypeC1名詞クロノタイプ(朝型・夜型のタイプ)Your chronotype can change a little as you get older.
chrono-(時間)+type。chronology(年表)、synchronize(同期させる)と同じ語源 - disability pensionB2名詞障害年金She applied for a disability pension after a serious illness.
disability は dis-(否定)+ability(能力)。pension は「年金」で、retire on a pension(年金で引退する)の形でも使う - retireB1動詞退職する、引退するMy grandfather retired at sixty-five.
名詞は retirement。early retirement(早期退職)は入試の長文でもよく出る - questionnaireB1名詞質問票、アンケートEach student filled in a short questionnaire about sleep.
fill in / fill out a questionnaire(質問票に記入する)の形で使う。つづりは n を2つ重ねる点に注意 - adjust forC1動詞句(統計で)〜の影響を調整するThe researchers adjusted for age and income.
論文・ニュースで頻出。adjust to(〜に慣れる)と前置詞で意味が変わる点に注意 - socioeconomicC1形容詞社会経済的な(収入・学歴・職業などに関わる)Socioeconomic status can affect health in many ways.
socio-(社会)+economic(経済の)。socioeconomic status(社会経済的地位)でひとかたまり - misalignmentC1名詞ずれ、かみ合わないことA misalignment between body time and work time can cut your sleep short.
mis-(誤って)+align(一直線にそろえる)+-ment。circadian misalignment(体内時計のずれ)は睡眠研究の定番表現
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公式・一次情報をチェック
- Disability Pension(フィンランド年金センター)etk.fi
- Circadian Rhythms(NIH 国立一般医科学研究所)nigms.nih.gov
- 概日リズム睡眠・覚醒障害(厚生労働省 e-ヘルスネット)kennet.mhlw.go.jp
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フィンランドで5679人を12年追跡したら、夜型の人は57歳までに障害年金を受け取るリスクが約1.7倍。ただ、朝型の人も夜勤だと眠りが崩れやすい。問題は夜型そのものより、社会の時間割との相性かもしれない。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Räihä et al. (2026) Evening chronotype and disability pensions: 12-year register-based follow-up of middle-aged adults from the Northern Finland birth cohort 1966, Occupational and Environmental Medicinedoi.org
- Räihä et al. (2021) Evening chronotype is associated with poor work ability and disability pensions at midlife: a Northern Finland Birth Cohort 1966 Study, Occupational and Environmental Medicinedoi.org
- Merikanto et al. (2022) Circadian Type Determines Working Ability: Poorer Working Ability in Evening-Types is Mediated by Insufficient Sleep in a Large Population-Based Sample of Working-Age Adults, Nature and Science of Sleepdoi.org
- Vetter et al. (2015) Aligning work and circadian time in shift workers improves sleep and reduces circadian disruption, Current Biologydoi.org
- Jones et al. (2019) Genome-wide association analyses of chronotype in 697,828 individuals provides insights into circadian rhythms, Nature Communicationsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。







