スマホ時間は「長さ」より「ムラ」に注目? 12研究・約3000人のアプリ記録が示したこと

読む前に予想してみよう!
この分析では、参加者の1日あたりの平均スマホ使用時間は5時間を超えていた
平均は約3.3時間だった(ばらつきは大きい)。
- 対象
- 5か国の参加者
- 規模
- 2,945人(12研究)
- 研究の種類
- 既存データの統合解析(査読前プレプリント)
- 確かさ
- ★★★☆☆
5か国・12研究のスマホ利用記録2945人分を統合。気分が落ち込みぎみの人ほど使用が長く、日ごとのムラも大きかった。ただし差は1日数分と小さい。査読前。
ひとことで言うと元気がない人ほど、スマホを長く、バラバラに使いがちみたい。
「1日何時間スマホを使ってる?」と聞かれて、正確に答えられる人はほとんどいません。実は、自己申告のスクリーンタイムは実際の利用記録とズレやすいことが、過去の研究で分かっています。
2026年10月、心理学のプレプリント(査読前論文)サーバー「PsyArXiv」に、この弱点を乗り越えようとした大規模分析が公開されました。5か国・12の研究から、スマホの実際のアプリ利用記録を集めて統合したのです。見えてきたのは、「長さ」だけでなく「ムラ」の大切さでした。
01アプリ記録85万時間分を統合
参加者の平均は、
- 1日あたり約3.3時間(ただし人による差が大きい)
- 1日に使うアプリは約16個
そして注目は「ムラ」。使用時間の変動のうち約4割(40.6%)は、同じ人の中で「日によって・時間によって変わる」分でした。つまり、人は毎日同じようにスマホを使っているわけではないのです。
02落ち込みぎみの人ほど「長く・バラバラ」
分析の結果、幸福感が低い人ほど、スマホの使用時間が長く、しかも変動が大きい傾向がありました。
具体的には、抑うつ症状のスコアが尺度の幅の10%分高くなるごとに、
- 1日の使用時間が約7分長い
- 本人の中での変動(ムラ)が約7.5%大きい
という関係でした。逆に、幸福感の高い人は「一貫して使用が少なめ」だったのです。
また、若い人と女性の方が、スマホをより頻繁に使う傾向もありました。

03どんでん返し:「1日7分」は大きい?小さい?
「スマホで心がむしばまれる!」と言いたくなりますが、ちょっと待ってください。
抑うつ症状がそれなりに違っても、使用時間の差は1日7分ほど。これは決して大きな差ではありません。過去にも、デジタル機器の使用と若者の幸福感の関連は「あるが小さい」と報告されてきました(Orben & Przybylski, 2019)。
さらに、これは相関です。
- スマホを使いすぎるから気分が落ち込む?
- 気分が落ち込んでいるから、スマホに逃げ込む?
どちらの向きなのか、この分析だけでは分かりません。
さらに、睡眠不足や学校・仕事のストレスのように、気分とスマホの使い方の両方に影響する別の要因が隠れている可能性もあります。
04まとめ
スマホと心の関係は、「長く使うほど悪い」という単純な話ではなさそうです。差は小さく、向きも不明。それでも、使い方の「ムラ」が心のコンディションを映す鏡になるかもしれない、というのは新しい視点です。今日のスクリーンタイム、ちょっと見てみませんか?
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen people report their own screen time, their answers are often different from what their phones actually…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Most people cannot say exactly how long they use their phones. So researchers collected real app records from about 3,000 people in five countries. On average, people used their phones for about 3.3 hours a day.
People who felt down used their phones a little longer, and their use changed more from day to day. But the difference was only about seven minutes a day. This study is not yet peer-reviewed.
71 words ・ CEFR A2
和訳を見る
ほとんどの人は、自分がどれくらいスマホを使っているかを正確に言えません。そこで研究者たちは、5か国の約3000人から実際のアプリの記録を集めました。平均すると、人々は1日に約3.3時間スマホを使っていました。
気分が落ち込んでいる人は、スマホを少し長く使い、使い方が日によって大きく変わっていました。しかし、その差は1日にたった約7分でした。この研究はまだ査読を受けていません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
実際のアプリ記録からスマホの使い方と気分の関係を調べた研究なので B が正解。
Q2. How long did people use their phones a day on average?
about 3.3 hours a day とあるので C。7分は気分が落ち込んでいる人との差。
Q3. In this passage, "felt down" is closest in meaning to ...
feel down は「気分が落ち込む」。sad or low(悲しい、元気がない)が最も近いので D。
When people report their own screen time, their answers are often different from what their phones actually record. So researchers combined real app-use data from 12 studies in five countries, covering 2,945 people. Their study has not been peer-reviewed yet. On average, participants used their phones for about 3.3 hours a day.
About 40 percent of the variation in use came from changes within the same person, so one person's use could go up and down from day to day. People with lower well-being tended to use their phones longer and less consistently.
But the study can't tell us which comes first, low mood or heavy phone use. And the differences were small. Higher depression scores were linked to only about seven extra minutes of phone use per day.
129 words ・ CEFR B1
和訳を見る
人が自分のスクリーンタイムを報告すると、その答えはスマホが実際に記録している数字と違うことがよくあります。そこで研究者たちは、5か国の12の研究から実際のアプリ使用データを集めました。対象は2,945人です。この研究はまだ査読を受けていません。
参加者は平均して1日約3.3時間スマホを使っていました。使用量の変動の約40%は同じ人の中での変化から来ており、1人の使い方が日によって増えたり減ったりしていました。幸福感が低い人ほど、スマホを長く、また不規則に使う傾向がありました。
しかし、この研究では、気分の落ち込みとスマホの使いすぎのどちらが先なのかはわかりません。そして、その差は小さなものでした。抑うつの得点が高いことは、1日わずか7分ほど長くスマホを使うことと結びついていただけでした。
4択リーディングクイズ
Q1. Why did the researchers use real app-use data?
第1文で、自己申告の答えは実際の記録と違うことが多いと述べ、So researchers combined real app-use data ... とつなげているので A。
Q2. What does "about 40 percent of the variation in use came from changes within the same person" mean?
within the same person は「同じ人の中で」。one person's use could go up and down from day to day とあるように、同じ人でも日によって使い方が変わる部分が約4割あったという意味なので D。
Q3. What is the writer's attitude toward the findings?
the study can't tell us which comes first や the differences were small と述べ、慎重な見方をしているので B。
Studies of smartphones and mental health have often relied on self-reported screen time, which is known to differ from what people actually do. A large analysis posted on PsyArXiv, not yet peer-reviewed, took a different route. It pooled objective app-use logs from 12 datasets in five countries, covering 2,945 participants, 37,229 days and over 850,000 person-hours of data.
The question was not only how long people used their phones but also how much that use varied. Participants averaged about 3.3 hours a day across roughly 16 apps. Around 40 percent of the variation occurred within individuals, so a person's habits shifted from day to day and even hour to hour. Lower well-being went with both longer and less stable use. The effects were modest, though.
A 10 percent increase in depressive symptoms, relative to the scale's range, corresponded to roughly seven more minutes of daily use and about 7.5 percent more variability. The logs also hid what people did inside each app. And since the data are correlational, any of three explanations could be right. Heavy use could lower mood, low mood could drive people to their phones, or a third factor such as poor sleep could affect both.
199 words ・ CEFR B2
和訳を見る
スマートフォンと心の健康についての研究は、多くの場合、自己申告のスクリーンタイムに頼ってきました。しかし自己申告は、実際の行動と食い違うことが知られています。PsyArXivに投稿された、まだ査読を受けていない大規模な分析は、別の方法をとりました。5か国の12のデータセットから客観的なアプリ使用記録を集めたのです。
対象は参加者2,945人、37,229日分、延べ85万時間以上分のデータにのぼりました。問いは、人々がどれだけ長くスマホを使ったかだけでなく、その使い方がどれだけ変動したかでした。参加者は1日平均約3.3時間、およそ16のアプリを使っていました。変動の約40%は個人の中で生じており、同じ人でも日によって、さらには時間によって習慣が変わっていました。幸福感の低さは、使用時間の長さと使い方の不安定さの両方と結びついていました。
ただし、その効果は控えめでした。尺度の幅に対して抑うつ症状が10%増えることは、1日の使用時間がおよそ7分長いこと、変動が約7.5%大きいことに相当するだけでした。また、記録からは、人々が各アプリの中で何をしていたかはわかりませんでした。そして、データは相関関係なので、次の3つの説明のどれもが成り立ちえます。使いすぎが気分を落ち込ませるのかもしれないし、落ち込んだ気分が人をスマホに向かわせるのかもしれないし、睡眠不足のような第3の要因が両方に影響しているのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What was new about this analysis?
客観的なアプリ使用記録を使い、使用時間だけでなく how much that use varied(変動)も調べた点が新しいので C。
Q2. How does the author describe the size of the effects?
The effects were modest, though. とあるので A。1日約7分という小さな差の例も示されている。
Q3. Which of the following is NOT mentioned as a possible explanation for the link?
本文が挙げるのは、使いすぎ→気分低下、気分低下→スマホ、睡眠不足などの第3の要因の3つ。視力については触れていないので D。
重要単語
- objectiveB2形容詞・名詞客観的な/目的Objective data come from the phone, not from memory.
反意語 subjective(主観的な)。名詞では「目的、目標」の意味もあり、多義語として入試頻出。 - variabilityC1名詞ばらつき、変動There was high variability in daily phone use.
vary(変わる)→ variable(変わりやすい)→ variability。variety(多様性)と同じ語根。 - well-beingB2名詞心身の健康・幸福感Sleep is important for your well-being.
体だけでなく心や社会的な満足も含む広い「よい状態」。subjective well-being は「主観的幸福感」。 - harmonizeC1動詞(形式を)そろえる、統一するThe team harmonized data from many countries.
harmony(調和)の動詞形。研究では「異なるデータの形式をそろえる」の意味で使う。 - self-reportC1名詞・動詞自己申告(する)Self-reports of screen time are often inaccurate.
self-reported data(自己申告データ)。記憶に頼るので誤差が出やすい、と長文でよく指摘される。 - correlationalC1形容詞相関的なCorrelational data cannot prove cause and effect.
名詞 correlation(相関)。Correlation does not imply causation.(相関は因果を意味しない)は定番の一文。
この話題を TED で聞く
同じテーマの TED・TED-Ed を、
TED HACK で。英語の見どころ・使える表現・学習ミッションつきの日本語ガイドです。(運営:原田英語)
このネタ、誰かに教えたくなった?
5か国・約3000人のスマホの実際の利用記録を分析したら、気分が落ち込みぎみの人ほど使用時間が長く、日ごとのムラも大きかったらしい。でも差は1日7分ほど。「スマホ=悪」と決めつけるには小さい差かも(査読前)。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(3件)タップで表示
- Langener et al. (2026) People With Lower Well-Being Show Longer and Less Stable Smartphone Use: A Large-Scale Analysis of 12 Datasets, PsyArXiv(査読前)doi.org
- Orben & Przybylski (2019) The association between adolescent well-being and digital technology use, Nature Human Behaviourdoi.org
- Ellis et al. (2019) Do smartphone usage scales predict behavior?, International Journal of Human-Computer Studiesdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










