心理学

方向音痴はなぜ生まれる? ゲーム実験でわかった「育った街」とスマホ地図の影響

方向音痴はなぜ生まれる? ゲーム実験でわかった「育った街」とスマホ地図の影響

読む前に予想してみよう!

自分を「方向音痴」だと思っている人は、実際の道案内テストでも成績が低い傾向がある

研究カード(どんな研究?)
対象
世界の一般の人
規模
約40万人〜250万人以上
研究の種類
ゲームを使った大規模調査ほか
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

道に迷いやすさには、年齢・育った環境・ふだんの道案内アプリの使い方などが関わる。ゲームで約40万人を調べた研究では、都市の外で育った人ほどナビが得意だった。

ひとことで言うと方向オンチは生まれつきだけじゃない。育った町やスマホ地図も関係してる!

もくじ
  1. 「方向音痴の自覚」はわりと当たっている
  2. 250万人がプレイした「迷路ゲーム」
  3. 碁盤の目で育つと、碁盤の目に強くなる
  4. スマホ地図に頼りきると、空間の記憶が弱る?
  5. どんでん返し:脳の「地図係」は鍛えられるかも?
  6. まとめ

駅の出口を出た瞬間、どっちに行けばいいかわからない。来た道を戻ったはずなのに、知らない場所にいる。いわゆる「方向音痴」です。

答えを先に言うと、道に迷いやすさには、年齢、育った街の形、そしてふだんの道案内アプリの使い方などが関わっていることが、大規模な研究からわかってきました。生まれつきの才能だけで決まるものではなさそうです。

01「方向音痴の自覚」はわりと当たっている

まず、「自分は方向音痴だ」という自己評価は当てになるのでしょうか。

アメリカのヘガティ(Hegarty)さんらは2002年、方向感覚を自己評価するアンケート(サンタバーバラ方向感覚尺度)を作り、実際に建物や街の中を歩いて道や方角を答えるテストと比べました。その結果、自己評価は実際の成績とある程度一致していました。方向音痴の自覚は、ただの思い込みではないようです。

02250万人がプレイした「迷路ゲーム」

男女差が国によって違い、社会の格差と連動していた。これは、方向感覚が環境や経験に左右されることを示すヒントになりました。

03碁盤の目で育つと、碁盤の目に強くなる

2022年、同じチームは38か国の約40万人のデータで、さらに踏み込みました。

その結果、都市の外で育った人は、都市で育った人よりナビが得意でした。さらに面白いのは、シカゴのような碁盤の目の街で育った人は、規則正しい形の迷路レベルが得意で、プラハのような入り組んだ街や都市の外で育った人は、複雑な形のレベルが得意だったこと。子ども時代に歩き回った街の形が、大人になっても「得意な迷路のタイプ」として残っているようなのです。

育った街の「道の形」が、大人になっての得意な迷路を決めている?
育った街の「道の形」が、大人になっての得意な迷路を決めている?

04スマホ地図に頼りきると、空間の記憶が弱る?

最近の大きな要因が、スマホの地図アプリです。

カナダ・マギル大学のダーマニ(Dahmani)さんとボーボット(Bohbot)さんは2020年、ふだん車を運転する50人を対象に、これまでのGPS(ナビ)の使用量と、ナビなしで道を覚える能力を調べました。すると、GPSをよく使ってきた人ほど、自力で移動するときの空間の記憶が弱い傾向がありました。3年後に再検査できた13人では、その間にGPSを多く使った人ほど記憶の低下が大きかったのです。

ただし、3年後の追跡はわずか13人。結論は慎重に見る必要があります。

05どんでん返し:脳の「地図係」は鍛えられるかも?

逆に、道を覚え続けると脳が変わることを示唆する例もあります。2000年、ロンドンのタクシー運転手(複雑な街の道を丸暗記する試験を通った人たち)を調べた研究では、記憶に関わる海馬の後ろの部分が大きかったのです。運転歴が長いほど大きい傾向もありました。

06まとめ

方向音痴は、年齢・育った街の形・道案内アプリの使い方などが重なって生まれる、ある程度「環境で変わる」能力でした。

ナビは便利。でも、たまには地図をしまって街を歩き、自分の頭の中に地図を描いてみる。脳の「地図係」は、使えば応えてくれるかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhy do some people have a poor sense of direction? 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Why do some people have a poor sense of direction? Researchers at University College London helped create a mobile game called Sea Hero Quest, in which players steer a boat through mazes. Data from over 2.5 million players showed that navigation ability slowly declines with age, even from a young age. A 2022 study of about 400,000 players in 38 countries found that people who grew up outside cities navigated better.

City layout mattered too. People raised in grid-like cities such as Chicago did better on regular mazes, while those from complex cities like Prague did better on complex ones. Our habits also matter. A Canadian study found that people who had used GPS more often had weaker spatial memory when finding their own way.

125 words ・ CEFR B1

和訳を見る

方向感覚が悪い人がいるのはなぜでしょうか。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者たちは、プレイヤーが船を操縦して迷路を進む「Sea Hero Quest」というスマホゲームの開発に加わりました。250万人以上のプレイヤーのデータから、道を見つける能力は若いうちから年齢とともに少しずつ低下することがわかりました。2022年に38か国の約40万人のプレイヤーを調べた研究では、都市の外で育った人のほうが道を見つけるのが上手でした。

街の形も関係していました。シカゴのような碁盤の目の街で育った人は規則的な迷路が得意で、プラハのような入り組んだ街の出身者は複雑な迷路が得意でした。私たちの習慣も関係しています。カナダの研究では、GPSをよく使ってきた人ほど、自力で道を見つけるときの空間の記憶が弱いことがわかりました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. Who did better on regular mazes?

Q3. What can we infer from the findings about cities?

重要単語

  • navigationB2
    名詞道を見つけること、航行Navigation skills decline slowly with age. navigate(進路を決める)の名詞。ラテン語 navis(船)が語源で navy と同じ仲間。
  • sense of directionB1
    名詞(句)方向感覚I have a poor sense of direction. have a good / poor sense of direction の形で使う。sense of humor「ユーモアのセンス」と同じ型。
  • landmarkB2
    名詞目印になる建物や場所Use the tower as a landmark. 「画期的な出来事(a landmark study / decision)」の意味も入試で狙われる。
  • spatial memoryC1
    名詞(句)空間の記憶GPS use may weaken spatial memory. spatial は space の形容詞形(スペースではなくスペイシャルと発音)。spatial awareness「空間認識」。
  • hippocampusC1
    名詞海馬(記憶にかかわる脳の部位)The hippocampus helps us build mental maps. ギリシャ語で「タツノオトシゴ」。形が似ていることから。複数形は hippocampi。
  • declineB2
    動詞・名詞低下する、衰える/低下Navigation ability declines gradually with age. 「(申し出を)断る」の意味も重要。a decline in ~「~の低下」。
方向音痴は才能だけの問題じゃないらしい。ゲームで世界の約40万人のナビ能力を測ったら、都市の外で育った人ほど得意で、碁盤の目の街で育った人は碁盤の目の迷路が得意だった。スマホ地図に頼りきりの人ほど空間の記憶が弱い傾向も。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Coutrot et al. (2018) Global Determinants of Navigation Ability, Current Biologydoi.org
  2. Coutrot et al. (2022) Entropy of city street networks linked to future spatial navigation ability, Naturedoi.org
  3. Dahmani & Bohbot (2020) Habitual use of GPS negatively impacts spatial memory during self-guided navigation, Scientific Reportsdoi.org
  4. Hegarty et al. (2002) Development of a self-report measure of environmental spatial ability, Intelligencedoi.org
  5. Maguire et al. (2000) Navigation-related structural change in the hippocampi of taxi drivers, PNASdoi.org