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五輪の格闘技で「赤」が勝ちやすかった? Natureの論文から始まった"赤の勝率"論争

五輪の格闘技で「赤」が勝ちやすかった? Natureの論文から始まった"赤の勝率"論争

読む前に予想してみよう!

赤いユニフォームを着れば、実力に関係なく大きく勝ちやすくなる

研究カード(どんな研究?)
対象
五輪選手の試合データ/審判
規模
数百試合の分析/40人程度の実験
研究の種類
観察研究+実験
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

アテネ五輪の格闘技4種目で、赤を着た選手の勝率がわずかに高かった。審判の判定が色に影響された可能性もある一方、他競技での反論や"赤の効果"の再現性には疑問も。

ひとことで言うと赤い服で勝てる? 審判の目が赤に引っぱられているだけかも!

もくじ
  1. アテネ五輪で、赤が少しだけ勝っていた
  2. 反論1:柔道では「青」が勝っていた?
  3. 反論2:強いのは選手ではなく、審判の目?
  4. 「赤の効果」全般にも黄信号
  5. まとめ

勝負の日に、赤いパンツや赤いリストバンドを身につける。「赤は勝負の色」と考える人は少なくありません。

実はこの話、2005年に世界トップクラスの科学誌Natureに論文が載ったことで、一気に注目されました。ところがその後、反論や「本当に選手の力なの?」というツッコミが相次ぎます。

赤は本当に勝てる色なのか。論争の流れを追ってみましょう。

01アテネ五輪で、赤が少しだけ勝っていた

研究者は、動物の世界では赤い色が強さや攻撃性のサイン(たとえば、興奮して顔が赤くなるなど)として働くことに注目しました。人間でも、赤は相手に「強そう」と感じさせる、あるいは着ている本人の気分を高めるのではないか、という仮説です。

02反論1:柔道では「青」が勝っていた?

同じ年、Natureにさっそく反論が載りました。

柔道では選手が白か青の柔道着を着ます。別の研究チームが分析すると、柔道では青のほうが勝ちやすかったというのです。研究者たちは「色の意味というより、見え方(目立ちやすさ)の違いでは?」と指摘しました。

ただしその後、柔道で青の有利は確認できなかったとする研究も出ており、ここでも結論は揺れています。

「赤が強い」のか、「目立つ色が得」なのか
「赤が強い」のか、「目立つ色が得」なのか

03反論2:強いのは選手ではなく、審判の目?

もっとも興味深いのが、2008年のドイツの研究です。

つまり、赤の"強さ"の一部は、選手ではなく審判の目の中で生まれていた可能性があるのです。採点が審判の判断に左右される競技ほど、こうした影響が出やすいのかもしれません。

04「赤の効果」全般にも黄信号

「赤を着ると魅力的に見える」という有名な研究も、のちに慎重な見直しが進みました。2018年のメタ分析では、効果は小さく(男性が女性を評価する場合 d=0.26)、年を追って縮小した可能性や、結果が実際より大きく出ている可能性(特に女性が男性を評価する場合)が指摘されています。

赤の心理効果は「ゼロ」とは言い切れないものの、期待されていたほど大きくも確実でもないというのが現状です。

05まとめ

「赤は勝負の色」は、ちょっとホントで、かなり微妙でした。赤を着た選手が少し有利に見えた背景には、選手の気迫だけでなく、審判の目の偏りもあったかもしれません。

勝負服は自分を奮い立たせるお守りとして。でも最後にものを言うのは、やっぱり日々の練習です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 2005, a paper in the journal Nature reported that at the 2004 Athens Olympics, competitors wearing red… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In 2005, a paper in the journal Nature reported that at the 2004 Athens Olympics, competitors wearing red won slightly more often than those in blue in four combat sports, including boxing and taekwondo. The difference was clearest in close matches. The researchers suggested that red may signal strength, as it does in some animals.

However, critics soon responded. In judo, where athletes wear white or blue, one team found that blue seemed to win more often, although other studies did not confirm this. Then, in 2008, experienced taekwondo referees watched videos in which only the colors of the fighters' gear were digitally switched. They gave more points to the same fighter when he wore red.

116 words ・ CEFR B1

和訳を見る

2005年、学術誌『ネイチャー』に載った論文は、2004年のアテネ五輪で、ボクシングやテコンドーを含む4つの格闘技で、赤を着た選手が青を着た選手よりわずかに多く勝ったと報告しました。その差は接戦で最もはっきりしていました。研究者たちは、一部の動物でそうであるように、赤は強さのサインになるのかもしれないと示唆しました。

しかし、批判者たちはすぐに反応しました。選手が白か青を着る柔道では、ある研究チームが青のほうが多く勝っているようだと発見しましたが、他の研究はこれを確認しませんでした。そして2008年、経験豊富なテコンドーの審判たちが、選手の防具の色だけをデジタル処理で入れ替えた映像を見ました。彼らは同じ選手に対して、その選手が赤を着ているときにより多くの点を与えたのです。

4択リーディングクイズ

Q1. Where was the difference between red and blue clearest?

Q2. What did one team find about judo?

Q3. What does the 2008 study suggest?

重要単語

  • refereeB1
    名詞審判The referee gave more points to the red fighter. サッカー・ボクシングなどは referee、野球・テニスは umpire。judge は採点系競技の審判。
  • outcomeB2
    名詞結果Color might affect the outcome of close matches. the outcome of ~ の形で。result より「最終的な成り行き」のニュアンス。
  • dominanceC1
    名詞優位、支配Red is often linked to dominance in animals. 形容詞 dominant(支配的な・優性の)、動詞 dominate。dominant gene=優性遺伝子。
  • close matchB1
    名詞(句)接戦The effect appeared mainly in close matches. close は発音 /kloʊs/(形容詞「近い・接戦の」)。close game / close call(危機一髪)も。
  • biasB2
    名詞偏りJudges may have a color bias without knowing it. unconscious bias(無意識の偏り)。動詞 bias は「偏らせる」、形容詞 biased。
  • intimidateC1
    動詞威圧する、おじけづかせるThe big player tried to intimidate his opponent. in-+timid(臆病な)で「臆病にさせる」。形容詞 intimidating(威圧的な)。
  • edgeB2
    名詞優位、強みPractice gave her an edge over the others. have an edge over ~(~より有利である)。本来は「ふち・刃」。
2004年アテネ五輪のボクシングやレスリングで、赤い防具の選手のほうが少し勝ちやすかったという論文がNatureに。でも映像の色だけ入れ替えたら審判の採点まで変わった実験もあるらしい。強いのは選手か、審判の目か。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Hill & Barton (2005) Red enhances human performance in contests, Naturedoi.org
  2. Rowe, Harris & Roberts (2005) Seeing red? Putting sportswear in context, Naturedoi.org
  3. Hagemann, Strauss & Leißing (2008) When the referee sees red..., Psychological Sciencedoi.org
  4. Lehmann, Elliot & Calin-Jageman (2018) Meta-analysis of the effect of red on perceived attractiveness, Evolutionary Psychologydoi.org