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戦後の「砂糖配給」で育った赤ちゃんは、大人になって不安症が少なかった? 4.6万人の分析

戦後の「砂糖配給」で育った赤ちゃんは、大人になって不安症が少なかった? 4.6万人の分析

読む前に予想してみよう!

赤ちゃんのころに砂糖を控えると、大人になって不安症にならないことが証明された

研究カード(どんな研究?)
対象
英国UKバイオバンク参加者(1951〜56年生まれ)
規模
46,448人
研究の種類
自然実験を利用した観察コホート研究
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

戦後イギリスの砂糖配給を人生最初の約1000日間ずっと受けた世代は、配給なしの世代より成人後の不安症の記録が少なかった。ただし因果は未確定。

ひとことで言うと赤ちゃんのころ砂糖が少なかった人は、大人になって不安になりにくかった…かも?

もくじ
  1. 生まれた月で「砂糖の少なさ」が決まる
  2. 配給期間が長いほど、不安症が少なかった
  3. 不安症は頑健、うつ病は「大人の食事」で弱まった
  4. まとめ

「甘いものは控えめに」とはよく言われます。では、生まれる前から2歳ごろまで、砂糖が配給で限られていた人たちは、その後どうなったのでしょう。

実は、それを調べられる“歴史の実験”があります。第二次世界大戦後のイギリスでは、砂糖が配給制で、自由に買えなかったのです。配給が終わったのは1953年9月。その直後、砂糖の消費は一気に増えました。

2026年8月、英サリー大学などの研究チームが、医学誌『Translational Psychiatry』でこの歴史を利用した研究を発表しました。約4万6千人のデータから、配給の時期に赤ちゃんだった人は、大人になってからの不安症の記録が少なかったというのです。

01生まれた月で「砂糖の少なさ」が決まる

配給はある日を境に終わったので、いつ生まれたかで、お腹の中と赤ちゃん時代にどれだけ配給下にいたかが決まります。

  • R1000:お腹の中+生後2歳ごろまで配給下(約1000日)
  • R817・R635・R425:配給下の期間がだんだん短いグループ
  • R270:お腹の中だけ配給下
  • NR455:すべての食料配給が終わった後に生まれた、比較の基準グループ

本人が選んだわけではない条件で“くじ引き”のように分かれるので、こうした状況は自然実験と呼ばれます。

1953年9月、砂糖の配給が終わると消費は一気に増えた。生まれた時期が「砂糖の量」を分けた
1953年9月、砂糖の配給が終わると消費は一気に増えた。生まれた時期が「砂糖の量」を分けた

02配給期間が長いほど、不安症が少なかった

平均約16年の追跡で、不安症の診断記録があったのは全体の約6%。性別や地域の経済状況、生活習慣などを統計的にそろえて比べると、

  • R1000の不安症のハザード比:0.67(基準グループより約3割低い)
  • R1000のうつ病のハザード比:0.71

R817とR635でもリスクが低く、配給期間が短いグループでは差がないという、“量が多いほど効く”ような並び方でした。

ただし、絶対的な差はそれほど大きくありません。不安症の記録がある人の割合は、R1000で5.79%、基準グループで6.28%でした。

03不安症は頑健、うつ病は「大人の食事」で弱まった

チームは、大人になってからの砂糖摂取量を考慮した分析もしました。すると不安症の関連は残ったのに、うつ病の関連は弱まって統計的に意味のある差ではなくなりました。

また、R1000の人は甘い物の好み(9段階)がわずかに低い一方(5.82対6.04)、大人の砂糖摂取量はどのグループもほぼ同じでした。

2024年には別のチームが『Science』で、同じ配給を利用して、最初の1000日に配給を経験した人は2型糖尿病や高血圧のリスクが低かったと報告しています。今回はその視点を、心の健康に広げた形です。

04まとめ

WHOは、大人も子どもも「遊離糖類(食品に加えられた砂糖や、はちみつ・果汁に含まれる糖)」を1日のエネルギーの10%未満に抑えるよう勧めています。さらに生後6〜23か月の離乳食には、砂糖や塩を加えないこと、甘い飲み物を避けることも挙げています。

「赤ちゃんの甘さ控えめ」は、体だけでなく心の健康とも関係しているのかもしれません。とはいえ、まだ答えは“かもしれない”の段階です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn postwar Britain, sugar was rationed, which means each person could buy only a limited amount. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In postwar Britain, sugar was rationed, which means each person could buy only a limited amount. Rationing ended in September 1953, and sugar consumption rose quickly. Researchers at the University of Surrey used this history as a natural experiment. They studied UK Biobank data from 46,448 people born between October 1951 and March 1956.

People who experienced rationing for about their first 1,000 days, from before birth to around age two, had about a 30 percent lower risk of diagnosed anxiety than people born after rationing ended. However, the actual difference was small: 5.79 percent compared with 6.28 percent. The study was published in Translational Psychiatry.

106 words ・ CEFR B1

和訳を見る

戦後のイギリスでは砂糖が配給制でした。つまり、一人ひとりが限られた量しか買えなかったのです。配給は1953年9月に終わり、砂糖の消費量は急速に増えました。サリー大学の研究者たちは、この歴史を「自然実験」として利用しました。彼らは、1951年10月から1956年3月の間に生まれた46,448人のUKバイオバンクのデータを調べました。

生まれる前から2歳ごろまでの最初の約1000日間に配給を経験した人は、配給が終わった後に生まれた人より、不安症と診断されるリスクが約30%低くなっていました。ただし、実際の差は小さく、5.79%と6.28%でした。この研究は『Translational Psychiatry』に発表されました。

4択リーディングクイズ

Q1. What does "rationed" mean in this passage?

Q2. Which group was used for comparison?

Q3. Why does the author mention 5.79 percent and 6.28 percent?

重要単語

  • rationB2
    動詞・名詞配給する/配給量Food was rationed during the war. 発音は /ˈræʃən/。rationing「配給制」。ratio(比率)と同じ語源。
  • anxietyB2
    名詞不安、不安症Many students feel anxiety before exams. 形容詞 anxious。be anxious about ~「~を心配する」、be anxious to do「しきりに~したがる」の両方が頻出。
  • consumptionB2
    名詞消費(量)Sugar consumption rose after the war. 動詞 consume、consumer「消費者」。energy consumption「エネルギー消費」。
  • natural experimentC1
    名詞(句)自然実験A sudden policy change can create a natural experiment. 研究者が条件を割り振るのではなく、歴史や制度の偶然で条件が分かれた状況を利用する研究のこと。
  • wombC1
    名詞子宮、胎内The baby grows in its mother's womb. b は発音しない /wuːm/。in the womb「胎内で」。from the womb to the tomb「生まれてから死ぬまで」。
  • observationalC1
    形容詞観察によるAn observational study cannot prove cause and effect. observe(観察する)の形容詞。experimental(実験的な)と対比して使う。
  • rule outB2
    句動詞除外する、可能性を否定するDoctors could not rule out an infection. cannot rule out ~「~の可能性を否定できない」の形で研究の限界を述べるときによく使う。
戦後イギリスでは1953年9月まで砂糖が配給制。お腹の中から2歳ごろまで配給下にいた世代は、配給を知らない世代より大人になってからの不安症の記録が少なかったらしい。4万6千人の分析。ただし観察研究で原因とは言えない。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Navratilova et al. (2026) Dietary sugar exposure in early life and risk of adult mental health disorders: UK Biobank cohort study, Translational Psychiatrydoi.org
  2. Gracner et al. (2024) Exposure to sugar rationing in the first 1000 days of life protected against chronic disease, Sciencedoi.org
  3. WHO: Healthy diet fact sheetwho.int