「ホットハンドは錯覚」は30年後にひっくり返った。統計の"小さな落とし穴"が見つかって一部復活

読む前に予想してみよう!
「ホットハンド(調子の波)は完全な錯覚」というのは、今も科学的に確定した結論だ
2018年の再分析で、元の研究の方法に偏りがあり、補正するとホットハンドの証拠が見つかった。ただし効果の大きさは議論中。
- 対象
- プロ・大学のバスケ選手
- 規模
- 数十人のシュートデータ
- 研究の種類
- 観察データ・実験・数学的再分析
- 確かさ
- ★★★☆☆
「乗ってる選手は入り続ける」は錯覚——1985年の有名研究の結論だった。だが2018年、分析法に数学的な偏りが見つかり、補正するとホットハンドの証拠が現れた。
ひとことで言うと「ノってる」は錯覚と言われてきたけど、少しは本当にあるかも!
バスケットボールで、シュートが3本続けて入った選手。観客も、チームメイトも思います。「今日の彼はノってる。ボールを集めろ!」
この「調子が良いと成功が続く」という感覚を、ホットハンドと呼びます。
1985年、心理学者たちはこれを「錯覚」だと結論づけ、その研究は心理学の教科書に載る有名な例になりました。ところが30年以上たった2018年、どんでん返しが起こります。
011985年:「ホットハンドは錯覚」
この研究は、「人間の直感は確率に弱い」ことを示す代表例として、何十年も引用され続けました。「ホットハンドの誤謬」という言葉まで生まれたほどです。
02コイン投げに隠れていた"落とし穴"
2018年、経済学者のジョシュア・ミラーとアダム・サンフルホが、ある数学的な落とし穴を指摘しました。
コインを4回だけ投げることを考えます。そして「表が出た直後に、また表が出た割合」を計算します。これを何度も繰り返して平均をとると、表と裏は2分の1の確率で出るはずなのに、その平均は約40%になってしまうのです。
なぜでしょう。限られた回数の中で「表の直後」だけを数えると、表が先に「使われて」しまい、そのあとに残る投げには裏が多めに混じるという、目立たない偏りが生まれるためです。
つまり、1985年の分析方法では、本当は調子の波がなくても、「入った直後の成功率」が低めに出てしまう。それなのに差が「ほぼゼロ」だったということは、裏を返せば、実は「入った直後」のほうが成功率が高かった可能性があるのです。

03補正したら、ホットハンドが現れた
ミラーとサンフルホが、この偏りを補正して1985年の実験データを分析し直したところ、選手の成功率は連続して入った後に意味のある程度上がっていたのです。
「ホットハンドは錯覚」という結論は、少なくとも一部は分析方法の偏りによるものだった可能性が高まりました。
ただし、これで「ノっている選手には全部ボールを集めろ」となるわけではありません。実際の試合では、ノっている選手は相手から厳しくマークされ、難しいシュートを選びがちになります。そのため、試合中のデータで効果を見極めるのは今も難しく、効果の大きさは議論が続いています。
04それでも「錯覚」の部分は残る
大事なのは、ホットハンドが「少しはある」としても、人がそれを大きく見積もりすぎている可能性は残ることです。ファンやコーチは、ちょっとした連続を見ただけで「ノってる」と判断しがちです。
「現象が存在すること」と「人の感覚が正確であること」は、別の問題なのです。
05まとめ
「ホットハンドは錯覚」という、30年以上も続いた"常識"。それをひっくり返したのは、新しい実験ではなく、コイン投げの計算の見直しでした。
科学の結論は、いつでもアップデートされうる。そして、ひっくり返った結論にも、またツッコミが入る。それこそが、科学のいちばん面白いところです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerBasketball fans often talk about the "hot hand." A player who has made several shots in a row seems more…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In basketball, fans often say a player has a "hot hand" after a few good shots in a row. In 1985, a famous study said the hot hand was not real. For more than 30 years, many people believed this.
But in 2018, two researchers found a small math problem in the old study. When they fixed it, they found some evidence that the hot hand is real after all.
70 words ・ CEFR A2
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バスケットボールでは、良いシュートが何本か続いた選手のことを、ファンはよく「ホットハンド(ノっている)」と言います。1985年、ある有名な研究は、ホットハンドは本物ではないと述べました。30年以上の間、多くの人がこれを信じていました。
しかし2018年、2人の研究者が古い研究に小さな数学の問題を見つけました。それを直すと、結局ホットハンドは本物だという証拠がいくらか見つかったのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
1985年の「錯覚」という結論が2018年の再分析で変わった話なので D。
Q2. When did researchers find the math problem?
But in 2018, two researchers found a small math problem とあるので D。
Q3. In this passage, "after all" means ...
after all は「(予想に反して)結局」。錯覚だと思われていたが結局本物だった、という意味なので A。
Basketball fans often talk about the "hot hand." A player who has made several shots in a row seems more likely to make the next one. In 1985, psychologists compared players' success rates right after a hit and right after a miss, and they found almost no difference.
So they decided the hot hand was an illusion. Textbooks used it as an example of how people misread random patterns. Then, in 2018, two economists found a hidden bias in the 1985 method.
Even with a fair coin, the method makes the success rate after a hit look lower than it really is. Experts still argue about how big the effect is. But after correcting for the bias, the economists found that players really did shoot better after a streak.
129 words ・ CEFR B1
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バスケットボールファンはよく「ホットハンド」の話をします。何本か続けてシュートを決めた選手は、次も決めやすいように見えるというものです。1985年、心理学者たちは、シュートが入った直後と外れた直後の選手の成功率を比べ、ほとんど差がないことを見つけました。
そこで彼らは、ホットハンドは錯覚だと判断しました。教科書はこれを、人がランダムなパターンをいかに読み違えるかを示す例として使いました。ところが2018年、2人の経済学者が1985年の方法に隠れた偏りを見つけました。
公正なコインでさえ、その方法では入った直後の成功率が実際より低く見えてしまうのです。効果がどれくらい大きいかについては、専門家の間で今も議論があります。それでも、この偏りを補正すると、選手は連続で決めた後に本当に成功率が上がっていたことを、経済学者たちは見つけました。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the 1985 study conclude?
So they decided the hot hand was an illusion とあるので D。
Q2. What was the problem with the 1985 method?
the method makes the success rate after a hit look lower than it really is とあるので B。
Q3. What does the passage suggest about the hot hand now?
players really did shoot better after a streak とある一方、Experts still argue about how big the effect is とあるので C。
Flip a fair coin four times and note how often a head is followed by another head. Repeat this over many rounds and average the results, and you get about 40 percent, not the 50 percent most people expect. That small puzzle overturned one of psychology's favorite examples of human error.
In 1985, Gilovich, Vallone and Tversky analyzed professional game records and a shooting experiment with college players. They compared success rates just after hits and just after misses, found almost no difference, and concluded that the "hot hand" was an illusion, born of our habit of seeing meaning in random sequences. For decades, textbooks agreed. In 2018, the economists Joshua Miller and Adam Sanjurjo pointed out the coin problem.
The same selection bias affects any limited record of shots, so the method underestimates success after a hit. A measured difference of zero therefore hides a positive effect. When they corrected for the bias, a meaningful hot hand appeared in the original experimental data. Its size in real games is harder to pin down, because a player on a streak faces tighter defense and may attempt harder shots. A real effect also does not mean that fans judge it accurately.
200 words ・ CEFR B2
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公正なコインを4回投げ、表の後にもう一度表が出る割合を記録してみましょう。これを何度も繰り返して結果を平均すると、多くの人が予想する50%ではなく、約40%になります。この小さなパズルが、人間の判断ミスを示す心理学お気に入りの例の一つをくつがえしました。
1985年、ギロビッチ、ヴァローン、トヴェルスキーは、プロの試合記録と大学選手によるシュート実験を分析しました。シュートが入った直後と外れた直後の成功率を比べてほとんど差がないことを見つけ、「ホットハンド」は、ランダムな連続に意味を見出してしまう人間の癖から生まれた錯覚だと結論づけたのです。何十年もの間、教科書もそれに同意していました。2018年、経済学者のジョシュア・ミラーとアダム・サンフルホが、このコインの問題を指摘しました。同じ選択バイアスは限られた長さのどんなシュート記録にも影響するため、この方法では入った後の成功率が過小評価されます。
したがって、測定された差がゼロだということは、プラスの効果が隠れていることを意味します。偏りを補正すると、元の実験データに意味のあるホットハンドが現れました。実際の試合での効果の大きさを突き止めるのはもっと難しいことです。連続で決めている選手はより厳しい守備にあい、より難しいシュートを試みることがあるからです。また、効果が実在するからといって、ファンがそれを正確に判断しているわけではありません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
1985年の結論が、2018年に統計的偏りの発見と補正でくつがえった経緯が主題なので D。
Q2. In the coin example, what is the average proportion of heads following a head?
you get about 40 percent, not the 50 percent most people expect とあるので B。
Q3. Why does the author say a measured difference of zero "hides a positive effect"?
the method underestimates success after a hit とあり、方法が入った後の成功率を過小評価するので、差がゼロに見えても本当はプラスだったと言える。A。
重要単語
- hot handC1名詞(句)ホットハンド(調子が良く連続で成功する状態)Fans believe in the hot hand.
スポーツ・ギャンブル用語。hot hand fallacy(ホットハンドの誤謬)とセットで論じられる。 - sequenceB2名詞連続、順序Look at the sequence of hits and misses.
sequ(続く)が語根。in sequence=「順番に」。consequence(結果)も同語源。 - biasB2名詞偏り、偏見The method had a hidden bias.
be biased against / toward ~(~に偏見を持つ/偏っている)の形が頻出。 - streakB2名詞連続She made five shots in a streak.
on a winning streak(連勝中で)。もとは「筋・しま模様」。 - reanalysisC1名詞再分析A reanalysis changed the conclusion.
re-(再び)+analysis。複数形は reanalyses(-sis → -ses)。 - illusionB2名詞錯覚、幻想The hot hand was once called an illusion.
optical illusion=目の錯覚。be under the illusion that ~「~と思い違いをしている」。 - underestimateB2動詞過小評価するNever underestimate your opponent.
under-(下に)+estimate(見積もる)。反対は overestimate。名詞でも使える。
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「シュートが続けて入る選手は"ノってる"」は錯覚だ、という1985年の有名研究。でも30年以上たって、その分析に"コイン投げでも起きる偏り"が隠れていたと判明。補正すると、ホットハンドの証拠が出てきたらしい。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Gilovich, Vallone & Tversky (1985) The hot hand in basketball: On the misperception of random sequences, Cognitive Psychologydoi.org
- Miller & Sanjurjo (2018) Surprised by the hot hand fallacy? A truth in the law of small numbers, Econometricadoi.org
- Bar-Eli, Avugos & Raab (2006) Twenty years of "hot hand" research: Review and critique, Psychology of Sport and Exercisedoi.org
- Avugos, Köppen, Czienskowski & Raab (2013) The "hot hand" reconsidered: A meta-analytic approach, Psychology of Sport and Exercisedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













