心理学ホント

ルーレットで黒が26回連続。「次こそ赤」と賭けた人々が大損した夜と"ギャンブラーの誤謬"

ルーレットで黒が26回連続。「次こそ赤」と賭けた人々が大損した夜と"ギャンブラーの誤謬"

読む前に予想してみよう!

コインを投げて表が5回続いたら、次は裏が出る確率のほうが高い

研究カード(どんな研究?)
対象
宝くじ購入者・審判・裁判官など
規模
大規模な実データの分析
研究の種類
観察研究(実データ分析)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

1913年のモンテカルロで黒が26回連続し、「次こそ赤」と賭けた人が大損したという。偶然は帳尻合わせをしないのに人は流れを読む。審判の判断にもこのクセが。

ひとことで言うとコインは前に何が出たかを覚えていない。「そろそろ」はない!

もくじ
  1. コインは「前の結果」を覚えていない
  2. 「少数の法則」という脳のクセ
  3. 宝くじ、審判、裁判官にも
  4. ガチャにも「そろそろ」はない
  5. まとめ

1913年8月、モナコのモンテカルロのカジノで、伝説的な出来事が起きたと伝えられています。

ルーレットで、黒が出続けたのです。5回、10回、15回……。客たちは「こんなに黒が続いたんだから、次こそ赤が出るはず」と考え、赤に大金を賭け続けました。

ところが黒は止まりません。最終的に26回連続。赤に賭け続けた人々は、大損をしたといいます。

01コインは「前の結果」を覚えていない

この「そろそろ逆が出るはず」という思い込みを、ギャンブラーの誤謬と呼びます。

公正なコインを投げて、表が5回続いたとします。次に裏が出る確率は? 答えは、2分の1のままです。コインにもルーレットの球にも記憶はなく、前の結果が次の結果に影響することはありません。これを確率の言葉で「独立」と言います。

でも、私たちの直感は「表が続いたから、バランスをとって裏が来るはず」とささやきます。

02「少数の法則」という脳のクセ

この直感の正体を説明したのが、心理学者のエイモス・トヴェルスキーとダニエル・カーネマンです。

1971年、2人は「人は、少ない回数の結果でも、全体の確率をきれいに反映するはずだと思い込む」と指摘し、これを皮肉をこめて「少数の法則」と呼びました(本物の「大数の法則」は、回数を非常に多くすれば平均が確率に近づく、というもの)。

10回投げたら表と裏が5回ずつに近いはず、表が続いたら「バランスが崩れている」から裏で埋め合わせが来るはず——でも偶然は、そんな帳尻合わせはしてくれません。偏りは、その後の膨大な回数の中で"薄まる"だけなのです。

コインは「釣り合い」を取ろうとは考えていない
コインは「釣り合い」を取ろうとは考えていない

03宝くじ、審判、裁判官にも

このクセは、カジノの中だけの話ではありません。

さらに2016年の研究では、プロの判断にも同じ傾向が見つかりました。アメリカの難民認定の審査官は、直前の案件で認定を出すと、次の案件では認定を出しにくくなる傾向がありました。野球の球審も、直前の投球を「ストライク」と判定すると、次の際どい球を「ボール」と判定しやすかったのです。「続けて同じ判定はおかしい」という感覚が、独立して判断すべき案件に入り込んでいたのです。

04ガチャにも「そろそろ」はない

この誤謬は、スマホゲームのガチャでもおなじみです。「こんなに外れたんだから、そろそろ当たるはず」。

でも、毎回の確率が独立に決まる仕組みなら、外れが続いたことは次の当たりやすさに影響しません(ただし「天井」など、回数で確率が変わる仕組みがあるゲームは別です)。

05まとめ

偶然は、人間の「そろそろ」という感覚にはまったく付き合ってくれません。

「流れを読む」のは、人間の脳が得意なこと。でも、読むべき流れがそもそも存在しない場面もあると知っておくことが、お金と判断を守るいちばんの方法です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe gambler's fallacy is the belief that after a long run of one result, the opposite result becomes more… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The gambler's fallacy is the belief that after a long run of one result, the opposite result becomes more likely. A famous story says that in 1913, black came up 26 times in a row on a roulette wheel in Monte Carlo, and players who kept betting on red lost a lot of money.

In fact, each spin is independent, so earlier results do not affect the next one. This bias appears in real life, too. An analysis of lottery data in Maryland showed that after a number won, less money was bet on it for a while. A 2016 study found that baseball umpires who had just called a strike were more likely to call the next close pitch a ball.

122 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ギャンブラーの誤謬とは、ある結果が長く続いた後は反対の結果が出やすくなるという思い込みです。有名な話によると、1913年にモンテカルロのルーレットで黒が26回連続で出て、赤に賭け続けたプレーヤーたちは大金を失いました。

実際には、1回1回の回転は独立しているので、前の結果が次の結果に影響することはありません。この偏りは現実の生活にも現れます。メリーランド州の宝くじデータの分析では、ある番号が当選した後、しばらくの間その番号への賭け金が減ったことがわかりました。2016年の研究では、直前にストライクと判定した野球の球審は、次のきわどい投球をボールと判定しやすいことがわかりました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the gambler's fallacy?

Q2. What happened in the Maryland lottery?

Q3. What does the umpire example suggest?

重要単語

  • fallacyC1
    名詞誤謬(まちがった考え方)The gambler's fallacy fools many players. false(誤った)と同語源。論理学の用語で、評論文で「よくある思い込み」の意味でも使われる。
  • probabilityB2
    名詞確率The probability of heads is one half. probable(ありそうな)の名詞形。in all probability=「十中八九」は入試の熟語問題に出る。
  • independentB1
    形容詞独立した(前の結果に影響されない)Each coin toss is independent. be independent of ~(~から独立している)の前置詞 of に注意。depend on との対比で覚える。
  • streakB2
    名詞連続、連勝A long streak does not change the odds. winning streak(連勝)/ losing streak(連敗)。もとは「筋・しま」の意味。
  • randomB1
    形容詞でたらめな、無作為なRandom events often look like patterns. at random=「無作為に」。randomized controlled trial(ランダム化比較試験)も研究紹介で頻出。
  • consecutiveC1
    形容詞連続したIt rained for five consecutive days. con-(共に)+sequ(続く)。sequence, consequence と同語源。for three consecutive years のように使う。
  • diluteC1
    動詞薄めるAdd water to dilute the juice. 液体を薄めるのが本義。比喩で「効果・影響を弱める」にも使う。

4コマでわかる

ルーレットで黒が26回連続。「次こそ赤」と賭けた人々が大損した夜と"ギャンブラーの誤謬"の4コマ漫画
1913年、モンテカルロのカジノでルーレットの黒が26回連続。「そろそろ赤が来る」と大金を賭けた人たちが大損したらしい。コインもルーレットも前の結果なんて覚えていない。野球の審判や難民審査の判断にも同じクセが。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Tversky & Kahneman (1971) Belief in the law of small numbers, Psychological Bulletindoi.org
  2. Clotfelter & Cook (1993) The "gambler's fallacy" in lottery play, Management Sciencedoi.org
  3. Chen, Moskowitz & Shue (2016) Decision making under the gambler's fallacy: Evidence from asylum judges, loan officers, and baseball umpires, The Quarterly Journal of Economicsdoi.org