ナマケモノは怠けていない。哺乳類トップクラスの「超省エネ生活」だった

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野生のナマケモノは、1日に20時間近く眠っている
野生のノドチャミユビナマケモノを調べた研究では、睡眠は1日平均10時間ほどだった。長く眠るイメージは主に飼育下での記録から。
- 対象
- 野生のミユビナマケモノ・フタユビナマケモノ
- 規模
- 数頭〜十数頭(各研究)
- 研究の種類
- 野外での代謝測定・脳波記録・生態調査
- 確かさ
- ★★★☆☆
ナマケモノがのろいのは、栄養の少ない葉っぱだけで生きるため。使うエネルギーを極限まで減らす「省エネ」戦略だった。
ひとことで言うとナマケモノは、少ないごはんで生きるために、わざとゆっくり動いている!
木の枝にぶら下がり、ゆ〜っくり、ゆ〜っくり動く。名前からして「怠け者」。
ナマケモノほど、名前で損をしている動物はいないかもしれません。
でも、ナマケモノは決して怠けているわけではありません。あののろさは、厳しい世界を生き抜くために磨き上げた、究極の省エネ戦略なのです。
01主食は「栄養が少なくて消化しにくい」葉っぱ
ナマケモノのおもな食べ物は、木の葉っぱです。
葉っぱは森の中にたくさんあって、取り合いになりにくい食べ物。でも大きな弱点があります。エネルギーが少なく、しかも消化しにくいのです。葉には硬い繊維が多く、中には毒になる成分を含むものもあります。
ナマケモノは、いくつもの部屋に分かれた大きな胃の中で、微生物の力を借りてゆっくり葉を分解します。食べたものが体を通り抜けるまでに、何日もかかると考えられています。
少ない収入でやりくりするなら、支出を減らすしかない。ナマケモノは、まさにそれを体ごと実践しているのです。
02野生で測ったら、哺乳類トップクラスの省エネ
省エネの工夫はほかにもあります。
- 体温を高く保たない:多くの哺乳類は体温をほぼ一定に保ちますが、ナマケモノはまわりの気温によって体温がけっこう上下します。暖房代を節約しているようなものです
- 筋肉が少ない:筋肉はエネルギーをたくさん使うので、必要最低限に
- ぶら下がりに特化:長いかぎ爪で枝に引っかかっていれば、ほとんど力を使わずにぶら下がっていられます

03週に一度、命がけで地面に降りる理由
ミユビナマケモノには、不思議な習性があります。およそ週に一度、わざわざ木から降りて、地面でフンをするのです。
地面は天敵に襲われやすい、とても危険な場所。なぜそんなことをするのでしょう?
2014年に『Proceedings of the Royal Society B』に載った研究(Pauli ら)は、一つの仮説を示しました。ナマケモノの毛の中には、専用のガが住んでいます。ナマケモノが地面でフンをすると、ガがそこに卵を産み、育ったガがまたナマケモノの毛に戻ってくる。ガが毛の中に運びこむ栄養で藻(も)が育ち、ナマケモノはその藻を食べて栄養の足しにしているかもしれない、というのです。
ナマケモノの毛が緑っぽく見えるのは、この藻のせい。体そのものが「小さな畑」になっているのかもしれません。ただし、この仮説にはまだ議論もあります。
04「1日20時間寝る」は本当?
05まとめ
ナマケモノは怠けているのではなく、栄養の少ない葉っぱだけで生きるために、体の仕組みごと省エネに振り切った動物でした。
がんばりすぎて疲れたときは、ナマケモノを思い出してみてください。「必要なぶんだけ動く」も、立派な生き方です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSloths are famous for being slow, but their slowness is actually a clever survival strategy.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Sloths move very slowly, but they are not lazy. They eat mostly leaves. Leaves have little energy, and they are hard to digest.
So sloths save energy in many ways. Their body temperature goes up and down with the air. They have little muscle. They hang from branches with long claws, so they use almost no power.
Many people say sloths sleep 20 hours a day. But wild sloths sleep only about 10 hours.
74 words ・ CEFR A2
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ナマケモノはとてもゆっくり動きますが、怠けているわけではありません。彼らはおもに葉っぱを食べます。葉っぱはエネルギーが少なく、消化しにくいものです。
そのためナマケモノは、いろいろな方法でエネルギーを節約しています。体温はまわりの気温に合わせて上がったり下がったりします。筋肉は少ないです。長いかぎ爪で枝にぶら下がるので、ほとんど力を使いません。
ナマケモノは1日20時間眠ると多くの人が言います。しかし、野生のナマケモノは約10時間しか眠りません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ナマケモノが葉っぱだけで生きるために、いろいろな方法でエネルギーを節約していることが主題なので B。
Q2. How long do wild sloths sleep?
But wild sloths sleep only about 10 hours. とあるので D。20時間は「よく言われる話」。
Q3. In the passage, "lazy" means ...
lazy は「怠けている、動きたがらない」。they are not lazy=怠けているのではない、と否定されているので A。
Sloths are famous for being slow, but their slowness is actually a clever survival strategy. Their main food is leaves, which are easy to find in the forest but contain little energy and are hard to digest. In 2016, researchers measured how much energy wild sloths in Costa Rica used each day. They found that brown-throated three-toed sloths used less energy than any other non-hibernating mammal recorded.
Sloths save energy by letting their body temperature change with the air, keeping little muscle, and hanging from branches with their claws. Another study measured the brain waves of wild sloths in Panama and found that they slept only about 9.6 hours a day, far less than sloths in zoos.
117 words ・ CEFR B1
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ナマケモノはのろいことで有名ですが、そののろさは実は賢い生存戦略です。彼らのおもな食べ物は葉っぱで、森の中では見つけやすいものの、エネルギーが少なく消化しにくいのです。2016年、研究者たちはコスタリカの野生のナマケモノが1日にどれだけのエネルギーを使うかを測定しました。その結果、ノドチャミユビナマケモノの消費エネルギーは、記録されている冬眠しない哺乳類の中で最も少ないことがわかりました。
ナマケモノは、体温を気温に合わせて変化させ、筋肉を少なく保ち、かぎ爪で枝にぶら下がることでエネルギーを節約しています。別の研究ではパナマの野生のナマケモノの脳波を測定し、睡眠は1日約9.6時間しかなく、動物園のナマケモノよりはるかに短いことがわかりました。
4択リーディングクイズ
Q1. Why do sloths need to save energy?
leaves ... contain little energy and are hard to digest とあり、エネルギーの少ない食事が理由なので C。
Q2. What did the 2016 study find?
used less energy than any other non-hibernating mammal recorded とあるので B。体温は気温で変わるので D は誤り。
Q3. What can we infer about the belief that sloths sleep 20 hours a day?
野生の睡眠は約9.6時間で far less than sloths in zoos とあるので、長く眠るイメージは飼育下の記録から来たと推論できる。A。
In 2016, a team led by Jonathan Pauli estimated how much energy wild sloths in Costa Rica burn in a day, using the doubly labeled water method. The brown-throated three-toed sloth had the lowest field metabolic rate ever recorded for a mammal that does not hibernate.
So the animal's name, which suggests laziness, misses the point. Its slow pace is an extreme form of energy economy. Sloths live in trees and eat leaves, a food that is plentiful but low in energy, full of fiber, and sometimes toxic. Microbes help digest it, slowly, in a large stomach with several chambers. Sloths save further by letting their body temperature rise and fall, keeping little muscle, and hanging from their claws without effort.
One hypothesis, which has its critics, says that moths and algae in sloth fur form a mutualism, a partnership that supplies extra nutrients. That might explain their risky weekly trip to the ground to defecate. Many of these figures rest on very few animals. The well-known claim that sloths sleep twenty hours a day comes mostly from captive animals, while EEG recordings of three wild sloths in Panama showed an average of about 9.6 hours.
196 words ・ CEFR B2
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2016年、ジョナサン・ポーリが率いるチームは、二重標識水法を使って、コスタリカの野生のナマケモノが1日にどれだけのエネルギーを使うかを推定しました。ノドチャミユビナマケモノの野外代謝率は、冬眠しない哺乳類としてこれまでに記録された中で最も低いものでした。
怠惰を思わせるこの動物の名前は、的外れなのです。その遅いペースは、エネルギー節約の極端な形です。ナマケモノは木の上で暮らし、葉を食べます。葉は豊富にあるものの、エネルギーが少なく、繊維が多く、ときに有毒な食べ物です。それを、いくつもの部屋に分かれた大きな胃の中で、微生物の助けを借りてゆっくり消化します。ナマケモノはさらに、体温が上がったり下がったりするのにまかせ、筋肉を少なく保ち、かぎ爪で楽にぶら下がることで節約しています。
異論もある仮説ですが、ナマケモノの毛に住むガと藻が相利共生、つまり余分な栄養を供給するパートナー関係を作っているという説があります。それが、フンをするために週に一度地面に降りるという危険な行動の説明になるかもしれません。こうした数字の多くは、ごく少数の個体に基づいています。ナマケモノが1日20時間眠るというよく知られた話は、主に飼育下の動物に由来しており、パナマの野生のナマケモノ3頭の脳波記録では平均約9.6時間でした。
4択リーディングクイズ
Q1. According to the passage, how is the sloth's slowness best understood?
Its slow pace is an extreme form of energy economy. とあるので B。
Q2. Why might sloths make a risky trip to the ground every week?
ガと藻の相利共生が栄養を供給するという仮説があり、That might explain their risky weekly trip to the ground とあるので C。ただし which has its critics(異論もある)仮説である点に注意。
Q3. What limitation does the author point out?
Many of these figures rest on very few animals. が研究の限界を述べており、野生のナマケモノの睡眠も3頭だけの記録なので D。
重要単語
- metabolismB2名詞代謝Sloths have a very slow metabolism.
metabolic rate(代謝率)の形で頻出。「メタボ」は metabolic syndrome の略。 - folivoreC1名詞葉食動物A sloth is an arboreal folivore.
foli-(葉:foliage と同じ)+-vore(食べるもの)。herbivore(草食)、carnivore(肉食)とセットで。 - arborealC1形容詞樹上性のArboreal animals spend most of their lives in trees.
ラテン語 arbor(木)から。arboretum は「樹木園」。 - digestB1動詞消化するLeaves are hard to digest.
名詞 digestion。「要約」の意味の名詞 digest もある(情報を消化しやすくしたもの)。 - mutualismC1名詞相利共生The sloth, moths and algae may form a mutualism.
mutual(お互いの)+-ism。symbiosis(共生)、parasitism(寄生)と区別して覚える。 - hibernateB2動詞冬眠するBears hibernate during the winter.
ラテン語 hibernus(冬の)から。non-hibernating(冬眠しない)のように形容詞的にも使う。 - fluctuateC1動詞変動する、上下するA sloth's body temperature fluctuates with the air temperature.
fluct-(波)から。名詞 fluctuation。物価・気温・為替の話で入試頻出。
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ナマケモノがあんなにのろいのは、怠けてるからじゃなく「葉っぱだけで生きるための超省エネ」らしい。しかも野生のナマケモノの睡眠は1日10時間ほどで、動物園よりずっと短かった。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Pauli et al. (2016) Arboreal Folivores Limit Their Energetic Output, All the Way to Slothfulness, The American Naturalistdoi.org
- Pauli et al. (2014) A syndrome of mutualism reinforces the lifestyle of a sloth, Proceedings of the Royal Society Bdoi.org
- Rattenborg et al. (2008) Sleeping outside the box: electroencephalographic measures of sleep in sloths inhabiting a rainforest, Biology Lettersdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












