「ペットを飼うと健康になる」は本当? 論文を集めたら結果はバラバラだった

読む前に予想してみよう!
イヌを飼っている人は、飼っていない人より体をよく動かしている傾向がある
2023年のメタ分析で、ペットの飼い主、とくにイヌの飼い主は身体活動が多い傾向が示された。
- 対象
- 一般住民(飼い主と非飼い主)
- 規模
- 約380万人(メタ分析)ほか
- 研究の種類
- 観察研究のメタ分析
- 確かさ
- ★★☆☆☆
イヌの飼い主は長生きという研究がある一方、条件をそろえると差が消える分析も。確かそうなのは「よく歩く」効果。
ひとことで言うとペットで健康になるかは、まだ研究中。イヌの散歩はたしかに体にいい!
「ペットは家族。しかも飼うと健康にもいいらしい」
テレビやネットでよく聞く話です。ペットと暮らす幸せは、多くの人が実感しているはず。
でも、「健康になる」の部分を科学的に確かめようとすると、話は一気にややこしくなります。論文を集めてみると、結果がかなりバラバラなのです。
01「イヌの飼い主は死亡リスク24%減」という夢のデータ
まず、イヌ派がうれしくなるデータから。
メタ分析とは、複数の研究の結果をまとめて、より大きなデータとして分析する方法です。「研究の研究」とも言えます。
24%減。これだけ聞くと、今すぐイヌを迎えたくなりますよね。
02条件をそろえ直したら、差がほぼ消えた
ところが翌2020年、同じ雑誌にツッコミの論文が載りました(Bauman ら)。
指摘されたのは、クレイマーさんたちの分析が、「年齢や収入、もともとの健康状態などをそろえる前の数字」だけを使っていた点です。
イヌを飼っている人は、そもそも比較的若く、体力があり、生活に余裕がある人が多いかもしれません。病気がちな人や、高齢で体が不自由な人は、イヌの世話自体が難しいこともあります。つまり「イヌを飼ったから健康」ではなく、「健康だからイヌを飼える」のかもしれないのです。
そこで、もとになった6つの住民研究について、こうした条件をできるだけそろえた数字(調整済みの値)で分析し直すと、死亡リスクの差は約5%減(統計的には「差なし」と区別できない範囲)まで小さくなり、はっきりしないレベルになりました。

03「ペット効果」はまだ仮説
アメリカの心理学者ハロルド・ハーツォグさんは、2011年の論文で、ペットが健康や幸福を高めるという一般的な「ペット効果」は、事実ではなく、まだ確かめられていない仮説だと論じています。
実際、ペットの飼い主のほうが健康だった研究もあれば、差がなかった研究、むしろ飼い主のほうが不調を訴えやすかった研究もあります。
つまり、「ペットを飼えば病気が予防できる」とは言えません。ペットとの暮らしで気持ちが安らぐ人はたくさんいますが、それが病気の予防や長生きにつながるかは、研究によって結論が分かれているのです。
04確かそうなのは「よく歩く」こと
では、ペットと健康の関係はまったくないのでしょうか? そうとも言い切れません。
2023年の『Frontiers in Public Health』のメタ分析(Martins ら、49研究)では、ペットの飼い主、とくにイヌの飼い主は、体を動かす量が多い傾向がはっきり見られました。毎日の散歩は、自然と運動習慣になります。
一方で、心の健康への効果は小さいか、はっきりしない、という結果でした。
05まとめ
「ペットで健康になる」は、ホントともウソとも言い切れない、まさにビミョーな話でした。確かそうなのは、イヌとの散歩で体をよく動かすようになること。
ペットは「健康グッズ」ではなく、命ある家族。健康効果を期待するより、一緒に過ごす時間そのものを大切にしたいですね。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerDog owners live longer.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many people say that having a pet is good for your health. In 2019, a study found that dog owners had a 24 percent lower risk of dying.
But in 2020, other scientists checked the data again. They compared people of similar age, income and health, and the difference almost disappeared. One thing seems clear: dog owners walk more, because they take their dogs for walks every day.
68 words ・ CEFR A2
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ペットを飼うことは健康によいと、多くの人が言います。2019年のある研究では、犬の飼い主は死亡リスクが24%低いことがわかりました。
しかし2020年、別の科学者たちがデータを調べ直しました。年齢や収入、健康状態が似た人どうしを比べると、その差はほとんど消えてしまいました。一つ確かそうなのは、犬の飼い主は毎日犬を散歩に連れていくので、よく歩くということです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ペットが健康によいという話が本当かを、研究から考える内容なので C。
Q2. What did the 2019 study find about dog owners?
dog owners had a 24 percent lower risk of dying とあるので D。42と取り違えないように。
Q3. In this passage, "disappeared" means ...
disappear は「消える」。dis-(反対)+appear(現れる)なので B。
Dog owners live longer. That was the headline result of a 2019 meta-analysis of data from more than 3.8 million people, which found that dog owners had a 24 percent lower risk of death.
But a 2020 reanalysis pointed out a problem. Dog owners may already be younger, healthier and richer than other people. Maybe dogs do not make people healthy. Maybe it is the other way around, and healthy people are the ones who are able to keep a dog.
When the researchers took these factors into account, the difference became too small to be clear. One finding is more consistent. Dog owners are more physically active, mostly because they walk their dogs every day.
116 words ・ CEFR B1
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犬の飼い主は長生きする――これが、380万人以上のデータを使った2019年のメタ分析の大きな結論でした。この分析では、犬の飼い主は死亡リスクが24%低いことがわかったのです。
しかし2020年の再分析は、ある問題を指摘しました。犬の飼い主は、もともとほかの人より若く、健康で、裕福なのかもしれません。犬が人を健康にするのではないのかもしれません。もしかすると逆で、健康な人こそが犬を飼えるのかもしれないのです。研究者たちがこうした要因を考慮に入れると、差は小さくなり、はっきりしなくなりました。
もっと一貫している結果もあります。犬の飼い主は体をよく動かしているということです。主な理由は、毎日犬を散歩させているからです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
2019年の結果が2020年の再分析で揺らいだことと、最後の「犬の飼い主は体をよく動かしている」という一貫した結果を合わせた A。
Q2. What did the 2020 reanalysis point out?
dog owners may already be younger, healthier and richer than other people とあるので C。
Q3. What does "the other way around" mean in the passage?
the other way around は「逆」。犬のおかげで健康になる(結果)のではなく、健康だから犬を飼える(原因)のかもしれない、という意味なので D。
The idea that pets improve health is widely accepted, yet the evidence is surprisingly inconsistent. In 2019, Kramer and colleagues pooled studies covering more than 3.8 million people and reported that dog owners had a 24 percent lower risk of death during follow-up. The following year, however, Bauman and colleagues noted that this estimate relied only on unadjusted figures. People who own dogs may be younger, fitter and better off, while those who are elderly or chronically ill may be unable to care for a dog, so good health could be a cause of ownership rather than a consequence.
When the six population studies were reanalyzed using figures adjusted for such factors, the reduction shrank to about 5 percent, which was not statistically distinguishable from no difference. The psychologist Harold Herzog has argued that the so-called pet effect remains a hypothesis. The most consistent finding comes from a 2023 meta-analysis of 49 studies: owners, especially dog owners, are more physically active. Even this, though, is based largely on data collected at a single point in time, so active people may simply be more likely to choose dogs.
187 words ・ CEFR B2
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ペットが健康を増進するという考えは広く受け入れられていますが、証拠は驚くほど一貫していません。2019年、クレイマーらは合計380万人以上を対象とした研究をまとめ、犬の飼い主は追跡期間中の死亡リスクが24%低かったと報告しました。しかし翌年、バウマンらは、この推定値が調整前の数値だけに頼っていたことを指摘しました。犬を飼う人はもともと若く、体力があり、暮らしに余裕があるのかもしれません。一方、高齢の人や持病のある人は犬の世話ができないこともあります。つまり、健康は犬を飼った結果ではなく、飼うことの原因である可能性があるのです。
6つの住民研究をこうした要因で調整した数値で分析し直すと、リスクの低下は約5%に縮まり、統計的には「差がない」場合と区別できませんでした。心理学者のハロルド・ハーツォグは、いわゆる「ペット効果」はまだ仮説にすぎないと論じています。最も一貫した結果は、49の研究をまとめた2023年のメタ分析によるものです。飼い主、とくに犬の飼い主は体をよく動かしているのです。とはいえ、これも主に一時点で集めたデータに基づいているため、もともと活動的な人が犬を選びやすいだけなのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
24%減の報告、その再分析、ペット効果は仮説という主張など、証拠の強さを検討しているので D。
Q2. What happened when adjusted figures were used?
the reduction shrank to about 5 percent, which was not statistically distinguishable from no difference とあるので B。
Q3. Why does the author say even the physical activity finding needs caution?
最終文 active people may simply be more likely to choose dogs とあるので A。因果の向きが逆かもしれないという指摘。
重要単語
- pet ownershipB2名詞(句)ペットを飼うことPet ownership is common in many countries.
owner(所有者)+-ship(状態)。home ownership「持ち家」も同じ形。 - confounding factorC1名詞(句)交絡因子Income can be a confounding factor in health studies.
見かけの関係を生む隠れた要因。confound は「混同させる・困惑させる」。 - mortalityC1名詞死亡(率)The study looked at all-cause mortality.
all-cause mortality「全死因死亡」は医学研究の定番表現。 - physical activityB1名詞(句)身体活動Walking a dog increases physical activity.
exercise(運動)より広く、家事や通勤の歩行なども含む。 - causationC1名詞因果関係Correlation does not prove causation.
Correlation does not imply causation.「相関は因果を意味しない」は入試長文の超頻出テーマ。 - hypothesisB2名詞仮説The pet effect is still a hypothesis.
複数形は hypotheses。hypothetical(仮定の)も重要。 - the other way aroundB2副詞(句)逆に、あべこべにHealthy people may get dogs, not the other way around.
因果関係が逆である可能性を示すときの便利な表現。会話でもよく使う。
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「ペットを飼うと健康になる」って常識っぽいけど、論文を集めると結果はかなりバラバラ。イヌの飼い主は死亡リスクが24%低いという分析も、年齢や収入をそろえ直すと差がほぼ消えたらしい。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Kramer, Mehmood & Suen (2019) Dog Ownership and Survival: A Systematic Review and Meta-Analysis, Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomesdoi.org
- Bauman et al. (2020) Does Dog Ownership Really Prolong Survival?: A Revised Meta-Analysis and Reappraisal of the Evidence, Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomesdoi.org
- Herzog (2011) The Impact of Pets on Human Health and Psychological Well-Being, Current Directions in Psychological Sciencedoi.org
- Martins et al. (2023) Pet's influence on humans' daily physical activity and mental health: a meta-analysis, Frontiers in Public Healthdoi.org
- Levine et al. (2013) Pet Ownership and Cardiovascular Risk: A Scientific Statement From the American Heart Association, Circulationdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











