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「ペットを飼うと健康になる」は本当? 論文を集めたら結果はバラバラだった

「ペットを飼うと健康になる」は本当? 論文を集めたら結果はバラバラだった

読む前に予想してみよう!

イヌを飼っている人は、飼っていない人より体をよく動かしている傾向がある

研究カード(どんな研究?)
対象
一般住民(飼い主と非飼い主)
規模
約380万人(メタ分析)ほか
研究の種類
観察研究のメタ分析
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

イヌの飼い主は長生きという研究がある一方、条件をそろえると差が消える分析も。確かそうなのは「よく歩く」効果。

ひとことで言うとペットで健康になるかは、まだ研究中。イヌの散歩はたしかに体にいい!

もくじ
  1. 「イヌの飼い主は死亡リスク24%減」という夢のデータ
  2. 条件をそろえ直したら、差がほぼ消えた
  3. 「ペット効果」はまだ仮説
  4. 確かそうなのは「よく歩く」こと
  5. まとめ

「ペットは家族。しかも飼うと健康にもいいらしい」

テレビやネットでよく聞く話です。ペットと暮らす幸せは、多くの人が実感しているはず。

でも、「健康になる」の部分を科学的に確かめようとすると、話は一気にややこしくなります。論文を集めてみると、結果がかなりバラバラなのです。

01「イヌの飼い主は死亡リスク24%減」という夢のデータ

まず、イヌ派がうれしくなるデータから。

メタ分析とは、複数の研究の結果をまとめて、より大きなデータとして分析する方法です。「研究の研究」とも言えます。

24%減。これだけ聞くと、今すぐイヌを迎えたくなりますよね。

02条件をそろえ直したら、差がほぼ消えた

ところが翌2020年、同じ雑誌にツッコミの論文が載りました(Bauman ら)。

指摘されたのは、クレイマーさんたちの分析が、「年齢や収入、もともとの健康状態などをそろえる前の数字」だけを使っていた点です。

イヌを飼っている人は、そもそも比較的若く、体力があり、生活に余裕がある人が多いかもしれません。病気がちな人や、高齢で体が不自由な人は、イヌの世話自体が難しいこともあります。つまり「イヌを飼ったから健康」ではなく、「健康だからイヌを飼える」のかもしれないのです。

そこで、もとになった6つの住民研究について、こうした条件をできるだけそろえた数字(調整済みの値)で分析し直すと、死亡リスクの差は約5%減(統計的には「差なし」と区別できない範囲)まで小さくなり、はっきりしないレベルになりました。

「ペットのおかげ」なのか「もともとの差」なのか、見分けるのは難しい。
「ペットのおかげ」なのか「もともとの差」なのか、見分けるのは難しい。

03「ペット効果」はまだ仮説

アメリカの心理学者ハロルド・ハーツォグさんは、2011年の論文で、ペットが健康や幸福を高めるという一般的な「ペット効果」は、事実ではなく、まだ確かめられていない仮説だと論じています。

実際、ペットの飼い主のほうが健康だった研究もあれば、差がなかった研究、むしろ飼い主のほうが不調を訴えやすかった研究もあります。

つまり、「ペットを飼えば病気が予防できる」とは言えません。ペットとの暮らしで気持ちが安らぐ人はたくさんいますが、それが病気の予防や長生きにつながるかは、研究によって結論が分かれているのです。

04確かそうなのは「よく歩く」こと

では、ペットと健康の関係はまったくないのでしょうか? そうとも言い切れません。

2023年の『Frontiers in Public Health』のメタ分析(Martins ら、49研究)では、ペットの飼い主、とくにイヌの飼い主は、体を動かす量が多い傾向がはっきり見られました。毎日の散歩は、自然と運動習慣になります。

一方で、心の健康への効果は小さいか、はっきりしない、という結果でした。

05まとめ

「ペットで健康になる」は、ホントともウソとも言い切れない、まさにビミョーな話でした。確かそうなのは、イヌとの散歩で体をよく動かすようになること。

ペットは「健康グッズ」ではなく、命ある家族。健康効果を期待するより、一緒に過ごす時間そのものを大切にしたいですね。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerDog owners live longer. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Dog owners live longer. That was the headline result of a 2019 meta-analysis of data from more than 3.8 million people, which found that dog owners had a 24 percent lower risk of death.

But a 2020 reanalysis pointed out a problem. Dog owners may already be younger, healthier and richer than other people. Maybe dogs do not make people healthy. Maybe it is the other way around, and healthy people are the ones who are able to keep a dog.

When the researchers took these factors into account, the difference became too small to be clear. One finding is more consistent. Dog owners are more physically active, mostly because they walk their dogs every day.

116 words ・ CEFR B1

和訳を見る

犬の飼い主は長生きする――これが、380万人以上のデータを使った2019年のメタ分析の大きな結論でした。この分析では、犬の飼い主は死亡リスクが24%低いことがわかったのです。

しかし2020年の再分析は、ある問題を指摘しました。犬の飼い主は、もともとほかの人より若く、健康で、裕福なのかもしれません。犬が人を健康にするのではないのかもしれません。もしかすると逆で、健康な人こそが犬を飼えるのかもしれないのです。研究者たちがこうした要因を考慮に入れると、差は小さくなり、はっきりしなくなりました。

もっと一貫している結果もあります。犬の飼い主は体をよく動かしているということです。主な理由は、毎日犬を散歩させているからです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. What did the 2020 reanalysis point out?

Q3. What does "the other way around" mean in the passage?

重要単語

  • pet ownershipB2
    名詞(句)ペットを飼うことPet ownership is common in many countries. owner(所有者)+-ship(状態)。home ownership「持ち家」も同じ形。
  • confounding factorC1
    名詞(句)交絡因子Income can be a confounding factor in health studies. 見かけの関係を生む隠れた要因。confound は「混同させる・困惑させる」。
  • mortalityC1
    名詞死亡(率)The study looked at all-cause mortality. all-cause mortality「全死因死亡」は医学研究の定番表現。
  • physical activityB1
    名詞(句)身体活動Walking a dog increases physical activity. exercise(運動)より広く、家事や通勤の歩行なども含む。
  • causationC1
    名詞因果関係Correlation does not prove causation. Correlation does not imply causation.「相関は因果を意味しない」は入試長文の超頻出テーマ。
  • hypothesisB2
    名詞仮説The pet effect is still a hypothesis. 複数形は hypotheses。hypothetical(仮定の)も重要。
  • the other way aroundB2
    副詞(句)逆に、あべこべにHealthy people may get dogs, not the other way around. 因果関係が逆である可能性を示すときの便利な表現。会話でもよく使う。

動画でもっと知る

「ペットを飼うと健康になる」って常識っぽいけど、論文を集めると結果はかなりバラバラ。イヌの飼い主は死亡リスクが24%低いという分析も、年齢や収入をそろえ直すと差がほぼ消えたらしい。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Kramer, Mehmood & Suen (2019) Dog Ownership and Survival: A Systematic Review and Meta-Analysis, Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomesdoi.org
  2. Bauman et al. (2020) Does Dog Ownership Really Prolong Survival?: A Revised Meta-Analysis and Reappraisal of the Evidence, Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomesdoi.org
  3. Herzog (2011) The Impact of Pets on Human Health and Psychological Well-Being, Current Directions in Psychological Sciencedoi.org
  4. Martins et al. (2023) Pet's influence on humans' daily physical activity and mental health: a meta-analysis, Frontiers in Public Healthdoi.org
  5. Levine et al. (2013) Pet Ownership and Cardiovascular Risk: A Scientific Statement From the American Heart Association, Circulationdoi.org