動物・植物ホント

なぜイヌは飼い主の顔色がわかるのか? 見つめ合うと「絆ホルモン」が出ていた

なぜイヌは飼い主の顔色がわかるのか? 見つめ合うと「絆ホルモン」が出ていた

読む前に予想してみよう!

人に育てられたオオカミも、イヌと同じように人とよく目を合わせる

研究カード(どんな研究?)
対象
飼い犬と飼い主・オオカミ
規模
数頭〜数十組規模(各研究)
研究の種類
行動実験・ホルモン測定・解剖
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

イヌは人の笑顔と怒り顔を見分け、指さしや視線も読む。飼い主と見つめ合うと、両方で絆ホルモンが増える。

ひとことで言うとイヌと見つめあうと、イヌも人も「好き」のホルモンが出る!

もくじ
  1. 見つめ合うと、人もイヌも「オキシトシン」アップ
  2. 笑顔と怒り顔、イヌは見分けられる
  3. 「指さし」がわかる動物は意外と少ない
  4. 「子犬の目」は人のために進化した?
  5. まとめ

落ちこんで帰った日、なぜか愛犬がそっと寄りそってくれた。そんな経験はありませんか?

それはたまたまではないかもしれません。イヌは、人の顔や視線を読むことにかけては、動物界でもトップクラスの実力者なのです。

そして、イヌと見つめ合うとき、あなたとイヌの体の中では同じホルモンが増えています。

01見つめ合うと、人もイヌも「オキシトシン」アップ

オキシトシンは、母親と赤ちゃんの絆にかかわることで知られるホルモン。「愛情ホルモン」「絆ホルモン」とも呼ばれます。

つまり、見つめる → オキシトシンが出る → もっと見つめたくなるという、よい循環(ループ)が人とイヌの間で回っていたのです。もともとは親子の間の仕組みが、種の壁をこえて使われている、とも考えられています。

見つめ合うたびに、絆のループがくるりと回る。
見つめ合うたびに、絆のループがくるりと回る。

02笑顔と怒り顔、イヌは見分けられる

イヌは表情も読んでいます。

2015年に『Current Biology』で発表されたウィーン獣医大学の研究では、イヌに「笑顔」か「怒り顔」の写真の上半分か下半分だけを見せて、どちらかを選ぶように訓練しました。そのあと、見たことのない人の顔や、訓練とは反対側の半分の写真を見せても、イヌは正しく選べたのです。

つまりイヌは、単に「歯が見えるかどうか」などの目印を覚えたのではなく、表情そのものの意味をつかんでいた可能性が高いのです。

03「指さし」がわかる動物は意外と少ない

人が「あっち」と指さすと、イヌはちゃんとそっちを見ます。当たり前に思えますが、実はこれ、かなりの特技です。

2002年に『Science』に載ったブライアン・ヘアさんたちの研究では、隠されたエサの場所を人が指さしや視線で教えたとき、イヌはチンパンジーやオオカミより上手にその合図を使えました。人間に近いチンパンジーより、イヌのほうが「人の合図読み」は得意なのです。

04「子犬の目」は人のために進化した?

人がイヌを選び、イヌが人に合わせる。長い時間をかけた、二つの種の「共同作業」の結果なのかもしれません。

05まとめ

イヌは人の表情を見分け、指さしや視線を読み、見つめ合うことで飼い主と同じ「絆ホルモン」を分かち合っています。

あなたの顔色をうかがっているように見えるあの視線は、何万年もかけて磨かれた、人と生きるための特別な能力なのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerDogs are among the best animals at reading human faces and signals. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Dogs are among the best animals at reading human faces and signals. In a 2015 study in Japan, dogs and their owners spent 30 minutes together. The longer a pair gazed at each other, the more the owner's oxytocin, a hormone linked to bonding, increased, and it rose in the dog as well. This did not happen with wolves raised by humans.

In another study, dogs learned to choose happy or angry faces, and they still chose correctly when shown new people or the other half of the face. In addition, dogs used human pointing to find hidden food better than chimpanzees or wolves did.

105 words ・ CEFR B1

和訳を見る

犬は、人の顔や合図を読むのが最も得意な動物の一つです。2015年の日本の研究では、犬と飼い主が30分間いっしょに過ごしました。ペアが長く見つめ合うほど、絆に関わるホルモンであるオキシトシンが飼い主で多く増え、犬でも増えていました。人に育てられたオオカミでは、こうしたことは起こりませんでした。

別の研究では、犬が笑顔か怒り顔を選ぶことを覚え、知らない人の顔や顔の反対側の半分を見せられても正しく選びました。さらに、犬は隠されたエサを見つけるとき、チンパンジーやオオカミよりも上手に人の指さしを利用しました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. How long did the dogs and owners spend together in the 2015 study?

Q3. What can we infer from the result with wolves?

重要単語

  • gazeB2
    動詞・名詞じっと見つめる(こと)The dog gazed at its owner for a long time. gaze at ~「~をじっと見つめる」。stare は「(驚き・敵意で)じろじろ見る」、glance は「ちらっと見る」と区別。
  • facial expressionB1
    名詞(句)表情Dogs can read human facial expressions. facial は face の形容詞形。express(表す)→ expression(表現・表情)。
  • bondB2
    名詞絆Mutual gazing may strengthen the bond between dogs and humans. もとは「縛るもの」。動詞 bond with ~「~と絆を深める」。「債券」の意味も入試に出る。
  • cueB2
    名詞合図、手がかりDogs follow human pointing cues to find food. queue(行列)と発音が同じ /kjuː/。social cues「社会的な手がかり」は心理学の長文で頻出。
  • domesticationC1
    名詞家畜化Domestication changed how dogs look at people. domestic(家庭の・国内の)が語源。domestic violence、domestic flights などと関連づけて覚える。
  • discriminateC1
    動詞見分ける、区別するDogs can discriminate happy faces from angry ones. discriminate A from B「AとBを見分ける」。discriminate against ~「~を差別する」との意味の違いが入試頻出。
  • oxytocinC1
    名詞オキシトシン(絆ホルモン)Oxytocin is often called the bonding hormone. ギリシャ語「速い出産」が語源で、もとは出産を促すホルモンとして発見された。

動画でもっと知る

イヌと見つめ合うと、飼い主とイヌの両方で「オキシトシン」という絆ホルモンが増えるらしい。しかもオオカミでは起きない。何万年もかけて、イヌは人の顔を読むプロになっていた。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Nagasawa et al. (2015) Oxytocin-gaze positive loop and the coevolution of human-dog bonds, Sciencedoi.org
  2. Müller et al. (2015) Dogs can discriminate emotional expressions of human faces, Current Biologydoi.org
  3. Hare et al. (2002) The domestication of social cognition in dogs, Sciencedoi.org
  4. Kaminski et al. (2019) Evolution of facial muscle anatomy in dogs, PNASdoi.org