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ハエトリグサは触られた回数を「数えて」いた。2回で閉じ、もっと暴れると消化開始

ハエトリグサは触られた回数を「数えて」いた。2回で閉じ、もっと暴れると消化開始

読む前に予想してみよう!

ハエトリグサは、感覚毛に1回さわっただけですぐに葉を閉じる

研究カード(どんな研究?)
対象
ハエトリグサ(Dionaea muscipula)
規模
実験室での刺激実験
研究の種類
電気生理・遺伝子発現・カルシウムイメージング
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

ハエトリグサは感覚毛への刺激を数え、約30秒以内に2回で葉を閉じる。さらに刺激が続くと消化酵素の遺伝子が働き出す。脳はないのに“数える”植物。

ひとことで言うとハエトリグサは「2回さわられたら閉じる」。ちゃんと数えてる!

もくじ
  1. 1回目は「様子見」、2回目で「パクッ」
  2. 「2回目」をどうやって覚えているのか
  3. 閉じたあとも、数え続けていた
  4. まとめ

ハエトリグサの葉の内側には、まつげのような感覚毛が数本生えています。ここに虫がふれると、葉がパクッと閉じる――。

でも実は、1回さわっただけでは閉じません。ハエトリグサは、さわられた回数を「数えて」いるのです。しかも数えるのは2回まで、ではありません。

011回目は「様子見」、2回目で「パクッ」

感覚毛が曲げられると、葉に電気信号(活動電位)が流れます。でも1回だけなら、葉は動きません。約30秒以内にもう1回信号が来たときに、初めて閉じるのです。

これは、とても理にかなっています。雨粒やゴミが一度当たっただけで閉じていたら、エネルギーの無駄づかい。動き回る虫なら、短い時間に何度も毛にふれるはずです。

閉じる動き自体は0.1〜0.3秒ほど。植物の中でもトップクラスの速さです。フランスとアメリカの研究チーム(Forterreら、2005年)は、ふくらんだ葉が“パチン”と反り返るスナップ(座屈)の仕組みで、筋肉なしにこの速さを生んでいることを示しました。

02「2回目」をどうやって覚えているのか

1回目の刺激を、植物はどこに「メモ」しているのでしょう?

脳も神経もないのに、カルシウムの“たまり具合”で回数を記憶している。まさに化学の電卓です。

1回目でたまり、時間とともに減り、2回目でしきい値を超えると閉じる
1回目でたまり、時間とともに減り、2回目でしきい値を超えると閉じる

03閉じたあとも、数え続けていた

ドイツ・ヴュルツブルク大学のヘドリッヒ(Hedrich)さんらのチーム(Böhmら、2016年、『Current Biology』)は、閉じたあとの葉を何度も刺激しました。

すると、2回目の刺激で「接触ホルモン」と呼ばれるジャスモン酸の経路がオン。3回を超えると、獲物を分解する消化酵素の遺伝子が働き出し、その量は刺激の回数に比例して増えました。さらに、獲物の体から出るナトリウムを取りこむための通り道(DmHKT1)の遺伝子も、刺激の回数に応じて増えていたのです。

つまりハエトリグサは、閉じこめた相手が「暴れ続けている=生きたごちそう」かどうかを、刺激の回数で見きわめているわけです。

04まとめ

ハエトリグサは、1回目は様子見、2回目でパクッ、そのあとは暴れた回数を数えて「食べるかどうか」を決めていました。

脳がなくても、カルシウムと電気信号で“数を数える”ことはできる。植物の頭のよさは、私たちが思うよりずっと奥深いのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe Venus flytrap seems to be able to count. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The Venus flytrap seems to be able to count. When an insect bends one of the trigger hairs inside its leaf, an electrical signal travels through the leaf, but the trap does not close. It snaps shut only if a second signal arrives within about 30 seconds. This saves energy, because a raindrop usually touches the hair just once, while a living insect moves around.

In 2020, Japanese researchers made flytraps that glow when calcium increases. They found that each touch raised the calcium level, and the trap closed when the level passed a certain line. A German study showed that after the trap closes, more than three touches switch on the genes for digestive enzymes.

116 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ハエトリグサは数を数えられるようです。虫が葉の内側の感覚毛の1本を曲げると、電気信号が葉を伝わりますが、わなは閉じません。約30秒以内に2回目の信号が届いたときだけ、パチンと閉じるのです。雨粒はたいてい毛に1回しかふれませんが、生きた虫は動き回るので、これによってエネルギーが節約されます。

2020年、日本の研究者たちは、カルシウムが増えると光るハエトリグサを作りました。その結果、ふれるたびにカルシウムの濃度が上がり、濃度がある線を超えるとわなが閉じることがわかりました。ドイツの研究では、わなが閉じたあと、3回を超える刺激で消化酵素の遺伝子が働き出すことが示されました。

4択リーディングクイズ

Q1. Why is it useful for the trap to wait for a second touch?

Q2. What did the 2020 study by Japanese researchers find?

Q3. What can we infer from the German study?

重要単語

  • trigger hairC1
    名詞(句)感覚毛(引き金になる毛)The trap closes when a trigger hair is touched twice. trigger は「引き金」。動詞で trigger ~「~を引き起こす」は入試頻出(cause の言い換え)。
  • action potentialC1
    名詞(句)活動電位(電気信号)Each touch fires an action potential. 神経細胞の電気信号を表す生物学用語。fire an action potential「活動電位を発する」とセットで。
  • thresholdC1
    名詞しきい値The second signal pushes calcium above the threshold. 本来は「敷居」。on the threshold of ~「~の始まりに」も入試頻出。発音は /ˈθreʃhoʊld/(h は1つ分)。
  • digestB1
    動詞消化するThe plant digests insects to get nutrients. 名詞 digestion、形容詞 digestive(digestive enzymes「消化酵素」)。
  • carnivorousC1
    形容詞肉食の、食虫のCarnivorous plants often grow in poor soil. carni-(肉:carnival と同語源)+-vorous(食べる)。carnivorous plant=食虫植物。
  • enzymeB2
    名詞酵素Digestive enzymes break down the insect's body. 発音は /ˈenzaɪm/(エンザイム)。生物系の長文で頻出。
  • debrisC1
    名詞ゴミ、破片The trap does not close for debris such as dust. 発音は /dəˈbriː/(デブリー)。s は読まない。space debris は「宇宙ゴミ」。

動画でもっと知る

4コマでわかる

ハエトリグサは触られた回数を「数えて」いた。2回で閉じ、もっと暴れると消化開始の4コマ漫画
ハエトリグサは、葉の内側の毛を1回さわられただけでは閉じない。約30秒以内に2回目が来て初めてパクッ。閉じたあとも獲物が暴れて刺激が続くと、消化酵素の遺伝子が動き出す。脳のない植物が「回数」を数えている。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Böhm et al. (2016) The Venus Flytrap Dionaea muscipula Counts Prey-Induced Action Potentials to Induce Sodium Uptake, Current Biologydoi.org
  2. Suda et al. (2020) Calcium dynamics during trap closure visualized in transgenic Venus flytrap, Nature Plantsdoi.org
  3. Forterre et al. (2005) How the Venus flytrap snaps, Naturedoi.org