キリンの血圧は人の約2倍。なのに足がむくまない秘密は“天然の着圧ソックス”だった

読む前に予想してみよう!
キリンの心臓は、体の大きさに比べて特別に大きい
体重に対する心臓の重さはほかの哺乳類とあまり変わらず、心臓の壁が厚いことで高い血圧を生み出している。
- 対象
- キリン(野生捕獲個体・飼育個体)
- 規模
- 数頭〜数十頭(各研究)
- 研究の種類
- 生体での血圧・組織圧の計測、解剖データの比較、ゲノム解析
- 確かさ
- ★★★☆☆
2m上の脳に血を送るため、キリンの血圧は心臓の高さで人の約2倍。足に血や水がたまらないのは、きつい皮ふと血管のしくみのおかげだった。
ひとことで言うとキリンは血圧がとても高いけど、足の皮ふがきつい靴下みたいになって、むくまない!
地上5mの高さに頭があるキリン。その頭の中の脳に、血液を届けなければなりません。
心臓から脳までは、ざっと2m。人間なら30cmほどです。重力に逆らって血を2mも押し上げるには、ものすごい圧力が必要になります。
キリンの体は、この「高すぎる問題」をどうやって解決しているのでしょうか。
01血圧は人のおよそ2倍
キリンの血圧は、心臓の高さで測ると人間のおよそ2倍あります。これだけ高くして、ようやく頭の位置で人間に近い血圧になるのです。
では、その高い血圧を生む心臓は、さぞかし巨大なのでしょうか。
2009年、南アフリカでキリンを長く研究してきたグレアム・ミッチェルさんとジョン・スキナーさんは、たくさんのキリンの心臓や血管のデータを集めて分析しました。その結果、体重に対する心臓の重さは、ほかの哺乳類とあまり変わらないことがわかりました。大きさで勝負するのではなく、左心室の壁を厚くすることで高い圧力を生み出していると考えられています。

02本当の難問は「足元」だった
血圧が高いと、もう一つ困ったことが起きます。足です。
立っているキリンの足先は、心臓よりさらに2m近く低い位置にあります。重力の分まで上乗せされ、足の血管にはとても高い圧力がかかります。
人間でも、長時間立っていると足がむくみますよね。血管の中の圧力が高くなると、毛細血管から水分がしみ出して、まわりの組織にたまってしまうのです。キリンの足は、本来ならパンパンにむくんでもおかしくありません。
つまりキリンの脚は、病院や長距離フライトで使われる着圧ソックスを、生まれつきはいているようなものなのです。重力と体液の関係を探るこうした研究は、宇宙で体液が頭の方へ移動してしまう宇宙飛行士の体を理解するヒントとしても注目されてきました。
03キリンの体を作る遺伝子
2016年、アメリカ・ペンシルベニア州立大学やタンザニアの研究者たち(Agaba ら)は、キリンと、首の短い近い親戚オカピのゲノム(全遺伝情報)を比べました。
すると、骨格の発達と心臓・血管の発達の両方にかかわる遺伝子の仲間に、キリンだけの変化が見つかりました。長い首と、それを支える循環のしくみが、同じ遺伝子群の変化によってセットで進化した可能性がある、という結果です。
04まとめ
キリンの長い首は、それだけで「高すぎる血圧」と「むくみやすい足」という2つの難問を生みます。キリンは、厚い心臓の壁と天然の着圧ソックスで、その両方を解決していました。
背が高いのも楽じゃない。動物園でキリンを見たら、その足元にも注目してみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerA giraffe's brain sits about two meters above its heart, so its blood pressure at heart level is roughly…
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原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
A giraffe's brain is about two meters above its heart. To send blood up so high, a giraffe needs very high blood pressure. At the heart, it is about twice as high as a human's.
But high pressure can be a problem for the legs. Blood and water can collect in the feet. Giraffes have very tight skin on their legs. It works like special tight socks and stops the legs from swelling.
73 words ・ CEFR A2
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キリンの脳は心臓より約2メートル上にあります。そんなに高くまで血液を送るために、キリンにはとても高い血圧が必要です。心臓の高さでは、人間のおよそ2倍です。
しかし、高い圧力は足にとって問題になることがあります。血液や水分が足にたまってしまうのです。キリンの足には、とてもきつい皮ふがあります。それが特別なきつい靴下のように働いて、足がはれるのを防いでいます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
高い血圧が必要な理由と、足がむくまないしくみが全体のテーマなので D。
Q2. How high is a giraffe's blood pressure at the heart?
it is about twice as high as a human's とあるので A。
Q3. In this passage, "swelling" means ...
swell は「はれる、ふくらむ」。水分がたまって大きくなることなので C。
A giraffe's brain sits about two meters above its heart, so its blood pressure at heart level is roughly twice that of a human. You might expect its heart to be unusually large, but a 2009 study by Graham Mitchell and John Skinner found that, compared with body weight, it is about the same size as in other mammals.
Instead, the wall of the left ventricle is thick. High pressure creates another problem: in the legs, fluid can leak out of the blood vessels and cause swelling. In 1987, Alan Hargens and his team showed that giraffe legs are wrapped in very tight skin, which keeps the pressure in the tissue high. This works much like the compression socks that people wear on long flights.
125 words ・ CEFR B1
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キリンの脳は心臓より約2メートル上にあるため、心臓の高さでの血圧は人間のおよそ2倍です。心臓が特別に大きいと思うかもしれませんが、グレアム・ミッチェルさんとジョン・スキナーさんによる2009年の研究によると、体重と比べると、ほかの哺乳類とほぼ同じ大きさでした。
その代わりに、左心室の壁が厚いのです。高い圧力はもう一つの問題を生みます。足では、血管から水分がしみ出して、むくみを起こすことがあるのです。1987年、アラン・ハージェンスさんのチームは、キリンの足がとてもきつい皮ふに包まれていて、それが組織の圧力を高く保っていることを示しました。これは、人が長距離フライトではく着圧ソックスとよく似た働きをしています。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the 2009 study find about the giraffe's heart?
compared with body weight, it is about the same size as in other mammals とあるので B。
Q2. According to the passage, why can high pressure cause swelling in the legs?
fluid can leak out of the blood vessels and cause swelling とあるので D。
Q3. Why does the writer mention compression socks?
きつい皮ふが組織の圧力を高く保つ働きを、身近な着圧ソックスにたとえているので A。
Because a giraffe's brain lies roughly two meters above its heart, the animal must generate a blood pressure at heart level about twice that of humans simply to deliver adequate pressure to its head. It was once assumed that this required an exceptionally large heart, but an allometric analysis by Graham Mitchell and John Skinner in 2009 concluded that, relative to body mass, the heart is comparable to that of other mammals; the high pressure appears to come from a thick-walled left ventricle. The legs present the opposite challenge.
Standing giraffes have feet far below the heart, where gravity adds to already high pressure and should push fluid out of capillaries, causing edema. In 1987, Alan Hargens and colleagues used wireless sensors to show that tight skin and connective tissue maintain high tissue pressure, while muscle movement, narrowing of small vessels, and capillaries that resist protein leakage all help. A 2016 genome comparison with the okapi suggested that genes involved in both skeletal and cardiovascular development changed together. However, studies differ in sample size and age of animals, and those candidate genes have not yet been functionally tested.
188 words ・ CEFR B2
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キリンの脳は心臓より約2メートル上にあるため、頭に十分な圧力を届けるだけのために、心臓の高さで人間のおよそ2倍の血圧を生み出さなければなりません。かつては、そのためには並外れて大きな心臓が必要だと考えられていましたが、2009年のグレアム・ミッチェルさんとジョン・スキナーさんによる相対成長の分析は、体重に対して心臓はほかの哺乳類と同程度だと結論づけました。高い圧力は、壁の厚い左心室から生まれているようです。
足は反対の課題をもたらします。立っているキリンの足は心臓よりはるか下にあり、そこではすでに高い圧力に重力が加わるため、毛細血管から水分が押し出されてむくみが起こるはずです。1987年、アラン・ハージェンスさんらは無線センサーを使い、きつい皮ふと結合組織が組織の圧力を高く保っていること、そして筋肉の動き、細い血管の収縮、たんぱく質を漏らしにくい毛細血管がどれも役立っていることを示しました。2016年のオカピとのゲノム比較では、骨格と心臓・血管の両方の発達にかかわる遺伝子がそろって変化したことが示唆されました。ただし、研究によって標本数や動物の年齢が異なり、それらの候補遺伝子の働きはまだ実験で確かめられていません。
4択リーディングクイズ
Q1. What does the passage say about the giraffe's heart?
relative to body mass, the heart is comparable ... thick-walled left ventricle とあるので C。
Q2. Which is NOT mentioned as helping to prevent edema in the legs?
挙げられているのはきつい皮ふと結合組織・筋肉の動き・細い血管の収縮・たんぱく質を漏らしにくい毛細血管。水を控えることは書かれていないので D。
Q3. What is the writer's attitude toward the genetic findings?
最終文で、候補遺伝子は have not yet been functionally tested と限界を述べているので B。
重要単語
- blood pressureB1名詞(句)血圧A giraffe's blood pressure is about twice that of a human.
high / low blood pressure「高血圧・低血圧」。that of ~ で前の名詞の繰り返しを避ける形も入試頻出。 - gravityB2名詞重力Gravity pulls blood down toward the feet.
grave(重大な)と同語源で「重さ」が核。「深刻さ」の意味もある。 - edemaC1名詞むくみ、浮腫Tight skin helps prevent edema in the legs.
イギリス英語では oedema とつづる。日常語なら swelling で言いかえられる。 - capillaryC1名詞毛細血管Fluid leaks out of capillaries under high pressure.
ラテン語 capillus(髪の毛)から。「髪の毛のように細い管」というイメージ。 - ventricleC1名詞心室The left ventricle has a very thick wall.
心房は atrium。left ventricle「左心室」は全身に血液を送り出す部屋。 - compressionC1名詞圧縮、圧迫Compression socks can reduce swelling on long flights.
動詞 compress「圧縮する」。データの「圧縮」も compression。
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キリンの血圧は、心臓の高さで人間のおよそ2倍らしい。2m上の脳まで血を押し上げるためだ。じゃあ足は血圧が高すぎてパンパンにならないの?と思ったら、足のきつい皮ふが「天然の着圧ソックス」になっていた。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Hargens et al. (1987) Gravitational haemodynamics and oedema prevention in the giraffe, Naturedoi.org
- Mitchell & Skinner (2009) An allometric analysis of the giraffe cardiovascular system, Comparative Biochemistry and Physiology Part Adoi.org
- Agaba et al. (2016) Giraffe genome sequence reveals clues to its unique morphology and physiology, Nature Communicationsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












