【最新研究】群れで暮らすネズミほど「耳がいい」らしい。野生の9種を比べてわかったこと

読む前に予想してみよう!
ひとりで暮らすネズミの仲間ほど、敵に気づくために耳が良い
9種を比べた研究では、群れや夫婦で暮らす種のほうが、小さな音にも反応していた。
- 対象
- 野生のネズミの仲間(げっ歯類)9種
- 規模
- 9種
- 研究の種類
- 種間比較研究(系統比較・聴性脳幹反応)
- 確かさ
- ★★☆☆☆
野生のネズミの仲間9種の耳を測ると、群れや夫婦で暮らす種は、ひとり暮らしの種よりおおむね小さな音にも反応した。仲間との会話が耳を鍛えた可能性。
ひとことで言うと仲間とおしゃべりするネズミほど、小さな音も聞こえるみたい!
「耳がいい動物」と聞くと、敵の足音にいつもビクビクしている、ひとりぼっちの小動物を思い浮かべませんか?
ところが2026年10月に発表された研究によると、ネズミの仲間では逆でした。群れや夫婦で暮らす種ほど、小さな音によく反応していたのです。ひとりで暮らす種は、比べると聞こえ方が鈍めでした。
ヒントは「おしゃべり」。仲間とよく鳴き交わす暮らしが、長い進化の中で耳を鍛えてきたのかもしれません。
01野生のネズミ9種の「耳」を測ってみた
耳の検査に使ったのは聴性脳幹反応(ABR)という方法です。音を聞かせたとき、耳から脳へ信号が届く途中の「脳幹」に流れる、ごく小さな電気の反応を記録します。人間の赤ちゃんの聴力検査にも使われる方法で、本人(本ネズミ)が「聞こえた」と答えなくても測れるのが強みです。
さらに、系統比較という統計の工夫もしています。近い親戚どうしは、暮らし方に関係なく似た耳を持っているかもしれません。そこで進化の家系図を計算に入れ、「親戚だから似ている」分を差し引いて比べたのです。
02群れ派・夫婦派は「小さな音」に強かった
結果をまとめると、こうなります。
- 群れで暮らす種と一夫一妻の種は、単独で暮らす種より、おおむね、より小さな音(純音もカチッという音も)で反応が出た
- 群れで暮らす種は、左右の耳の情報を脳で合わせる処理(両耳の反応)が、単独の種より大きかった
- 一方、片耳ずつの波のタイミングや大きさには、グループによる違いが見つからなかった
左右の耳に届く音のわずかな時間差は、音がどこから来たかを知る手がかりです。群れの中で「今鳴いたのはどの仲間?」を聞き分けるには、便利な能力かもしれません。

03サルの仲間でも、似た話があった
実は「社会が耳を鍛える」という考え方は、サルの仲間で先に出ていました。2012年の研究では、キツネザルなどの原猿類11種の耳を同じABRの方法で測り、社会が複雑な種ほど耳の感度が高く、高い音まで聞こえる傾向を報告しています。研究チームはこれを「ソーシャル・ドライブ(社会が聴覚を押し上げる)」仮説と呼びました。
今回のネズミの結果は、遠く離れた哺乳類のグループでも同じような傾向が見えた、という意味で面白いのです。
04どんでん返し?「ぼっち」でも会話上手な動物はいる
「社会が複雑なほど、コミュニケーションも複雑になる」という説(社会的複雑性仮説)には、反論もあります。2019年の総説は、「社会の複雑さ」をどう測るのがよいか、まだ意見が分かれていること、そして生態(暮らす環境)や体のつくり、系統の歴史といった、ほかの要因が見落とされてきたことを指摘しました。
さらに2026年の論文は、ほぼ単独で暮らすオランウータンが、とても手の込んだ声の使い方をすることに注目しました。そして、にぎやかなおしゃべりに割り込まれず、じっくり聞ける「静けさ」が、複雑な声の使い方を育てる、見落とされてきた大事な条件ではないか、と論じています。
つまり「群れ=耳がいい」は、ネズミ9種で見えた有力な手がかりですが、動物全体のルールと言うにはまだ早い、というのが正直なところです。
05まとめ
野生のネズミ9種を比べると、仲間と暮らす種ほど、小さな音にも反応する耳を持っていました。仲間の声を聞き逃さないことが、生き残りに役立ってきたのかもしれません。
ただし、ひとり暮らしのオランウータンの例のように、「静けさ」がコミュニケーションを育てる場合もありそうです。あなたの耳は、にぎやかな教室と静かな図書館、どちらで鍛えられていると思いますか?
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerRodents do not all live the same way.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Some rodents live alone. Others live in groups or in pairs. Scientists in the United States caught nine kinds of wild rodents and tested their ears. They played sounds and recorded tiny electric signals in the brain.
The rodents that live in groups or pairs reacted to quieter sounds. The rodents that live alone needed louder sounds. Talking with family and friends may have helped these animals hear better over a very long time.
74 words ・ CEFR A2
和訳を見る
ひとりで暮らすげっ歯類(ネズミの仲間)もいます。群れやペアで暮らすものもいます。アメリカの科学者たちは、野生のげっ歯類を9種類つかまえて、耳を調べました。音を聞かせて、脳の中のとても小さな電気の信号を記録したのです。
群れやペアで暮らすげっ歯類は、より小さな音に反応しました。ひとりで暮らすげっ歯類は、もっと大きな音が必要でした。家族や仲間とおしゃべりすることが、とても長い時間をかけて、これらの動物の耳を良くしたのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ひとりで暮らす種と、群れやペアで暮らす種の耳を比べた研究の話なので B。捕まえ方やペットの話は出てこない。
Q2. How many kinds of rodents did the scientists test?
caught nine kinds of wild rodents とあるので C。
Q3. In this passage, "quieter" sounds are sounds that are ...
quiet は「静かな」。quieter sounds は「より小さな音」で、直後の louder sounds(より大きな音)と対になっているので A。
Rodents do not all live the same way. Some spend their lives alone, some live as a male and female pair, and some live in groups. A team at Oklahoma State University wanted to know if these lifestyles are linked to hearing. They caught nine species of wild rodents and measured how the brainstem of each animal responded to tones and clicks.
The species were not close relatives, and the team included their family tree in the analysis. Group-living and paired species responded to quieter sounds than species that live alone. Group-living species also combined information from both ears more strongly. The researchers think that frequent calling between family members and neighbors may have pushed these species toward sharper ears.
120 words ・ CEFR B1
和訳を見る
げっ歯類はみな同じように暮らしているわけではありません。一生をひとりで過ごすもの、オスとメスのペアで暮らすもの、群れで暮らすものがいます。オクラホマ州立大学のチームは、こうした暮らし方が聴覚と関係しているのかを知りたいと考えました。彼らは野生のげっ歯類を9種つかまえ、それぞれの動物の脳幹が純音やカチッという音にどう反応するかを測りました。
9種は近い親戚どうしではなく、チームは分析に進化の家系図を組み込みました。群れで暮らす種とペアで暮らす種は、ひとりで暮らす種よりも小さな音に反応しました。群れで暮らす種は、両耳からの情報をより強く統合してもいました。研究者たちは、家族や近所の仲間どうしでよく鳴き交わすことが、これらの種をより鋭い耳へと押し上げたのかもしれないと考えています。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the research team want to find out?
wanted to know if these lifestyles are linked to hearing とあるので B。
Q2. Which statement is true according to the passage?
Group-living species also combined information from both ears more strongly. とあるので C。9種は近い親戚ではなく、クリック音も使っている。
Q3. What does the passage suggest about animals that often call to each other?
最後の文で、よく鳴き交わすことが種を sharper ears(より鋭い耳)へ押し上げたかもしれないと述べているので A。
An animal that lives alone has fewer neighbors to listen to. Does that change how its ears work? Researchers at Oklahoma State University put the question to nine species of wild-caught rodents, chosen so that none were close relatives. Each species was labeled solitary, monogamous or group-living, and the team recorded auditory brainstem responses, the tiny electrical signals the brainstem produces when a sound arrives.
A phylogenetic method kept shared ancestry from inflating the results. Both monogamous and group-living species responded to fainter tones and clicks than solitary ones, and group-living species showed a stronger binaural signal, which reflects how the brain combines input from the two ears. Wave timing and size measured from one ear at a time did not differ.
An earlier preprint had also reported faster binaural responses in group-living species, but the peer-reviewed abstract says this timing did not differ between the groups. Nine species make a narrow base for a rule about all mammals, and brainstem recordings do not show directly how a mouse behaves in a noisy field. Even so, the pattern matches a 2012 study of eleven lemur-like primates, in which species with more complex social lives also had more sensitive hearing.
199 words ・ CEFR B2
和訳を見る
ひとりで暮らす動物には、耳を傾ける相手となる近所の仲間が少ない。それは耳の働きを変えるのだろうか。オクラホマ州立大学の研究者たちは、この問いを野外で捕獲した9種のげっ歯類にぶつけた。9種は、どれも近い親戚どうしにならないように選ばれた。それぞれの種は単独性・一夫一妻・群れ性に分類され、チームは聴性脳幹反応、つまり音が届いたときに脳幹が生み出すごく小さな電気信号を記録した。
系統的な手法を使い、共通の祖先をもつことで結果が大きく見えてしまわないようにした。一夫一妻の種も群れ性の種も、単独性の種より小さな純音やクリック音に反応し、群れ性の種は両耳間の信号がより強かった。これは、脳が2つの耳からの入力をどう統合するかを反映するものだ。片耳ずつ測った波のタイミングと大きさには差がなかった。
以前のプレプリントでは、群れ性の種は両耳の反応も速いと報告されていたが、査読済みの論文の要旨では、このタイミングにグループ間の差はなかったとされている。9種という数は、哺乳類全体のルールを語るには土台が狭く、脳幹の記録は、ネズミが騒がしい野原でどう行動するかを直接示すものではない。それでも、このパターンは2012年に行われたキツネザルなどの原猿類11種の研究と一致している。その研究でも、より複雑な社会生活を送る種ほど、聴覚が敏感だったのだ。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
一夫一妻・群れ性の種が単独性の種より小さな音に反応したことが中心なので B。C は「直接示すものではない」と書かれているので誤り。
Q2. Which measure did NOT differ between the social groups?
Wave timing and size measured from one ear at a time did not differ. とあるので D。
Q3. Why does the author mention the earlier preprint?
プレプリントにあった「両耳の反応が速い」という主張が、査読済みの要旨では「差がなかった」とされていると述べているので B。
重要単語
- rodentB2名詞げっ歯類(ネズミ・リスなどの仲間)Mice and squirrels are both rodents.
ラテン語 rodere(かじる)から。一生伸び続ける前歯でかじる動物、と覚えるとよい。 - solitaryB2形容詞単独で暮らす、ひとりのSome rodents are solitary and meet others only to mate.
sole(唯一の)と同じ語源。solitude(孤独)、solo もなかま。生物の長文では social と対で出る。 - monogamousC1形容詞一夫一妻のMonogamous animals raise their young as a pair.
mono(1つ)+gamy(結婚)。反対は polygamous(一夫多妻の)。 - faintB2形容詞(音・光などが)かすかなI heard a faint noise in the kitchen.
動詞では「気絶する」。a faint sound / a faint light のように使う。 - ancestryC1名詞祖先、家系Humans and chimpanzees share a common ancestry.
ancestor(祖先)の名詞形。shared ancestry は「共通の祖先をもつこと」で、進化の長文で頻出。 - peer-reviewedC1形容詞査読済みの(専門家のチェックを受けた)The results were published in a peer-reviewed journal.
peer は「同じ立場の仲間」。研究者仲間に審査される、という意味。preprint(査読前の論文)とセットで覚える。 - sensitiveB1形容詞敏感な、感度の高いDogs have very sensitive noses.
名詞は sensitivity。sensible(分別のある)との区別は入試の語彙問題の定番。
このネタ、誰かに教えたくなった?
野生のネズミの仲間9種の耳を測ったら、群れや夫婦で暮らす種ほど小さな音にも反応していたらしい。ひとり暮らしの種は聞こえ方が鈍め。仲間との「会話」が、進化の中で耳を鍛えたのかも、という話。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(4件)タップで表示
- Joseph, Machado & McCullagh (2026) Sociality predicts enhanced auditory thresholds and binaural hearing processing across rodent species, Communications Biologydoi.org
- Ramsier et al. (2012) Social drive and the evolution of primate hearing, Philosophical Transactions of the Royal Society Bdoi.org
- Peckre, Kappeler & Fichtel (2019) Clarifying and expanding the social complexity hypothesis for communicative complexity, Behavioral Ecology and Sociobiologydoi.org
- Lameira (2026) Silence as an Overlooked Catalyzer for Primate Vocal Evolution, Evolutionary Anthropologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。









