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ボノボは鳴き声を「単語」のように組み合わせていた。言葉のルーツは700万年前?

ボノボは鳴き声を「単語」のように組み合わせていた。言葉のルーツは700万年前?

読む前に予想してみよう!

ボノボの鳴き声の組み合わせは、単純に意味を足し算しただけのものしか見つからなかった

研究カード(どんな研究?)
対象
コンゴ民主共和国の野生ボノボ
規模
1地域の群れの鳴き声記録
研究の種類
野外観察(分布意味論による分析)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

野生のボノボの鳴き声を言語学の手法で分析すると、鳴き声を組み合わせて新しい意味を作る「合成性」が広く見られ、人間の言葉に近い複雑な組み合わせもあった。

ひとことで言うとボノボは鳴き声を組み合わせて、新しい意味を作っていた!

もくじ
  1. ボノボの「辞書」を作ってみた
  2. すべての鳴き声が「組み合わせ」に使われていた
  3. 言葉のルーツは700万年以上前?
  4. まとめ

「青い」と「空」をくっつければ「青い空」。人間の言葉は、小さな意味のパーツを組み合わせて、もっと大きな意味を作ることができます。これを言語学では「合成性」と呼びます。

長い間、この能力は人間だけの特別なものだと考えられてきました。

ところが2025年、スイスとアメリカの研究チームが、私たちに最も近い親戚のひとつボノボの鳴き声に、この合成性がたくさん隠れていることを明らかにしました。

01ボノボの「辞書」を作ってみた

使ったのは、人間の言葉の研究で使われる「分布意味論」という方法。ざっくり言うと、「その言葉がどんな場面で使われるか」から、意味を数値で表すやり方です。

研究チームはこれを鳴き声に当てはめ、単独の鳴き声と、組み合わせた鳴き声の「意味」が、どう関係しているかを調べました。研究者はこれを「ボノボ辞書のようなもの」と表現しています。

02すべての鳴き声が「組み合わせ」に使われていた

分析の結果、ボノボの鳴き声はどの種類も、少なくとも1つの「意味のある組み合わせ」に使われていました。

さらに驚きなのは、組み合わせ方の種類です。

  • 足し算型:「Aの意味+Bの意味」で、そのまま合わさる(例:「金髪のダンサー」=金髪で、ダンサー)
  • 修飾型:一方がもう一方の意味を変える(例:「下手なダンサー」=下手な人ではなく、ダンスが下手)

後者のような複雑なタイプは、これまで動物にはないと考えられていました。ところがボノボでは、このタイプの組み合わせが3つ見つかったのです。

鳴き声と鳴き声がくっついて、新しい意味が生まれていた
鳴き声と鳴き声がくっついて、新しい意味が生まれていた

03言葉のルーツは700万年以上前?

これまでにも、シジュウカラなど一部の鳥やチンパンジーで、鳴き声を組み合わせる例は報告されていました。でも、ここまで鳴き声の体系全体に合成性が広がっていることを示したのは初めてです。

研究チームによると、人間とボノボの共通の祖先は、およそ700万〜1300万年前に生きていたとされます(分岐の年代には諸説あります)。研究チームは、私たちの祖先は少なくとも700万年前には、合成性を広く使っていた可能性があると述べています。

ちなみに鳥の世界でも、シジュウカラが「警戒して」という鳴き声と「集まれ」という鳴き声を決まった順番で組み合わせ、仲間がその順番どおりに反応することが、2016年に報告されています。言葉の「パーツを組み合わせる力」は、思った以上にいろいろな動物に広がっているのかもしれません。

04まとめ

言葉は、人間がある日いきなり手に入れた能力ではなく、遠い祖先から少しずつ受け継がれてきたものなのかもしれません。

森の奥で今日も交わされているボノボたちの会話。その中に、私たちの「言葉の原点」が響いているのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerHuman language is compositional: we combine small units of meaning to build larger ones. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Human language is compositional: we combine small units of meaning to build larger ones. For many years, this ability was thought to be unique to humans. However, in 2025, researchers from Switzerland and the United States reported that wild bonobos in the Democratic Republic of the Congo do something similar. The team recorded bonobo calls and noted the situation each time, using about 300 features.

Then they applied a method from language research that works out meaning from the contexts in which words are used. They found that every type of bonobo call appeared in at least one meaningful combination. In three combinations, one call even changed the meaning of the other, much like the phrase "bad dancer" in English.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

人間の言葉は「合成的」です。つまり、小さな意味の単位を組み合わせて、より大きな意味を作ります。長年、この能力は人間だけのものだと考えられてきました。しかし2025年、スイスとアメリカの研究者たちが、コンゴ民主共和国の野生のボノボも似たことをしていると報告しました。チームはボノボの鳴き声を録音し、鳴くたびにその状況を約300の項目で記録しました。

そして、言葉が使われる文脈から意味を割り出す、言語研究の方法を当てはめました。その結果、ボノボのどの種類の鳴き声も、少なくとも1つの意味のある組み合わせに現れていました。3つの組み合わせでは、英語の「bad dancer(下手なダンサー)」という言い回しのように、一方の鳴き声がもう一方の意味を変えてさえいました。

4択リーディングクイズ

Q1. What ability was once thought to be unique to humans?

Q2. How did the researchers work out the meaning of the calls?

Q3. Why does the passage mention the phrase "bad dancer"?

重要単語

  • compositionalityC1
    名詞合成性(部分を組み合わせて意味を作る性質)Compositionality allows us to create new sentences. compose(組み立てる)→ composition(構成)→ compositional(合成的な)→ compositionality と派生。
  • vocalizationC1
    名詞発声、鳴き声Bonobos use many kinds of vocalizations. vocal(声の)+-ize+-ation。動物の「鳴き声」を学術的に言うときの定番語。
  • combinationB1
    名詞組み合わせThis call combination has a special meaning. combine(組み合わせる)の名詞形。in combination with ~「~と組み合わせて」も頻出。
  • ancestorB2
    名詞祖先Humans and bonobos share a common ancestor. common ancestor「共通祖先」は進化の長文の定番。反対は descendant(子孫)。
  • contextB2
    名詞状況、文脈The meaning of a word depends on its context. in this context「この文脈では」。形容詞 contextual(文脈上の)。
  • uniqueB1
    形容詞唯一の、特有のThis ability was once thought to be unique to humans. be unique to ~「~だけに特有の」の形が入試で頻出。uni-(1つ)は uniform, unit と同じ。

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4コマでわかる

ボノボは鳴き声を「単語」のように組み合わせていた。言葉のルーツは700万年前?の4コマ漫画
野生のボノボの鳴き声を、言語学の手法で「辞書」にしてみたら、鳴き声を組み合わせて新しい意味を作っていたらしい。しかも一部は「下手なダンサー」のように、片方がもう片方の意味を変える人間の言葉っぽい組み合わせ。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Berthet, Surbeck & Townsend (2025) Extensive compositionality in the vocal system of bonobos, Sciencedoi.org
  2. Leroux et al. (2023) Call combinations and compositional processing in wild chimpanzees, Nature Communicationsdoi.org
  3. Suzuki, Wheatcroft & Griesser (2016) Experimental evidence for compositional syntax in bird calls, Nature Communicationsdoi.org