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ゾウは仲間と「声をそろえて」いた。AIが数十年にわたる録音から合唱を聞き分けた

ゾウは仲間と「声をそろえて」いた。AIが数十年にわたる録音から合唱を聞き分けた

読む前に予想してみよう!

ゾウの「ゴロゴロ」という低い声は、半分以上が仲間と声が重なった合唱の中で出されている

研究カード(どんな研究?)
対象
ケニア・アンボセリの野生アフリカゾウ(大人のメス)
規模
6種類の場面の鳴き声(数百件)
研究の種類
観察研究+機械学習による音響分析
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

ケニアのゾウの「合唱」をAIで分析。重なった鳴き声からも場面(再会・呼びかけなど)が読み取れ、あいさつ等では声が互いに似ていった。

ひとことで言うとゾウはみんなで鳴くとき、場面によっては声をそろえていた!

もくじ
  1. ゾウの会話の6割は「かぶせ気味」
  2. 合唱からも「場面」が読み取れた
  3. 再会のあいさつで「声が似ていく」
  4. まとめ

ゾウの群れから聞こえる、地響きのような低い声。実はそれ、何頭もの声が重なった「合唱」であることが多いのです。

2026年10月1日、科学誌『Scientific Reports』に、AIで動物の言葉を研究する米国の非営利団体Earth Species Projectと、ゾウの研究団体ElephantVoices、ケニアのアンボセリ・ゾウ財団などのチームが、この合唱を分析した論文を発表しました。

使ったのは、ケニアのアンボセリ国立公園で1986年から2022年までに録音された、野生のアフリカゾウの声。その結果、合唱には「今どんな場面か」の情報が含まれていて、場面によってはゾウたちが声を似せ合っていくことが分かりました。

01ゾウの会話の6割は「かぶせ気味」

ゾウは「ランブル」と呼ばれる、人間には聞こえにくいほど低い声で連絡を取り合います。1.5〜2キロ離れた仲間の声でも、誰の声か聞き分けられるといわれます。

長年の観察から、ランブルの約6割は2頭以上の声が重なった合唱で出されることが知られています。ところが、声が重なると分析が難しいため、これまでの研究の多くは「1頭だけの声」を調べてきました。

02合唱からも「場面」が読み取れた

結果、AIは1頭だけの声からも、重なった合唱からも、偶然より高い確率で場面を当てられました。

さらに面白いのは、1頭の声で学習したAIが、合唱の場面も当てられたこと。合唱は、場面に合った「単独の声」を部品として組み立てられた、グループとしての信号だと考えられます。

1頭ずつの声が重なって、「群れの声」という新しい信号になる
1頭ずつの声が重なって、「群れの声」という新しい信号になる

03再会のあいさつで「声が似ていく」

チームは、合唱の中で声がだんだん似ていくか(収束)も調べました。

すると、6つの場面のうち再会のあいさつ(Greeting)、遠くの仲間への呼びかけ(Contact)、リズミカルな声(Cadenced)の3つで、声が互いに似ていく傾向が見られました。人間でも、仲のいい人と話すうちに話し方が似てくることがありますよね。

ゾウは再会すると、声をあげ、耳をパタパタさせ、大騒ぎする「あいさつの儀式」を行います。声をそろえることは、群れの絆を確かめ合う役割を持つのかもしれません。

一方で、声の特徴は家族ごと・個体ごとにも違っていました。知らない個体や別の家族の声になると、AIの正解率はぐっと下がったのです。

04まとめ

ゾウは2024年の研究で、仲間を名前のような声で呼び分けている可能性も報告されています。今回の研究は、ゾウの声が「1対1」の呼びかけだけでなく、群れで声を重ねる「合唱」でも場面の情報を運んでいることを示しました。

次にゾウの映像を見るときは、ぜひ耳をすませてみてください。あのゴロゴロ声は、家族みんなで声をそろえた「おかえり」なのかもしれません。以前の記事ゾウは仲間の死を悼む?もあわせてどうぞ。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAfrican elephants communicate with deep calls called rumbles, and about 60 percent of these calls overlap… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

African elephants communicate with deep calls called rumbles, and about 60 percent of these calls overlap with other elephants' voices. Because overlapping sounds are hard to study, earlier research mostly looked at single calls. A team including Earth Species Project and ElephantVoices used machine learning to analyze recordings of wild adult females in Amboseli National Park, Kenya, collected from 1986 to 2022.

The computer could identify the situation, such as a greeting or a call to move on, from both single calls and choruses. In three situations, including greetings after being apart, the elephants' voices became more similar to each other. This may help strengthen family bonds. The study appeared in Scientific Reports.

113 words ・ CEFR B1

和訳を見る

アフリカゾウは「ランブル」と呼ばれる低い声でコミュニケーションをとり、その約6割はほかのゾウの声と重なっています。重なった音は研究するのが難しいため、これまでの研究は主に1頭だけの声を調べてきました。Earth Species ProjectやElephantVoicesを含むチームは、ケニアのアンボセリ国立公園で1986年から2022年に集められた、野生の大人のメスの録音を機械学習で分析しました。

コンピューターは、あいさつや「さあ行こう」という呼びかけなどの場面を、1頭の声からも合唱からも見分けることができました。離れていた後のあいさつを含む3つの場面では、ゾウたちの声が互いに似ていきました。これは家族の絆を強める助けになっているのかもしれません。この研究は『Scientific Reports』に掲載されました。

4択リーディングクイズ

Q1. Why did earlier research mostly look at single calls?

Q2. When were the recordings collected?

Q3. Why might elephants make their voices more similar?

重要単語

  • communicateB1
    動詞意思を伝え合うElephants communicate with very low sounds. communicate with ~「~と意思疎通する」。名詞 communication。
  • rumbleC1
    名詞・動詞ゴロゴロという低い音(を出す)We heard the rumble of distant thunder. 雷・お腹・車の低い音にも使う擬音的な語。ゾウ研究では低周波の鳴き声を指す。
  • overlapB2
    動詞・名詞重なる/重なりThe two meetings overlap by an hour. over(上に)+lap(重ねる)。動詞は第3音節、名詞は第1音節にアクセントが来やすい。
  • contextB1
    名詞状況、文脈You can guess a word's meaning from the context. in this context「この文脈では」。英語学習でも「文脈から推測する」の定番語。
  • convergeC1
    動詞収束する、一点に集まるTheir opinions slowly converged. con-(共に)+verge(傾く)。反対は diverge「分岐する」。
  • bondB1
    名詞絆、結びつきPlaying together builds a strong bond. family bond「家族の絆」。化学では「結合」、金融では「債券」の意味もある。
  • classifyB2
    動詞分類するThe program classifies calls into six types. class(種類)+-ify(~にする)。名詞 classification。
ゾウは仲間と声を重ねて「合唱」することがある。ケニアで1986〜2022年の間に録った声をAIで分析したら、合唱からも「あいさつ」「呼びかけ」などの場面が読み取れ、場面によっては声がだんだん似ていくことが分かったらしい。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Mahon et al. (2026) Social context information and acoustic convergence in elephant vocal choruses, Scientific Reportsdoi.org
  2. Pardo et al. (2024) African elephants address one another with individually specific name-like calls, Nature Ecology & Evolutiondoi.org
  3. Soltis (2010) Vocal communication in African Elephants (Loxodonta africana), Zoo Biologydoi.org