シャチは海藻で「背中の流しっこ」をしていた。クジラの仲間で初の“道具作り”

読む前に予想してみよう!
シャチが海藻を使っていたのは、獲物をつかまえるためだった
海藻は狩りではなく、仲間同士の体をこする「グルーミング(毛づくろいのような行動)」に使われていた。
- 対象
- 野生のシャチ(サザン・レジデント個体群)
- 規模
- 約70頭の集団・12日分のドローン映像
- 研究の種類
- 野外観察(ドローン撮影)
- 確かさ
- ★★☆☆☆
アメリカ北西部のシャチが、海藻の茎をかみ切って「道具」にし、2頭の体の間にはさんで転がし合っていた。クジラ類が道具を作る初の報告。
ひとことで言うとシャチが海藻をちぎって、仲間とこすり合っていた!
「道具を作って使う動物」と聞いて、何を思い浮かべますか? 枝で虫を釣るチンパンジー、針金を曲げるカラス……。どれも陸の生き物ですよね。
海の中では、道具を使う動物の報告はぐっと少なくなります。ところが2025年、アメリカの研究チームが、シャチが海藻で「道具」を作り、仲間と体をこすり合っている様子をとらえました。
01ドローンが見た、海藻ゴロゴロ
シャチたちがやっていたのは、こんな行動です。
- 海底に生えているブルケルプという大きな海藻の茎を、かみ切る
- その切れ端を、2頭の体の間にはさむ
- 体を押しつけ合いながら、海藻をゴロゴロ転がす
研究チームは、この行動を「アロケルピング」(相手と海藻でこすり合う行為)と名づけました。
02「たまたま」ではなく、群れ全体の習慣
この行動は、決してまれなものではありませんでした。
- 調査した12日のうち8日で観察された
- 3つの群れ(ポッド)すべてで見られた
- 年齢や性別に関係なく、多くのシャチが参加していた
- 組む相手は、母方の近い親族や、年齢が近いシャチが多かった
ブルケルプは、研究チームの言葉を借りると、水をいっぱいに入れた庭のホースのように、しっかりしているのにしなやかで、表面がつるつる。体をこするのにぴったりの素材なのです。

03何のための「流しっこ」?
研究チームは、アロケルピングの目的として、
- 仲間との絆を深める(触れ合いでストレスを減らす)
- 皮膚の健康を保つ(古い皮膚を落とす)
などを考えています。ただし、どちらもまだ仮説の段階です。
クジラやイルカの仲間では、イルカが海綿を口先につけて海底をあさるなど、狩りのための道具使いは知られていました。でも、物を加工して道具を作り、しかも仲間の体の手入れに使うという報告は、今回が初めてです。
オーストラリアのシャーク湾では、一部のイルカが海綿を口先にかぶせて海底のエサを探すことが知られていて、2005年の研究では、この技が主に母から子へ受け継がれる「文化」である可能性が示されました。シャチの海藻グルーミングも、群れの中で受け継がれてきた習慣なのかもしれません。
04まとめ
研究者たちは、約50年も見守ってきたシャチたちに、こんな習慣があったことを今まで誰も知らなかったことに驚いています。新しいドローンのズームレンズが、それを明らかにしました。
海の中には、まだ私たちの知らない「文化」が、きっとたくさん隠れています。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerTool use is well known in land animals such as chimpanzees and crows, but it is much rarer in the sea.
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原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Killer whales live in the sea near Washington State in the United States. In 2025, scientists used a drone to watch them from the sky. They saw something new. A killer whale bit off a piece of kelp, a large seaweed.
Then two whales held the kelp between their bodies and rolled it. This was the first report of whales making a tool like this. They may do it to clean their skin or to become better friends.
78 words ・ CEFR A2
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アメリカのワシントン州の近くの海にはシャチが暮らしています。2025年、科学者たちはドローンを使って空からシャチを観察しました。彼らは新しいものを目にしました。1頭のシャチが、大きな海藻であるケルプの一部をかみ切ったのです。
それから2頭のシャチが体の間にケルプをはさんで、転がしました。クジラの仲間がこのような道具を作るという報告は、これが初めてでした。シャチたちは、皮膚をきれいにするため、あるいは仲良くなるためにそうしているのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
シャチが海藻をはさんで体をこすり合う新しい行動が話題なので B。狩りの話ではない。
Q2. How did the scientists watch the whales?
scientists used a drone to watch them from the sky とあるので C。
Q3. In this passage, "bit off" means ...
bite off は「かみ切る」(bit は bite の過去形)。歯で海藻を切り取ったという意味なので A。
Tool use is well known in land animals such as chimpanzees and crows, but it is much rarer in the sea. In 2025, researchers studying killer whales near Washington State reported something surprising. Using drone footage, they saw whales bite off pieces of bull kelp, a large seaweed, and roll them between their bodies with a partner.
The team called this behavior "allokelping." It was not rare: it was seen on 8 of the 12 days of observation and in all three groups of whales. Whales of all ages and both sexes took part, often with close relatives. The researchers think it may help the whales build social bonds or keep their skin healthy.
114 words ・ CEFR B1
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道具の使用は、チンパンジーやカラスのような陸の動物ではよく知られていますが、海の中ではずっと珍しいものです。2025年、ワシントン州の近くでシャチを研究している研究者たちが、驚くべきことを報告しました。ドローンの映像で、シャチが大きな海藻であるブルケルプの切れ端をかみ切り、相手と体の間でそれを転がしている様子を見たのです。
チームはこの行動を「アロケルピング」と名づけました。これは珍しいことではありませんでした。観察した12日のうち8日で見られ、3つの群れすべてで見られたのです。あらゆる年齢のオスもメスも参加し、相手は近い親族であることが多くありました。研究者たちは、この行動がシャチ同士の絆を深めたり、皮膚を健康に保ったりするのに役立っているのかもしれないと考えています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is "allokelping"?
kelp を roll them between their bodies with a partner する行動を allokelping と名づけたので D。
Q2. How often was the behavior seen?
it was seen on 8 of the 12 days of observation とあるので B。3は群れの数。
Q3. Why does the writer say "It was not rare"?
直後に12日中8日、3つの群れすべてで見られたと続け、群れ全体の習慣であることを示しているので A。
While tool use has been widely documented in land animals, reports from marine mammals are scarce, and those that exist mostly involve foraging, such as dolphins using sponges to search the seabed. A 2025 study in Current Biology describes something different. Researchers from the Center for Whale Research and the University of Exeter used drones to film the endangered southern resident killer whales in the Salish Sea. They observed whales biting off short lengths of bull kelp stalk, placing them between their own body and a partner's, and rolling them back and forth.
The team named the behavior "allokelping." It occurred on 8 of the 12 days of observation, in all three pods, and across ages and sexes, with partners tending to be close maternal relatives or whales of similar age. Because the whales modified the kelp before using it for mutual body care, this is considered the first report of tool manufacture for social grooming in cetaceans. However, the suggested functions, strengthening social bonds and removing dead skin, remain hypotheses, and only one population was observed, so it is unclear whether other killer whales do the same.
188 words ・ CEFR B2
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道具の使用は陸の動物では広く記録されてきましたが、海の哺乳類からの報告は乏しく、あるものもほとんどは、イルカが海綿を使って海底を探るといった採食に関するものです。2025年に『Current Biology』で発表された研究は、それとは異なるものを報告しています。クジラ研究センターとエクセター大学の研究者たちは、ドローンを使って、セイリッシュ海に暮らす絶滅の危機にある「サザン・レジデント」のシャチを撮影しました。彼らは、シャチがブルケルプの茎を短くかみ切り、自分の体と相手の体の間にはさんで、前後に転がす様子を観察しました。
チームはこの行動を「アロケルピング」と名づけました。この行動は観察した12日のうち8日、3つの群れすべてで、年齢や性別を問わず見られ、相手は母方の近い親族や年齢の近いシャチであることが多い傾向にありました。シャチは互いの体の手入れに使う前にケルプを加工していたため、これはクジラ・イルカ類が仲間の体の手入れのために道具を作った初めての報告と考えられています。しかし、提案されている目的である社会的な絆の強化や古い皮膚の除去は仮説にとどまっており、観察されたのは1つの集団だけなので、ほかのシャチも同じことをするのかは分かっていません。
4択リーディングクイズ
Q1. How does this study differ from earlier reports of tool use in marine mammals?
従来の報告は mostly involve foraging だったのに対し、今回は tool manufacture for social grooming の初報告なので C。
Q2. Which of the following is true according to the passage?
partners tending to be close maternal relatives or whales of similar age とあるので D。3つの群れすべて・年齢性別を問わず見られたので A・B は誤り。
Q3. Why does the author describe the functions of allokelping as "hypotheses"?
hypothesis は「まだ確かめられていない仮説」。絆づくりや皮膚の手入れという目的は推測の段階なので B。
重要単語
- manufactureB2動詞・名詞作る、製造(する)Some birds manufacture tools from twigs.
manu-(手)+facture(作ること)。もとは「手で作る」。manual(手動の)と同語源。 - groomingB2名詞毛づくろい、体の手入れGrooming helps animals build social bonds.
groom は「手入れする」。allogrooming は allo-(他者)+grooming で「相手の毛づくろい」。 - kelpC1名詞コンブなどの大型の海藻Sea otters often rest in kelp forests.
kelp forest(海藻の森)は海の生態系の話で頻出。seaweed はより一般的な「海藻」。 - endangeredB1形容詞絶滅の危機にあるThe southern resident orcas are endangered.
endanger(危険にさらす)の過去分詞から。endangered species「絶滅危惧種」は入試の環境テーマで必須。 - social bondB2名詞(句)社会的な絆Playing together strengthens social bonds.
bond は「結びつき・接着」。strengthen/build a bond「絆を強める・築く」がコロケーション。 - scarceB2形容詞乏しい、まれなReports of tool use in the sea are scarce.
名詞は scarcity(不足)。副詞 scarcely は「ほとんど~ない」(hardly と同じ)で文法問題に出る。
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アメリカ北西部の海で、シャチが海藻の茎をかみ切り、仲間と体の間にはさんでゴロゴロ転がし合っていたらしい。ドローン映像でとらえた、クジラの仲間が「道具を作って使う」初めての例。名前は「アロケルピング」。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Weiss et al. (2025) Manufacture and use of allogrooming tools by wild killer whales, Current Biologydoi.org
- Mann & Patterson (2013) Tool use by aquatic animals, Philosophical Transactions of the Royal Society Bdoi.org
- Krützen et al. (2005) Cultural transmission of tool use in bottlenose dolphins, PNASdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













