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「夜に爪を切ると親の死に目に会えない」はなぜ生まれた? 迷信を信じてしまう脳のクセ

「夜に爪を切ると親の死に目に会えない」はなぜ生まれた? 迷信を信じてしまう脳のクセ

読む前に予想してみよう!

ハトも、偶然の出来事から「迷信」のような行動をとるようになる

研究カード(どんな研究?)
対象
ハト・大学生など
規模
数羽〜数百人
研究の種類
動物実験・心理学実験(追試を含む)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

夜爪の言い伝えに科学的な根拠はないが、暗い時代のケガ防止という知恵が背景にあるとされる。人が迷信を信じるのは、偶然に意味を見つけたがる脳のクセのせい。

ひとことで言うと迷信の多くは昔の人の「気をつけて」。信じちゃうのは脳のクセ!

もくじ
  1. 夜爪の言い伝えは「ケガ防止」の知恵?
  2. ハトだって「迷信」を作る
  3. 人間の脳の3つのクセ
  4. 「お守りで成績アップ」は本当?
  5. まとめ

「夜に爪を切ると、親の死に目に会えないよ」

日本で育った人なら、一度は聞いたことのある言い伝えです。ほかにも「夜に口笛を吹くとヘビが出る」「霊柩車を見たら親指を隠す」など、日本には不思議なルールがたくさんあります。

もちろん、夜に爪を切ったからといって、家族の運命が変わる科学的な理由はありません。でも、なぜこんな言い伝えが生まれ、私たちはついそれを守ってしまうのか。そこには、人間の脳のおもしろいクセが隠れていました。

01夜爪の言い伝えは「ケガ防止」の知恵?

夜爪の言い伝えには、いくつかの由来の説があります。

  • 暗くて危ない:電灯のない時代、夜の明かりは行灯(あんどん)やろうそくだけ。小刀やはさみで爪を切れば、深爪やケガをしやすかった
  • 言葉の語呂合わせ:「夜爪(よづめ)」が「世詰め(=寿命を縮める)」に通じる、という説

どれが本当の由来かははっきりしませんが、少なくとも「暗いところで刃物を使うのは危ない」というのは、とても理にかなったアドバイスです。「危ないからやめなさい」と言うより、「親の死に目に会えないよ」と言ったほうが、子どもはしっかり守るでしょう。

迷信の中には、こうした生活の知恵が、強い言葉で包まれたものが少なくないと考えられています。

02ハトだって「迷信」を作る

では、なぜ私たちは根拠のない言い伝えを信じてしまうのでしょう? そのヒントになる、有名な実験があります。

ハトにしてみれば、「この動きをしたらエサが出た」。実際はただの偶然なのに、動きとエサを結びつけて覚えてしまったわけです。スキナーはこれを、人間の迷信に通じる行動として紹介しました。

偶然エサが出た直前の動きを、「おまじない」のように繰り返すハトたち
偶然エサが出た直前の動きを、「おまじない」のように繰り返すハトたち

03人間の脳の3つのクセ

人間も、このハトとよく似た脳のクセを持っています。

  • パターンを見つけたがる:偶然の出来事にも「原因」を探してしまう。見落とすより、つい結びつけてしまうほうが、生き残るうえで安全だったのかもしれない
  • 確証バイアス:迷信どおりになったときはよく覚えていて、外れたときは忘れてしまう
  • コントロールの錯覚:自分でどうにもできないことでも、何かをすれば結果を左右できると感じてしまう。1975年、心理学者ランガーは、自分で選んだくじのほうが当たりそうに感じて手放しにくくなることを実験で示した

不安なとき、どうしようもないとき、人は「せめて何かできること」を求めます。迷信は、その不安をやわらげる心のお守りのような役割を果たしているのかもしれません。

04「お守りで成績アップ」は本当?

2010年には、ドイツの研究チームが「幸運のお守りを持っていると、パズルやゴルフのパットの成績が上がった」という研究を発表して話題になりました。

ところが、その後アメリカの研究者たちが同じような実験をやり直したところ、同じ効果は確認できませんでした。お守りが自信を与える可能性はゼロではありませんが、「迷信で成績が上がる」と言い切れるほどの証拠はない、というのが今の見方です。

05まとめ

  • 夜爪の言い伝えに科学的な根拠はない。でも「暗い中で刃物は危ない」という知恵が背景にあるとされる
  • ハトでさえ、偶然から“迷信”のような儀式を作り出す
  • 人が迷信を信じるのは、パターン探し・確証バイアス・コントロールの錯覚という脳のクセのせい

迷信をバカにする必要はありません。昔の人の知恵として味わいつつ、「なぜそう言われたのか」を考えてみる。それが、いちばん科学的な迷信との付き合い方です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany Japanese children are told that if they cut their nails at night, they will not be with their parents… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many Japanese children are told that if they cut their nails at night, they will not be with their parents when they die. There is no scientific basis for this, but the saying may have started as a safety warning. Before electric lights, homes were dark at night, and cutting nails with a small knife could easily cause injuries.

So why do people follow superstitions? In 1948, psychologist B. F. Skinner gave pigeons food at regular times, no matter what they did. Six of the eight birds began repeating whatever they had been doing just before the food appeared, such as turning in circles. Humans have similar habits of mind. We look for patterns, remember when a superstition seems to work, and forget when it does not.

127 words ・ CEFR B1

和訳を見る

多くの日本の子どもは、夜に爪を切ると親が亡くなるときにそばにいられない、と言われます。これには科学的な根拠はありませんが、この言い伝えは安全のための注意から始まったのかもしれません。電灯がなかったころ、家は夜になると暗く、小刀で爪を切るとケガをしやすかったのです。

では、なぜ人は迷信に従うのでしょうか。1948年、心理学者のB・F・スキナーは、ハトが何をしていても関係なく、決まった時間にエサを与えました。8羽のうち6羽が、くるくる回るなど、エサが現れる直前にたまたましていた動きを繰り返し始めました。人間にも似た心のクセがあります。私たちはパターンを探し、迷信が当たったように見えたときは覚えていて、当たらなかったときは忘れてしまうのです。

4択リーディングクイズ

Q1. According to the passage, how might the nail-cutting saying have started?

Q2. How many of Skinner's pigeons started repeating movements?

Q3. Which human habit is described in the last sentence?

重要単語

  • superstitionB2
    名詞迷信Many cultures have superstitions about numbers. 形容詞は superstitious。be superstitious about ~「~について迷信深い」。
  • coincidenceB2
    名詞偶然の一致The food came after their moves only by coincidence. by coincidence「偶然に」。coincide with ~「~と同時に起こる」。
  • illusion of controlC1
    名詞(句)コントロールの錯覚The illusion of control makes us trust lucky charms. illusion は「錯覚・幻想」。optical illusion「目の錯覚」も頻出。
  • reinforceC1
    動詞強化するFood rewards reinforced the pigeons' behavior. re-(再び)+in-+force(力)。心理学では reinforcement(強化)が重要語。
  • replicationC1
    名詞追試、再現A replication study did not find the same effect. replicate(再現する)の名詞形。replication crisis「再現性の危機」とセットで。
  • anxietyB2
    名詞不安Superstitions may help people cope with anxiety. 形容詞は anxious。be anxious about ~「~を心配する」、be anxious to do「~したがる」の区別に注意。
  • ritualB2
    名詞儀式、決まった行動Some athletes follow a ritual before every game. rite(儀式)と同語源。日常の「習慣的な行為」にも使える。

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4コマでわかる

「夜に爪を切ると親の死に目に会えない」はなぜ生まれた? 迷信を信じてしまう脳のクセの4コマ漫画
「夜に爪を切ると親の死に目に会えない」の背景には、灯りが乏しい時代に刃物でケガをしないための知恵があったとも言われる。しかもハトでさえ、偶然から“迷信”の儀式を作り出すという実験がある。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Skinner (1948) 'Superstition' in the pigeon, Journal of Experimental Psychologydoi.org
  2. Langer (1975) The illusion of control, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  3. Damisch, Stoberock & Mussweiler (2010) Keep Your Fingers Crossed! How Superstition Improves Performance, Psychological Sciencedoi.org
  4. Calin-Jageman & Caldwell (2014) Replication of the Superstition and Performance Study by Damisch, Stoberock, and Mussweiler (2010), Social Psychologydoi.org
  5. Staddon & Simmelhag (1971) The "superstition" experiment: A reexamination of its implications for the principles of adaptive behavior, Psychological Reviewdoi.org