ウソ?ホント?検証ホント

「タコの心臓は3つ」はホント。青い血を全身に送るため、エラ専用の"補助ポンプ"を2つも持っていた

「タコの心臓は3つ」はホント。青い血を全身に送るため、エラ専用の"補助ポンプ"を2つも持っていた

読む前に予想してみよう!

タコの血は人間と同じく赤い

研究カード(どんな研究?)
対象
タコ
規模
生理学実験・総説
研究の種類
動物の生理学研究
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

タコには全身に血を送る心臓1つと、エラに血を送る「エラ心臓」2つがある。血は銅を使うヘモシアニンで青い。効率の悪い血を補う工夫だった。

ひとことで言うとタコの心臓は3つ。しかも血の色は青!

もくじ
  1. 全身用1つ+エラ専用2つ
  2. 血が青いのは「銅」のせい
  3. 心臓が3つ必要な"苦しい事情"
  4. なぜ「信じられない雑学」になったのか
  5. まとめ

「タコって心臓が3つあるらしいよ」

雑学番組やクイズでおなじみのこの話。あまりに不思議なので、「さすがに盛ってるでしょ」と思った人もいるかもしれません。

でもこれは、正真正銘のホントです。しかも3つの心臓には、ちゃんと役割分担があります。さらにタコの血は青色。2つの不思議は、実は深くつながっていました。

01全身用1つ+エラ専用2つ

タコの心臓の内訳はこうです。

  • 体心臓(全身用):1つ。エラで酸素を受け取った血を、全身に送り出す
  • 鰓心臓(エラ専用):2つ。左右のエラの根元にあり、全身から戻ってきた血をエラに押しこむ

私たち人間の心臓は1つですが、中が「肺に送る側」と「全身に送る側」に分かれています。タコはその役割を、別々の心臓に分けて持っていると考えるとわかりやすいかもしれません。

02血が青いのは「銅」のせい

人間の血が赤いのは、酸素を運ぶヘモグロビンが鉄を含むからです。一方、タコやイカの血は、銅を含む「ヘモシアニン」というタンパク質で酸素を運びます。ヘモシアニンは酸素と結びつくと青っぽくなるので、タコの血は青く見えるのです。

鉄を使う赤い血と、銅を使う青い血。タコは後者を選んだ
鉄を使う赤い血と、銅を使う青い血。タコは後者を選んだ

ただ、ヘモシアニンには弱点があります。ヘモグロビンのように赤血球の中に詰めこまれておらず、血液に溶けた状態で流れているため、運べる酸素の量が少なめで、血液もドロッとしやすいのです。

03心臓が3つ必要な"苦しい事情"

ウェルズとスミスは1987年の論文で、タコの循環系を「設計に対する工学の勝利」と表現しました。

どういうことかというと、タコの血は酸素を運ぶ力が弱く、そのうえ血をエラの細い血管に通すには大きな力がいります。そこで、エラの手前にもう一段ポンプ(鰓心臓)を置き、ポンプを増やすという"力わざ"で、効率の悪い血を回している、というわけです。もともとの設計の不利を、エンジニアリングで乗り越えているイメージです。

一方で、2015年の研究では、南極の冷たい海にすむタコ(Pareledone charcoti)は、ヘモシアニンの性質や濃度を調整し、0℃近い海でもヘモシアニンが酸素運搬に役立つようにしていると報告されています。冷たい海水に酸素が多くとけていることも、その助けになっています。

04なぜ「信じられない雑学」になったのか

「心臓が3つ」は、言葉だけ聞くとSFの宇宙人のようです。でも実際には、エラで呼吸する生き物が、酸素を運ぶ力の弱い血で活発に動くための工夫でした。

ちなみに「タコには脳が9つある」という話もありますが、こちらは「腕の神経がとても発達していて、半分自分で動ける」ことを大げさに言ったもの。心臓の3つほど文字どおりではありません。

05まとめ

  • タコの心臓は3つ:全身用1つ+エラ専用2つ
  • 血は銅を使うヘモシアニンで、酸素と結びつくと青い
  • 酸素を運ぶ力が弱い血を、ポンプを増やして回していた

判定は「ホント」。クイズ番組の"盛った雑学"に見えて、実は生き物の設計の工夫が詰まった、筋の通った事実でした。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIt sounds like a strange quiz fact, but an octopus really has three hearts. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

It sounds like a strange quiz fact, but an octopus really has three hearts. One systemic heart pumps blood around the body, while two branchial hearts, one at the base of each gill, push returning blood through the gills. Octopus blood is blue because it carries oxygen with hemocyanin, a protein that contains copper, instead of iron-based hemoglobin.

Hemocyanin floats freely in the blood rather than being packed into red blood cells, so it carries less oxygen. In 1979, a British zoologist measured the heartbeat of octopuses that could move freely. At rest in 22°C water, their hearts beat 40 to 50 times a minute, and during exercise they pumped more blood with each beat instead of beating much faster.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

クイズ番組の不思議な雑学のように聞こえますが、タコには本当に心臓が3つあります。1つの体心臓が血を全身に送り出し、それぞれのエラの根元に1つずつある2つの鰓心臓が、戻ってきた血をエラに押し流します。タコの血が青いのは、鉄を使うヘモグロビンではなく、銅を含むタンパク質であるヘモシアニンで酸素を運ぶからです。

ヘモシアニンは赤血球に詰めこまれておらず、血液の中に溶けて流れているため、運べる酸素は少なめです。1979年、英国の動物学者が、自由に動けるタコの心拍を測りました。水温22℃での安静時の心拍は1分間に40〜50回で、運動中は心拍をあまり速くするのではなく、1回の拍動で送り出す血の量を増やしていました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. How did the octopuses respond to exercise in the 1979 study?

Q3. Why does an octopus probably need two extra hearts?

重要単語

  • gillB2
    名詞エラFish and octopuses breathe through their gills. ふつう複数形 gills で使う。発音は /ɡɪl/(ギル)。
  • circulationB2
    名詞循環The heart is the center of blood circulation. circle(円)と同語源。新聞の「発行部数」の意味もある。動詞 circulate。
  • copperB1
    名詞銅Octopus blood contains copper. iron(鉄)、silver(銀)、gold(金)と並べて覚える。10円玉の素材。
  • pumpB1
    動詞(液体を)送り出すThe heart pumps blood around the body. 名詞「ポンプ」も同じ形。pump A into B「AをBに送りこむ」。
  • oxygenA2
    名詞酸素Blood carries oxygen to every part of the body. アクセントは最初の o(オクシジェン)。carbon dioxide(二酸化炭素)とセットで。
  • compensateC1
    動詞埋め合わせる、補うExtra hearts compensate for the weak blood. compensate for ~「~を補う」の形で頻出。名詞 compensation は「補償(金)」。
  • anatomyC1
    名詞解剖学、体の構造The anatomy of an octopus is very unusual. ana-(ばらばらに)+tomy(切ること)。体のつくりそのものも指す。

4コマでわかる

「タコの心臓は3つ」はホント。青い血を全身に送るため、エラ専用の"補助ポンプ"を2つも持っていたの4コマ漫画
「タコには心臓が3つある」はホントだった。全身用が1つ、エラ専用が2つ。しかも血は銅を使った"青い血"。酸素を運ぶ力が弱い血を、ポンプを増やしてなんとか回しているらしい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Wells & Smith (1987) The performance of the octopus circulatory system: A triumph of engineering over design, Experientiadoi.org
  2. Schipp (1987) The blood vessels of cephalopods. A comparative morphological and functional survey, Experientiadoi.org
  3. Wells (1979) The heartbeat of Octopus vulgaris, Journal of Experimental Biologydoi.org
  4. Oellermann et al. (2015) Blue blood on ice: modulated blood oxygen transport facilitates cold compensation and eurythermy in an Antarctic octopod, Frontiers in Zoologydoi.org