ウソ?ホント?検証ビミョー

「ハチミツは腐らない」はほぼホント。でも"発酵"はするし、赤ちゃんには危険な理由

「ハチミツは腐らない」はほぼホント。でも"発酵"はするし、赤ちゃんには危険な理由

読む前に予想してみよう!

ハチミツは腐りにくいので、赤ちゃんに与えても安全だ

研究カード(どんな研究?)
対象
ハチミツ中の微生物・抗菌成分
規模
実験室研究と総説
研究の種類
実験研究・総説
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

ハチミツの中では細菌はほぼ増えない。ただ水分が増えると酵母で発酵することがあり、ボツリヌス菌の芽胞は生き残るので1歳未満にはNG。

ひとことで言うと細菌はハチミツでは増えにくい。でも"眠った菌"は残ることも!

もくじ
  1. 細菌は、ハチミツの中では増えられない
  2. 落とし穴1:水分が増えると「発酵」する
  3. 落とし穴2:「眠った菌」は生き残る
  4. まとめ

「ハチミツは腐らないんだよ。古代エジプトの墓から出てきたハチミツも食べられたんだって」

一度は聞いたことのある、ちょっと夢のある話です。実際、台所の奥で何年も眠っていたハチミツが、見た目はそのままだったという経験がある人も多いでしょう。

科学的に見ると、この話はほぼホントです。ただし、「どんな条件でも絶対に大丈夫」ではありません。そこには、知っておきたい二つの落とし穴があります。

01細菌は、ハチミツの中では増えられない

食べ物が腐るのは、主に細菌やカビが増えるからです。ところがハチミツは、微生物にとってかなり住みにくい場所です。

  • 糖分が約8割:水分が少なく、細菌の体から水が吸い出されてしまう
  • 酸性:pHが低く、多くの細菌が苦手とする環境
  • 抗菌物質:過酸化水素などが作られる

ハチミツの微生物を調べたスノードンとクリバーによる1996年の総説も、ハチミツの中で細菌は増殖しないとまとめています。「腐らない」と言われる理由は、ちゃんと科学で説明できるのです。

02落とし穴1:水分が増えると「発酵」する

ただし、同じ総説は、ほとんどのハチミツに酵母が少し含まれていることも指摘しています。酵母は糖が多い環境にも比較的強く、条件がそろうとハチミツの中で増えることがあります。

ふたを開けっぱなしにして湿気を吸うと、酵母が働いて発酵することがある
ふたを開けっぱなしにして湿気を吸うと、酵母が働いて発酵することがある

その条件のカギが水分です。ふたを開けたままにしたり、濡れたスプーンを入れたりして水分が増えると、酵母が働いて発酵し、泡が出たり酸っぱいにおいがしたりします。これは"腐る"のに近い状態です。

また、白く固まる結晶化は、ブドウ糖が固まっただけで傷んだわけではありません。ただ、長く保存したり加熱したりすると、色や香り、成分は少しずつ変わっていきます(ダ・シルバらの2016年の総説)。「腐らない」と「品質が変わらない」は別物です。

03落とし穴2:「眠った菌」は生き残る

もう一つの、そしてもっと大事な落とし穴があります。細菌が増えないことと、いないことは違うのです。

ボツリヌス菌は、「芽胞」という固いカプセルのような姿で眠った状態になれます。芽胞はハチミツの中でも生き残り、ふつうの加熱でも死にません。大人の腸ではほとんど問題になりませんが、腸内の環境が未熟な1歳未満の赤ちゃんでは、腸の中で芽胞が目覚めて毒素を作り、「乳児ボツリヌス症」を起こすことがあります。

2002年の総説(タンジとガベイ)によると、米国では1970年代後半から1000例以上が報告され、ハチミツとの関連を示す研究が積み重なっています。日本の厚生労働省も「ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから」と呼びかけています。

04まとめ

  • ハチミツの中で細菌は増えない。だから「ほぼ腐らない」は本当
  • でも水分が増えると酵母で発酵することがある
  • ボツリヌス菌の芽胞は生き残るので、1歳未満には絶対に与えない

判定は「ビミョー(ほぼホント)」。ハチミツは驚くほど長持ちする食べ物ですが、"眠った菌"までは消してくれないことを覚えておきましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerHoney is famous for never spoiling, and science mostly agrees. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Honey is famous for never spoiling, and science mostly agrees. Honey is about 80 percent sugar, it is acidic, and it produces antibacterial substances such as hydrogen peroxide. In 2010, Dutch researchers found that medical honey killed all the test bacteria even when it was diluted to 10 to 20 percent, while sugar water needed to be 40 percent or more.

However, there are two important exceptions. First, most honey contains a little yeast, so if it absorbs water, it can ferment and start to smell sour. Second, bacteria that cannot grow in honey are not necessarily absent. Botulism spores can survive, and they can make babies under one year old seriously ill.

113 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ハチミツは決して腐らないことで知られ、科学もおおむねそれに同意しています。ハチミツは約8割が糖分で、酸性であり、過酸化水素などの抗菌物質を作り出します。2010年、オランダの研究者たちは、医療用ハチミツが10〜20%に薄めても試験に使った細菌をすべて殺したのに対し、砂糖水では40%以上の濃さが必要だったことを発見しました。

しかし、重要な例外が二つあります。第一に、ほとんどのハチミツには少量の酵母が含まれているため、水分を吸うと発酵し、酸っぱいにおいがし始めることがあります。第二に、ハチミツの中で増えられない細菌が、いないとは限りません。ボツリヌス菌の芽胞は生き残ることがあり、1歳未満の赤ちゃんを重い病気にすることがあるのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. What did the Dutch researchers find in 2010?

Q3. What does the writer mean by "bacteria that cannot grow in honey are not necessarily absent"?

重要単語

  • spoilB1
    動詞腐る、だめになるMilk spoils quickly in summer. 「(子どもを)甘やかす」の意味もある。spoiled child(甘やかされた子)。
  • fermentC1
    動詞発酵するHoney can ferment if it gets too much water. 名詞 fermentation。fermented foods(発酵食品)として納豆やキムチの話題で頻出。
  • sporeC1
    名詞芽胞、胞子Some bacterial spores can survive for years. キノコやシダの「胞子」も spore。sport と見間違えないように。
  • yeastB2
    名詞酵母Yeast is used to make bread rise. 発音は /jiːst/(イースト)。パンやビール作りに欠かせない微生物。
  • antibacterialB2
    形容詞抗菌のHoney has antibacterial properties. anti-(対抗する)+bacterial。antibacterial soap(抗菌せっけん)など日常語でも使う。
  • diluteC1
    動詞薄めるThe honey was diluted with water. dilute A with B「AをBで薄める」。反対は concentrate(濃縮する)。
  • infantB2
    名詞乳児Honey should not be given to infants. ラテン語で「話せない者」が語源。infant botulism(乳児ボツリヌス症)。

4コマでわかる

「ハチミツは腐らない」はほぼホント。でも"発酵"はするし、赤ちゃんには危険な理由の4コマ漫画
「ハチミツは腐らない」はほぼホント。細菌はハチミツの中では増えないらしい。でも水分が増えると酵母で発酵するし、ボツリヌス菌の"芽胞"は生き残るから、1歳未満の赤ちゃんには絶対NG。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Snowdon & Cliver (1996) Microorganisms in honey, International Journal of Food Microbiologydoi.org
  2. Kwakman et al. (2010) How honey kills bacteria, The FASEB Journaldoi.org
  3. da Silva et al. (2016) Honey: Chemical composition, stability and authenticity, Food Chemistrydoi.org
  4. Tanzi & Gabay (2002) Association between honey consumption and infant botulism, Pharmacotherapydoi.org