「ハチミツは腐らない」はほぼホント。でも"発酵"はするし、赤ちゃんには危険な理由

読む前に予想してみよう!
ハチミツは腐りにくいので、赤ちゃんに与えても安全だ
ボツリヌス菌の芽胞が含まれることがあり、1歳未満の乳児には与えてはいけない。
- 対象
- ハチミツ中の微生物・抗菌成分
- 規模
- 実験室研究と総説
- 研究の種類
- 実験研究・総説
- 確かさ
- ★★★☆☆
ハチミツの中では細菌はほぼ増えない。ただ水分が増えると酵母で発酵することがあり、ボツリヌス菌の芽胞は生き残るので1歳未満にはNG。
ひとことで言うと細菌はハチミツでは増えにくい。でも"眠った菌"は残ることも!
「ハチミツは腐らないんだよ。古代エジプトの墓から出てきたハチミツも食べられたんだって」
一度は聞いたことのある、ちょっと夢のある話です。実際、台所の奥で何年も眠っていたハチミツが、見た目はそのままだったという経験がある人も多いでしょう。
科学的に見ると、この話はほぼホントです。ただし、「どんな条件でも絶対に大丈夫」ではありません。そこには、知っておきたい二つの落とし穴があります。
01細菌は、ハチミツの中では増えられない
食べ物が腐るのは、主に細菌やカビが増えるからです。ところがハチミツは、微生物にとってかなり住みにくい場所です。
- 糖分が約8割:水分が少なく、細菌の体から水が吸い出されてしまう
- 酸性:pHが低く、多くの細菌が苦手とする環境
- 抗菌物質:過酸化水素などが作られる
ハチミツの微生物を調べたスノードンとクリバーによる1996年の総説も、ハチミツの中で細菌は増殖しないとまとめています。「腐らない」と言われる理由は、ちゃんと科学で説明できるのです。
02落とし穴1:水分が増えると「発酵」する
ただし、同じ総説は、ほとんどのハチミツに酵母が少し含まれていることも指摘しています。酵母は糖が多い環境にも比較的強く、条件がそろうとハチミツの中で増えることがあります。

その条件のカギが水分です。ふたを開けたままにしたり、濡れたスプーンを入れたりして水分が増えると、酵母が働いて発酵し、泡が出たり酸っぱいにおいがしたりします。これは"腐る"のに近い状態です。
また、白く固まる結晶化は、ブドウ糖が固まっただけで傷んだわけではありません。ただ、長く保存したり加熱したりすると、色や香り、成分は少しずつ変わっていきます(ダ・シルバらの2016年の総説)。「腐らない」と「品質が変わらない」は別物です。
03落とし穴2:「眠った菌」は生き残る
もう一つの、そしてもっと大事な落とし穴があります。細菌が増えないことと、いないことは違うのです。
ボツリヌス菌は、「芽胞」という固いカプセルのような姿で眠った状態になれます。芽胞はハチミツの中でも生き残り、ふつうの加熱でも死にません。大人の腸ではほとんど問題になりませんが、腸内の環境が未熟な1歳未満の赤ちゃんでは、腸の中で芽胞が目覚めて毒素を作り、「乳児ボツリヌス症」を起こすことがあります。
2002年の総説(タンジとガベイ)によると、米国では1970年代後半から1000例以上が報告され、ハチミツとの関連を示す研究が積み重なっています。日本の厚生労働省も「ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから」と呼びかけています。
04まとめ
- ハチミツの中で細菌は増えない。だから「ほぼ腐らない」は本当
- でも水分が増えると酵母で発酵することがある
- ボツリヌス菌の芽胞は生き残るので、1歳未満には絶対に与えない
判定は「ビミョー(ほぼホント)」。ハチミツは驚くほど長持ちする食べ物ですが、"眠った菌"までは消してくれないことを覚えておきましょう。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerHoney is famous for never spoiling, and science mostly agrees.
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原田英語の English Corner
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People say that honey never goes bad. This is mostly true. Honey has a lot of sugar and very little water, so bacteria cannot grow in it.
But if water gets into honey, yeast can grow and the honey can ferment. Also, some bacteria can sleep inside honey as tiny, hard spores. They are dangerous for babies, so never give honey to babies under one year old.
67 words ・ CEFR A2
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ハチミツは決して腐らない、と言われます。これはほぼ本当です。ハチミツは糖分がとても多く水分がとても少ないので、細菌はその中で増えられません。
しかし、ハチミツに水が入ると、酵母が増えて発酵することがあります。また、一部の細菌は小さくて固い「芽胞」という姿で、ハチミツの中で眠っていることがあります。それは赤ちゃんにとって危険なので、1歳未満の赤ちゃんには絶対にハチミツを与えないでください。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
「ハチミツは腐らない」という話がほぼ本当かどうかと、その例外を説明しているので C。
Q2. Why can't bacteria grow in honey?
Honey has a lot of sugar and very little water, so bacteria cannot grow in it. とあるので A。
Q3. In this passage, "goes bad" means ...
go bad は「(食べ物が)腐る・傷む」という意味なので B。
Honey is famous for never spoiling, and science mostly agrees. Honey is about 80 percent sugar, it is acidic, and it produces antibacterial substances such as hydrogen peroxide. In 2010, Dutch researchers found that medical honey killed all the test bacteria even when it was diluted to 10 to 20 percent, while sugar water needed to be 40 percent or more.
However, there are two important exceptions. First, most honey contains a little yeast, so if it absorbs water, it can ferment and start to smell sour. Second, bacteria that cannot grow in honey are not necessarily absent. Botulism spores can survive, and they can make babies under one year old seriously ill.
113 words ・ CEFR B1
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ハチミツは決して腐らないことで知られ、科学もおおむねそれに同意しています。ハチミツは約8割が糖分で、酸性であり、過酸化水素などの抗菌物質を作り出します。2010年、オランダの研究者たちは、医療用ハチミツが10〜20%に薄めても試験に使った細菌をすべて殺したのに対し、砂糖水では40%以上の濃さが必要だったことを発見しました。
しかし、重要な例外が二つあります。第一に、ほとんどのハチミツには少量の酵母が含まれているため、水分を吸うと発酵し、酸っぱいにおいがし始めることがあります。第二に、ハチミツの中で増えられない細菌が、いないとは限りません。ボツリヌス菌の芽胞は生き残ることがあり、1歳未満の赤ちゃんを重い病気にすることがあるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
science mostly agrees と述べたうえで two important exceptions を挙げているので B。
Q2. What did the Dutch researchers find in 2010?
killed all the test bacteria even when it was diluted to 10 to 20 percent とあるので D。砂糖水は40%以上必要だった。
Q3. What does the writer mean by "bacteria that cannot grow in honey are not necessarily absent"?
not necessarily absent は「必ずしもいないわけではない」。増えなくても芽胞として存在しうるという意味なので B。
The popular belief that honey never spoils is largely supported by science, although it needs important qualifications. Honey is roughly 80 percent sugar, which draws water out of microbial cells, and it is also acidic and generates antibacterial compounds. A 2010 study in the Netherlands neutralized these factors one by one in a medical-grade honey and found that its activity came from a combination of sugar, hydrogen peroxide, methylglyoxal, a bee protein called defensin-1, and acidity.
Even diluted to 10 to 20 percent, the honey killed all test bacteria, including drug-resistant strains. Two caveats matter, though. Most honey contains small numbers of yeasts, which can cause fermentation if the honey absorbs moisture, and long storage or heating gradually alters its color, aroma, and composition. More seriously, the inability of bacteria to grow is not the same as their absence.
Spores of the botulism bacterium can survive in honey and are not destroyed by ordinary heating. In infants under one year old, whose gut environment is immature, these spores can awaken and produce toxins, which is why honey must never be given to them. Also, the 2010 analysis examined only one type of medical honey.
194 words ・ CEFR B2
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ハチミツは決して腐らないという通説は、科学によっておおむね裏づけられていますが、重要な但し書きが必要です。ハチミツはおよそ8割が糖分で、それが微生物の細胞から水分を奪います。さらに酸性で、抗菌性の化合物も生み出します。2010年のオランダの研究では、医療用ハチミツのこうした要因を一つずつ打ち消していき、その抗菌作用が糖、過酸化水素、メチルグリオキサール、ディフェンシン1というミツバチ由来のタンパク質、そして酸性度の組み合わせから生じていることを突き止めました。
10〜20%に薄めても、そのハチミツは薬剤耐性株を含む試験菌をすべて殺しました。とはいえ、二つの注意点が重要です。ほとんどのハチミツには少数の酵母が含まれ、ハチミツが湿気を吸うと発酵を引き起こすことがあります。また、長期保存や加熱によって、色や香り、成分は少しずつ変わります。
さらに深刻なのは、細菌が増えられないことと、いないことは同じではないという点です。ボツリヌス菌の芽胞はハチミツの中で生き残り、ふつうの加熱では壊れません。腸内環境が未熟な1歳未満の乳児では、この芽胞が目覚めて毒素を作ることがあり、だからこそ乳児には決してハチミツを与えてはいけないのです。また、2010年の分析は1種類の医療用ハチミツしか調べていません。
4択リーディングクイズ
Q1. Which statement best summarizes the passage?
細菌に強いという通説は支持される一方、発酵と芽胞という二つの注意点があると述べているので A。
Q2. Which was NOT named as a source of the antibacterial activity in the 2010 study?
挙げられたのは糖・過酸化水素・メチルグリオキサール・ディフェンシン1・酸性度。酵母は発酵の原因として出てくるだけなので C。
Q3. Why does the author point out that the 2010 analysis examined only one type of medical honey?
1種類しか調べていないという研究の限界を示し、他のハチミツにそのまま当てはまるとは限らないと伝えているので D。
重要単語
- spoilB1動詞腐る、だめになるMilk spoils quickly in summer.
「(子どもを)甘やかす」の意味もある。spoiled child(甘やかされた子)。 - fermentC1動詞発酵するHoney can ferment if it gets too much water.
名詞 fermentation。fermented foods(発酵食品)として納豆やキムチの話題で頻出。 - sporeC1名詞芽胞、胞子Some bacterial spores can survive for years.
キノコやシダの「胞子」も spore。sport と見間違えないように。 - yeastB2名詞酵母Yeast is used to make bread rise.
発音は /jiːst/(イースト)。パンやビール作りに欠かせない微生物。 - antibacterialB2形容詞抗菌のHoney has antibacterial properties.
anti-(対抗する)+bacterial。antibacterial soap(抗菌せっけん)など日常語でも使う。 - diluteC1動詞薄めるThe honey was diluted with water.
dilute A with B「AをBで薄める」。反対は concentrate(濃縮する)。 - infantB2名詞乳児Honey should not be given to infants.
ラテン語で「話せない者」が語源。infant botulism(乳児ボツリヌス症)。
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- ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。(厚生労働省)mhlw.go.jp
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「ハチミツは腐らない」はほぼホント。細菌はハチミツの中では増えないらしい。でも水分が増えると酵母で発酵するし、ボツリヌス菌の"芽胞"は生き残るから、1歳未満の赤ちゃんには絶対NG。
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- Snowdon & Cliver (1996) Microorganisms in honey, International Journal of Food Microbiologydoi.org
- Kwakman et al. (2010) How honey kills bacteria, The FASEB Journaldoi.org
- da Silva et al. (2016) Honey: Chemical composition, stability and authenticity, Food Chemistrydoi.org
- Tanzi & Gabay (2002) Association between honey consumption and infant botulism, Pharmacotherapydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













