万里の長城は宇宙から見える? 中国初の宇宙飛行士の答えは「見えなかった」

読む前に予想してみよう!
宇宙から肉眼で見える人工物は、万里の長城だけだ
長城は細くて周りと色が似ているため見えにくい。むしろ夜の都市の明かりのほうがよく見える。
- 対象
- 人の視力(解像力)と宇宙飛行士の観察
- 規模
- ―(計算と証言)
- 研究の種類
- 光学的な計算・公的機関の解説
- 確かさ
- ★★★★☆
長城は長いけれど幅は数メートル程度。宇宙ステーションの高さから肉眼で見分けるのはほぼ不可能で、中国初の宇宙飛行士も「見えなかった」と語った。
ひとことで言うと長城は長いけど細すぎる。宇宙から探すのは、数メートル先の髪の毛1本を探すようなもの!
「万里の長城は、宇宙から肉眼で見える唯一の人工建造物である」
クイズ番組や雑学本で、一度は聞いたことがあるはずの有名な話です。全長は数千キロ以上。これだけ長ければ、宇宙からでも見えそうな気がしますよね。
ところが2003年、中国が初めての有人宇宙飛行に成功したとき、宇宙から帰ってきた宇宙飛行士・楊利偉(ヤン・リーウェイ)さんは、記者の質問にこう答えました。「長城は見えなかった」。
01問題は「長さ」ではなく「幅」
なぜ見えないのか。カギは、長城の幅にあります。
長城は確かにとても長いのですが、壁の幅は、多くの場所で6メートル未満。ふつうの2車線道路の幅と大きく変わりません。
ここで、人の目の性能を考えてみましょう。視力1.0の人が見分けられる細かさは、角度にするとおよそ1分(1度の60分の1)。これを使って計算すると――
- 国際宇宙ステーションの高さ(約400km)から見分けられるのは、幅およそ100m以上のもの
- 長城の幅は数メートル。必要な幅の何十分の一しかない
身近なたとえにすると、数メートル先に置いた髪の毛1本を見つけるような話です。
02色も「迷彩」になっている
もうひとつの理由は色です。
長城の多くは、周りの土や岩と似た材料で造られています。周囲と色や明るさの差(コントラスト)が小さいと、細いものはさらに見えにくくなります。

逆に、宇宙から見えやすいのは、周りとの差がはっきりしたもの。たとえば、夜の都市の明かり、広い空港の滑走路、砂漠の中の大きな農地の模様などは、宇宙飛行士がよく話題にします。
03宇宙飛行より前からあった「伝説」
この「宇宙から見える」という話は、人類が宇宙に行くよりずっと前、1930年代の雑学本などですでに語られていたと言われています。つまり、誰も確かめていないうちに広まった話だったのです。
その後、宇宙飛行士たちから「見えなかった」という証言が相次ぎました。NASAも、国際宇宙ステーションから強力な望遠レンズで撮影した長城の写真を紹介しつつ、「月からは見えず、地球の軌道上から見るのも難しいか不可能」と説明しています。カメラで写ることと「肉眼で見える」ことは、別の話なのです。
では、「月から見える」はどうでしょう? 月は国際宇宙ステーションよりおよそ1000倍も遠くにあります。そこから見える地球は、青い海と白い雲、大陸の形がやっとわかるくらい。長城どころか、どんな建物も見分けることはできません。
04なぜこんなに信じられたの?
「人類最大級の建造物が、宇宙からも見える」――これは、とても誇らしく、ロマンのある話です。しかも確かめる方法が当時はなかったので、反論もされにくかった。
中国の教科書にも載っていたこの話は、楊さんの証言をきっかけに見直されることになりました。自国の宇宙飛行士が、自国の伝説について、正直に「見えなかった」と答えた。これこそ、科学の姿勢と言えるかもしれません。
05まとめ
- 長城は長いけれど、幅は数メートル程度。宇宙から肉眼で見分けるのはほぼ不可能
- 周りと色が似ていることも、見えにくさに拍車をかけている
- この伝説は、人類が宇宙へ行く前から語られていた
「宇宙から見えないからすごくない」なんてことはありません。宇宙から見えなくても、長城は地上で見るほうがずっと迫力がありますから。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 2003, Yang Liwei became China's first astronaut.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many people believe that you can see the Great Wall of China from space. But in 2003, China's first astronaut came back to Earth and said, "I could not see it."
The wall is very long, but it is only a few meters wide. From the space station, about 400 kilometers up, it is too thin to see with your eyes. Its color is also like the land around it.
70 words ・ CEFR A2
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多くの人が、宇宙から万里の長城が見えると信じています。しかし2003年、中国初の宇宙飛行士は地球に戻ってきて、「見えなかった」と言いました。
長城はとても長いですが、幅は数メートルしかありません。約400キロ上空の宇宙ステーションからは、細すぎて目で見ることができません。その色も周りの土地と似ています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
長城が宇宙から見えない理由(幅が狭い・色が似ている)が中心なので B。
Q2. What did China's first astronaut say?
said, "I could not see it." とあるので C。
Q3. In this passage, "thin" is closest in meaning to ...
幅が数メートルしかない、という文脈なので thin は「細い・幅が狭い」。A の narrow。
In 2003, Yang Liwei became China's first astronaut. Back on Earth, he said he had not seen the Great Wall of China from space. People had long said it was the only human-made structure visible from space with the naked eye.
The wall is very long, but length is not what matters. Width is. In many places the wall is less than six meters wide. From the International Space Station, a person with normal eyesight can only make out objects about 100 meters wide or more.
The wall is also built from materials with colors like the land around it, so it blends in. City lights at night are much easier to see. And people were telling the story long before anyone went into space to check.
127 words ・ CEFR B1
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2003年、楊利偉さんは中国初の宇宙飛行士になりました。地球に戻った彼は、宇宙から万里の長城は見えなかったと言いました。長城は宇宙から肉眼で見える唯一の人工建造物だと、何年も前から言われていました。
長城はとても長いのですが、大事なのは長さではありません。幅なのです。多くの場所で、長城の幅は6メートル未満しかありません。国際宇宙ステーションから普通の視力の人が見分けられるのは、幅およそ100メートル以上のものだけです。
また、長城は周りの土地と似た色の材料で造られているので、景色に溶け込んでしまいます。夜の都市の明かりのほうが、ずっと見やすいのです。それに、この話は、誰かが宇宙へ行って確かめるずっと前から語られていました。
4択リーディングクイズ
Q1. According to the passage, what is the main reason the wall is hard to see?
length is not what matters. Width is. とあるので D。
Q2. From the space station, how wide must an object be for normal eyes to make it out?
objects about 100 meters wide or more とあるので C。400kmは宇宙ステーションの高さ。
Q3. What can we infer from the last sentence?
宇宙へ行って確かめる人がいる前から話が語られていた=誰も確かめないまま広まった、と推論できるので B。
When Yang Liwei, China's first astronaut, returned in 2003, he admitted that he had not seen the Great Wall. The admission led even Chinese textbooks to reconsider a famous claim, that the wall is the only human-made structure visible from space with the naked eye. The wall's great length makes the idea sound plausible.
But whether something can be seen depends on its width. Most sections are less than six meters wide, about the width of a two-lane road. The human eye can resolve details of about one minute of arc. From the International Space Station, some 400 kilometers up, an object would therefore need to be about 100 meters wide to be distinguished. On this basis, the vision scientist López-Gil concluded in a 2008 paper that spotting the wall unaided from orbit is practically impossible.
Contrast makes things harder still, because the wall was largely built from materials that resemble the surrounding terrain. Width alone does not settle every case, though. Some astronauts have reported seeing narrow features with high contrast, such as roads, in favorable conditions. The legend itself appeared in print decades before anyone flew in space, so it was never based on observation.
197 words ・ CEFR B2
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中国初の宇宙飛行士である楊利偉さんは、2003年に帰還したとき、万里の長城は見えなかったと認めました。この発言を受けて、中国の教科書でさえ、長城は宇宙から肉眼で見える唯一の人工建造物だという有名な主張を見直しました。長城の長さが巨大なので、この考えはもっともらしく聞こえます。
しかし、物が見えるかどうかは幅で決まります。ほとんどの区間は幅が6メートル未満で、2車線道路と同じくらいです。人間の目が見分けられる細かさは、約1分角です。したがって、約400キロ上空の国際宇宙ステーションからだと、物体が見分けられるには幅が約100メートル必要になります。これを根拠に、視覚科学者のロペス=ヒルは2008年の論文で、軌道上から肉眼で長城を見つけるのは事実上不可能だと結論づけました。コントラストが、さらに見えにくくしています。
長城は主に周囲の地形に似た材料で造られているからです。ただし、幅だけですべてが決まるわけではありません。条件がよいときに、道路のように細くてもコントラストの高いものが見えたと報告した宇宙飛行士もいます。伝説そのものは、人が宇宙を飛ぶ何十年も前に活字になっていたので、観察にもとづいたものでは一度もなかったのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
長城が宇宙から肉眼で見えるという主張が誤りである理由を説明しているので D。
Q2. What does the author point out about the origin of the legend?
The legend itself appeared in print decades before anyone flew in space, so it was never based on observation とあるので A。
Q3. What do the reports from some astronauts about roads suggest?
Width alone does not settle every case のあと、細くてもコントラストの高い道路が見えたという証言を挙げており、幅だけでなくコントラストも関係すると示しているので C。
重要単語
- naked eyeB2名詞(句)肉眼The wall cannot be seen from orbit with the naked eye.
with the naked eye「肉眼で」が定番。naked は「裸の・覆いのない」。 - orbitB2名詞・動詞軌道(を回る)The space station is in orbit about 400 kilometers up.
in orbit「軌道上で」。The Earth orbits the Sun. のように動詞でも使う。 - resolutionB2名詞解像度、見分ける細かさHuman eyes have limited resolution.
「決意」「決議」の意味もある多義語。New Year's resolution=新年の抱負。 - contrastB1名詞明暗や色の差、対照Low contrast makes the wall blend into the hills.
in contrast「対照的に」、by contrast は論説文のディスコースマーカーとして頻出。 - astronautB1名詞宇宙飛行士The astronaut said he could not see the wall.
astro(星)+naut(船乗り)。astronomy(天文学)も同じ astro。 - blend inB2動詞(句)溶け込む、目立たないThe wall blends in with the brown hills.
blend in with ~「~に溶け込む」。blend は「混ぜる」。 - acuityC1名詞(感覚の)鋭さVisual acuity limits what we can see from far away.
acute(鋭い)と同語源。visual acuity=視力。
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「万里の長城は宇宙から肉眼で見える唯一の建造物」って有名だけど、中国初の宇宙飛行士・楊利偉さん本人が「見えなかった」と答えたらしい。長さじゃなくて、幅が細すぎるのが問題。
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※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













