「ゲームで脳が壊れる」は本当か。20年分の研究が描いた、意外な脳の姿

読む前に予想してみよう!
ビデオゲームをすると、脳が認知症のような状態になることが科学的に証明されている
そうした主張は検証が不十分とされ、むしろ注意力などが向上した研究も多い。
- 対象
- 若者・成人
- 規模
- 数十人〜数千人(研究により異なる)
- 研究の種類
- 実験研究+メタ分析
- 確かさ
- ★★★☆☆
ゲームで脳が壊れるという科学的な証拠はない。アクションゲームで注意力が上がった実験もある。ただし生活が壊れるほどの「やりすぎ」は別問題。
ひとことで言うとゲームで脳は壊れない。でも、寝る時間を削るのはNG!
「ゲームばっかりしてると、脳が壊れるよ!」
2000年代に子ども時代を過ごした人なら、一度は言われたことがあるかもしれません。2002年に出版された本をきっかけに、「ゲーム脳」という言葉が大流行しました。
ゲームをすると脳の働きが落ち、まるで認知症の人のような状態になる――そんな主張が、テレビや新聞でも取り上げられたのです。
あれから20年以上。科学者たちは、ゲームと脳の関係をたくさん調べてきました。わかってきたのは、「壊れる」どころか、ちょっと意外な脳の姿でした。
01「ゲーム脳」説はどう受け止められた?
「ゲーム脳」の説は、ゲーム中の脳波を測った結果をもとにしていました。ただ、脳波の測り方や、その数値が何を意味するかという解釈、比べ方などについて、多くの脳科学者や心理学者から疑問が出されました。
また、研究者どうしで厳しくチェックし合う査読(さどく=専門家による論文の審査)を経た検証が十分にされていないことも指摘されました。親や先生の不安にぴったり合う言葉だったからこそ、科学的な裏づけ以上に広まってしまったと言えそうです。
02アクションゲームで「注意力」が上がった
一方、海外では正反対の結果も出ていました。
その後、2018年には多くの研究をまとめたメタ分析(ベディウら、『Psychological Bulletin』)でも、アクションゲームが注意力や知覚のスキルを高める傾向が確認されています。
03毎日のゲームで、脳の一部が“育った”

ドイツの研究チーム(キューンら)が2014年に報告した実験では、数十人の大人を2つのグループに分け、片方に2か月間、毎日30分ほど3Dのアクションゲームをしてもらいました。すると、空間の記憶に関わる海馬(かいば=記憶の整理係)や、計画を立てる前頭葉の一部などで、脳の灰白質(=神経細胞が集まる部分)の体積が増えていたのです。
もちろん「ゲームをすれば頭が良くなる」とまでは言えません。でも少なくとも「ゲームで脳が壊れる」とは、正反対の方向の結果でした。
04ただし「やりすぎ」は本当に問題
ここは大切なポイントです。ゲームが脳を壊さないからといって、いくらやってもいいわけではありません。
WHO(世界保健機関)は2019年、ゲームをやめられず、勉強や仕事、人間関係などに深刻な支障が出る状態を「ゲーム障害」として病気の国際分類に加えました(2022年から適用)。
問題は「ゲームそのもの」より、ゲームのせいで睡眠・運動・人との関わりが削られること。睡眠不足は、それ自体が集中力や気分に大きく影響します。
05まとめ
- 「ゲームで脳が壊れる」という主張は、科学的に十分な裏づけがない
- アクションゲームで注意力が上がったり、脳の一部の体積が増えたりした研究もある
- ただし、生活を壊すほどの「やりすぎ」はWHOも認める問題
ゲームは脳の敵ではなく、使い方しだいの道具。大切なのは、コントローラーを置く時間を自分で決められることです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn the early 2000s, the term "game brain" spread across Japan.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In the 2000s, many children in Japan heard that video games could break their brains. But scientists did not find good proof for this idea.
In fact, some studies found the opposite. People who played action games were better at finding things quickly on a screen. In another study, adults played a game every day for two months, and some parts of their brains grew. But playing too much is still a problem.
73 words ・ CEFR A2
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2000年代、日本の多くの子どもたちは、ビデオゲームが脳を壊すかもしれないと聞かされました。しかし、科学者たちはこの考えの良い証拠を見つけられませんでした。
実は、反対の結果を見つけた研究もあります。アクションゲームをする人は、画面上のものをすばやく見つけるのが得意でした。別の研究では、大人が2か月間毎日ゲームをしたところ、脳の一部が大きくなりました。ただし、やりすぎはやはり問題です。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ゲームで脳が壊れるという説に証拠がなく、反対の結果もあるという話なので B。
Q2. How long did the adults play a game in one study?
adults played a game every day for two months とあるので D。
Q3. In this passage, "the opposite" means ...
opposite は「正反対」。脳が壊れるのとは反対の、良い結果が出たということなので D。
In the early 2000s, the term "game brain" spread across Japan. It was the idea that video games could make young people's brains work like those of people with dementia.
Many scientists questioned how the brain waves were measured and read, and the claim never went through rigorous peer review. Studies abroad found something different. In 2003, two American researchers reported that action game players had better visual attention. Non-players also improved after ten days of play.
In a 2014 German study, adults who played a 3D game for about 30 minutes a day for two months gained gray matter in areas linked to memory and planning. Games are not always good, though. The WHO now recognizes "gaming disorder," when people lose control over gaming and their daily lives suffer.
130 words ・ CEFR B1
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2000年代初め、日本で「ゲーム脳」という言葉が広まりました。これは、ビデオゲームによって若者の脳が認知症の人のような働き方になりうる、という考えです。
多くの科学者が脳波の測り方や読み取り方に疑問を投げかけ、この主張は厳密な査読を経たこともありませんでした。海外の研究は、違う結果を出していました。2003年、2人のアメリカの研究者は、アクションゲームをする人は視覚的注意力が高いと報告しました。ゲームをしない人も、10日間遊んだ後には向上しました。
2014年のドイツの研究では、2か月間、1日約30分3Dゲームをした大人は、記憶や計画に関わる部分で灰白質が増えました。ただし、ゲームがいつでも良いとは限りません。WHOは現在、ゲームをコントロールできなくなり、日常生活に支障が出る状態を「ゲーム障害」として認めています。
4択リーディングクイズ
Q1. Why did scientists doubt the "game brain" claim?
Many scientists questioned how the brain waves were measured and read とあるので B。
Q2. What happened to non-players in the 2003 study?
Non-players also improved after ten days of play とあるので A。
Q3. What does the last sentence suggest?
WHOがゲーム障害を認めているという最終文から、やりすぎは問題だと読み取れるので C。
In the early 2000s, Japanese parents kept hearing a frightening phrase in the media. "Game brain" was the claim that video games could push children's brains into a state resembling dementia. It rested on brain-wave recordings, but researchers criticized both the measurements and the way they were read, and the idea never went through rigorous peer review. Laboratories abroad were finding the opposite.
In a 2003 paper in Nature, Green and Bavelier reported that action game players beat non-players on tests of visual selective attention, and that ten days of training raised non-players' scores. A 2018 meta-analysis broadly confirmed the link between action games and better attention and perception. In 2014, Kühn and colleagues found more gray matter, including in the hippocampus, after two months of daily play. These studies have weak points of their own.
Gamers are self-selected, since people who choose to play a lot may differ from those who do not. Effects tend to shrink once publication bias is taken into account. And nobody knows how far a better score on a lab test carries over into everyday life. The WHO defines gaming disorder by loss of control over play and serious disruption to daily life.
199 words ・ CEFR B2
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2000年代初め、日本の親たちはメディアで恐ろしい言葉を何度も耳にしました。「ゲーム脳」とは、ビデオゲームが子どもの脳を認知症に似た状態に追いやるかもしれない、という主張です。その根拠は脳波の記録でしたが、研究者たちは測定と、その読み取り方の両方を批判しました。また、この考えが厳密な査読を経ることは一度もありませんでした。
海外の研究室では、逆の結果が出ていました。グリーンとバヴェリアは2003年の『ネイチャー』の論文で、アクションゲームをする人は視覚的選択的注意のテストでしない人を上回り、しない人もわずか10日間の訓練で点数が上がったと報告しました。2018年のメタ分析は、アクションゲームと注意力・知覚の高さとの関連をおおむね確認しました。2014年には、キューンらが、2か月間毎日プレイした後に、海馬を含む部位で灰白質が増えたことを見出しました。とはいえ、これらの研究にも弱点があります。
ゲーマーは自分で選んでゲームをしている人たちで、たくさん遊ぶことを選ぶ人は、そうでない人ともともと違うかもしれません。出版バイアスを考慮すると、効果は小さくなる傾向があります。そして、実験室のテストで点数が上がっても、それが日常生活にどこまで生きるのかは誰にもわかりません。WHOは、プレイを制御できなくなることと日常生活への深刻な支障によって、ゲーム障害を定義しています。
4択リーディングクイズ
Q1. Which best describes the overall message of the passage?
ゲーム脳説は裏づけがなく、一方でゲームの利点にも限界があると述べているので D。
Q2. Which is NOT mentioned as a limitation of research on game benefits?
限界として自己選択(self-selected)・出版バイアス・日常生活への転移が挙がっているが、機器の費用は書かれていないので D。
Q3. According to the passage, how does the WHO define gaming disorder?
最終文 defines gaming disorder by loss of control over play and serious disruption to daily life より B。時間の長さではない点に注意。
重要単語
- attentionA2名詞注意(力)Action games may sharpen visual attention.
pay attention to ~「~に注意を払う」は必修。attention span「集中力の持続時間」も頻出。 - gray matterC1名詞(句)灰白質(神経細胞が集まる部分)Gray matter increased after two months of play.
口語で「頭脳・知力」の意味にもなる。white matter(白質)と対。 - addictionB2名詞依存症Gaming disorder is a kind of behavioral addiction.
be addicted to ~「~に依存している」。to の後は名詞・動名詞。 - moderationC1名詞節度、ほどほどEnjoy games in moderation.
in moderation「ほどほどに」が定番。moderate(適度な)の名詞形。 - peer reviewC1名詞(句)査読(専門家による審査)Peer review helps catch weak claims.
peer は「同等の人・仲間」。peer pressure(同調圧力)も入試頻出。 - dementiaC1名詞認知症Exercise may lower the risk of dementia.
de-(離れて)+ment(心)。高齢化社会の長文で頻出。 - rigorousC1形容詞厳密なThe claim was never tested in a rigorous way.
rigor(厳しさ)の形容詞。rigorous research / rigorous testing の形で研究紹介に多い。
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- Gaming disorder(WHO, 世界保健機関)who.int
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「ゲームをすると脳が壊れる」って言われた世代も多いけど、その後の研究ではアクションゲームで注意力が上がったり、毎日のゲームで脳の一部の体積が増えたりした報告まであるらしい。ただし、やりすぎは別問題。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Green & Bavelier (2003) Action video game modifies visual selective attention, Naturedoi.org
- Kühn et al. (2014) Playing Super Mario induces structural brain plasticity: gray matter changes resulting from training with a commercial video game, Molecular Psychiatrydoi.org
- Bediou et al. (2018) Meta-analysis of action video game impact on perceptual, attentional, and cognitive skills, Psychological Bulletindoi.org
- Gaming disorder(WHO, 世界保健機関)who.int
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










