ウソ?ホント?検証ウソ

「犬は白黒の世界で生きている」はウソ。犬の目に映るのは"青と黄色の世界"だった

「犬は白黒の世界で生きている」はウソ。犬の目に映るのは"青と黄色の世界"だった

読む前に予想してみよう!

犬は色が見えず、白黒の世界を見ている

研究カード(どんな研究?)
対象
飼い犬
規模
3頭+8頭など
研究の種類
行動実験・総説
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

犬の網膜には色を感じる細胞が2種類あり、青と黄色系の色を見分けられる。赤と緑の区別は苦手だが、白黒ではない。実験では明るさより色を手がかりにしていた。

ひとことで言うと犬の世界は白黒じゃない。青と黄色がよく見える世界!

もくじ
  1. 犬の目には、色センサーが2種類あった
  2. 犬に見えている世界は?
  3. 「色なんて使っていない」も覆された
  4. なぜ「白黒説」が広まったのか
  5. まとめ

「犬って、白黒の世界を見てるんでしょ?」

昔から、こんな話をよく耳にします。古い本や雑学番組では、犬の見る世界がモノクロ写真のように紹介されることもありました。

でも、これはウソです。犬は色を見ています。ただし、私たち人間とは少し違う"色の世界"です。

01犬の目には、色センサーが2種類あった

人の目の網膜には、色を感じる細胞(錐体)が3種類あります。赤っぽい光、緑っぽい光、青っぽい光にそれぞれよく反応し、その組み合わせでたくさんの色を見分けています。

つまり犬は、色が見えないのではなく、色の"チャンネル"が人より1つ少ないのです。

02犬に見えている世界は?

2色型の色覚では、主に「青っぽいか、黄色っぽいか」で色を見分けます。そのため、犬は次のような特徴を持つと考えられています。

  • 青と黄色の区別は得意
  • 赤・オレンジ・黄緑のあたりは、どれも似た色(黄色っぽい色)に見えやすい
  • 赤と緑の区別は苦手
犬の世界は白黒ではなく、青と黄色を中心にした色の世界だと考えられている
犬の世界は白黒ではなく、青と黄色を中心にした色の世界だと考えられている

人間にも、赤と緑の区別がつきにくい色覚のタイプの人がいますが、犬の見え方はそれに近い、とよく説明されます。

03「色なんて使っていない」も覆された

それでも、「犬は色が見えても、ふだんは色なんて気にしていない」と長く考えられてきました。初期の研究では、犬は色より明るさを手がかりに物を見分けていると思われていたのです。

ところが、ロシア科学アカデミーのカスパルソンらは2013年、この考えをひっくり返しました。訓練を受けていない犬8頭に、色も明るさも違う2つの選択肢を見せ、エサの場所を覚えさせました。そのあと、色と明るさの組み合わせを入れ替えて、犬がどちらを手がかりにしていたかを調べたのです。

すると犬たちは、明るさを使うこともできたのに、色を手がかりに選んでいました。2色型の色覚でも、昼間の明るい環境では、色はとても役に立つ情報だったのです。

04なぜ「白黒説」が広まったのか

  • 昔の研究や本で「犬は色をほとんど区別しない」と紹介された
  • 犬は暗い所での見え方にすぐれているため、「夜行性っぽい=色はいらない」と思われやすかった
  • 「人と違う=見えない」と単純化して伝わってしまった

2018年の総説(バイオシエールら)も、犬の視覚は人と大きく違う点が多い一方で、まだよくわかっていないことも多く、犬の目で世界がどう見えるかを前提に研究を考えるべきだと指摘しています。

05まとめ

  • 犬は白黒ではなく、2種類の錐体による「2色型」の色覚を持つ
  • 青と黄色は見分けやすく、赤と緑の区別は苦手
  • 実験では、犬は明るさより色を手がかりにしていた

判定は「ウソ」。犬の世界はモノクロではなく、青と黄色に彩られた世界。愛犬のおもちゃ選びに、ちょっと役立つかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerOld books often said that dogs see the world like a black-and-white photo. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Old books often said that dogs see the world like a black-and-white photo. However, in 1989, American researchers trained three dogs to tell colored lights apart. They found that dogs have two types of cones, the cells in the eye that sense color. Humans have three.

As a result, dogs mainly see the difference between blue and yellow, and they have trouble telling red from green. Many scientists still believed that dogs used brightness rather than color in daily life. But in 2013, Russian researchers tested eight dogs and found that they chose by color even when they could have used brightness. Color, it seems, is useful information for dogs.

110 words ・ CEFR B1

和訳を見る

古い本には、犬は世界を白黒写真のように見ているとよく書かれていました。しかし1989年、米国の研究者たちは3頭の犬に色のついた光を見分ける訓練をしました。その結果、犬には色を感じる目の細胞である「錐体」が2種類あることがわかりました。人間には3種類あります。

そのため、犬は主に青と黄色の違いを見分けていて、赤と緑の区別は苦手です。多くの科学者は、それでも犬はふだん色よりも明るさを使っていると考えていました。しかし2013年、ロシアの研究者たちが8頭の犬を調べたところ、明るさを使うこともできたのに、犬は色で選んでいたことがわかりました。犬にとって、色は役に立つ情報のようです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. How many dogs were tested in the 2013 study?

Q3. Which toy would probably be easiest for a dog to see on green grass?

重要単語

  • dichromaticC1
    形容詞2色型の(色覚)Dogs have dichromatic color vision. di-(2)+chroma(色)。名詞 dichromat は「2色型色覚の持ち主」。
  • retinaC1
    名詞網膜The retina is at the back of the eye. カメラのフィルム(センサー)にあたる部分。Apple の Retina ディスプレイもここから。
  • brightnessB1
    名詞明るさThe dogs chose by color, not brightness. bright+-ness。bright は「頭がいい」の意味でも使う(a bright student)。
  • visual acuityC1
    名詞(句)視力Dogs have lower visual acuity than humans. acuity は「鋭さ」。acute(鋭い・急性の)と同語源。日常語では eyesight。
  • perceiveB2
    動詞知覚するDogs perceive the world differently from us. 名詞 perception。perceive A as B「AをBとみなす」の形も頻出。
  • cueB2
    名詞手がかり、合図The dogs used color as a cue. 演劇の「きっかけ(キュー)」と同じ語。queue(列)と同音なので注意。

4コマでわかる

「犬は白黒の世界で生きている」はウソ。犬の目に映るのは"青と黄色の世界"だったの4コマ漫画
「犬は白黒の世界を見ている」は昔の誤解。犬の目には色を感じる細胞が2種類あって、青と黄色系の色を見分けられるらしい。しかもロシアの実験では、犬は明るさより"色"を手がかりに選んでいた。赤と緑の区別は苦手。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Neitz, Geist & Jacobs (1989) Color vision in the dog, Visual Neurosciencedoi.org
  2. Kasparson, Badridze & Maximov (2013) Colour cues proved to be more informative for dogs than brightness, Proceedings of the Royal Society Bdoi.org
  3. Byosiere et al. (2018) What do dogs (Canis familiaris) see? A review of vision in dogs and implications for cognition research, Psychonomic Bulletin & Reviewdoi.org