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【慶應の入試に出た】「人間の鼻はダメ」は誤解だった。目隠しで匂いを追跡できた実験

【慶應の入試に出た】「人間の鼻はダメ」は誤解だった。目隠しで匂いを追跡できた実験

読む前に予想してみよう!

人間は、地面に残った匂いの跡をたどって追跡することができる

研究カード(どんな研究?)
対象
成人の参加者
規模
数十人規模
研究の種類
心理物理実験・行動実験+再解析論文
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

目隠しした人が、草地につけたチョコの匂いを犬のように追跡できた。「人の嗅覚は1兆種を嗅ぎ分ける」説には数学的な反論も。人の鼻は思ったより優秀。

ひとことで言うと人間の鼻も、練習すれば犬みたいに匂いをたどれるらしい!

もくじ
  1. 目隠しで「チョコの匂い」を追いかけた
  2. 鼻の穴が2つある理由
  3. 「1兆種類を嗅ぎ分ける」は本当?
  4. まとめ

「人間の鼻は、犬に比べたら全然ダメ」。そう思っていませんか?

ところが科学者たちは、この常識に次々とツッコミを入れています。2026年度の慶應義塾大学(理工学部)の英語でも、「嗅覚に関する誤解」をテーマにした長文が出題されました(代々木ゼミナール・河合塾の解答速報で確認)。

今回は、人間の鼻をめぐる「マジか」な研究を、ツッコミ込みで紹介します。

01目隠しで「チョコの匂い」を追いかけた

地面に顔を近づけ、ジグザグに進みながら匂いを確かめる姿は、まるで犬そのもの。研究チームは、人の鼻の評判が悪いのは、能力の限界というより、一部は「ふだん使っていないから」かもしれないと考えています。

02鼻の穴が2つある理由

この実験では、もうひとつ面白い発見がありました。

人間の左右の鼻の穴は、約3.5cm離れた別々の場所の空気をかいでいます。そこで片方の鼻をふさぐと、追跡の成績が落ちました。つまり私たちは、左右の鼻に届く匂いの差を手がかりに、匂いの方向を判断しているらしいのです。耳が2つあると音の方向がわかるのと、よく似た仕組みです。

左右の鼻の穴は、少しずつ違う場所の空気をかいでいる
左右の鼻の穴は、少しずつ違う場所の空気をかいでいる

03「1兆種類を嗅ぎ分ける」は本当?

2014年、Science誌に「人間は少なくとも1兆種類の匂いを区別できる」という研究が載り、大きな話題になりました(Bushdid et al.)。たくさんの香り成分を混ぜた液体を嗅ぎ比べてもらい、その成績から計算した数字です。それまでよく言われていた「約1万種類」という数字には、実は実験的な裏付けがありませんでした。

ところが翌2015年、別の研究者たちが反論論文を出しました(Gerkin & Castro)。計算方法がとても不安定で、使い方次第で桁違いに大きくも小さくもなること、しかもその式は本来「下限」ではなく「上限」を示すものだと指摘したのです。

結論として、「人が何種類の匂いを嗅ぎ分けられるか」は、まだわかっていない、というのが現時点で正直な答えです。

04まとめ

人間の鼻は、犬ほどではないにしても、私たちが思っているよりずっと優秀。ただし「1兆種類」のような派手な数字には、科学者自身がちゃんとツッコミを入れていました。

今日の帰り道、ちょっとだけ鼻に意識を向けてみてください。雨の匂い、パン屋の匂い……世界は匂いであふれています。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerHumans are often said to have a poor sense of smell, but experiments suggest otherwise. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Humans are often said to have a poor sense of smell, but experiments suggest otherwise. In a 2007 study at the University of California, Berkeley, researchers laid a chocolate scent trail about 10 meters long across a grassy field. Participants wore blindfolds, earplugs and gloves so that they could use only their noses.

The participants were able to follow the trail, and they got faster and more accurate with practice. The study also found that our two nostrils sample air from places about 3.5 cm apart. When one nostril was blocked, tracking became worse. The researchers think humans may have a bad reputation for smell partly because we rarely use this ability.

112 words ・ CEFR B1

和訳を見る

人間は嗅覚が弱いとよく言われますが、実験はそうではないことを示唆しています。カリフォルニア大学バークレー校での2007年の研究で、研究者たちは草地に約10メートルのチョコレートの匂いの跡をつけました。参加者は鼻だけを使えるように、目隠し、耳栓、手袋をつけました。

参加者は跡をたどることができ、練習によってより速く、より正確になりました。この研究ではまた、私たちの2つの鼻の穴が約3.5cm離れた場所の空気をかいでいることもわかりました。片方の鼻の穴をふさぐと、追跡の成績が落ちました。研究者たちは、人間の嗅覚の評判が悪いのは、一つには私たちがこの能力をめったに使わないからかもしれないと考えています。

4択リーディングクイズ

Q1. Why did the participants wear blindfolds, earplugs and gloves?

Q2. What happened when one nostril was blocked?

Q3. What do the researchers suggest about the human sense of smell?

重要単語

  • olfactionC1
    名詞嗅覚Human olfaction is better than many people think. 形容詞は olfactory(嗅覚の)。smell の学術的な言い換えとして難関大の長文に出る。
  • odorB2
    名詞匂い、臭気The odor of coffee filled the room. イギリス綴りは odour。scent(良い香り)、smell(一般的な匂い)とのパラフレーズに注意。
  • discriminateB2
    動詞識別する、見分けるCan you discriminate between these two smells? discriminate between A and B「AとBを見分ける」。discriminate against ~ は「~を差別する」で意味が変わる。
  • trackB1
    動詞跡をたどる、追跡するDogs can track a person by scent. 名詞の track は「跡、線路」。keep track of ~「~の記録をつける、把握する」は入試頻出の熟語。
  • nostrilC1
    名詞鼻の穴Each nostril samples air from a slightly different place. nose+thrill(穴)が語源。体の部位の語彙として長文で見かける。
  • estimateB1
    名詞・動詞推定値/推定するThe estimate was later questioned by other scientists. 名詞は /ˈestɪmət/、動詞は /ˈestɪmeɪt/ と語尾の発音が変わる。rough estimate「概算」。
  • scrutinyC1
    名詞綿密な調査、精査The claim did not survive close scrutiny. 動詞は scrutinize(精査する)。under scrutiny「厳しく調べられて」。科学の自己修正を描く長文に出る。

動画でもっと知る

4コマでわかる

【慶應の入試に出た】「人間の鼻はダメ」は誤解だった。目隠しで匂いを追跡できた実験の4コマ漫画
「人間の鼻は犬に比べてダメ」は誤解かも。目隠しした人に草地のチョコの匂いを追わせたら、ちゃんと追跡できて、練習でうまくなったらしい。ただ「人は1兆種の匂いを嗅ぎ分ける」説には反論も。人の鼻、意外とやる。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Porter et al. (2007) Mechanisms of scent-tracking in humans, Nature Neurosciencedoi.org
  2. Bushdid et al. (2014) Humans can discriminate more than 1 trillion olfactory stimuli, Sciencedoi.org
  3. Gerkin & Castro (2015) The number of olfactory stimuli that humans can discriminate is still unknown, eLifedoi.org
  4. McGann (2017) Poor human olfaction is a 19th-century myth, Sciencedoi.org