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「頭がいいね」より「よく頑張ったね」。子どもの伸び方を変える“ほめ方”の科学

「頭がいいね」より「よく頑張ったね」。子どもの伸び方を変える“ほめ方”の科学

読む前に予想してみよう!

「頭がいいね」とほめた子どもは、次に難しい課題を選びやすくなる

研究カード(どんな研究?)
対象
アメリカの小学5年生ほか
規模
計約400人(6つの研究)+追試・メタ分析
研究の種類
実験研究・追試・メタ分析
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

「頭がいいね」とほめられた子は、失敗したあと粘れなくなった、という有名な実験がある。ただし追試では効果が見られないこともあり、万能のルールではない。

ひとことで言うと「かしこいね」より「がんばったね」の方が、チャレンジ好きになるかも!

もくじ
  1. 同じテスト、違うほめ言葉
  2. 「頭がいい」組は、失敗に弱かった
  3. なぜ「頭がいい」が裏目に出るの?
  4. でも「万能のルール」ではない
  5. まとめ

テストで良い点をとった子どもに、なんと声をかけますか?

「すごい!頭いいね!」

ごく自然なほめ言葉です。でも、ある有名な心理学の実験によると、この言葉には思わぬ副作用があるかもしれないのです。

01同じテスト、違うほめ言葉

実験を行ったのは、コロンビア大学(当時)の心理学者クラウディア・ミューラーとキャロル・ドゥエックです。

02「頭がいい」組は、失敗に弱かった

結果は、かなりはっきりしていました。

「頭がいいね」とほめられた子どもたちは、

  • 次の課題を選ぶとき、失敗しない簡単な問題を選びやすかった
  • 難しい問題で失敗すると、楽しくなくなり、粘れなくなった
  • そのあとの問題で、成績まで下がった
  • 他の子に成績を報告するとき、実際より良く言う子が多かった

一方、「よく頑張ったね」とほめられた子どもたちは、失敗しても「もっと頑張ればできる」と考え、難しい問題にもチャレンジし続けました。

03なぜ「頭がいい」が裏目に出るの?

ドゥエックは、これをマインドセット(物事のとらえ方のクセ)で説明しています。

  • 固定マインドセット:能力は生まれつき決まっている
  • 成長マインドセット:能力は努力ややり方しだいで伸びる

「頭がいいね」とほめられると、子どもは「自分の価値は頭の良さで決まる」と受け取りやすい。すると、失敗は「自分は頭が悪い」という証拠になってしまうので、怖くて挑戦できなくなる、というわけです。

「伸びる力がある」と信じられると、失敗も成長の途中になる
「伸びる力がある」と信じられると、失敗も成長の途中になる

04でも「万能のルール」ではない

ここで大事なツッコミがあります。

この研究はとても有名になりましたが、その後の追試では、同じような手順でもはっきりした効果が見られなかった研究も報告されています。たとえば、中国の9〜13歳の子ども計約600人を対象に、元の実験の追試を含めて行われた2019年の一連の研究(Li と Bates)や、オランダの職業教育の学校に通う生徒を対象にした2020年の研究(Glerum ら)では、「頭がいいね」ほめと「頑張ったね」ほめの差ははっきり出ませんでした。

また、成長マインドセットについての多くの研究をまとめた2018年のメタ分析では、学力への効果は全体として小さいことが示されました。

一方で、親が幼児期に努力ややり方をほめることが多いと、数年後の子どもの考え方に結びついていたという観察研究もあります。

つまり、「頑張ったね」ほめは試す価値のある工夫だけれど、それだけで子どもが劇的に変わる魔法の言葉ではない、というのが現時点の答えです。

05まとめ

ほめ言葉は、子どもにとって「何が大切か」を伝えるメッセージ。「頭がいい」より「頑張った」「工夫した」をほめることで、失敗を怖がらない心が育ちやすくなるかもしれません。

ただし、言葉選びだけで全部が決まるわけではありません。いちばん大事なのは、子どもの挑戦をちゃんと見ているという姿勢なのでしょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerTelling a child "You're so smart!" seems kind, but a famous study suggests it may have side effects. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Telling a child "You're so smart!" seems kind, but a famous study suggests it may have side effects. In 1998, psychologists Claudia Mueller and Carol Dweck gave fifth graders puzzles and then praised them for either their intelligence or their effort.

Next, all the children faced difficult problems and failed. Children praised for intelligence tended to choose easy tasks, enjoyed the problems less and performed worse afterward. Children praised for effort kept trying. Dweck explains this with mindsets.

Praise for intelligence may suggest that ability is fixed, so failure feels like proof of being unintelligent. However, some later studies, including a series with about 600 children in China, did not find a clear difference between the two types of praise.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

子どもに「頭がいいね!」と言うのは優しいことに思えますが、ある有名な研究は、それに副作用があるかもしれないことを示唆しています。

1998年、心理学者のクラウディア・ミューラーとキャロル・ドゥエックは、小学5年生にパズルを解かせたあと、知能か努力のどちらかをほめました。次に、子どもたちは全員難しい問題に取り組んで失敗しました。知能をほめられた子どもは、簡単な課題を選びがちで、問題を楽しめなくなり、その後の成績も下がりました。努力をほめられた子どもは挑戦し続けました。ドゥエックはこれをマインドセットで説明しています。

知能をほめると、能力は固定されたものだと伝わる可能性があり、そのため失敗が「頭が悪い」という証拠のように感じられてしまうのです。しかし、中国の約600人の子どもを対象にした一連の研究を含む、その後のいくつかの研究では、2種類のほめ方の間にはっきりした差は見られませんでした。

4択リーディングクイズ

Q1. What did children praised for intelligence tend to do?

Q2. According to Dweck, why might praise for intelligence cause problems?

Q3. What does the last sentence suggest?

重要単語

  • praiseB1
    名詞・動詞ほめ言葉/ほめるPraise the process, not just the result. praise A for B「AをBのことでほめる」。名詞は不可算で a praise とは言わない。
  • mindsetB2
    名詞考え方のクセA growth mindset sees mistakes as chances to learn. growth mindset(成長)と fixed mindset(固定)はドゥエックの用語で、教育系長文の定番。
  • persistenceC1
    名詞粘り強さPersistence matters after a failure. 動詞 persist in ~「~をやり通す」。形容詞 persistent。
  • replicateC1
    動詞再現する、追試するLater studies failed to replicate the result. fail to replicate「再現できない」は心理学の再現性問題を語るときの決まり文句。
  • challengeB1
    名詞挑戦、難題She chose the harder challenge. 英語の challenge は「難題・やりがいのある課題」の意味が中心。動詞では「異議を唱える」の意味も。
  • exaggerateB2
    動詞誇張するSome children exaggerated their scores. g が2つ重なる綴りに注意。名詞 exaggeration。
  • attributeC1
    動詞(原因を)~に帰するShe attributes her success to hard work. attribute A to B「AをBのせいにする・Bに帰する」。名詞では「特性」。入試頻出の語法。

動画でもっと知る

同じテストで「頭がいいね」とほめられた子と「よく頑張ったね」とほめられた子。難しい問題で失敗したあと、粘って楽しめたのは「頑張った」組だったらしい。ただ、追試では効果が出ないこともあるそう。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Mueller & Dweck (1998) Praise for intelligence can undermine children's motivation and performance, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  2. Gunderson et al. (2013) Parent praise to 1- to 3-year-olds predicts children's motivational frameworks 5 years later, Child Developmentdoi.org
  3. Glerum et al. (2020) The effects of praise for effort versus praise for intelligence on vocational education students, Educational Psychologydoi.org
  4. Li & Bates (2019) You can't change your basic ability, but you work at things, and that's how we get hard things done: Testing the role of growth mindset on response to setbacks, educational attainment, and cognitive ability, Journal of Experimental Psychology: Generaldoi.org
  5. Sisk et al. (2018) To what extent and under which circumstances are growth mind-sets important to academic achievement? Two meta-analyses, Psychological Sciencedoi.org