語学・英語学習ウソ

「返り読み禁止」「頭の中で音読するな」は本当? 目の動きと“内なる声”の研究が出した意外な答え

「返り読み禁止」「頭の中で音読するな」は本当? 目の動きと“内なる声”の研究が出した意外な答え

読む前に予想してみよう!

文章を読むとき、前に戻って読み返す目の動きは、理解のためにはムダな動きだ

研究カード(どんな研究?)
対象
英語話者の大人
規模
数十人規模×複数研究
研究の種類
眼球運動実験・脳画像研究・総説
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

読み返しをできなくすると理解度が下がった。黙読中も、特に直接話法の文では声に反応する聴覚野の領域が強く働くことが脳画像で示されている。どちらも読解の大事な部品。

ひとことで言うと読み返しも、頭の中の声も、ちゃんと読むための「必要な道具」だった!

もくじ
  1. 読み返せなくすると、理解が落ちた
  2. 黙読中も、脳は「声」を聞いていた
  3. 速く読みたいなら?
  4. まとめ

英語の長文読解でよく聞くアドバイスがあります。

「返り読みするな。前から順番に読め」「頭の中で音読するな。それが遅さの原因だ」

速く読みたい受験生にとって、魅力的なアドバイスです。でも、読むときの目の動きや脳の働きを調べた研究からは、返り読みも、頭の中の声も、理解に必要な「部品」だったことが見えてきました。

01読み返せなくすると、理解が落ちた

人は文章を読むとき、目を左から右へ一定に動かしているわけではありません。ときどき前の単語に戻る「リグレッション(戻り)」をしています。これは「ムダな動き」なのでしょうか?

研究者たちは、読み返しは読み間違いを修正したり、理解を確かめたりするための自然な働きだと結論づけています。論文のタイトルは「読んだことを(一度だけで)信じるな」。

なお「返り読みするな」という受験英語のアドバイスは、英文を日本語の語順に並べ替えて訳しながら読む(後ろから戻って訳す)ことを指す場合が多いです。これは目の自然な「戻り」とは別物なので、分けて考える必要があります。

02黙読中も、脳は「声」を聞いていた

もう一つの「頭の中で音読するな」はどうでしょう。

さらに、アレキサンダーとナイガードの2008年の実験では、事前に録音で声を聞いた「話すのが速い人が書いた文章」と思って黙読すると、「遅い人が書いた文章」と思って読むより読む時間が短くなりました。私たちは黙読中も、書き手の声のイメージまで再生していたのです。

頭の中の声(内言)は、ペローネ=ベルトロッティらの2014年の総説によると、認知課題の成績を高めたり妨げたりすることがあり、自分が生み出した声だと認識する仕組みとも関わると整理されています。

黙読していても、頭の中では「声」が鳴っている
黙読していても、頭の中では「声」が鳴っている

03速く読みたいなら?

返り読みも内なる声も「悪者」ではないとすると、英文を速く読むにはどうすればいいのでしょうか。

答えは地味ですが、語彙と文法の処理を速くすることです。知らない単語や構文で引っかかると、読み返しが増えます。逆に、知っている表現が増えれば、読み返しが自然に減り、内なる声もスムーズに流れます。

04まとめ

「返り読み禁止」「頭の中で音読するな」は、少なくとも読むしくみの研究からは支持されません。目の戻りも内なる声も、理解を支える自然な働きでした。

速く読むための近道は、読み方のクセを無理に消すことではなく、語彙と構文を増やして「つまずき」を減らすこと。今日は、やさしめの英文を1本、意味のかたまりごとに読んでみましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerExam advice often tells students not to reread and not to use an inner voice, because both seem to slow… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Exam advice often tells students not to reread and not to use an inner voice, because both seem to slow reading down. However, research on how people read suggests otherwise. Our eyes regularly jump back to earlier words, which researchers call regressions. In a 2014 experiment, Schotter and her colleagues replaced each word with x's as soon as the reader's eyes moved past it, making rereading impossible.

Comprehension dropped, not only for confusing sentences but also for normal ones. Brain imaging has also shown that areas responding to voices become active during silent reading, especially when the text contains direct speech. Rather than trying to remove these habits, learners who want to read faster should build vocabulary and grammar so that they need to reread less.

126 words ・ CEFR B1

和訳を見る

試験のアドバイスではよく、読み返さないこと、内なる声を使わないことが学生にすすめられます。どちらも読むのを遅くするように思えるからです。しかし、人がどのように読むのかについての研究は別のことを示しています。私たちの目は定期的に前の単語へ戻っており、研究者はこれを「リグレッション(戻り)」と呼びます。2014年の実験で、ショッターらは、読み手の目が単語を通り過ぎるとすぐにその単語を x の記号に置き換え、読み返しをできなくしました。

すると理解度は、わかりにくい文だけでなく、ふつうの文でも下がりました。また脳画像の研究は、黙読の最中に声に反応する領域が活動すること、特に文章に直接話法が含まれるときにそうなることを示しています。より速く読みたい学習者は、こうした習慣を取り除こうとするのではなく、語彙と文法を身につけて、読み返す必要を減らすべきなのです。

4択リーディングクイズ

Q1. How did Schotter and her colleagues make rereading impossible?

Q2. When did comprehension drop in the 2014 experiment?

Q3. What does the writer suggest for learners who want to read faster?

重要単語

  • regressionC1
    名詞(目の)戻り・読み返しRegressions help you fix misunderstandings. 眼球運動研究の用語。日常では「後退・退行」、統計では「回帰」。動詞 regress。
  • eye movementB2
    名詞(句)眼球運動Researchers recorded eye movements during reading. 読書中の目は fixation(停留)と saccade(跳躍)をくり返す。eye-tracking「視線計測」も関連語。
  • inner speechC1
    名詞(句)内言(頭の中の声)Inner speech is active during silent reading. inner voice とも言う。心理学・言語学で、声に出さない心の中の言葉を指す。
  • comprehensionB2
    名詞理解Comprehension dropped without rereading. 動詞 comprehend。reading comprehension「読解」、listening comprehension「聴解」は試験の定番語。
  • auditory cortexC1
    名詞(句)聴覚野The auditory cortex responded to direct speech. auditory(聴覚の)+ cortex(皮質)。visual cortex「視覚野」、motor cortex「運動野」とセットで。
  • linearC1
    形容詞直線的な・一方向のReading is not strictly linear. line の形容詞。linear thinking「直線的な思考」。反対は nonlinear。
  • direct speechB2
    名詞(句)直接話法Direct speech uses quotation marks. He said, "I'm hungry." が直接話法、He said he was hungry. が indirect speech(間接話法)。高校文法の基本用語。
「英文は返り読みするな」とよく言われるけど、目が通り過ぎた単語を見えなくして読み返せないようにしたら、理解度が下がったという実験がある。しかも黙読中も脳は“声”を聞いていた。返り読み、悪者じゃなかった。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Schotter, Tran & Rayner (2014) Don't believe what you read (only once): Comprehension is supported by regressions during reading. Psychological Sciencedoi.org
  2. Yao, Belin & Scheepers (2011) Silent reading of direct versus indirect speech activates voice-selective areas in the auditory cortex. Journal of Cognitive Neurosciencedoi.org
  3. Alexander & Nygaard (2008) Reading voices and hearing text: Talker-specific auditory imagery in reading. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performancedoi.org
  4. Perrone-Bertolotti et al. (2014) What is that little voice inside my head? Inner speech phenomenology, its role in cognitive performance, and its relation to self-monitoring. Behavioural Brain Researchdoi.org