語学・英語学習ウソ

「大人はLとRを聞き分けられない」はウソ。日本人で実証された"いろんな声"トレーニング

「大人はLとRを聞き分けられない」はウソ。日本人で実証された"いろんな声"トレーニング

読む前に予想してみよう!

大人になってからでも、訓練すれば英語のLとRの聞き分けは上達する

研究カード(どんな研究?)
対象
日本語を母語とする大人
規模
小規模(各研究とも少人数)
研究の種類
訓練実験(事前・事後・追跡テスト)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

日本人の大人でも、たくさんの話者・たくさんの単語でLとRを聞き分ける訓練をすると、聞き分けが上達し、数か月後まで保たれ、発音まで良くなったという研究がある。

ひとことで言うと大人でもLとRは聞き分けられるようになる。コツは「いろんな人の声」で練習!

もくじ
  1. 赤ちゃんのころは聞き分けられていた
  2. 「いろんな声」で聞くトレーニング
  3. 半年後も残り、発音まで良くなった
  4. まとめ

「light」と「right」、「rice」と「lice」。日本人が英語で苦戦する代表が、LとRの聞き分けです。

「日本人の耳は、大人になったらもうLとRを区別できない」。そんな話を聞いて、あきらめている人もいるかもしれません。

でも、それは思い込みでした。1990年代、日本人の大人がLとRを聞き分けられるようになることを示した、一連の有名な研究があるのです。

01赤ちゃんのころは聞き分けられていた

実は、日本人の赤ちゃんも生後6〜8か月ごろはLとRを聞き分けられることが、研究でわかっています。

アメリカと日本の赤ちゃんを比べた研究では、生後6〜8か月のころは、どちらの国の赤ちゃんもLとRを同じくらい聞き分けられました。ところが生後10〜12か月になると、アメリカの赤ちゃんは聞き分けが上達し、日本の赤ちゃんは逆に聞き分けにくくなっていたのです。

これは、脳が「母語で必要な音の区別」に特化していくためだと考えられています。日本語ではLとRを区別する必要がないので、脳は両方を同じ「ラ行」の箱に入れるようになります。

では、大人になってから、もう一度その箱を分け直すことはできるのでしょうか。

02「いろんな声」で聞くトレーニング

ポイントは、1人の声ではなく、いろいろな人の声で練習したこと。これを高変動性音声訓練(HVPT)と呼びます。

1人の声だけで練習すると、その人の発音のクセに慣れるだけになりがちです。いろんな声で練習することで、脳は「話者が変わっても共通する、LとRのちがい」をつかめるようになると考えられています。

いろんな声を聞くことで、「共通するちがい」が見えてくる
いろんな声を聞くことで、「共通するちがい」が見えてくる

03半年後も残り、発音まで良くなった

この研究グループは、その後も同じ訓練法の効果を調べました。

  • 効果は長持ち:訓練から3か月後・6か月後にテストしても、3か月後は正答率の低下が2%にとどまり、6か月後も訓練前より4.5%高い水準だった(1994年の報告)
  • 発音まで改善:聞き分けの訓練しかしていないのに、訓練後の参加者のLとRの発音を英語母語話者が評価すると、発音も良くなっていた(1997年の報告)

さらに、聞き分けの訓練が発音に与える効果を調べた研究を25年分まとめた2018年のメタ分析でも、聞く訓練は発音の改善にもつながる傾向が示されています(ただし効果は聞き分けの上達より小さめ)。

「聞き分けが上達すると、発音も少し良くなる」。耳と口は、つながっているのです。

04まとめ

「日本人の大人はLとRを聞き分けられない」は、研究から見るとウソでした。

必要なのは、特別な才能ではなく、いろいろな声で、すぐ答え合わせをしながら、数週間続けること。大人の脳も、ちゃんと新しい「箱」を作れるのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerStudies show that Japanese babies at six to eight months can tell English L and R apart as well as American… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Studies show that Japanese babies at six to eight months can tell English L and R apart as well as American babies, but this ability declines by about their first birthday. Can adults learn it again? In 1991, researchers at Indiana University trained Japanese adults to identify L and R in many words spoken by several different speakers.

After each answer, the learners were told immediately whether they were right. Their accuracy improved, and the skill even worked with new words they had not practiced. This method is called high variability phonetic training. Later reports showed that most of the gains were still there three and six months later, and that the learners' pronunciation of L and R improved, although they had only practiced listening.

125 words ・ CEFR B1

和訳を見る

研究によると、生後6〜8か月の日本の赤ちゃんはアメリカの赤ちゃんと同じくらい英語のLとRを聞き分けられますが、1歳の誕生日ごろまでにその能力が低下します。大人はそれを学び直せるのでしょうか。1991年、インディアナ大学の研究者たちは、日本人の大人に、何人かの異なる話者が話すたくさんの単語の中でLとRを聞き分ける訓練をしました。

答えるたびに、学習者は正しかったかどうかをすぐに知らされました。彼らの正確さは上がり、その力は練習していない新しい単語でも発揮されました。この方法は高変動性音声訓練と呼ばれます。その後の報告では、上達は3か月後と6か月後にもおおむね残っており、聞く練習しかしていないのに、学習者のLとRの発音も良くなっていたことが示されました。

4択リーディングクイズ

Q1. What happens to Japanese babies' ability to hear L and R?

Q2. What was an important feature of the training?

Q3. What can we infer from the passage?

重要単語

  • perceptual trainingC1
    名詞(句)知覚訓練(音を聞き分ける練習)Perceptual training helped them hear /r/ and /l/. perceive「知覚する」の形容詞 perceptual。発音(production)の前に知覚(perception)を整える考え方。
  • high variabilityC1
    名詞(句)高変動性(多くの話者・単語・環境を使うこと)High variability training uses many different voices. vary「変わる」→variable→variability。略称 HVPT(High Variability Phonetic Training)は発音研究の有名な手法。
  • minimal pairC1
    名詞(句)ミニマルペア(1音だけ違う単語の組)"Light" and "right" are a minimal pair. long / wrong、collect / correct など。聞き分けクイズを自作するのにも便利。
  • generalizeC1
    動詞一般化する(練習していない場面にも広がる)The skill generalized to new words and voices. generalize to ~「~に一般化する・広がる」。名詞 generalization。学習研究で「転移」とほぼ同じ意味で使う。
  • retentionC1
    名詞保持(効果が時間がたっても残ること)Retention was tested six months later. retain「保つ」の名詞形。訓練研究では「直後の効果」と「保持」を必ず分けて見る。
  • feedbackB1
    名詞フィードバック(正誤などの情報)Immediate feedback helps you learn faster. immediate feedback「即時フィードバック」が知覚訓練のカギ。不可算名詞。
  • transferB2
    名詞・動詞転移(する)・移るListening practice can transfer to pronunciation. SLAでは「ある技能の練習効果が別の技能に移ること」。母語の影響を指す language transfer もある。

動画でもっと知る

4コマでわかる

「大人はLとRを聞き分けられない」はウソ。日本人で実証された"いろんな声"トレーニングの4コマ漫画
「日本人の大人はLとRを聞き分けられない」は思い込みだった。アメリカの研究で、日本人の大人がいろんな人の声でLとRを聞き分ける練習をしたら上達し、半年後も効果が残り、発音の練習をしていないのに発音まで良くなったらしい。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Logan, Lively & Pisoni (1991) Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: A first report, The Journal of the Acoustical Society of Americadoi.org
  2. Lively et al. (1994) Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/. III. Long-term retention of new phonetic categories, The Journal of the Acoustical Society of Americadoi.org
  3. Bradlow et al. (1997) Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: IV. Some effects of perceptual learning on speech production, The Journal of the Acoustical Society of Americadoi.org
  4. Kuhl et al. (2006) Infants show a facilitation effect for native language phonetic perception between 6 and 12 months, Developmental Sciencedoi.org
  5. Sakai & Moorman (2018) Can perception training improve the production of second language phonemes? A meta-analytic review of 25 years of perception training research, Applied Psycholinguisticsdoi.org