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南極の厚さ約4kmの氷の下に、琵琶湖の10倍を超える巨大な湖が眠っていた

南極の厚さ約4kmの氷の下に、琵琶湖の10倍を超える巨大な湖が眠っていた

読む前に予想してみよう!

南極の氷の下にある湖は、すべてカチカチに凍っている

研究カード(どんな研究?)
対象
南極氷床の下の湖
規模
航空レーダー・地震探査・掘削・衛星観測
研究の種類
観測研究+レビュー
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

南極の氷床の下には数百もの「氷底湖」があり、最大のボストーク湖は約4kmの氷の下に広がる。凍らない理由は地熱と、氷の「毛布効果」。

ひとことで言うと南極の分厚い氷の下に、凍っていない大きな湖がかくれていた!

もくじ
  1. 「世界一寒い場所」の真下に湖が
  2. 空からの「レーダー」で見つかった
  3. なぜ凍らないの?
  4. 氷の下にも、生き物がいた
  5. 宇宙の生命探しのヒントにも
  6. まとめ

一面の白、白、白。南極大陸は、平均の厚さが2km近くもある巨大な氷のかたまり(氷床)におおわれています。

その分厚い氷の、さらにその下。光も届かない真っ暗な場所に、凍っていない湖がかくれているとしたら、信じられますか?

じつは南極の氷の下には、数百もの湖が見つかっています。2022年に発表された世界の氷底湖リストでは、南極だけで675個。中でも最大の「ボストーク湖」は、約4kmの氷の下に、琵琶湖の10倍以上の広さで横たわっているのです。

01「世界一寒い場所」の真下に湖が

ボストーク湖の真上には、ロシアのボストーク基地があります。ここは1983年にマイナス89.2℃という、地上で観測された中で最も低い気温を記録した場所として知られています。

そんな極寒の地の約4km下に、長さ200km以上、広さ1万km²を超える湖が広がっているのです。東京都の面積の5倍以上の湖が、まるごと氷のふたの下にあるイメージです。深いところでは水深が数百mから1km近くに達し、水の量は琵琶湖の約200倍とも見積もられています。

02空からの「レーダー」で見つかった

誰も見たことのない氷の下の湖は、どうやって見つかったのでしょう?

使われたのは、飛行機からの電波(レーダー)です。電波を氷に向けて打ちこむと、氷の底で反射して戻ってきます。そのとき、底が岩なのか水なのかで、反射のしかたが変わるのです。水はとくに強く、平らに電波をはね返すため、「ここに水がある」とわかります。

じつは「氷の下に水があるらしい」という手がかり自体は、1970年代の航空レーダー観測ですでに得られていました。それが「巨大な湖」だとはっきりしたのが1996年の論文だったのです。

その後2012年、ロシアの掘削チームが20年以上かけて氷を掘り進め、ついに湖の水面に到達しました。ただし、掘削孔には凍結を防ぐための灯油系の液体が使われていたため、「湖の水を汚さずに調べられるのか」という心配も国際的に議論されました。

何kmもの氷を掘り進めて、湖を目指す掘削が続けられてきた
何kmもの氷を掘り進めて、湖を目指す掘削が続けられてきた

03なぜ凍らないの?

マイナス数十℃の世界で、なぜ湖は凍らないのでしょう? 理由は3つあります。

  1. 地球内部からの熱(地熱):地面の下からは、地球の中心の熱がじわじわと伝わってきます
  2. 氷の毛布効果:何kmもの氷は、熱を通しにくい「分厚い毛布」の役目をします。下からの熱が外へ逃げにくいのです
  3. 重さで溶けやすくなる:上に乗っている氷の重さ(圧力)で、氷が溶ける温度が0℃より下がります。厚さ約4kmの氷の底では、およそマイナス3℃前後でも水のままでいられます

この3つがそろうことで、氷の底が少しずつ溶け、液体の水がたまり続けているのです。

04氷の下にも、生き物がいた

ボストーク湖は、南極に氷床ができてから数百万年以上、氷のふたの下にあったと考えられています(湖の水そのものは、上の氷がとけたり凍りついたりして、ゆっくり入れ替わっています)。そんな場所に、生き物はいるのでしょうか?

ボストーク湖については、湖水が凍りついた氷から微生物のDNAが見つかったという報告もありますが、掘削液などによる汚染の可能性があり、まだ決着していません。

はっきりした答えを出したのは別の湖でした。2013年、アメリカの研究チーム(WISSARD計画)が南極の西側にあるウィランズ湖まで、熱水ドリルで約800mの氷を清潔な方法で掘り抜き、水と泥を採取しました。翌2014年に Nature に発表された結果によると、そこには多くの種類の微生物が暮らしていたのです。

太陽の光が届かないので、植物のように光合成はできません。微生物たちは、岩や鉱物から化学的にエネルギーを取り出して生きていると考えられています。

05宇宙の生命探しのヒントにも

氷の下の湖は、地球の外の生命を探すヒントにもなっています。木星の衛星エウロパや、土星の衛星エンケラドスは、厚い氷の下に海があると考えられているからです。

「光のない氷の下でも、生き物は暮らせるのか?」。南極の氷底湖は、その答えを教えてくれる、地球上の「練習場」なのです。

06まとめ

  • 南極の氷床の下には、数百もの湖がかくれている
  • 最大のボストーク湖は、約4kmの氷の下に広がる巨大な湖
  • 地熱・氷の毛布効果・圧力のおかげで、湖は凍らない
  • 別の氷底湖からは、光なしで生きる微生物が見つかった

足もとの氷の下にも、まだ誰も見たことのない世界がある。地球は、私たちが思っている以上に、ナゾだらけの星なのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerUnder the ice of Antarctica, there are hundreds of lakes of liquid water. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Under the ice of Antarctica, there are hundreds of lakes of liquid water. A list made in 2022 counted 675 of them. The largest, Lake Vostok, lies about 4 kilometers below a Russian research station. The lowest temperature ever recorded on Earth's surface, minus 89.2 degrees Celsius, was measured at that station.

Scientists found the lakes by sending radar signals down through the ice from airplanes. Water reflects these signals strongly, so the lakes show up clearly.

Why don't they freeze? Heat comes up from inside the Earth, and the thick ice works like a blanket. The great weight of the ice also lowers the melting point. In 2013, an American team drilled into a different lake and found many kinds of microbes living without sunlight.

126 words ・ CEFR B1

和訳を見る

南極の氷の下には、液体の水をたたえた湖が何百もあります。2022年に作られたリストでは、675個が数えられました。最大のボストーク湖は、ロシアの観測基地の約4km下にあります。地上で観測された中で最も低い気温、マイナス89.2℃が測られたのは、この基地でした。

科学者たちは、飛行機から氷の中へレーダー信号を送ることで湖を見つけました。水はこの信号を強く反射するので、湖がはっきりと浮かび上がるのです。

なぜ湖は凍らないのでしょうか。地球の内部から熱が伝わってきて、厚い氷が毛布のような役目をします。また、氷の大きな重さが、氷の溶ける温度を下げます。2013年、アメリカのチームが別の湖まで掘り進み、太陽の光なしで生きる多くの種類の微生物を発見しました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. How did scientists find the lakes?

Q3. What can we infer about the microbes found in 2013?

重要単語

  • ice sheetB2
    名詞(句)氷床(大陸をおおう巨大な氷)The Antarctic ice sheet holds most of the world's fresh water. sheet は「一面に広がる薄いもの」。山の谷を流れる glacier(氷河)より規模が大きい。
  • subglacialC1
    形容詞氷河(氷床)の下のScientists mapped a subglacial lake with radar. sub-(下の)+glacial(氷河の)。subway、submarine と同じ sub-。
  • geothermal heatC1
    名詞(句)地熱Geothermal heat slowly melts the bottom of the ice. geo-(地球)+thermal(熱の)。geothermal power「地熱発電」も環境系長文で頻出。
  • insulateC1
    動詞断熱する、熱を逃がさないThick ice insulates the water below it. insula(島)が語源で「孤立させる」イメージ。名詞 insulation(断熱材)。
  • microbeB2
    名詞微生物Some microbes can live in total darkness. micro-(小さい)+bio(生命)。microorganism とほぼ同じ意味。
  • contaminationC1
    名詞汚染、混入Scientists must avoid contamination of the samples. 動詞 contaminate。研究では「試料に別のものが混ざること」の意味でよく使う。

動画でもっと知る

4コマでわかる

南極の厚さ約4kmの氷の下に、琵琶湖の10倍を超える巨大な湖が眠っていたの4コマ漫画
南極の氷の下、深さ約4kmに琵琶湖の10倍以上の湖が凍らずに眠ってるらしい。しかも別の氷底湖からは微生物まで見つかってるとか。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Kapitsa et al. (1996) A large deep freshwater lake beneath the ice of central East Antarctica, Naturedoi.org
  2. Christner et al. (2014) A microbial ecosystem beneath the West Antarctic ice sheet, Naturedoi.org
  3. Fricker et al. (2007) An Active Subglacial Water System in West Antarctica Mapped from Space, Sciencedoi.org
  4. Livingstone et al. (2022) Subglacial lakes and their changing role in a warming climate, Nature Reviews Earth & Environmentdoi.org