シュレディンガーの猫とは?「生きてて死んでる猫」は量子力学への皮肉だった

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シュレディンガーは、猫が本当に生と死の重ね合わせになると主張するためにこの思考実験を考えた
むしろ「ミクロの理屈をそのまま大きな物に当てはめると変になる」と問題提起するための例えだった。
- 対象
- 物理学の思考実験と実験
- 規模
- 原子約10の17乗個の結晶など
- 研究の種類
- 理論・実験研究
- 確かさ
- ★★★★☆
シュレディンガーの猫は、量子の「重ね合わせ」を猫サイズにすると変だと示す思考実験。実は皮肉として考えられた。2023年には16μgの結晶で「猫状態」が実現。
ひとことで言うと小さな粒は「2つの状態を同時に持てる」。でも猫は?という話!
シュレディンガーの猫とは、「ミクロの世界のルール(量子力学)を、猫のような大きな物にそのまま当てはめたら、おかしなことになるよね?」という思考実験です。1935年、オーストリアの物理学者エルヴィン・シュレディンガーが論文の中で示しました。
ポイントは、これが量子力学を「すごいでしょ」と自慢する話ではなく、「この考え方、ちょっと変じゃない?」という皮肉として生まれたこと。ところが90年後の今、物理学者たちは本気で“猫”を作ろうとしています。
01箱の中で何が起きているのか
思考実験のセットはこうです(実際にやった実験ではありません)。
- 箱の中に猫を入れる
- 一定時間に50%の確率で崩れる放射性の原子を置く
- 原子が崩れたら、装置が働いて毒が出る
量子力学では、観測するまで原子は「崩れた」と「崩れていない」の重ね合わせの状態にあると考えます。すると、それにつながった猫も「生きている」と「死んでいる」の重ね合わせ……? ふたを開けるまで、猫は半分生きて半分死んでいることになってしまいます。

02シュレディンガー本人は「おかしい」と言いたかった
当時、ミクロの粒子のふるまいを「観測するまで決まっていない」と考える解釈が広がっていました。シュレディンガーはこれに納得できず、「じゃあ猫でも同じことが言えるの?」と極端な例を出したのです。
つまり、この猫は量子力学の弱点をつくための例えでした。それが今では、量子力学の不思議さを紹介する「顔」になっているのは、科学史のちょっとした皮肉です。
03なぜ私たちは「半分死んだ猫」を見ないのか
ここで登場するのがデコヒーレンスという考え方です。大きな物は、空気の分子や光とたえずぶつかっています。そのたびに情報がまわりにもれ出し、重ね合わせの「量子らしさ」はあっという間に消えてしまうのです。
物理学者ズーレックらがまとめたこの考え方で、「なぜ日常の世界は量子っぽく見えないのか」がかなり説明できるようになりました。
04実験は「猫」にどこまで近づいた?
それでも物理学者は、重ね合わせをどこまで大きな物で作れるかに挑戦してきました。
16マイクログラムは、砂つぶよりずっと小さな量です。でも原子の数で言えば、もはや「ミクロ」とは呼べない大きさ。猫への道のりは、少しずつ縮まっているのです。
05まとめ
シュレディンガーの猫は、「ミクロの不思議を大きな物に当てはめると変になる」ことを示した思考実験でした。
もともとは皮肉だった猫が、いまや本物の実験の目標に。「どこまで大きな物が量子になれるのか」という問いは、90年たった今も現在進行形の最先端研究なのです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSchrödinger's cat is one of the most famous ideas in physics, but it was first meant as a criticism of…
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原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In 1935, a scientist named Erwin Schrödinger wrote about a cat in a box. It was a thought experiment, not a real test. Inside the box, there is an atom that can break down. If it does, poison comes out. Very tiny things can be in two states at once.
So is the cat alive and dead at the same time? Schrödinger used this idea to show that the rule seems strange for big things.
75 words ・ CEFR A2
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1935年、エルヴィン・シュレディンガーという科学者が、箱の中の猫について書きました。それは思考実験で、本当の実験ではありませんでした。箱の中には、崩れることがある原子があります。もし崩れたら、毒が出てきます。とても小さな物は、2つの状態を同時にとることができます。
では、猫は生きていて、同時に死んでいるのでしょうか。シュレディンガーはこの考えを使って、そのルールは大きな物には変に思える、ということを示しました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
第2文で It was a thought experiment, not a real test. とあり、箱の中の猫の思考実験が全体のテーマなので B。
Q2. When did Schrödinger write about the cat?
第1文に In 1935 とあるので C。
Q3. In this passage, "at once" means ...
直後の文で at the same time と言い換えられているので A。at once は「同時に」と「すぐに」の両方の意味があり、ここは文脈から「同時に」。
Schrödinger's cat is one of the most famous ideas in physics, but it was first meant as a criticism of quantum theory. In 1935, Erwin Schrödinger imagined a cat in a closed box with a radioactive atom that has a 50% chance of breaking down. If it breaks down, a device releases poison.
According to quantum theory, the atom is in a superposition of both states until it is observed, so the cat would seem to be both alive and dead. Schrödinger thought this was clearly strange. Today, scientists explain why we never see such cats with an idea called decoherence: large objects keep hitting air molecules and light, so their quantum nature disappears very quickly.
116 words ・ CEFR B1
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シュレディンガーの猫は物理学で最も有名な考えの一つですが、もともとは量子論への批判として考えられたものでした。1935年、エルヴィン・シュレディンガーは、50%の確率で崩れる放射性の原子と一緒に、閉じた箱に入れられた猫を想像しました。原子が崩れると、装置が毒を放出します。量子論によれば、原子は観測されるまで両方の状態の重ね合わせにあるので、猫も生きていると同時に死んでいるように思えてしまいます。
シュレディンガーは、これは明らかにおかしいと考えました。今日、科学者たちは、なぜそのような猫を見ることがないのかを「デコヒーレンス」という考えで説明します。大きな物は空気の分子や光とたえずぶつかっているので、その量子的な性質はとても速く消えてしまうのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What was Schrödinger's original purpose for the cat example?
第1文 it was first meant as a criticism of quantum theory と、Schrödinger thought this was clearly strange から、量子の考えを大きな物に当てはめるとおかしいと指摘するためだったとわかるので D。
Q2. According to decoherence, why do we never see cats that are both alive and dead?
最終文 large objects keep hitting air molecules and light, so their quantum nature disappears very quickly とあるので A。
Q3. What can we infer about Schrödinger’s view?
criticism of quantum theory と Schrödinger thought this was clearly strange から、量子のルールを日常の物にそのまま当てはめることに疑問をもっていたと推測できるので C。デコヒーレンスは後の時代の考えなので D は誤り。
Schrödinger's cat is usually presented as a celebration of quantum weirdness, but it began as a complaint. In a 1935 paper, the Austrian physicist Erwin Schrödinger described a cat sealed in a box with a radioactive atom that has a 50 percent chance of decaying. If the atom decays, a device releases poison. Suppose the atom stays in a superposition until someone looks.
Then the same logic seems to say that the cat, too, is alive and dead at once. Schrödinger meant this absurd result to expose a weakness in a popular interpretation of the theory.
Later, the idea of decoherence, developed by Zurek and others, offered part of an answer. Large objects interact constantly with their surroundings, so their quantum behavior is lost almost instantly. Whether that fully solves the so-called measurement problem, however, depends on which interpretation a physicist accepts.
Meanwhile, experimenters keep putting bigger things into superposition. In 1999 it was carbon-60 molecules. In 2019 it was molecules of about 2,000 atoms. In 2023 it was a crystal weighing 16 micrograms and containing roughly a hundred thousand trillion atoms. A living cat, constantly trading heat and air with its surroundings, would be a far bigger step.
199 words ・ CEFR B2
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シュレディンガーの猫は、量子の奇妙さをたたえる例として紹介されるのがふつうですが、もともとは不満の表明として生まれたものです。1935年の論文で、オーストリアの物理学者エルヴィン・シュレディンガーは、50パーセントの確率で崩壊する放射性の原子と一緒に箱に閉じ込められた猫を描きました。原子が崩壊すると、装置が毒を放出します。もし原子が、誰かが見るまで重ね合わせの状態にあるとしましょう。
すると同じ理屈で、猫もまた生きていると同時に死んでいることになりそうです。シュレディンガーはこの不合理な結論によって、当時広まっていた量子論の解釈の弱点を暴こうとしたのです。
その後、ズーレックらが発展させたデコヒーレンスの考え方が、答えの一部を示しました。大きな物はまわりの環境とたえず相互作用しているため、その量子的なふるまいはほぼ一瞬で失われるのです。ただし、それでいわゆる「測定問題」が完全に解決するかどうかは、物理学者がどの解釈を受け入れるかによります。
一方で、実験家たちはより大きな物を重ね合わせの状態にし続けています。1999年には炭素60分子でした。2019年には原子約2,000個からなる分子でした。2023年には、重さ16マイクログラムで、原子をおよそ10万兆個ふくむ結晶でした。まわりの環境とたえず熱や空気をやりとりしている生きた猫となると、それよりはるかに大きな一歩になるでしょう。
4択リーディングクイズ
Q1. Which statement best expresses the main point of the passage?
第1文で不満(批判)として生まれたこと、後半で実験が大きなスケールへ進んでいることが述べられているので C。A は言いすぎ、B は however のある文の内容に反する。
Q2. About how many atoms did the 2023 crystal contain?
a crystal weighing 16 micrograms and containing roughly a hundred thousand trillion atoms とあるので D。60 は1999年の炭素60分子、2,000 は2019年の分子、16 は結晶の重さ(マイクログラム)。
Q3. What does the passage suggest about decoherence?
offered part of an answer と、Whether that fully solves the so-called measurement problem, however, depends on which interpretation a physicist accepts から、説明力はあるが見解が分かれているとわかるので B。
重要単語
- superpositionC1名詞重ね合わせAn electron can be in a superposition of two places.
super-(上に)+position(置くこと)=「上に重ねて置く」。be in a superposition of A and B の形で使う。 - thought experimentB2名詞(句)思考実験Einstein loved to use thought experiments.
頭の中だけで行う実験。thought は think の名詞形。conduct a thought experiment「思考実験を行う」。 - observeB1動詞観測する・観察するThe result changes when we observe the particle.
名詞は observation。「(規則を)守る」の意味もあり、入試の多義語問題で頻出。 - decoherenceC1名詞デコヒーレンス(量子らしさが失われること)Decoherence explains why we never see half-alive cats.
de-(失う)+coherence(まとまり・干渉性)。coherent「首尾一貫した」は入試頻出の形容詞。 - paradoxB2名詞逆説・矛盾に見える話The cat paradox still makes students think.
para-(反して)+dox(意見)。形容詞 paradoxical、副詞 paradoxically「逆説的に」も長文で頻出。 - simultaneouslyB2副詞同時にThe cat seems to be simultaneously alive and dead.
at the same time のかたい言い方。simultaneous interpretation は「同時通訳」。
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シュレディンガーの猫、実は本人が「この理屈、猫に当てはめたら変だろ」と皮肉るための例えだったらしい。しかも2023年、16マイクログラムの結晶で本当に“猫状態”が作られた。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Schrödinger (1935) Die gegenwärtige Situation in der Quantenmechanik, Die Naturwissenschaftendoi.org
- Zurek (2003) Decoherence, einselection, and the quantum origins of the classical, Reviews of Modern Physicsdoi.org
- Arndt et al. (1999) Wave–particle duality of C60 molecules, Naturedoi.org
- Fein et al. (2019) Quantum superposition of molecules beyond 25 kDa, Nature Physicsdoi.org
- Bild et al. (2023) Schrödinger cat states of a 16-microgram mechanical oscillator, Sciencedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













