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海の底の地図は月や火星より粗かった。くわしく測れたのは、まだ3割足らず

海の底の地図は月や火星より粗かった。くわしく測れたのは、まだ3割足らず

読む前に予想してみよう!

世界で一番深い海の底「チャレンジャー海淵」には、これまで月面を歩いた人の数より多くの人が行っている

研究カード(どんな研究?)
対象
世界の海底地形データ
規模
各国の船の測深データの集約(GEBCO)
研究の種類
国際共同の観測データ集約
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

月や火星は宇宙から全体の地形が測られているが、海底は電波も光も届かず、船の音波でくわしく測れたのは3割足らず。「地図の細かさ」では海底のほうが遅れている。

ひとことで言うと地球の海の底は、月よりもまだ地図ができていないところが多い!

もくじ
  1. 海は地球の約7割、しかも深い
  2. 月は「宇宙から見える」、海底は「見えない」
  3. 頼りは「音」――船で少しずつ測る
  4. 深海には、まだ見ぬ世界が広がる
  5. まとめ

「宇宙は最後のフロンティア」――よく聞く言葉ですよね。でも、地球にもまだまだ謎に満ちたフロンティアがあります。それが海の底です。

じつは、地球の海底の地形をくわしく測れているのは、まだ全体の3割足らず。一方、月や火星は、宇宙を回る探査機によって、星全体の地形がひととおり測られています。

つまり、「地図の細かさ」という点では、自分たちの星の海の底のほうが、月や火星より遅れているのです。なぜ、そんなことになっているのでしょう?

01海は地球の約7割、しかも深い

地球の表面の約7割は海です。そして海の平均の深さは、およそ3700m。富士山(3776m)の高さとほぼ同じ深さが、地球の表面の大部分に広がっているのです。

一番深い場所は、太平洋のマリアナ海溝にあるチャレンジャー海淵で、深さは約1万900m(測定によって数十mの差があります)。エベレスト(8849m)をひっくり返して沈めても、まだ2km以上も余るほどです。

02月は「宇宙から見える」、海底は「見えない」

月や火星の地図が作れたのは、探査機が上空を回りながら、カメラやレーザーで表面を測ることができたからです。月や火星には、地表をおおう海がありません。たとえば月は、NASAの探査機ルナー・リコネサンス・オービターのレーザー高度計などで、全体の地形が100m前後の細かさで測られています。

ところが地球の海底は、何千mもの水の下にあります。光は深い海の底まで届きませんし、電波も水の中ではすぐに弱まってしまいます。宇宙から直接、海底を「見る」ことはできないのです。

海底を測るには、船から音を出してはね返りを聞くしかない
海底を測るには、船から音を出してはね返りを聞くしかない

03頼りは「音」――船で少しずつ測る

そこで使われるのが音です。

船の底から海底に向けて音を出し、はね返ってくるまでの時間を測れば、海の深さがわかります。イルカやコウモリが音で周りを知るのと同じ原理です(これをソナーといいます)。

今は、扇のように広い範囲に一度に音を出して測る装置が使われていますが、それでも船が通ったところしか測れません。広い海を、船で一筋ずつ塗りつぶしていくような、とても根気のいる作業なのです。

もちろん、人工衛星を使って、海面のわずかな高さの違いから海底のおおまかな地形を推定する方法もあります。海底に大きな山があると、その重力で海水がわずかに引き寄せられ、海面が数m盛り上がるからです。でもそれでわかるのは、数km以上の大まかな凸凹。くわしい地図には、やはり船による測量が必要です。

つまり「海底の地図がない」のではなく、「粗い地図しかない」というのが正確な言い方です。

04深海には、まだ見ぬ世界が広がる

地図ができていないということは、まだ誰も知らない山や谷、生き物がたくさんあるかもしれない、ということでもあります。

たとえば1977年、アメリカの潜水艇「アルビン」が、太平洋のガラパゴス諸島近くの深さ約2500mの海底で、熱い水が噴き出す熱水噴出孔と、そのまわりに集まる生き物たちを発見しました(1979年に Science で報告)。太陽の光が届かない場所で、化学物質からエネルギーを得る微生物を出発点にした生態系が成り立っていたのです。この発見は、生命の誕生の場所を考えるうえでも大きなヒントになりました。

05まとめ

  • 月や火星は、探査機によって星全体の地形が測られている
  • 地球の海底は、光も電波も届かないため、船の音波で少しずつ測るしかない
  • くわしく測れた海底は、まだ全体の3割足らず
  • 深海には、熱水噴出孔のような驚きの世界がまだ眠っている

「未知の世界」は、はるか宇宙のかなただけではありません。私たちの足もとの星の、青い海のその下にも、まだ誰も見たことのない景色が広がっているのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAbout 70 percent of Earth's surface is covered by ocean, with an average depth of about 3,700 meters. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

About 70 percent of Earth's surface is covered by ocean, with an average depth of about 3,700 meters. The Moon and Mars have been mapped from orbit using cameras and lasers, but light and radio waves cannot pass through thousands of meters of water.

Instead, ships use sonar, sending sound to the seafloor and timing its echo, so they can only map the areas they sail over. Satellites can estimate rough shapes from tiny bumps in the sea surface, but only at a scale of several kilometers. When the Seabed 2030 project began in 2017, just 6 percent of the seafloor had been mapped in detail. By 2024, the figure had passed one quarter.

114 words ・ CEFR B1

和訳を見る

地球の表面の約70%は海におおわれ、その平均の深さは約3700mです。月や火星はカメラやレーザーを使って軌道上から地図が作られてきましたが、光や電波は何千mもの水を通り抜けることができません。

代わりに船はソナーを使い、海底に音を送ってそのはね返りまでの時間を測ります。そのため、船が通った場所しか地図にできないのです。人工衛星は海面のわずかな盛り上がりからおおまかな形を推定できますが、それは数km単位の大きさにとどまります。2017年にシーベッド2030プロジェクトが始まったとき、くわしく地図化された海底はわずか6%でした。2024年までに、その割合は4分の1を超えました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What percentage of the seafloor had been mapped in detail when Seabed 2030 began?

Q3. Why do satellite estimates alone not give a detailed seafloor map?

重要単語

  • seafloorB2
    名詞海底Most of the seafloor has never been seen by humans. sea+floor(床)。ocean floor、seabed とも言う。
  • sonarC1
    名詞ソナー(音波探知機)Ships use sonar to measure the depth of the sea. SOund NAvigation and Ranging の頭文字。radar(レーダー)も同じく頭字語。
  • bathymetryC1
    名詞海底地形(水深)の測量Bathymetry shows the shape of the ocean floor. bathy(深い)+metry(測ること)。geometry(幾何学)と同じ -metry。
  • resolutionB2
    名詞解像度、細かさThe map has a resolution of about one hundred meters. 多義語。「決意」「(問題の)解決」「決議」の意味も入試頻出。New Year's resolution は「新年の抱負」。
  • hydrothermal ventC1
    名詞(句)熱水噴出孔Strange animals live around hydrothermal vents. hydro(水)+thermal(熱の)。vent は「通気口・はけ口」。
  • submersibleC1
    名詞(小型の)潜水艇The submersible dived to the bottom of the trench. submerge(水中に沈む)+-ible(できる)。submarine(潜水艦)より小型の調査艇を指すことが多い。

動画でもっと知る

月や火星は全体の地形図があるのに、地球の海の底をくわしく測れたのはまだ3割足らずらしい。足もとの星のほうが、宇宙より未知だった。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Mayer et al. (2018) The Nippon Foundation—GEBCO Seabed 2030 Project: The Quest to See the World's Oceans Completely Mapped by 2030, Geosciencesdoi.org
  2. Corliss et al. (1979) Submarine Thermal Springs on the Galápagos Rift, Sciencedoi.org
  3. GEBCO(General Bathymetric Chart of the Oceans)gebco.net